ブラック・ウィドウの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『ブラック・ウィドウ』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『ブラック・ウィドウ』解説レビューの概要
①『ブラック・ウィドウ』日本では劇場であまり公開されていない
②劇場公開と配信開始が同時だった為、劇場側が怒った事が理由
③配信は劇場の客を減らさないのでは。なぜなら・・○○○○
④大傑作!アベンジャーズに興味がない人も見た方がいい!前勉強は不要!
⑤時間軸、時系列はシビル・ウォーとエンドゲームの間
⑥主人公はロシアのスパイで、アメリカの機密を盗む為に偽装家族としてアメリカに潜入
⑦ロシア政府が世界中から色んな人種の少女を拉致、誘拐し殺人マシーンに育て上げ、そのグループをブラック・ウィドウ部隊と言う。
⑧ホームドラマのような、ほのぼのとした展開も。
⑨ブラック・ウィドウはみんな子宮を摘出されている
⑩ブラック・ウィドウのボス、ドレイコフ将軍には実在するモデルが
⑪ハーヴェイ・ワインスタイン事件等の、性犯罪スキャンダルについての問題提起
⑫『アベンジャーズ』シリーズの監督だったジョス・ウェドンも性犯罪スキャンダルを起こしていて、内部告発的な内容になっている
⑬『ブラック・ウィドウ』監督のケイト・ショートランド監督は、デビュー作から一貫してこの女性の洗脳と、そこからの解放とか自立っていうのを描いてきた人
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『ブラック・ウィドウ』町山さんの解説
(町山智浩)
今日はですね。もう先週からもう公開されている、『ブラック・ウィドウ』というマーベルコミックスの『アベンジャーズ』シリーズのキャラクターのソロ作品についてお話ししたいんですが。
これがまたね色々トラブルがあってね、日本では劇場であんまり公開されてないんですよ。
(山里亮太)
あっ、そうなんですか?
(町山智浩)
なんと『アベンジャーズ』シリーズなのに!
(山里亮太)
えぇっ?なんでなんでしょう?
『ブラック・ウィドウ』日本では劇場であまり公開されていない
(町山智浩)
これね、マーベルはディズニーが公開してるんですね。ディズニーが配給してるんですね、作って。子会社なんで、マーベルはね、ディズニーの。ディズニーってね、このコロナになってから配信を強化していったんですよ。
(山里亮太)
はいはいはい。
(町山智浩)
ディズニープラスっていう形で。で『ムーラン』を配信したりね、『ソウルフル・ワールド』を配信したりしてたんですけども。で今回の『ブラック・ウィドウ』に関しても配信と、劇場公演が同時なんですが。劇場の人達は怒っちゃったんですね。要するに商売敵だから。
(赤江珠緒)
あー・・。うん。
(町山智浩)
”配信したら客が来ない”っていう事で怒って、劇場側があんまり今回『ブラック・ウィドウ』を公開してくれなかったんですよ。
(山里亮太)
えーー!!
(赤江珠緒)
そうなんですか!
映画館と配信、解決の道を探って欲しい
(町山智浩)
はい。で、これはね、僕はね、これから映画館は配信と共存していかなければならないので、解決の道を探ってほしいと思います。
(赤江珠緒)
ふーん!
配信は劇場の客を減らさないのでは。なぜなら・・
(町山智浩)
で、僕自身は配信と・・配信は劇場の客を減らさないと思ってるんですよ。こういった作品は。っていうのはね『ブラック・ウィドウ』は映画館で見ないと全く意味がない作品です。
(赤江珠緒)
あぁそうなんだ!やっぱり映画館で見たいっていう映画ってあるもんね。
(町山智浩)
はい。これはハッキリ言うと『007』みたいな映画なので、大スパイアクションなんですよ。で、ものすごい大破壊シーン、カーチェイスで。スケールのでかいシーンが次々と連続するので、これは大スクリーンで見ないと意味がないんですよ!だからちゃんと配信があっても、こういう映画が見たいという人は劇場に行くんで、劇場のお客さんは食わないと思います。だから劇場で普通に公開すれば良かったと思うんですが。
(赤江珠緒)
そうねぇ、うん。
大スパイ・アクション、劇場で見ないと意味がない!
(町山智浩)
まぁ商売敵だ!っていう事で怒っている劇場さんもあってですね。ただこれはもう解決に向かってほしいと僕は思ってます!はい。という事でね、この『ブラック・ウィドウ』。大傑作でした!!
(山里亮太)
おわ〜〜〜!
(赤江珠緒)
おっ!すごい!町山さん!太鼓判!
『ブラック・ウィドウ』大傑作でした!!
(町山智浩)
もう、これ、すごいよかったです!これね、マーベルの映画でスーパーヒーロー物だから、アメコミだし関係ねぇやと思ってる人も見た方がいいです。特に女性は見た方がいいです。
(赤江珠緒)
あっ・・なんかそういう人からするとちょっと遠い映画だもんね。
(山里亮太)
そうね、マーベルの映画ってね。
(町山智浩)
娘さんのいるお母さんとかも一緒に行っていいと思います。家族連れで行っていいと思います。
(赤江珠緒)
あ、そうですか。
事前に見ておいた方が良い映画は・・?
(山里亮太)
これ前後でなんか見ておいた方がいいとか・・これだけ?でも大丈夫なんですか?
(町山智浩)
これだけ行っても大丈夫です。マーベルに全く興味がない人も大丈夫です。これね、『007』の映画に近いんですよ。スパイアクションなんですが、もっと大きな事を語ろうとしている映画なんですね。で、ブラック・ウィドウというキャラクターについて説明すると、スカーレット・ヨハンソンっていう・・まぁ『マリッジ・ストーリー』が素晴らしかった女優さんですね。まぁ離婚のね、話をもう本当にまぁ素晴らしい演技で演じた彼女が、黒いつなぎを着たですね、峰不二子系のキャラをやってるんですが。彼女はですね、『アベンジャーズ』シリーズの『シビル・ウォー』っていうのと、その次の『エンドゲーム』の間に何をしていたかっていう事を描いているのが今回の映画なんですね。今、主題歌が流れていますけども。はい。
時間軸、時系列はシビル・ウォーとエンドゲームの間
(町山智浩)
実は、その間に家族と再会していたんですよ。里帰りをしていたという話なんですね。でも彼女の家族はロシアのスパイなんです。そもそもね、ブラック・ウィドウというのは本名はナターシャと言いまして、彼女はソ連のKGBのスパイなんですよ。原作の漫画ではね。だから最初は悪役だったんですよ。でも、その後ですね、アメリカの象徴であるキャプテン・アメリカとチームを組むようになったんですが、その理由も今回の映画で出てくるんですね。
で、今回は1995年のアメリカの田舎のオハイオっていう所から始まるんですよ。その頃ブラック・ウィドウ・・ナターシャは12,3歳なんですけども。両親と6歳の妹、エレーナと一緒にアメリカに暮らしてるんです。
で、それは、彼女は、”スリーパー”というものなんですよ。
彼女はスリーパー
(山里亮太)
スリーパー?
(町山智浩)
つまりロシアのスパイなんだけれども、アメリカの機密を盗む為にアメリカ人としてアメリカに潜入している家族・・というか家族のフリをしているスパイ達なんですね。
(赤江珠緒)
あっ、じゃぁもう偽装家族をしているんですね?
(町山智浩)
そうそう、偽装家族なんですよ。はい。で、これはね、『ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ』という同様の内容のテレビドラマがありまして日本でも見れたんですけども。それにかなりヒントを得てるんですね。それが、ソ連のスパイの・・アメリカに潜入しているソ連のスパイのホームドラマだったんですね。
(赤江珠緒)
うん、うん。
(山里亮太)
ホームドラマ・・?
(町山智浩)
で、このナターシャの一家も血が繋がってないんですけども家族を演じていて。で、そのお母さんをですね、レイチェル・ワイズっていう人が演じてるんですが、ちなみにジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグの実生活での奥さんになる人なんですけども。
ブラック・ウィドウ部隊とは
(町山智浩)
このお母さんが元々ブラック・ウィドウ部隊の出身者なんですよ。ブラック・ウィドウっていうのは部隊名なんですね、実際には。で、ロシア政府が世界中から色んな人種の少女を拉致、誘拐してきて。レッドルームという名の養成所でですね、殺人術を教えて、殺人マシーンに育て上げて、そのグループをブラック・ウィドウ部隊っていうんですよ。
(山里亮太)
なるほど。
(町山智浩)
これはね、2002年頃に公開された香港映画で『レディ・ウェポン』という映画があるんですが、それも殆ど同じ話なんですけども。で、早い話がですね、美少女殺人部隊なんですよ。だから、「殺しのAKB」と呼んでるんですけども。(笑)個人的に。
(赤江珠緒)
はははは。(笑)
ブラック・ウィドウ=美少女殺人部隊=殺しのAKB
(町山智浩)
「キラー坂道系」とか呼んでるんですけども。(笑)そういうものなんですね。で、ナターシャも拐われてきてブラック・ウィドウで育てられたんですけども。この今回の映画では同じく、その妹もブラック・ウィドウにされちゃって。エレーナも。で妹と組んで、悪の養成組織レッドルームを倒して、他のウィドウちゃん達を助けようとする話なんですね。
(山里亮太)
おーー、なるほど。
洗脳され奴隷になる少女たち
(町山智浩)
で彼女達は、そのレッドルームのボスのドレイコフ将軍に洗脳されて奴隷になってるんですよ。マインドコントロールされて殺人をやらされてるんでね。で20年ぶりに妹・エレーナと再会をするんですが。いきなりエレーナはボコボコにナターシャお姉ちゃんに格闘で立ち向かってくるんですよ。
何故かっていうと、お姉ちゃんをものすごく恨んでるんですね。お姉ちゃんは、ブラック・ウィドウとしてアベンジャーズチームに入って世界のヒーローになってるじゃないですか。でも私は全然ほっとかれて、人殺し続けてて、おかしいじゃんって言って怒ってるんですよ。
(赤江珠緒)
あらぁ・・うんうん。
(町山智浩)
「マジムカつく!」とか言ってるんですよ。で、このエレーナを演じるのはフローレンス・ピューっていう女優さんなんですが。
彼女はね、『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』っていう映画でも妹役で。で、お姉ちゃんと取っ組み合いしてたんですけど。その前に出たね『ファイティング・ファミリー』っていうプロレス一家の映画でも妹役で。やっぱり家族と取っ組み合いをしてて、妹役、3本連続っていう人なんですよ。(笑)
(山里亮太)
はははは。(笑)
(町山智浩)
妹女優と言われてますが。でね、色々ねお姉ちゃんが嫌いでね、例えば「お姉ちゃんはね、ブラック・ウィドウとか言ってアベンジャーズに出てる時、必ず着地する時、両足開いて、片手ついて着地するでしょ。」って言うんですね。
(赤江珠緒)
ははは。あぁ3点着地みたいなやつね。(笑)
(町山智浩)
そうそう3点着地って言われているやつですね。日本のアニメで『攻殻機動隊』で草薙素子がやってからアメリカ映画でもヒーローが着地する時みんな3点着地するんですけども。「あれ、すげえムカつくの!」って言うんですよ、エレーナは。「あれ全然意味ないでしょ?」と。「ただのかっこつけじゃん!」とか言って、めちゃくちゃ因縁つけてくるんですね、この妹が。
(山里亮太)
ちょっとおもしろい。(笑)そういうおもしろ要素も。。
(町山智浩)
あのね、この映画はね、コメディなんですよ。
(山里亮太)
はーー!!でも今の感じそうですよね!
この映画はね、コメディなんです
(町山智浩)
でね、お父さんがいる訳ですよ、偽装家族の。そのお父さんを見つけるんですね。レッドルームを倒す為にこの姉妹がね。するとお父さんはね、このナターシャとエレーナにね、20年ぶりに会ってね、「お父さん本当に嬉しいぞ!お前達は人殺しをたくさんしたな!」って言うんですよ。(笑)「偉い!それでこそ!俺の娘だ!」とか言ってめちゃくちゃ褒めるんですけど、そういうトンチンカンなお父さんなんですね。
(赤江珠緒)
はぁ〜!
(町山智浩)
それで今度お母さんにも会うんですけど。で20年ぶりに4人でね、食卓を囲んでね、家族団らんするんですよ。
(赤江珠緒)
本当の家族じゃないけどね、その偽装家族で。
ホームドラマのような展開
(町山智浩)
そうそう、ブラック・ウィドウ一家がね。でも本当の家族じゃないんだけどね、ご飯を食べ始めるとね、お母さんはね、「ナターシャ!あなたね、猫背になってるよ!」って言うんですよ。
(赤江珠緒)
はっはっはっは!(笑)えーー!
(町山智浩)
するとナターシャはね、「なってないよー!」とか言うんですよ。するとお父ちゃんはね、「コラ!ナターシャ!お母さんに口ごたえするな!」とか言うんですよ。
(赤江珠緒)
すごいホームドラマ!(笑)すごい、よくある日常の。(笑)
(町山智浩)
そう!この人達ね人殺しなんですけど。ロシアの殺人マシーンなんですけど。もうすっごく普通の家族みたいなんですよ。「うるさいなぁお父さん!」とか言って。なんかね、『サザエさん』みたいなんですよ。
『サザエさん』のよう?
(赤江珠緒)
ははははは、そうね。(笑)
(山里亮太)
実は殺し屋の・・(笑)
(町山智浩)
なんかね・・そう!「殺しの磯野家」って言われてるんですね。(笑)
(赤江珠緒)
いや言われてないでしょ。(笑)
(町山智浩)
もうね、すごいですよ。”波平、クレムリンで叱られる”とかね、そういうエピソードがありそうな感じなんですね。”タラちゃん、キューバ危機”みたいなね。そういう回がありそうでね。タラちゃんがイクラちゃんを背中合わせに背負ってね、回転しながら2人で二丁拳銃撃ちまくったりするような感じなんですね。「デチュー!」とか言いながらバンバン殺すんですけどね、タラちゃんがね。(笑)まぁいいや、そういう映画になってるんですよ今回。いや、なってないですが。(笑)
『ブラック・ウィドウ』怖い話も
(町山智浩)
これね、でもね、すごくほのぼのしたホームコメディなんですけど、怖い話もあって。娘が冷たくするんで、このお父ちゃんが拗ねてね。「うーん、なんか機嫌悪いなお前ら。生理か?」とか言うんですね。そういうセクハラな事を言う親父なんですよ。するとエレーナはね、「私達には生理なんかないわよ。ブラック・ウィドウはみんな子宮を摘出されてるんだから。」って言うんですよ。
(赤江珠緒)
うーわ・・。
(町山智浩)
これ怖いんですけど、原作のコミックの方にはその描写があるんですね。
でこれ、ブラック・ウィドウは殺人術をやってるだけじゃなくて、基本的に”くノ一”なんで。諜報活動とか暗殺をするのにセックスを使ってるんですね恐らく。で、その為に妊娠しないようにしてるんですよ。で元々、そのブラック・ウィドウっていう名前は、”クロゴケグモ”という蜘蛛がありまして。それが交尾した後に、メスがオスを食い殺すんですよ。それから名付けられてるんで、恐らくセックスして殺すみたいな事をしてる人達なんですね。で、結構恐ろしい組織なんですよね。
(赤江珠緒)
完全にね、暗殺集団ですね。
ブラック・ウィドウのボス、ドレイコフ将軍には実在するモデルが
(町山智浩)
そうなんです。ただこの・・ボスがいるんですね、そのドレイコフ将軍という少女達を操っている男がいるんですけども。マインドコントロールしてね。これがね明らかに、実際にアメリカでそういう事をしていた人達をモデルにしてるんですよ。
(赤江珠緒)
んっ?
(町山智浩)
っていうのは、ハーヴェイ・ワインスタイン事件っていうのがあったんですよね、アメリカで。
(赤江珠緒)
うん!うん!うん!うん!
ハーヴェイ・ワインスタイン事件
(町山智浩)
その・・女優にね、「映画に出してやるから。」って言って、非常に性的な要求をしていたプロデューサーですけど。あとね、FOXニュースというテレビ局の社長のロジャー・エールスという男が、やっぱり女性のアナウンサーに対して、「番組に出してやるから。」って言って性的な要求をしていた事も発覚したりね。そういう事が次々と起こっているので、そのイメージなんですよ、この『ブラック・ウィドウ』の悪いボスの親父がね。あとね、これ結構攻めてるなと思ったのが、『アベンジャーズ』シリーズの監督だったジョス・ウェドンという人がいまして、その人もそういう人だったらしいんですよ。
(赤江珠緒)
えぇっ!!
『アベンジャーズ』シリーズの監督だったジョス・ウェドンも性犯罪スキャンダルを起こしている
(町山智浩)ガル・ガドットとかですね、何人かの女優さんとか、男の俳優さんもこのジョス・ウェドンに脅された、現場で脅迫されたっていうような事を言ってるんですね。つまり、逆らったらもう映画に出してやらないぞみたいな事を言って。そういった物を告発するような内容になってるんですよ、この『ブラック・ウィドウ』は。
(赤江珠緒)
この『アベンジャーズ』言ったらシリーズみたいな感じなのに。
性犯罪スキャンダルについて内部告発的な内容になっている
(町山智浩)そう。だから内部告発的な内容になってるんですよ。で、これがね、できたのはね、監督がケイト・ショートランドという女性なんですね。この人は、デビュー以来ずっとそういう映画を作り続けた人なんです。この人ね、デビュー作が『15歳のダイアリー』っていう映画で、親に愛されなかった少女が、行きずりの男達に次々と身を任せていくという物語だったんですね。その中でどんどん傷ついていくんだけれどもっていう話だったんですけども、非常にリアルな。
でその次に撮った映画が『さよなら、アドルフ』という映画なんですが、14歳の少女がやっぱり主人公で。彼女の両親は・・あ、これね、第2次大戦の末期のドイツが舞台なんですね。で、その少女の両親は、ナチスのお偉いさんなんですよ。で、ナチスのやる事は全部正しいと思ってたんですが、ドイツが敗戦して、焼け跡でサバイバルをしなきゃなんなくなるんですね。でその中、で信じていた親と、ナチスの悪事を知っていくっていう話なんですよ。で洗脳が解けていくんですよ。
(赤江珠緒)そういう事だ、うん。
(町山智浩)
で途中でまぁユダヤ人の青年を愛したりして。自分が信じていた親であったり、自分が信じていた物が全部崩れていってっていう話で。その・・今回の『ブラック・ウィドウ』と殆ど同じテーマなんですよ。でね、このケイト・ショートランドのね、その次に撮った映画が『ベルリン・シンドローム』っていうんですね。これね、実話が元になってるらしいんですけども、オーストラリアの女性が、やっぱりドイツのベルリンに旅行して、現地の男性と一夜を共にするんですが。朝起きたら監禁されちゃうんですよ。
(赤江珠緒)
えー怖い・・。
(町山智浩)
監禁されて部屋を出れなくされちゃうんです。で勝手に、結婚する事にされてしまって。ってホラー映画なんですね。これ怖いのはね、彼女は監禁されるんですけど、監禁されてるうちにいつの間にか洗脳されていくんですよ。いわゆるストックホルム症候群というやつで。
(赤江珠緒)
は〜・・うん。
(町山智浩)
で、その自分を監禁してる彼に同情して慰めたりしちゃうんですよ。で、そういうね怖い話を描いてきたのがこのケイト・ショートランドっていう女性なんですね。
だからデビュー作から一貫してこの女性の洗脳と、そこからの解放とか自立っていうのを描いてきた人なんで。すごくその『ブラック・ウィドウ』っていうのは漫画が原作ではあるんですけど、非常に深い、それを超えた内容になってるんですね。
(赤江珠緒)
へぇ〜・・。
どんな家族でもそうじゃない?という問いかけ
(町山智浩)
で、またもう1つ、ホーム映画・・家族映画でもあって。ナターシャは血が繋がらない、作られた家族を形成してる訳ですけども、こう喧嘩しながら、だんだん本当の家族へと成長していくんですよ。で、これはね。どんな家族でもそうじゃない?っていう問いかけになってるんですね。
(赤江珠緒)
へぇ〜!!
(町山智浩)
家族っていうのは血の繋がりがあるから家族なんじゃなくて、心で繋がっていく事なんだと。喧嘩しながら。それで家族になるんだと。って言うね、それ自体はね、そのマーベル世界全体が毎回そういうテーマをやってるんで、アベンジャーズも家族ですからね。
(赤江珠緒)
あ〜そうか、そうね。
(町山智浩)
そう。ものすごく深い話になってますね。
(赤江珠緒)
だから最初に町山さんがその、”アメコミ”って言うイメージだけじゃないって仰っていたのは、そういう事なんですね。
ファッションにも注目して鑑賞して欲しい
(町山智浩)
そうなんです。今かかっている歌は『American Pie』っていうアメリカのね、結構古い歌なんですけども。このロシア人の疑似家族が繋がっていくその繋がりとしてこの歌が使われているんですよ。
そこもね、すごく面白いんですけど。あとね、もう1つね、ブラック・ウィドウっていつもユニフォームを着せられてるんですね。ユニフォームを着せられて、振り付け通りに踊らされる操り人形なんですよ。さっき”殺しのAKB”って言いましたけども。(笑)
ところがその少女が、自分の好きな服を自分で選んで着るようになるまでの物語でもあるんですよ。だからね、このエレーナのファッションにもちょっと注目して見てもらうといいなと思います。
(赤江珠緒)
あっ、そうですか。面白そうですね。
(町山智浩)
これすごく面白くて。まぁ女性はあんまりこういうものに興味ないかもしれないんですけど、こういう映画に。すごく女性監督による、脚本も女性がね基本的な物を書いていまして。で、スカーレット・ヨハンソン自身がプロデューサーをやっていますから、すごくちゃんとした女性映画になっています。
(赤江珠緒)
あっ。ちょっとイメージと違いましたねぇ、へー!
(町山智浩)
アベンジャーズに興味がない人も是非、ご覧ください!
(赤江珠緒)
はい。『ブラック・ウィドウ』は現在公開中という事で。ディズニープラスでも配信中でございます。劇場と配信の問題もね、なんとか折り合いつけばいいですけどね町山さん。
(山里亮太)
ねぇ!劇場で見たらまたねぇ、いいって言ってましたもんね。
(赤江珠緒)
町山さん、ありがとうございました!
(山里亮太)
ありしたーっ!
(町山智浩)
どもでした!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
③配信は劇場の客を減らさないのでは。なぜなら・・『ブラック・ウィドウ』は映画館で見ないと全く意味がない作品です。