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引用:IMDb.com

アイダよ、何処へ?の町山智浩さんの解説レビュー

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2021年08月18日更新
アイダさんはなんとか自分の息子と夫を救おうとするんですね。アイダさんだけは国連のパスを持ってるから逃がしてもらえるんです。(中略)今、国際社会がアフガニスタンに対してね、何ができるかと。これから起こる事は、非常に恐ろしい事が起こらないようにね、しないとならないと思うんですけども。既に1回起こってる事なんでね。(TBSラジオ「たまむすび」より)

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『アイダよ、何処へ?』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

町山さん『アイダよ、何処へ?』解説レビューの概要

①アカデミー外国映画賞の候補になった映画で、ボスニア・ヘルツェゴビナ映画
②ボスニア紛争で起きた実話
③ボシュニャク人の地域に対しセルビア人が激しい攻撃を仕掛ける
④数百人しかいないオランダ国連軍の基地にボシュニャク人の難民が2万5000人殺到した
⑤映画の中ではハッキリ描かれなかった空爆が出来ない理由は○○○○
⑥交渉の結果、2万5000人のイスラム系の避難民をセルビア軍に渡す事に
⑦避難民を渡した200メートル先で銃声が。
⑧この状況の中でアイダさんが自分の息子2人と夫だけでも助けたいと駆けずり回る話
⑨アイダさんは通訳をしていて国連軍パスを持っているので逃してもらえる状態。
⑩『アイダよ、何処へ?』は、ペテロがキリストに言った言葉『主よ、どこへ行かれるんですか』から来ている。
⑪スレブレニツァの大虐殺と言われている事件

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

『アイダよ、何処へ?』町山さんの評論

(町山智浩)
で、もう1本はね、またすごい強烈な映画でね、これアカデミー外国映画賞の候補になった映画ですけど、『アイダよ、何処へ?』という映画なんですが、これはね、ボスニア・ヘルツェゴビナ映画なんですよ。これ、ボスニア紛争ってありましたよね1990年代にね。

(赤江珠緒)
はい。

引用:IMDb.com

ボスニア紛争で起きた実話

(町山智浩)
そこで起こった事件についての、これも実話なんですけれども。これね、元々すごくややこしい話なんですが、ボスニアっていうのはユーゴスラビアっていう国の一部だったんですね。で、ユーゴスラビアっていうのは、セルビアとクロアチアとスロベニアと、まぁいくつかの国があった連合体だったんですけれども。それはナチスドイツによって内戦状態みたいな形になって、その中で、全員で、やっぱり我々は力を合わせて戦おうって事でナチスと戦って作った国がユーゴスラビアで、最初から多民族国家なんですね。

でも、その理想の下に1つの国として頑張ろうって事でやってたんですけど、で、サラエボオリンピックまでやってるんですね。ところがその後、それぞれの民族が違う地域同士が独立を宣言して内戦状態に入っちゃうんですよ。

(赤江珠緒)
うーん。

ボシュニャク人の地域に対しセルビア人が激しい攻撃を仕掛ける

(町山智浩)
ところがその、セルビア人がすごく多い所とかクロアチア人がすごく多い所はそれでよかったんですけども、ボスニアは1番混成してたんですよ、民族が。だから、もう非常に激しい内戦状態になったんですけれども。で1995年にですね、セルビア共和国という風な形でボスニアの中のセルビア人の多い所がですね、ボスニアの中の、イスラム系の人達が多い所があるんですね。で、その人達をボシュニャク人って言うんですよ。ボスニアっていう言葉自体と絡んでて、その人達は昔オスマントルコに支配されてた時にイスラム教になった人達で、ボシュニャク人って言ってボスニアの語源なんですけど。その人達の地域に対して激しい攻撃をセルビア人が仕掛けたんですね。でも、この辺もねすごくてね。実はこの人達、民族全部、基本的には同じなんですよ。

(赤江珠緒)
あぁ。。そうなんだぁ・・!

引用:IMDb.com

人種的には同じ人々

(町山智浩)
実は同じ血なんですけれども、人種的な問題では。宗教がイスラムだったりカトリックだったり、スラブ系のロシア正教だったりするっていうだけなんですよ。

(赤江珠緒)
はーー!そうかぁ。。

(町山智浩)
言語が違ったりとかそれだけで、実は人種的には殆ど同じなんです。でもそれで分裂して殺し合いになって、で、そのセルビア共和国軍が、ボシュニャク人のいる所に攻め込んでいって、ある都市をですね、襲撃するんですね。で、その時に国連軍が入るんですよ。国連がね、平和監視という事で中に入ってくるんですけども。ところが国連軍の基地に、わずか数百人しかオランダから派遣された国連軍がいないのに、そこに逃げてきたそのイスラム系のボシュニャク人の難民が2万5000人もいたんですよ。

(赤江珠緒)
うわー!数百人しかいない所に。

数百人しかいないオランダ国連軍の基地にボシュニャク人の難民が2万5000人殺到

(町山智浩)
そう。スレブレニツァっていう街なんですけどもね、その街の郊外にあった国連軍の基地に、数百人しかいないところに2万5000人の難民が来て入れなくなっちゃうんですね、その基地にね。で基地の周りに2万5000人群がっている状態で、その周りを何万ものセルビア軍が戦車で包囲するっていう状態になるんですよ。で、そこからどうやって脱出できるかって言う話なんですね。

で、主人公の人はアイダという女性で、50代後半の、英語ができる英語の先生なんですね、学校で英語を教えてた。で、彼女は国連軍に通訳として雇われるんですよ。で、そのオランダ軍とセルビア人とボシュニャク人の人達の間で通訳として動く為に、パスを持ってるんですね、国連軍としての。それが最後の方ですごく重要になってくるんですけども、で、ものすごく戦車隊に包囲されてる状態だから、国連軍に対してオランダ側の司令官が、「我々は包囲されている。」と。「たった数百人しかいない。200人か300人かしかいない。」と。「敵は何万もいて包囲してるから空爆をしてほしい。」って言うんですね。国連軍に対して。空中から爆撃して敵の戦車をやっつけてほしいと。ところがね、いつまでたっても空爆されないんですよ。

(赤江珠緒)
うん?

引用:IMDb.com

映画の中ではハッキリ描かれなかった空爆が出来ない理由

(町山智浩)
で、これは映画の中でははっきり描かれてないんですけど、空爆をするぞって言ったら・・撤退しないと空爆をするぞってセルビア軍に言ったら、セルビア軍が、「だったら、その前に300人かなんかの国連軍に砲撃して殺してやる。」って言ったんです。

(赤江珠緒)
あ〜!その中の。うん。

(町山智浩)
そう。だから空爆できなくなっちゃったっていう、なんて言うのかな、すごくややこしい状態で空爆できなくなっちゃったんです。彼らはしてほしいのに。200人、300人の人が人質状態になってる訳ですからね。で、これはダメだと。国連軍は助けてくれないって訳で、国連軍のオランダ軍が、直接そのセルビア側と交渉するって事になるんですよ。で交渉した時に向こうが出した条件が、「君たち逃がしてやるよ。」と。「オランダ軍の国連軍の皆さん。」と。「その代わり、2万5000人のイスラム系の避難民を俺たちによこせ!」って言うんですよ。

(赤江珠緒)
うーわっ!その保護を求めてきた2万5000人を?

2万5000人のイスラム系の避難民を俺たちによこせ

(町山智浩)
そう。よこせって言うんですよ。そしたら虐殺されるだろうと、思う訳ですね。その頃、セルビア側は民族浄化として、他のセルビア人以外の人達を虐殺していた事が今わかってるんですけど、それはその当時も噂としてみんな知ってるから、虐殺されるだろうって思うんですね。すると、そのセルビア側の司令官が「いや、そんな事はしないから。みんな、バスやトラックに乗せて、ボスニア側の安全な所まで運んであげるから。だから安心して、その基地を引き渡してくれればオランダ人の君達も国連軍も逃がしてあげるから。」という条件を突き付けるんですね。でも、もうそこに集まってるボシュニャク人の人達は全然信用できない訳ですよ、そいつの言う事を。だから「やめてください!こんな条件飲まないでください!」って言うんですけど、もう食料もないし、武器弾薬も尽きてきて燃料もないから、国連軍はその条件を飲んじゃうんですよ。で、その2万5000人の避難民を引き渡しちゃうんですよ。で、そこでこのアイダさんが、こうなったら自分の息子2人と夫だけでも助けたいって言って駆けずり回るっていう話なんですよ。でも、どんどんどんどんこのバスやトラックに乗せられてっちゃうんですね、その避難民達が。で、そのバスが行った先の方の、200メートルくらい先から銃声が聞こえてくるんですよ。

(赤江珠緒)
ええっ!!!

引用:IMDb.com

この状況の中でアイダさんが自分の息子2人と夫だけでも助けたいと駆けずり回る話

(町山智浩)
どんどん殺してるんです。で、それに乗せられたらお終いなんですよ。で、このアイダさんはなんとか自分の息子と夫を救おうとするんですね。アイダさんだけは国連のパスを持ってるから逃がしてもらえるんです。

(赤江珠緒)
あーー!そかそか・・!

『アイダよ、何処へ?』というタイトルについて

(町山智浩)
という話なんですよ。で、これは・・厳しい話で、この『アイダよ、何処へ?』っていうのは、昔ですねローマでキリスト教徒の虐殺が行われた時に、暴君ネロによってね。でキリストのお弟子さんの1人が、ペテロさんがですね、ローマを逃げた事があるんですよ。で逃げる途中で、既に亡くなってるはずの自分の師匠のキリストの幻か霊に出会うんですね。で、「どうしたんですか、お師匠様。」って言ったら、「私はこれからローマに行って処刑されに行くんだ。」って言うんですね。で、その時にそのペテロが言った言葉がですね、「主よ、どこへ行かれるんですか。」って言うんですね。「仲間が殺されるというのに私はここにいられないから一緒に死にに行くんだ。」って言ったんですよキリストは。それでペテロは、自分もやっぱりローマに帰って処刑されんですね。それがタイトルになってるんですよ今回は。

(赤江珠緒)
なるほどぉ。。

(町山智浩)
『アイダよ、何処へ?』っていう。はい。だからものすごく厳しい話なんですよ、これも。

(赤江珠緒)
本当ですね〜・・。

(町山智浩)
はい。これでも、国連軍の側に立ってみれば、ここで殺される訳にいかないですよね。だからやっぱり条件を飲んじゃって、裏切っちゃってるんですよ、守りに来た人たちを。

(赤江珠緒)
でも結果200メートル先で虐殺が始まってたって。もう〜・・。

(町山智浩)
そう。これはまぁひどい。

(赤江珠緒)
ひどい話ですね・・。

引用:IMDb.com

スレブレニツァの大虐殺

(町山智浩)
結局8000人以上殺されてるんですよ、それで。これはね、スレブレニツァの大虐殺と言われている事件なんですけれども。はい。でね、この2つを映画を見るとね、やっぱり今のアフガニスタンと繋がってくる所があるんですよ。守るって言ってきた人達なのに。ねぇ!これは厳しいですよね。

(山里亮太)
そうだよな〜。。

(赤江珠緒)
ねぇ。それ以外にもう・・救いがないっていう状況でね。

今、国際社会がアフガニスタンに対してね、何ができるかと

(町山智浩)
そうなんですよ。でも自分の命が危うくなったら、じゃぁどうするのかって言うね。これはね、もう本当に厳しくて、今、国際社会がアフガニスタンに対してね、何ができるかと。言う事になってくると思うんですよ。今タリバンの裏側に中国とロシアが付こうとしてるんで。まぁアメリカはどのような形でね、この状況に対して対応していくのかって事はまだ、何も正式に表明されてないですけどね。でも少なくとも難民の人達は引き受けなきゃなんないと思うんですよね日本も含めてね。

(赤江珠緒)
そうですね、うん。

(町山智浩)
これから起こる事は、非常に恐ろしい事が起こらないようにね、しないとならないと思うんですけども。既に1回起こってる事なんでね。

(山里亮太)
そうですよね。

(赤江珠緒)
せめてそれぐらいってね。。なんかもう、ずっと、本当に同じような事を繰り返して・・ますね。

(町山智浩)
はい。そう言うね、今に始まった事じゃない!という映画を2本紹介しました。もうすぐ公開ですね。『ホロコーストの罪人』は8月27日から、『アイダよ、何処へ?』は9月17日から日本公開です。

(赤江珠緒)
はい!全国順次公開となっていきます。町山さん、ありがとうございました!

(山里亮太)
ありした!

(町山智浩)
どもでした!

※書き起こし終わり

○○に入る言葉のこたえ

⑤映画の中ではハッキリ描かれなかった空爆が出来ない理由は、「だったら、その前に300人の国連軍に砲撃して殺してやる。」とセルビア軍に言われた為

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