イン・ザ・ハイツの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『イン・ザ・ハイツ』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『イン・ザ・ハイツ』解説レビューの概要
①『イン・ザ・ハイツ』はミュージカル映画
②ハイツ(Heights)の意味は・・
③バリオは、中南米系の人達が集まっている地域の事
④リン=マニュエル・ミランダが『ハミルトン』を作る前に作ったミュージカルが『イン・ザ・ハイツ』
⑤『イン・ザ・ハイツ』が画期的なのは、殆ど描かれないラテン系の人々の生活を描いた点
⑥ラテン系の人達の現実を最初に描いたミュージカル『ウエスト・サイド物語』
⑦主人公の名前ウスナビは○○○○から来ている
⑧家賃がどんどん値上がりして、ラテン系の人達が住めなくなる
⑨市民権を与えるドリーム法案を○○○○が停止した
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
ミュージカル映画『イン・ザ・ハイツ』
(町山智浩)
今日はミュージカル映画で、まぁすごくアメリカでヒットしてる映画の事を紹介します。日本では7月30日公開の映画で、『イン・ザ・ハイツ』という映画なんですけども、これがね。アメリカの事がわからないとちょっとわからない所何ヶ所かあるんでその説明をね、していきたいんですけど。
(山里亮太)
はい!
(町山智浩)
じゃまずね、ちょっと曲をね、聞いて頂きたいと思います。はい。『In the Heights』です。
〜音楽〜
(町山智浩)
はい。これ、聞いて、どういう曲だと思いました?
(赤江珠緒)
ん〜。なんかノリのいい、ね。ちょっと踊りだしたくなるよな。
(山里亮太)
パーティーとかしたいような。
ハイツ(Heights)の意味は・・
(町山智浩)
ラテンですよ。ラテンのリズムなんですけど、はい。これ、『イン・ザ・ハイツ』の「ハイツ」と言うのはですね、ワシントンハイツというニューヨークのマンハッタン島の1番北の端っこの、西側にある地域の事を言ってるんですね。で、ここはね、そのラティーノの人達、ラティーナの人達、ラテン系の人達の集まっている所なんですよ。だから、プエルトリコ系の人とかドミニカとかですね、キューバとか、そういったところ出身の人達が集まっている所で、こういう所をね、”バリオ”っていうんですね。
(山里亮太)
バリオ。うん。
バリオは、中南米系の人達が集まっている地域の事
(町山智浩)
バリオっていうのは中南米系の人達が集まっている地域のことをバリオって言うんですよ。で、そこが舞台のミュージカルなんですね。これはブロードウェイミュージカルの、最高峰のトニー賞も受賞したミュージカルで、2005年に初演されてからですね、ずっと続いているものなんですけども。で、これ作った人はですね、リン=マニュエル・ミランダという人なんですが。この人は前にたまむすびでも紹介した、『ハミルトン』というミュージカルありましたね。
(山里亮太)
はい!
ミュージカルを作ったリン=マニュエル・ミランダは、『ハミルトン』というミュージカルも担当
(町山智浩)
アメリカの基礎を作った、政治家のハミルトンを主人公にしたミュージカルを作って国民的な大ヒットになったんですよ、アメリカでは。それの、脚本・作詞・作曲・主演をこなした人なんですね、このリン=マニュエル・ミランダって人は。
(赤江珠緒)
へえ〜!
(町山智浩)
で、この人がなんと25歳の時に作ったミュージカルが、『イン・ザ・ハイツ』なんですよ。
(赤江珠緒)
あっ、そうなんですね。もっと前に作ってたんだ、うん。
(町山智浩)
そうなんです。前に作っていたんです。で、この人自身がそのワシントンハイツで生まれ育った、プエルトリコ系の人なんですよ。で、自分の周りにある日常を描いたのが、『イン・ザ・ハイツ』なんですね。はい。で、これがすごく画期的だったのは、そのラテン系の人々の生活ってアメリカでも殆ど描かれないんですよ。
(赤江珠緒)
ふ〜〜ん、そうなんだ。
『イン・ザ・ハイツ』の画期的な点
(町山智浩)
だから例えばアメリカ映画見ると、その出てくるのは、まぁ黒人の人は結構出てきますよね?
(赤江珠緒)
結構そうですね、出てきますね。うん。
(町山智浩)
で、白人の人じゃないですか。で終わりでしょう?
(山里亮太)確かに。
(赤江珠緒)
まぁそうか。メキ・・う〜んそうね。
あまり描かれないラテン系の人達のドラマ
(町山智浩)
メキシコの系の人、プエルトリコ系の人、そういった人達が主人公のドラマとかミュージカルとか映画っていうのは、あんまりないっていうか殆どないんですよ。で、これは、その人達だけのドラマなんです。
(山里亮太)
えー!
(町山智浩)
あの〜、まぁいわゆるその白人後継者と言われてるアイルランド、イギリス、ドイツ系の人達は、セリフないです。
(山里亮太)
ええっ。
(赤江珠緒)
ふーん!うん!
(町山智浩)
出てこないです。イタリアも出てこないです。はい。みんな、中南米出身と、アフリカ系の人が1人出てくるんですけれども、その点ですごく画期的だったんですよ。
(赤江珠緒)
ふう〜ん!
(町山智浩)
で、ふーんっていう感じなんですけど、どうしてそれが画期的なのかと言うと、そういう人達に仕事を与える事だからです。
ラテン系の人達に仕事を与えたから画期的
(赤江珠緒)
あ〜〜、そうね。
(山里亮太)
そっかそっか。。
(町山智浩)
そういう物が作られないと、その人達は仕事がないんですよ。だから自分達で自ら作った仕事なんですね。それと、実際にはものすごくニューヨークに一杯いるんですけども、ものすごいいるのに、全然ドラマの主役にならないっていうのもおかしいですよね?
(赤江珠緒)
そうですね、うん。
(山里亮太)
確かに。
(町山智浩)
で、こういったそのプエルトリコ系の人達の、現実を最初に描いたミュージカルは、1957年に初演されて、61年に映画化された、『ウエスト・サイド物語』が最初だったんです。これはご覧になってますよね?
(赤江珠緒)
はい。
ラテン系の人達の現実を最初に描いたミュージカル『ウエスト・サイド物語』
(町山智浩)
はい。あれはね、プエルトリコ系の不良グループと、ボーランド系の不良グループの抗争を描いた話なんですね。で舞台は、ヘルズキッチンという所があってですね、ヘルズキッチンって言うのはね、ニューヨークってものすごい人が住んでるじゃないですか。あれの食料を全部、そのなんて言うか・・調達していくその青物市場とか、魚市場とか、その卸ね。だから日本にも、東京にも・・だから秋葉原がそうだったでしょ?あとは、築地がそうだったじゃないですか。それが1ヶ所に集まってるのがヘルズキッチンなんですよ。魚とか肉とか野菜の卸が全部。で、あまりにもそこにいるのが貧しいイタリア系移民とか、貧しい移民の人達が一杯いたんで、”ヘルズキッチン”って地獄の台所と呼ばれてた所なんですけど。そこで『ウエスト・サイド物語』が始まるから、最初にほら、果物を売ってる所に行って、りんごかなんかを取ったりするじゃないですか。あれは卸なんですよ。
(赤江珠緒)
あぁそうね、うん。
ヘルズキッチン、地獄の台所
(町山智浩)
そういう物を初めてハリウッド映画が描いたのが『ウエスト・サイド物語』だったんですけども。じゃその後そういうのがあるかと言うと、全然ないんですよ。あんまりないんですよ。
(赤江珠緒)
大分前ですもんね、そうね。1950・・。
(町山智浩)
そう。60年ぐらい、あんまりちゃんとしたのがなくて、やっとできたのが『イン・ザ・ハイツ』なんですね。
(赤江珠緒)
あー・・。
(町山智浩)
だからすごく画期的だったんですけど、これを見るとその60年経って『ウエスト・サイド物語』と現在とどう変わってるのか。であと、逆に何も変わってないのかっていう所を色々見ると面白いんで。是非比べて欲しいんですけど。
で、『イン・ザ・ハイツ』の、話を説明していきますと、主人公はウスナビという変わった名前の人なんですけど。若者で。若者というか30ぐらいですね。で、ボデガという所の経営者なんですけど、ボデガっていうのはコンビニです。スペイン語の。で、ウスナビはドミニカ出身の父親を持っていて、父がアメリカに移民した日に見た船に、書かれてた文字が名前になったんですね、ウスナビっていう名前に。
(赤江珠緒)
えっ。文字に”ウスナビ”って書いてあったから?ほぉ〜。
主人公の名前ウスナビは『US NAVY』から来ている
(町山智浩)
それはね、「US NAVY」って船に書いてあったんですよ。
(赤江珠緒)
あ〜〜〜!!
(町山智浩)
「アメリカ海軍」って書いてあったんですけど、それをスペイン語的に発音すると”ウスナビ”になるんですよ。
(赤江珠緒)
あー!
(町山智浩)
そう。で、そのぐらいアメリカに憧れた父親によって、そのまぁ移民して、そこで生まれたのが主人公ウスナビなんですけど、彼はコンビニで働いて、まぁ・・大変なんですね、生活がね。はい。で、これね、その店開きをする所から始まって、シャッターを開けてコーヒーを淹れてですね、そこにまぁ、周りに住んでいるヒスパニックの人達の朝の準備が色々描かれるんですけど。で、多くの人達がまぁ・・低賃金労働者なんですよ。
(赤江珠緒)
うんうん。
多くの人達が低賃金労働者
(町山智浩)
で、踊りながらその準備をするんですけど、例えば建設現場の作業員であったり、ビルの清掃であったり、レストランのシェフだったり店員だったり、あと縫製工場、服を作る所ですね。で働いたり、あとはネイルサロン。あとメイドさんですね。
(山里亮太)
へぇ。。
(町山智浩)
えぇとね、マンハッタンの真ん中にセントラルパークってあるじゃないですか。
(赤江珠緒)
はい。
(町山智浩)
あそこに行くとね、乳母車を押してる人達が一杯いるんですよ。
(赤江珠緒)
あ〜うんうんうん。
(町山智浩)
殆どが中南米系の人か、黒人なんですよね。でも乳母車に乗ってるのは、青い目に金髪の白人なんですよ。まぁ彼らは自分で子育てしないで、そういう人達に任せているんですね。
(赤江珠緒)
あ〜そっかぁ。。うんうんうん。
(町山智浩)
で、あとは病院の看護師さんとか、だからヒスパニック系の人達はコロナになった時にニューヨークで死亡者が多かったんですよ。エッセンシャルワーカーで、休めなかったから。
(山里亮太)
なるほど・・。
ヒスパニック系の人達はコロナの時に死亡者が多かった
(町山智浩)
だからすごい死亡者が多かったんですけど。そういう人達の生活が描かれて、でまぁ1日が始まるんだけど、とにかくこのワシントンハイツでは何もかもが高くなって大変だ!って言うんですよ。
(赤江珠緒)
高くなってるのは・・?うん。
(町山智浩)
歌の中で。というのは、今まぁアメリカどこも大都市そうなんですけども、とにかく年収数千万円の金融関係者とかIT関係者が、大都市に集中して住んで、彼らの給料がどんどん上がるから、アパートの家賃がどんどん上がってってるんですよ。アパートとか不動産がね。
(山里亮太)
なるほど。
(赤江珠緒)
はいはい。
家賃がどんどん上がってしまっている
(町山智浩)
で、さっき言った『ウエスト・サイド物語』の舞台だったヘルズキッチンっていう所は昔は貧しい移民達が集まってた所なんですけど、今は家賃が月に30万円以上なんですよ。
(山里亮太)
ええっ!?
(赤江珠緒)
うわぁ・・高いですね。。。
(町山智浩)
高いです。大変な事になってるんで、このワシントンハイツにもその波が押し寄せて来て。家賃とかが高くなって、そのラティーノの人達が住めなくなってるっていう状態から始まるんですよ。
(赤江珠緒)
うーん!
家賃が上がりラテン系の人達が住めなくなる所から始まる
(町山智浩)
で、このままだとこのラティーノのコミュニティもなくなっちゃうんじゃないかっていうセリフが出てくるんですね。で、ウスナビはもうこれ大変だから、この店の権利を、コンビニの権利を売っちゃって、安くて生活が楽で南国で暖かいドミニカに引っ越したいと思ってるんですよ。
(赤江珠緒)
まぁね。そんなに家賃が上がってたらね。うんうん。
(町山智浩)
そう。でドミニカに引っ越す事を夢見てるんですけど。この『イン・ザ・ハイツ』ってのは主人公達はみんな色んな夢を見てるんですね。で、このウスナビが好きな女の子がいて。彼女はヘアサロンで働いてるんですけど、そのヘアサロンも家賃が高くなっちゃったんでもうここを出なきゃなんないっていう状態になっているんですが。それはヴァネッサっていう子なんですけども、この子の歌をちょっと聞いてもらえますか?はい。
〜音楽〜
ラテン系の人達に対する差別
(町山智浩)
はい。すごくノリノリの曲なんですけど、彼女はねファッションデザイナーになりたくて。で、その夢を叶える為に、バリオっていうそのハイツを出て。マンハッタンの中心部のすごくお洒落な所に引っ越したいんですね。で、一杯その不動産に申し込みするですけれども、これ日本と違ってアメリカは、申し込んだ人全員を見て、見比べて、大家が「この人がいい」って人に貸すっていうシステムなんですよ。
(山里亮太)
うわぁ。。
(町山智浩)
だから、ヒスパニックだから借りられないんですよ。
(赤江珠緒)
あ〜そうなんだ。じゃお金があったとしても・・借りられない?
(町山智浩)
お金もあんまりないんですが、あったとしても白人優先なんですよ。で職業とかも見ますよ全部。だからそういうのは差別しちゃいけないっていう事になってるんですけど、実際はあるんですよね。で、そういったそれぞれがね、色々夢を持ってるんだけども、色々と壁にぶつかっている状態で。でもう1人ですね、ニーナという女の子が出てくるんですけども、これニーナの歌も聞いてもらえますか?
〜音楽〜
(町山智浩)
はい。これね、ちょっと寂しい歌い方なんで。これね、ニーナという子は、そのハイツのタクシー会社の娘なんですけれども、ものすごく勉強ができて。それでカリフォルニアの名門私立大学のスタンフォードに進むんですね。ところがですね、帰って来ちゃうんですよ、そのハイツに。
(赤江珠緒)
あら!せっかく入ったのに、スタンフォードに。
(町山智浩)
そう。せっかく入ったのに。どうしてかって言うと、まぁラティーノはあんまりいないんですね、スタンフォードはやっぱり。で、やっぱり差別があったんですよ、そこで。そのヒスパニックに対する差別があって、例えば物がなくなったりすると、あの子が盗んだんじゃないかっていう風に言われるんですね。
(山里亮太)
うわぁ。。
勉強が出来ても、差別に合い夢を叶えられない
(町山智浩)
あと、レストランとかに行くと、ウェイトレスと間違われたりするんですよ。で、そういう差別に心が折れちゃって・・。
(赤江珠緒)
つらいよねぇ。。
(町山智浩)
そう。大学を途中でドロップアウトしちゃって、元々ヒスパニックの人達が一杯いる故郷に帰ってくるんですね。で、彼女は逆に夢がちょっと挫けちゃったんですよ。で、そういった物が描かれていくんですけど・・。あとね、そのウスナビのコンビニで働いてるソニーっていう少年がいるんですけど。彼はすごくやっぱり勉強ができて、政治家とかになって、そのヒスパニックの貧しい子供達を何とか救えないかという事を夢見てるんですけど・・。でも彼は、その為に大学に行かなきゃいけないんだけど、大学に行けないんですよ。どうしてかって言うと、幼い頃に・・幼少期に親に連れられてアメリカに不法入国したからなんですよ。
(山里亮太)
あ〜〜っ・・。
(町山智浩)
で、市民権がないんですよ彼には。ソニーには。で、本人には責任がないから。つまり不法入国した事は、親に連れられてるから本人の意思じゃないからって事で、彼らになんとか市民権を与えようっていう動きがあったんですね。で彼らはなんて言うか、アメリカ以外知らない訳ですから。
(赤江珠緒)
うんうん、そうですよね。そこで育ってるからね。
市民権を与えるドリーム法案をトランプが停止した
(山里亮太)
アメリカで殆ど生まれたような物ですから。で彼らに市民権を与える”ドリーム法案”という物をオバマ大統領が署名したんですけれども、2016年に大統領になったトランプはそれを停止したんですよ。
(赤江珠緒)
もう、ことごとくオバマ政権がやった事を覆しましたもんね。
(町山智浩)
そうなんです。それで彼らを国に送り返すという方針を取ったんですね。で、行った事もない母国に送り返されちゃうんですよ。
(山里亮太)
あっ・・そうか・・。
(町山智浩)
下手すると英語しかできないんですよ、彼らは。だから酷い事をトランプ大統領はやったんですけども、その時にこの『イン・ザ・ハイツ』っていうのはブロードウェイでずっと上演されてたんですよね。だからそういうメッセージがあったんですけど。まぁバイデン大統領になってまた、その決定が取り消されましたけどね。(笑)
(赤江珠緒)
あぁ、そっか。。
(町山智浩)
そういった形で非常にリアルなね、それぞれのそのハイツに住んでる人達の夢が描かれていくんですけども。でね、これね『ウエスト・サイド物語』と見比べるとね、やっぱりあんまり変わってないんですよ。
『ウエスト・サイド物語』からあまり変わってない
(赤江珠緒)
ふ〜ん。
(町山智浩)
『ウエスト・サイド物語』の中で1番強烈なのは『America』っていう曲なんですけど、ちょっと聞いてもらえますか?はい。
〜音楽〜
(町山智浩)
はい。これはプエルトリコ系の、女性チームと男性チームが、アメリカに来てよかったわって言うと、何がいいんだって男性が言い返すっていう掛け合いになってるんですね。で、アメリカに行けば夢は叶うって言うと、それは白人だけだよとか言われるんですよ。何しても自由だ!とか言うんですけど、家賃が高くてって言うんですけど、あんまり変わってないんですよ60年経って。状況が。そういう厳しいものもねちゃんと描いてて。でもね、曲は楽しいんですよ。その、あらゆるラテン系の音楽が中に盛り込まれてるんで、この『イン・ザ・ハイツ』は。キューバのサルサとか、ドミニカのメレンゲとか、ブラジルのサンバとか、あとはラップとかR&Bとか、色んな物がそのゴッチャになってて、それはこのハイツでしかないんですよ。つまりそれぞれの国バラバラだからそれぞれの国に行ったらそれぞれの音楽しかないんですよね。でもこの、アメリカにはその音楽全部混じって、こうミックスされてる状態っていうのが『イン・ザ・ハイツ』でわかるんですね。その独特の・・ハイツ独特の文化と音楽があるんですよ。
アブエラと呼ばれる老婦人
でね、このハイツの中で最もね、もう感動的ですごいのは、みんなからおばちゃん、”アブエラ”って呼ばれてる、キューバ系の老婦人がですね、朦朧とした意識の中で自分が何十年も・・それこそ50年、60年苦労してきた思い出を思い出していく歌があるんですけど、それ、ちょっとかけてもらえますか?
〜音楽〜
(町山智浩)
この歌がね、ものすごい感動的なんですけど。お母さんも私も、子供の頃からずーっと働いてきて人の家のメイドをやって、ご飯を作ったり子供を育てたり、その掃除したりとか、ずーっとして、そのまま来ちゃって何も夢は掴めなかったっていう歌なんですよ。でもう、疲れたから、天国に行こうっていう歌なんですけど。これを切々と歌う所は本当にね、涙なくしては見れない所なんですよね。でこの『イン・ザ・ハイツ』を作ったのが、映画の監督がね、この人はね『クレイジー・リッチ!』っていう中国人だけの、アジア人だけのハリウッド映画で大成功したジョン・M・チュウっていう人なんですよね。
(赤江珠緒)
うんうんうん。
監督は中国人のジョン・M・チュウ
(町山智浩)
中国人なんですこの人は。これがすごいのは、そのアメリカのマイノリティーのパワーがね、本当にねハリウッド映画の中で非常に少ないんですけども、実現したっていう感じになってますね。
(赤江珠緒)
そうですね、最近そういう映画をね、よく紹介してもらってますもんね、町山さんからもね。
(町山智浩)
はい。だもう、今ね、ハリウッドはもう大スターは本当にトム・クルーズしかいないですからね!(笑)
(赤江珠緒)
ははは。(笑)そうか、えぇ?
スターの時代は終わった
(町山智浩)
そう。今はもうスターの時代じゃなくて、そういった日の当たらなかった人達。と、アメコミヒーローの時代になってますけどね。(笑)
(赤江珠緒)
あーーーー。(笑)なる・・なんかそう言われるとそうか、変わってきてますもんね。60年前か。ほぼ60年前の『ウエスト・サイド物語』と実は殆ど変わってない、根本的な部分は。
(町山智浩)
そう。変わってない事もあれば、でもこれがまた映画になった事で変わってる事もあるんですよね。
(赤江珠緒)
日本でもね、ミュージカルでずっと再演されてますもんね。ウエストサイドストーリー。
(町山智浩)
そうですね。もう既に人気のあるミュージカルなんですけどね。
(赤江珠緒)
これも?これも?あっこれも日本で上映されている・・。
(町山智浩)
はい。日本人スタッフで・・キャストでやってますよね。『イン・ザ・ハイツ』もね。
(赤江珠緒)
あっ。そうですか。
(町山智浩)
はい。そうです。『イン・ザ・ハイツ』公開は7月30日からです。
(赤江珠緒)
はい。日本人キャストで日本でも上映されているという事で、映画自体は7月30日の全国公開でございます。
(町山智浩)
はい!
(赤江珠緒)
町山さんが言うようにね、曲がまたね。
(町山智浩)
すごくいいですよ!
(赤江珠緒)
良さそうですね。はい。町山さん、ありがとうございました!
(山里亮太)
ありした!
(町山智浩)
どうもでした!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
②ハイツの意味は、ニューヨークの地域の事。ラテン系の人達が集まっている場所で、バリオという。
⑦主人公の名前ウスナビは『US NAVY』から来ている
⑨市民権を与えるドリーム法案をトランプが停止した