2分の1の魔法の町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)
で、ピクサーの新作アニメ映画『2分の1の魔法』(Onward)のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『2分の1の魔法』解説レビューの概要
①魔法があった世界の話だが、電気やガスが発明されスマホをいじる世界になっちゃったっていう話。
②会いたい人を1日だけ呼び出せる魔法の杖を見つけ、主人公が1歳の時に他界したお父さんを呼び戻す事に。
③しかし、魔法の杖の魔法石が欠けていて、お父さんの下半身しか呼べない!
④兄弟で魔法の石を探す旅へ。
⑤実は、この映画を含めピクサー映画は○○から作られている。
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
(赤江珠緒)
(コロナの影響で)じゃぁアメリカもちょっと雰囲気としては良くないという状況でね、だって映画も公開が延期になったりとかありますもんね。
(町山智浩)
映画ね、どんどん公開延期になってるんですよ。もう映画館に行ったんですけど、やっぱり人が入ってないんですよ。
(赤江珠緒)
あぁ〜〜。そうかぁ。。
コロナの影響で映画の公開が延期に
(町山智浩)
もう全然入っていない。で、この間ですね、映画を作れば当たるピクサーの新作映画が公開されたんですけど、で一応トップなんですけど、やっぱり映画界全体が入ってないから、まあ観客動員数はすごい少ないんでね、あれなんですが。でも映画は良かったですよ!その映画の話をしますね。
(赤江珠緒)
はい!
(町山智浩)
ピクサーの新作映画で『2分の1の魔法』という映画の紹介をします。アニメです。これ日本では公開する予定だったんですね。
(山里亮太)
まだしてないですねぇ。
(赤江珠緒)
予告は結構流れてますよ、うん。
『2分の1の魔法』は日本で公開予定も、無期延期に
(町山智浩)
たしかあの「近日公開」という形で無期延期になってると思います日本では。まあ、本当に大変ですね、今ディズニーも株価が落っこちちゃって。遊園地が閉鎖になったりしたのでね、でまあ大変ですが。
でもこの『2分の1の魔法』はね、僕、好きな映画で、これね、魔法があった世界の話なんですよ。それこそユニコーンとか妖精とか人魚とか、そういったものが一杯いる、おとぎの国の話なんですけど。そのおとぎの国にですね、電気とかガスが発明されちゃって、みんな普通に電気を付けてガソリンで自動車に乗って、あとスマホをいじる世界になっちゃったっていう全然意味がない話なんですよ。(笑)
(赤江珠緒)
へえー!
魔法があった世界の話
(町山智浩)
はい。だからみんな見た目はね、この主人公のイアンくんっていうのは16歳のエルフなんですけど。エルフというのは妖精なんで、肌が青くて耳が尖ってるんですけど、別に何の力もなくて。(笑)普通に、学校で、あんまり友達のいないオタクのお兄ちゃんなんですよ。声はスパイダーマンのトム・ホランドくんが演じてんですけど。彼が16歳になったんで自動車免許が取れるようになるんですね。というのもアメリカの法律そのまんまなんですけど。(笑)車を運転して、女の子と話をして、彼女を作って友達と遊ぶんだ!っていう高校デビューを企んでるんですよ。いわゆる高校デビューってやつがアメリカにもある訳ですよ。
(山里亮太)
はいはい!
高校デビュー
(町山智浩)
まぁアメリカっていうかこれは妖精の国なんですけども。なぜか妖精の国にも高校デビューがあって。(笑)ところがそれがうまくいかないんですよ。というのは、一つの理由はお兄ちゃんがいるんですけど、お兄ちゃんが高校中退でろくに働かないでですね、いわゆるファンタジーの世界、ロールプレイングゲームの世界にハマってるんですよ。ロールプレイングゲームっていうのは魔法とか剣が支配する世界のゲームですよね?
(赤江珠緒)
魔法の国なのに。(笑)
お兄ちゃんはオタク
(町山智浩)
魔法の国なのに、それは過去の、遥か昔の過去の事になっているんで、それを信じてやってるやつはただのオタク野郎って言われる世界なんですよ。はい。しかもヘビメタ聞いてるし。袖を切ったジージャンを着てるって。袖を切ったジージャンに黒のバンドTシャツを着てる人なんで、このお兄ちゃんは。それだけでも「負け犬さん」って言われるんですけど。(笑)
(赤江珠緒)
はっはっはっは。(笑)
父親がいない主人公
(町山智浩)
その兄貴がいるから恥ずかしくて友達と付き合えないんですよ、この主人公のイアンくんは。
で、もう一つは父親がいないんですね彼には。1歳の頃に病気で死んでしまったので、男性というのはどういうものなのか、大人の男性としての見本が近くにいないから分からないみたいな感じなんですよ。どんな大人にどんな男になったらいいか分からないと。で、お父さんの思い出はまるでなくて、ただ写真が何枚かあるだけなんですね。で、カセットテープにお父さんの声がちょっと入ってるんで、それを何回も何回も聞いたりするんですけど。このおとぎの国にはなぜカセットテープがあるのかとか、色々よくわからない映画なんですけど。(笑)はい。で、屋根裏を探したら屋根裏から魔法の杖が出てきて。それで会いたい人を1日だけ呼び出せると。いう魔法の書があって、それでお父さんを呼び出そうとして魔法をかけたら、その魔法の杖についている魔法石が欠けていたので、お父さんが下からグワーッと出てくるんですけど、スニーカーとチノパンが。で、ずーっと上がっていってベルトの所でお父さんが出てくるのを止めちゃうんですよ。
(赤江珠緒)
ふふふ、うん。
お父さんを呼び出そうとする
(町山智浩)
下半身だけなんですね?で下半身だけだとせっかくお父さんと話したかったのに話せないじゃないか!って言って、このイアンくんとダメな兄貴が2人でその魔法石の残りを探してお父さんの上半身を蘇らそうとする話なんですね。
(赤江珠緒)
はーーなるほど。
(山里亮太)
だから2分の1なんだ・・!
だから2分の1
(町山智浩)
そう、だから2分の1の魔法で、中森明菜さんとは関係ないんですね。
(赤江珠緒)
ははは、2分の1の神話ね。(笑)
(町山智浩)
でも、すごい変な話なんですよコレ。
(赤江珠緒)
せめて上半身が出てきてくれたら良かったのにね。
(町山智浩)
そう!上半身が先に出てきたらよかったのに、下半身だけなんですよ。ね。父親の下半身って一番困っちゃう所ですよね?(笑)
(山里亮太)
爆笑っ!!
父親の下半身って1番困る(笑)
(町山智浩)
この人ズボン履いているからいいけど、日本のお父さんとかアメリカのお父さんとかパンツ一丁の人いますからね、それだと非常に困るんですが。
(赤江珠緒)
そうですよね、そんなんだけ出てきても。(笑)
(町山智浩)
はい。ちゃんとしたお父さんでよかったですけれども。(笑)でもすごく変な話ですよこれ。お父さんの上半身を探すっていう話なので。でね、これって実話なんですって。
(赤江珠緒)
えっっ?
実話がもとになっている
(町山智浩)
これね、監督で脚本を書いたダン・スキャンロンさんという人がインタビューで答えてるんですけど、彼のお父さんが実際に1歳で亡くなって、彼はお父さんがどんな人なのかわからないから、その写真とかカセットテープの声とかで、頭の中で自分のお父さんを作っていったんですって。その事を物語にしたものがこの『2分の1の魔法』なんですね。
(赤江珠緒)
へぇーっ。
(町山智浩)
はい。これがね、ピクサーのね、いつものやり方なんですよ。
(山里亮太)
やり方?
ピクサーは必ず個人の問題をドラマにしていく
(町山智浩)
ピクサーっていうのは全世界で大ヒットする、もうメガヒットの、中国から日本からそれこそ中東諸国、アフリカまでヒットするアニメを作り続けてるんですけど、かならず作り手の個人的な問題をドラマにしていくんですよ。
(赤江珠緒)
ちゃんと実体験が反映されているんですね。
(町山智浩)
実体験が反映されてるんですよ。だから『モンスターズ・インク』っていう話はそのピーター・ドクターというその作り手の人が、子供ができたんだけれども、ずっとオタクだったから子供との接し方がわからなくて、四苦八苦したという体験をそのままモンスターが初めて子供を抱えて、その子供を笑わせられなくて困るっていう話にしたんですね?
(赤江珠緒)
あぁ!そうか、はい。
モンスターズ・インクも実話
(町山智浩)
だから本当の話なんですよ、自分自身の。で、ピーター・ドクターはその後その娘さんが大きくなった時、思春期になった時に鬱病になっちゃったんですよ。転校した学校にうまく馴染めなくて。それで精神科に行って、感情が全くなくなっちゃったんですね、娘さんの。それはどうしてそういうシステムになっているのかっていう事をお医者さんに聞いていって、そしたらそれは鬱になるとその感情がシャットダウンされちゃうんだと。言う事で、脳の機能を教えてもらったらしいんですね。それで作ったのが『インサイド・ヘッド』っていうアニメなんですよ。
(赤江珠緒)
あぁー!!
(町山智浩)
あれはまったく、引っ越してきて、サンフランシスコ、ピクサーのある街に引っ越してきたら娘が学校に対応できなくて、感情がなくなったんで、それを何とか治そうとする話でしたけども。
(赤江珠緒)
そうか。脳の中にいろんなキャラクターが存在してっていうね、あのお話ね。
『インサイド・ヘッド』も本当にあった事
(町山智浩)
そうそうそうそう。あれは、お医者さんに聞いた、脳の構造をそのままアニメにしただけなんですよ。本当に彼の家族にあった事なんですよ、監督さんの。常にそうやって、すごく個人的な話を元にしているんですね。で最近だと短編アニメで『Bao』っていう、お饅頭を作るお母さん、中国系のお母さんがお饅頭を作るんだけども、お饅頭に命が宿って息子になっちゃうっていうアニメを作ったんですけども。それはその、結局息子が家を出てっちゃって、彼女をよそに作っちゃって。お母さんが悲しくてしょうがなくてそのお饅頭を食べちゃうっていう話だったんですよ。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
それも、その中国系のアニメーターの人が自分のお母さんにお饅頭の作り方を教えてもらった事を元にして作ったアニメなんですね。全部自分の話なの!で『トイ・ストーリー4』はこの間ありましたけども、あれは子供が大きくなっちゃって家を出ていっちゃって、もう親としての役割を終わってるのに、いつまでたってもその『トイ・ストーリー』の主人公のウッディは、子供のためにおもちゃとしてね、頑張ろとして空回りしていくっていう話だったんですね。
(赤江珠緒)
そうですね、うん。
「最もパーソナルな物が最もグローバルになる」
(町山智浩)
あれは、いわゆる空の巣症候群ですね。子供が家を出てしまっても、親としての役割をやり続けようとして、めちゃくちゃになっちゃうっていう事を描いているんですけども。常に現実なんですね。ただ、これがね、すごく面白くて。この間、ポン・ジュノ監督が『パラサイト』でアカデミー賞を取った時に、マーティン・スコセッシ監督に「一番個人的なことが一番世界の人に突き刺さるものになる」っていう言葉を教えてくれたのは、あなたです!って言ったんですよ。「最もパーソナルな物が最もグローバルになる」っていう。それがピクサーのアニメなんですよね。
(赤江珠緒)
あぁ、なるほど!
(町山智浩)
日本だったら、そんな個人的な話は同人誌でやってろって言われると思うんですよ。そうじゃなくてピクサーは、「よし!それは君の問題なんだ、それをもっともっと掘り下げて行きたまえ。」と。そうすると世界に通じるドラマになるよって言うんですよ。
(赤江珠緒)
わー、それはいい言葉ですね!
(山里亮太)
ね!!
(町山智浩)
それで全世界向けのヒットを作り出してきたので、それは本当に大事なことだなと思いましたね。
(赤江珠緒)
ねー、本当ですね。
お母さんの驚きの発言
(町山智浩)
でね、この監督さんは「自分はお父さんと話したことがないからこのアニメを作ったんだ」ってお母さんに言ったら、お母さんはこう言ったんですって。「何言ってるの?」と。「お父さんが亡くなる前にあなたは1歳で初めて言葉を喋ったけど、それがお父さんに向かって”パパ”って言ったのよ!」って言ったんですって。
(赤江珠緒)
えぇーっ!
(町山智浩)
それで「あ僕は、パパと話してたんだ!」って思ったらしいですよ。という話が『2分の1の魔法』なんで、いつご覧になれるのかどうが分かりませんが。公開されたら是非。
(赤江珠緒)
そうですね、日本では近日公開ということでまだ決まってはおりませんが。ね。ちょっと楽しみですね、見たいですね。町山さん、ありがとうございました。
(山里亮太)
あーした!
(町山智浩)
どもでした。
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
⑤実は、この映画を含めピクサー映画は実話から作られている。