ロード・オブ・カオスの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)
で、『ロード・オブ・カオス』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『ロード・オブ・カオス』解説レビューの概要
①すさまじい内容で18歳未満は見られない
②実在したノルウェーのメイヘムというバンドの話
③ブラックメタルとは、○○○○○○
④ブラックメタルの発祥は実は○○
⑤クリスチャンという名の反キリスト教の青年が教会に火を付ける
⑥誰が1番過激な事をするか、という競争になってしまう
⑦スウェーデン人の監督ヨナス・アカーランドもブラックメタルをやっていた
⑧すさまじい内容なのに、ほのぼのとした映画
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『ロード・オブ・カオス』町山さんの評価、解説
(町山智浩)
今日はですね、もう既に公開中なんですけども、日本では。先週金曜日から公開しているんですが、ちょっと僕、本当に日本での公開状況が分かってない大ボケおじさんになっちゃってるんで、あの紹介し忘れてたんですが。(笑)
『ロード・オブ・カオス』という映画について紹介します!これは実際にあった事件で、ですね。1990年代にノルウェーでブラックメタルという、なんていうのかな、ヘビーメタルの強烈なやつ・・って言うとファンが怒りますが。(笑)それをやっていたバンドの人達が教会に放火したりですね、殺し合って大変な騒ぎになっちゃった事があったんですよ。
(赤江珠緒)
えっ。そんな過激になっちゃったの?
殺人事件にまで発展した実話
(町山智浩)
殺人事件にまで最終的には発展して・・。バンドのリーダーが全身23ヶ所を刺されて死ぬっていう事態にまで発展したんですが。
(山里亮太)
えぇっ?
18歳未満は見られないが、良い映画!
(町山智浩)
一体、そのバンドの中で何があったのかというのをドラマとして、俳優さん達が演じた、映画がこの『ロード・オブ・カオス』という映画で。これがですね、すさまじい内容なんで18歳未満は見れないんですが。でも、いい映画なんですよ、すごく。
(赤江珠緒)
えぇっ、本当・・?
(町山智浩)
うん。その話をさせてください。これね、実在したノルウェーのバンドの、メイヘムというバンドの音楽をちょっと聞いていただきたいんですが。音楽、どうぞ。
〜音楽〜
(町山智浩)
はい。すいません。ごめんなさい、イントロ、長いです、ごめんなさい。(笑)
このね、ブラックメタルっていうのは今みたいに始まりは遅いんですけど、途中からね、ものすごくスピードが速くなるんですよ。でドラマがものすごい連打になって、バスドラ連打で。ギターの方もトレモロっていう、テケテケテケテケって指をこう痙攣させるように弾いて、ものすごく速くなるんですが。
(赤江珠緒)
あぁ相当激しいんですね。
(町山智浩)
はい。速くなるまでに何分もかかるので。
(山里亮太)
お話ししながら途中でくるかもしれない?(笑)
ブラックメタルとは
(町山智浩)
途中で速くなりますからね。(笑)すいません。で、ブラックメタルというのは、元々ヘビーメタルってあるじゃないですか。ヘビーメタルの後に、スラッシュメタルとかデスメタルっていうのが、流行ったんですね。それはヘビーメタル中でももっとスピードが速くて、ドラムをドドドドドドドドッ!って叩きながら・・で、あと、デスメタルってのはデス声っていうボーカルで。ヴエエエエエヴエエエエエっていう、何言っているのかわかんない、声を出すんですけれど。それを聞いてても、まだ過激さが足りない。まだ絶望が足りないと思った人達が、やり始めたのがブラックメタルなんですよ。
(山里亮太)
あっ、さらに向こう側、デスの向こう側?
(町山智浩)
そう。デスよりも先があるんですね。
破壊とかですね、殺人とかそういう事を歌って・・悪魔崇拝とか。でもうドロドロに、まぁ絶望的な歌なんですね。それがブラックメタルなんですが。それを・・要するに、どんどんどんどん絶望に向かっていく訳だから、終わりがない訳ですよ。それで大変な事になっていったっていう話なんですね。
で、すごく面白いのは、これが出てきたのがね、北欧なんですよ。スウェーデンとかノルウェーとか。北欧のイメージって言うと、まぁムーミンですよね。
ブラックメタルは北欧が発祥
(赤江珠緒)
そうですね。うん。そうね。(笑)
(山里亮太)
おおらかなね、なんか優しい・・。(笑)
(町山智浩)
そう。あと、『アナ雪』ね。
(山里亮太)
はいはい。あぁそうだ。
(赤江珠緒)
あぁそうね。なんか家具がおしゃれって言うイメージね。
(町山智浩)
のんびりした感じじゃないですか。緑が多くて。
(山里亮太)
そうですね、なんか。
(町山智浩)
で、トナカイとかいて。ねぇ。社会的には福祉国家で。
(赤江珠緒)
福祉が手厚いってイメージね。
なぜ北欧で地獄のような音楽が生まれたか
(町山智浩)
そう、福祉が手厚くて貧困層があまりいない。貧しい人も大金持ちもいなくて、あとはH&Mとかね、そういう・・IKEAとかね、そういうイメージですけど。なんで、そんなところからこんな地獄のような音楽が出てきたかっていうと、やっぱり、退屈だったみたいですね。
(赤江珠緒)
はぁ〜〜〜、ふんふんふん。
(町山智浩)
みんなだから健全で、みんな民主主義的で。なんというかリベラルでね。で、それに対する反発としてものすごく逆の方向の、悪魔を崇拝したりナチスドイツを崇拝したりヒトラーを崇拝したりね。そういう逆方向の音楽とか文化が出てきちゃったんですね。
で、そのブラックメタルのバンドを始めたのが、この主人公となるですね、ユーロニモスという人なんですけど。でまぁすごい過激な事を言って、何もかも燃やしてやれ、とかね、言ってたんですけど。
で、それをやってたらですね、スウェーデンから「俺もやる!」って入ってきたのが、この人はバンド名がですね・・バンド名というかなんていうのかな、ミュージシャン名ってあるじゃないですか。それがなんと「デッド」っていうんですよ。
(赤江珠緒)
デッド!うん。
スウェーデンからやってきた、デッド
(町山智浩)
「死んでる」っていう意味ですね。「すいません。”死んでる”です!」って言って入ってきたんですよ。「すいません、僕死んでます!」って言って入ってきたんですよ。
で、彼がリードボーカルをやるんですけど、彼は本気で死に取り憑かれてて。その・・子供の頃にね、いじめでね、実際に死ぬ寸前まで行ったんですよ。それがトラウマになって、死に取り憑かれてるのがこのデッドくんだったんですね。
ただ彼は、歌を歌いながら、ナイフで腕を切り刻んだりして、ものすごいショッキングなんで、もうカリスマ的人気になってったんですけども、それやってるうちに本当に、ショットガン、つまり猟銃で頭を吹き飛ばして死んじゃったんですよ。
(赤江珠緒)
えっ自分で?えーーっ!
デッドがメイヘムの伝説へ
(町山智浩)
自分で。で、そっからがこのバンドの、メイヘムの伝説になってくんですね。そのユーロニモスというリーダーが、その死んだ、親友であるデッドくんの、死体の、頭吹き飛ばした写真を撮って、それをレコードジャケットにしちゃうんですよ。
(赤江珠緒)
えぇっ!使っちゃうんですか、写真を・・。
(町山智浩)
そう。まぁひどい・・その死を利用しちゃったんですね。で、カリスマ的な人気が出てきて、で、彼がレコード店の経営も始めてですね、まぁ頑張ってくんですけども、そこにもう1人、ユーロニモスの言っている過激な思想に感化されたクリスチャンという青年が、すげぇド田舎から来るんですよ。
(赤江珠緒)
クリスチャン!
クリスチャンという名の反キリストの青年
(町山智浩)
クリスチャン君が。でクリスチャンっていう名前ですけども、反キリストなんですね。(笑)アンチ・キリストなんです。そう。これちょっと複雑なんですけど、北欧って前も話したと思ったんですけども、1番キリスト教になるのが遅れた地域なんですよ、ヨーロッパで。
あの、ヨーロッパがかなりドンドン、キリスト教になってったんですけど、少しずつね。でも北欧の方はすごく遅れて。最終的には、元々、なんだろうな、あの『アベンジャーズ』に出てくる雷様の神様いるじゃないですか、ソーって。あぁいうのを信じてたんですね、北欧の人達は。あとヴァルキリーとかね、ワルキューレとか・・あぁいう北欧神話を信じてたので、なかなかキリスト教は入らなかったんですよ。
で、どうしたかっていうと、キリスト教の王様が、キリスト教を信じないスウェーデン人達を虐殺したんですよ。
(赤江珠緒)
はぁ〜・・。
(町山智浩)
北欧十字軍っていうのがあって、それはキリスト教の王国軍が、キリスト教を信じないで昔からの北欧神話を信じている人達を虐殺するという事件があったんですよ。「キリスト教を信じろ!」って言って。
だからそれに対する反発みたいなものはこのブラックメタルの根底にあるんですね。
俺達、無理矢理キリスト教徒にされちゃったよ、みたいな所があって。だから「キリスト教教会なんて焼いてやれ!」とか言ってるんですね、彼らは。
(赤江珠緒)
あぁ〜・・そうか。。
クリスチャンが教会に火をつけた
(町山智浩)
で、そのクリスチャンが。(笑)”クリスチャン”って”キリスト教徒”って意味ですけども。(笑)
クリスチャン君が、それに感化されて、本当に教会に火をつけ始めちゃったんですよ。で、その教会がまた問題だったのは、ノルウェーで最も古く、もう有名な歴史的建造物であった教会を焼いちゃったんですよ。
(赤江珠緒)
えーーーっ!じゃもう、日本で言ったら法隆寺とかに火をつけるような?
(町山智浩)
そうそう。法隆寺とか清水寺とかを焼いちゃったんですよ。
(赤江珠緒)
うわーっ!
(町山智浩)
金閣寺とか焼いちゃったんで・・あれ前焼いちゃった人いましたけど。(笑)
(赤江珠緒)
そうでしたね。(笑)
(町山智浩)
はい。それで大問題になっちゃったんですね。でも、バレなかったんですよ。
(山里亮太)
えっ!?
次々と教会を連続放火していく
(町山智浩)
なかなかバレないうちに、次々と教会を連続放火してくんですよ。終いには時限爆弾まで仕掛けたりするんですけど。それで大変な事になってって、彼らがその一種のサークルを作って、ブラックサークルという反キリスト教のサークルを作って、段々ですね、誰が1番過激な事をするかっていう競争になってくんですよ。
(赤江珠緒)
あぁ〜っ・・。歯止めが利かなくなってきちゃった?
(町山智浩)
そう。それで、まぁ最終的には殺し合いになってしまったっていう話なんですね。
(赤江珠緒)
なんかちょっとデジャヴ感ありますね。なんかあの・・日本赤軍とかね。なんかちょっとそんな感じですね、内部でね。
(町山智浩)
そう。内部で。というのはね、これね、この彼らはね、元々ね、いい子達なんです!真面目な子達なんですよ。
(山里亮太)
悪魔崇拝って言っているけども・・?
元々彼らはいい子だった
(町山智浩)
そうそうそうそう。だからこのユーロニモスがブラックメタルのレコード店をオープンする時も、パパからお金を借りてオープンするんですよね。
(赤江珠緒)
あっ、ユーロニモスくんのパパは、じゃぁ・・。
(町山智浩)
ええとこなんですよ。
(山里亮太)
あぁ、ええとこの子ってやつだ。
(町山智浩)
ええしのボンボンなんですよね。で彼ら、レコードを作る時も、お金はクリスチャン君が出すんですよ。クリスチャン君のお母さんから借りて出すんですよ。でそれもね、モメた原因で、「ママのお金を使ってレコードを作ったのに返さねえのかよ!」ってなってくんですね。2人とも、なんていうかまぁ・・親の家に住んでたりとかね、色々して。(笑)
(赤江珠緒)
あたたたた。(笑)
スウェーデン人の監督ヨナス・アカーランドもブラックメタルをやっていた
(町山智浩)
まぁ結構、ボンボンなんですよ。まぁ歳も若いんですけど。このクリスチャン君はまだ19なんですよ、この頃。放火してた頃。で、どちらかというと真面目な方なんですよ。それが段々、こう過激な思想に取り憑かれていくっていう怖さを描いてて。でね、これ監督のね、ヨナス・アカーランドっていう人はスウェーデンの人なんですけど、この人自身もブラックメタルをやっていた人なんですよ。
(山里亮太)
へぇー!
(町山智浩)
そう。だから、外部から見て、彼らはやっぱり、イイ所のお坊ちゃんがね、無理して悪くなろとして変な事になっちゃったなっていうのをバカにして見てるんじゃなくて。「俺もそうだった」っていう事で作ってるんですよね、この監督は。本人もやってたから、それを。だからすごく共感を持って描いてるんで、僕はね、すごく感動したんですよね。ある意味。
(赤江珠緒)
へーっ!この皮肉な心理というかね、そういう心理状況というのをね、うん。理解できる感じなんだ。
不思議とほのぼのした映画
(町山智浩)
そうなんですけど、これ、すさまじい内容じゃないですか。こう話を聞いてると。血みどろで、実際に画面も血みどろなんですけど。でもね、不思議とほのぼのした映画なんですよ。
(赤江珠緒)
えぇっ?
(町山智浩)
ほのぼのしたものがね中にあって。これね、前にあの僕が紹介した・・たまむすびで紹介した、『ヘヴィ・トリップ/俺達崖っぷち北欧メタル!』っていう映画、覚えてますかね?
(赤江珠緒)
はい!
(町山智浩)
俺達崖っぷち北欧メタル!っていう副題が付いてますけど。(笑)あれはね、フィンランドかな?舞台が。スウェーデン、フィンランド、ノルウェーが北欧ですからね。で、フィンランドのメタル・・デスメタルみたいな、ブラックメタルみたいなのやってる彼らが全然売れなくてっていう話だったんですけども。あれでおかしかったのは、主人公達が、ヴエエエエエエエ!とか言っているのに、普段は本当に心優しい青年達だったんですよ。(笑)気が弱くてね。で、気が弱いからこそ、そういう顔を白く塗って、ものすごいトゲの付いた服を着ないと自分をこう、解放できないっていう風にして描かれていたんですね。
(赤江珠緒)
あぁ〜そうか・・うん。
映画『ヘヴィ・トリップ/俺達崖っぷち北欧メタル!』との共通点
(町山智浩)
そう。それで幼なじみの彼女だけが、彼は本当はいい人なんだっていうのを知っているという、いい話でしたけど、『ヘヴィ・トリップ』って。あの中で一番おかしかったのは、お金がないから車も買えなくて、自転車乗っているんですよね。主人公がね。(笑)で、デスメタルで自転車に乗ってるって合わないじゃないですか。(笑)
(赤江珠緒)
はははは、確かにね。地に足ついているけど。(笑)
(町山智浩)
そう。で、この映画もね、この『ロード・オブ・カオス』でもそういうシーンがあって。そのデッド君が死んじゃった時に、それを写真に撮って利用しようとしたから、リーダーが。頭に来てベースの子が抜けちゃうっていうシーンがあるんですよ。でベースの子はネクロブッチャーっていう名前でベースを弾いているんですけど、ネクロブッチャーっていうのは「死体解体屋」っていうすごい名前なんですよ。この人のバンド名は。(笑)それなのに、「俺達の親友じゃねぇか!!友達が死んだのを利用するなんて許せねえ!」とか言って、すごいいいやつなんですよ。(笑)
(赤江珠緒)
ネクロブッチャーは。(笑)へぇ〜。
ネクロブッチャー=「死体解体屋」
(町山智浩)
ネクロブッチャーすげぇいいやつなんですよ!(笑)
で、「俺はこのバンド抜ける!」って、自転車で去って行くんですよ。(笑)
(山里亮太)
ハッ!!(笑)
(赤江珠緒)
なるほど。(笑)なんかちょっと、そうですね。起きている事象と合わない所が一杯ありますね。
(町山智浩)
そう。笑っちゃうんですよ、そこは。でもそれはね、監督が本当に、そういう人だから、わかってやってるんですよ。で、みんなでその、コンサートが終わった後にね、血だらけのコンサートをやって、で打ち上げをやるんですよ。
打ち上げやりながら、「俺達、最高だよスゲエぜ!もう世の中をめちゃくちゃにしてやるんだー!革命だーー!」とか言ってんですけど、そうするとすぐにそのお店の人が、「あっレバニラ定食お待ち!」とか言って、定食屋でやってるんですよ、その打ち上げ。(笑)
(赤江珠緒)
はははははっ!(笑)
全編ユーモアがあり笑っちゃう
(町山智浩)
「地球を破壊してやるぜ!」とか言ってると、「はい定食お待ち!」とか言って定食が来るっていう所の、そのタイミングの良さ!(笑)
もうね、全編そういう感じ。もうおかしいんですよ。笑っちゃうんですよ。でまたね、このユーロニモスが、リーダーとして過激な事ばっかり言ってて、で、教会に火ぃつけちゃったっていうのを聞いた時に、「すげぇ!やったぜ!」とか言うんですよ。で、「お前すげぇやったなー!」とか言うんですけど、すぐに、そのクリスチャンがいなくなった途端に「やべぇ大変な事になっちゃったよ・・。」って言うんですよ。(笑)本気にしちゃったよ、どうしよう〜って。(笑)そういう所もね、なんかすっごい身につまされる感じなんですよ。
(山里亮太)
身につまされる!(笑)
(町山智浩)
身につまされる感じで。(笑)
僕もね、映画秘宝っていう雑誌を作ってね、バカな事をやりましたよ。
(山里亮太)
ははははは!(笑)ちょこちょこね、伝説は我々も聞きましたけど。(笑)
町山さんの伝説
(町山智浩)
そう、殴り込みをしたりね。でね、やっぱりね、やってやるぜ!とか、映画雑誌に革命を起こしてやるぜ!とか言ってるうちに、引っ込みがつかなくなるんですね!(笑)
こういう事はみんなあると思います。お笑いをやっている人もあるじゃないですか。ねぇ。過激な事やってやるぜ!とか言ってるうちに、ここまでやっていいのかな?っていう所を相方が勝手にやってしまった時とかね。
(山里亮太)
そうですね。これを超えなきゃいけないのかっていうドキドキね。
今から俺すげぇワルになるんだな〜みたいな。
(町山智浩)
そうそうそう。ねぇ。すっげぇ困る時ってあるじゃないですか、言っちゃった!みたいなね。そういう困った感がすごいあって。これね、あらゆるね、人達が若い頃はみんな、俺達で俺達の時代を築くんだ!とか言ってる時にね、やりがちな感じ。
(赤江珠緒)
あーっ。ちょっとその恥ずかしさみたいなのも全編にあるんですね。
(町山智浩)
そう。もうだから見てて恥ずかしくてしょうがなかったですね俺。もうね、本当に身をよじりながら見てましたね。うわぁ〜〜みたいな感じで。でも、みんなバンドをやったりね、それこそなんかを若い頃に仲間で始めた時って、このノリがあるんですよね。
(赤江珠緒)
まぁそうですね、そう。いわゆる若気の至りみたいなのは多かれ少なかれみんなありますもんね。
若気の至りのノリ
(町山智浩)
あるんですよ。それで、またみんな真面目だから。本当にふざけたやつはあんまり過激な事はしないんですよね。僕、日本のパンクバンドなんかも、僕元々パンクロックの雑誌、宝島やってたんで、よく取材してたんですけど、真面目な人ほどメチャクチャやるんですよ。
(山里亮太)
はーーっ。。確かになぁ。一生懸命に破天荒をやるみたいなね。
(町山智浩)
そうそう。真面目に不真面目をやろうとしちゃうんですよ。
(山里亮太)
はいはい、わかりますぅ。
(町山智浩)
だからスターリンっていうバンドがあって、その頃ですね、遠藤ミチロウさんっていう人がやってて、豚の臓物を客席に投げつけたりしてたんですけど。でも遠藤ミチロウさんは本当に真面目な真面目な人なんですよ、インテリの。
(山里亮太)
そうか。買いに行く姿とかを考えたら、なかなかね。(笑)
(赤江珠緒)
本当ですよね。「量はこのぐらいかなー?」とか言ってね。(笑)
いい成績を取る感じで悪い事をする
(町山智浩)
しゃべる時も本当に礼儀正しく朴訥なんですけど。そういう人ほど危ないというかですね、だから一生懸命なんですよ。いい成績を取る感じで悪い事をするんですよ。
(赤江珠緒)
はーーっ!
(町山智浩)
でも、それはね、1つ怖いのは、さっき連合赤軍の話、されてましたけど。彼らはみんな、偏差値の高いお坊ちゃんなんですよね。
(赤江珠緒)
ね!なんかそうだったみたいですね。はい。
(町山智浩)
そう。で、やってるうちに、大変なテロリストになっちゃったんですけど。
(赤江珠緒)
だんだん過激になっちゃって・・うん。
映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』との共通点
(町山智浩)
そう。でも、オウムもそうだったじゃないですか。みんな学歴が良くてね。
で前に紹介した映画で、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』っていう映画があったんですが。
1960年代の終わりに、カルト集団がハリウッドの女優さんを惨殺した事件なんですね、実際にあった。チャールズ・マンソン一家・・一味っていう、カルト集団だったんですけど。それでチャールズ・マンソン自身はただの嘘つきのホラ吹きだったんですけど、その部下の、彼の信者になった人達はみんな真面目なお坊ちゃんばっかりなんですよ。
そう。まぁオウムもそうですけども、真面目なお坊ちゃん達がホラ吹きに騙されるっていうパターンなんですね。でテロリストになっちゃうっていう。
(赤江珠緒)
あぁ〜そうだ。構図としては本当一緒だ。
トランプ信者とも共通点が
(町山智浩)
そう。で、このメイヘムの主人公のユーロニモスは、ホラは吹くんだけどもすぐに、いや言い過ぎた言い過ぎたって悩んだりしてるっていう所がアレなんですけど。(笑)
だから・・最近はだから、アメリカで大変な事になってるのは、トランプ信者の人達が大変な・・テロというか、国家反逆罪というか、議会に乱入しちゃったじゃないですか。で、あの人達、少しずつインタビューとか出てきてるんだけど、みんな真面目な人なんですよ。う〜ん。
あれはだから、チャールズ・マンソンにあたるホラ吹きがトランプ大統領・・大統領だったという、とんでもない事件ですけども!言ったら本当にやっちゃったっていうね、すごい事になってますけどね。
だからね、思ったのは、やっぱり真面目に一生懸命やろうとする事も、ほどほどにしておいた方がいいなと思いましたね。本当に不真面目なやつは悪い事も不真面目だから、あんまりそれも真剣にしないっていう事がよくわかるんですよ。
(山里亮太)
なるほど!
(赤江珠緒)
そういう事かぁ。
(町山智浩)
そう。そういう事も込みでね、この映画はね、色々と青春映画として切なく悲しい・・でも、おかしくて。でも残酷で背筋が凍るような映画ですね。実話ですけども。
(赤江珠緒)
実話なんですもんね。これがねぇ。。
非常にいい映画
(町山智浩)
で、常にユーモアがずっとある所もなんかいい感じなんですよ。だからね、まぁ残酷シーンだけ目をつぶれば、非常にいい映画なので、ぜひご覧ください!
(赤江珠緒)
はい、わかりました。
今日、ご紹介頂いたのは、『ロード・オブ・カオス』。シネマート新宿ほかで、すでに公開中でございます。そうなんだ・・なんかね・・。
(山里亮太)
自分達の中にもあるかもしれないものが、ここに・・。
(赤江珠緒)
人間心理ですね、本当ですね。
(町山智浩)
懐かしかったです。はい。
(山里亮太)
懐かしい・・?(笑)
(赤江珠緒)
はい!町山さん、ありがとうございました!
(山里亮太)
ありした!
(町山智浩)
どもでした!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
③ブラックメタルとは、デスメタルの向こう側
④ブラックメタルの発祥は実は北欧