スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』解説レビューの概要
①町山さん2021年ベスト映画に入る作品に!
②○○○○になった作品
③スパイダーマンを演じるトム・ホランド君とゼンデイヤちゃんは私生活でもカップル
④今までの3つのスパイダーマンシリーズ作品は別物で並行して存在する世界観だった
⑤今作はスパイダーマンシリーズの総決算のような映画
⑥スパイダーマンとは何か?
⑦スパイダーマンと敵役は紙一重
⑧スパイダーマンの敵というのはみんな、スパイダーマンがもしかしたらなってしまったかもしれない人達
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』町山さんの評価はベスト!
(町山智浩)今年最後、ですね。
(赤江珠緒)そうですね!『たまむすび』はい。火曜日は。はい。
(町山智浩)という事で、今年のベスト映画を選びます!という事でね、こないだまっではね、原一男監督の『水俣曼荼羅』がベストだったんですよ。
(赤江珠緒)おお!こちらでもご紹介していただいた。うん。
(町山智浩)はい。水俣病の患者の方々を追ったですねドキュメンタリーと言うと非常に重いんですけど、非常に楽しく元気になる素晴らしい、なんか・・。
(赤江珠緒)ものすごい大作で。
(町山智浩)先週、今週になってですね、見た映画がすごいんで、ちょっとベストがどれなんだかもう分かんなくなっちゃったっていう感じで。
(山里亮太)最後まくってきましたね!(笑)
2021年のベスト映画は年末になってまくってきた
(町山智浩)まくってきました!で、まずですね。『スパイダーマン』!新作。1月7日公開の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』!見たんですけども、これがね、まさかのね、もう〜もう〜ボロ泣きになりましたよ。
(山里亮太)えぇぇ泣く!?
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は大号泣映画
(町山智浩)泣いちゃった!全然予測してなかったですね。で、これはね、スパイダーマンをやってる子がですねトム・ホランド君というまぁ俳優なんですけども、彼が主演のスパイダーマン3作目になるんですが、このトム・ホランドくんバージョンはすごく軽い内容だったんですよ。すごくコメディタッチでですね、非常に影のない、屈託のない感じだったんで、まさかここで泣かせに来るかっていうね、ちょっと愕然としましたけども。はい。で、『スパイダーマン:ホームカミング』が一作目で、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』が前作なんですけれども、その前作の最後で、スパイダーマンの正体がピーター・パーカーという高校生だという事がバレてですね、全米のテレビで報道されてしまうってい所で終わったんですね前作は。
(町山智浩)で、そこからどうなるかっていう話なんですけど今回は。前半は結構ね、いつものコメディノリで、特にそのピーター・パーカーを演じるトム・ホランド君がですね、劇中でガールフレンドを演じるゼンデイヤちゃんとですね実際に付き合ってて。
(赤江珠緒)ふんふん。
役だけでなく実際にも付き合っているカップル
(町山智浩)2人は本当にカップルで、私生活でも道端でもイチャイチャしてるんで。
(赤江珠緒)へ〜〜〜え!
(町山智浩)そのイチャイチャ感がすごい、あの、もう若い人っていいですねっていう感じの映画になってるんですが。(笑)
(山里亮太)出ちゃってるって事。(笑)
スパイダーマンシリーズの総決算のような映画
(町山智浩)そう、出ちゃってるんですよ。ただね、この今回の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』はですね、『スパイダーマン』シリーズっていうのは映画版で超大作で作られるようになったのは2002年からなんですね。そこからまぁ20年間作ってきてる訳ですけど『スパイダーマン』を。全部で7本の映画が作られてる訳ですが、はい。その全部の総決算みたいな映画だったんです。
(赤江珠緒)ほぉ〜〜。
(町山智浩)今回は。もう20年間『スパイダーマン』の歴史のまぁ総決算でした。で、ですね。まず最初の『スパイダーマン』っていうのはサム・ライミという監督が作った三部作で、主人公のピーター・パーカーをトビー・マグワイアという俳優が演じたシリーズがあるんですけれども。これを便宜上スパイダー1(ワン)と呼びますが。はい。
(赤江珠緒)ふふふ。
(町山智浩で、ややこしいんですけどもスパイダー1の2作目、『スパイダーマン2』に出てきた敵役、カタキ役ですね、ドクター・オクトパスという怪人が今回出てくるんですよ。で、予告編でもご覧になった人はわかるようにですね、体中にロボットの触手を付けたタコおやじでですね、それで車をバンバン投げながら大暴れして襲ってくるんですけれども。予告編を見ているとね、もう1人悪役が出てくるんですよ。それは、2代目のスパイダーマンがいまして。
これは『アメイジング・スパイダーマン』シリーズと言われているもので、アンドリュー・ガーフィールド君がね、演じてるんですけども。
それはまぁアメスパと言われてるんですけど、一般にはね。このアメスパの2作目に敵として出てきた怪人が今回出てきてるんですよ。それはジェイミー・フォックスというアカデミー賞俳優が・・アカデミー賞俳優なのに演じてる電気ウナギ男、エレクトロなんですね。体中からものすごい高圧電流を流す怪人なんですけど、それが出てきてて。その、別のシリーズ。つまりその『スパイダーマン』シリーズっていうのは1つの繋がりじゃなくて、その3つが完全に並行して存在する物なんですよ。だから、なんていうのかな?繋がってないんです話が。
(赤江珠緒)それは違うんですね。アメスパと最初のスパイダー1は。
3つのスパイダーマンシリーズは別物で並行して存在する世界観
(町山智浩)そうです。世界が全然違って、3人の俳優がピーター・パーカーを演じてるんですけども、それぞれが全然違う、関係がないんですよ。ところが、その関係ないはずのシリーズに出てくる敵役が今回出てきちゃうんですよ。これ、なんて言ったらいいか・・だから、戦隊シリーズって互いに関係がないじゃないですか。スーパー戦隊シリーズ。
(赤江珠緒)はいはい。
(町山智浩)それなのに、あるスーパー戦隊シリーズの悪役が別のスーパー戦隊シリーズに出てくる感じなんですね。
(赤江珠緒)あ〜、うん。
(町山智浩)で、これはね、まずその前にやってるんですね、そういう事を。『スパイダーマン』シリーズは。で、アニメ版の『スパイダーマン:スパイダーバース』 っていうのがあるんですよ。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)これアニメなんですけども、主人公はピーター・パーカーじゃなくて、ラテン系のアフリカ系の高校生が主人公なんですけれども。そこではですね、その漫画。アメコミのコミック版のスパイダーマンって色んなスパイダーマンがいるんですよ。女の子のスパイダーマンもいるし。
(山里亮太)へぇ〜〜!
(町山智浩)それで女の子も何人かいて日系人の女の子のスパイダーマンもいたりするんですよ。あと、おじさんのスパイダーマンもいたりするんですが。
(赤江珠緒)へぇそうなんですね!
(町山智浩)それが全部、1ヶ所の世界に出てきちゃうって話がそのアニメ版の『スパイダーバース』 っていう話だったんですね。
(山里亮太)ほうほうほう!
(町山智浩)で、それはどういう風に説明されるかっていうと、「パラレルワールドなんだ」っていう風に説明されるんですね。つまりあらゆる世界の可能性があると。それがみんな並行世界として存在するんだけど、そこにバラバラに存在するスパイダーマンが1ヶ所に集まっちゃったっていう話になってるんですよ。だから仮面ライダーシリーズって互いに絡み合ってるようで合ってないじゃないですか。あれと似た感じなんですよ。
(山里亮太)はいはい!なるほどなるほど!
(町山智浩)ただ時々、仮面ライダーって全員大集合ってやるでしょう?世界が並行してあるはずなのにね。で、ウルトラマンは繋がり、ひとつながりにある程度なってて、それも全員大集合ってやりますよね、時々。あれと同じような感じなんですよ。お祭り感がすごく強いんですけども。ただ今回の『ノー・ウェイ・ホーム』では、悪役がまず出てくるんですね。色んな世界の。で、これで一体何をやろうとしてるかって言うと、スパイダーマンとは何か?っていう話になってくるんですよ。
(山里亮太)ほう。
スパイダーマンとは何か?
(町山智浩)と言うのはね、まずスパイダーマンっていうのは他のスーパーマンとか・・スーパーマンは宇宙人ですね。あとバットマンやアイアンマンは大富豪なんですけれども。そうじゃなくてスパイダーマンになるピーター・パーカーっていうのは本当にそこらの普通の高校生なんですよ。で、それが突然すごい力を持ってしまったっていう話なんですね。
(山里亮太)はい。
(町山智浩)主人公のピーター・パーカーは科学者を目指して勉強してる高校生なんですけど、両親を亡くして貧乏なんですよ。で、クラスではスパイダーマンになる前は全く目立たない存在だったんですね。特にその原作とか一作目だと、いじめられっ子なんですよ。暗くて。まぁ両親を亡くしてるから暗い訳ですけど。で、もう本当に目立たない存在だったのが、突然スパイダーマンとしての力を身に付けてしまうっていう話なんですが。スパイダーマンシリーズの敵、悪役も大体そんな感じなんですよ。って言うのは例えば、ドクター・オクトパスという怪人は、元々はピーター・パーカーと同じような科学者だったんですね。それがタコみたいなマシンを身に付けて、戦車みたいなパワーを身に付けるんですけども、そのパワーに心を乗っ取られちゃうんですよ。つまり、全能になるからそれによって。で、しかもそのピーター・パーカーと同じで事故で肉親、まぁ妻を失っていて。自分のその妻を失った事の悲しみと怒りが暴走して、そのスーパーパワーと一種結合をしてですね、ニューヨークを大破壊する怪物になっちゃうんですね。ドクター・オクトパスは。
これスパイダーマンももしかしたらそうなったかもしれない訳ですよ。ね。
で、あとエレクトロという怪人は、元々電気の配線工事労働者の人で。やっぱりピーター・パーカーみたいな感じで気が弱くて、非常に影の薄い男で、孤独で、しかも孤独だから、世間に対する怒りを秘めていた男なんですよ。それが高圧電流を操る超能力を身につけた事で、その自分を無視してきた世間に対する復讐を始めるんですね。
(赤江珠緒)あぁそういう事かぁ。
スパイダーマンの敵というのはみんな、スパイダーマンがもしかしたらなってしまったかもしれない人達
(町山智浩)だからスパイダーマンの敵というのはみんな、スパイダーマンがもしかしたらなってしまったかもしれない人達なんですよ。スパイダーマンも貧しさや不幸や孤独を背負った少年なんでね。で、もし彼がスパイダーパワーに心が負けて、その自分の怒りや欲望を満足させるためにパワーを使ったらどうなったかって言うのがスパイダーマンの敵なんですよ。
(赤江珠緒)じゃぁ一歩間違えば自分もそうだったという思いがあるんだ、なるほど。
(町山智浩)そうなんです。それが他のスーパーヒーロー物と決定的に『スパイダーマン』が違う所で。スパイダーマンの敵は大抵、鏡に映ったスパイダーマンのダークサイドなんですよ。
(山里亮太)ほぉ〜〜!
「俺は悪い人間じゃないんだよ。運が悪かっただけなんだ。」
(町山智浩)で、それを今回、すごくテーマとしてはっきり打ち出してます。だからサンドマンっていうね体が砂になっていくらでも大きくなったり流れたりする事ができる流動体人間がいるんですけれども。そのサンドマンがですね前に登場した時にね、「俺は悪い人間じゃないんだよ。運が悪かっただけなんだ。」って言うんですね。それはスパイダーマンの敵にみんな共通する所なんですよ。
で、その辺をね、グイグイ突っ込んでくんですよ今回の映画は。でね、ただ、じゃあなんでピーター・パーカーがそのスパイダーマンになったのに、その能力を自分の為に使わなかったかって言うと、彼には父親代わりにピーターを育てたベンおじさんっていう方がいまして。
(山里亮太)はい!
(町山智浩)その人が死ぬ前にね。偉大なパワー。すごいパワーを持った者にはそれだけの責任が伴うんだという言葉を残していくんですよ。それが、彼の心の中に突き刺さって、悪の道に進まないんですね。ピーター・パーカーは。
ただ、今までのどのスパイダーマンも、そのベンおじさんであるとか、親友を失ったりね、トビー・マグワイア版の最初の『スパイダーマン』では親友を失うんですけれども。で、『アメスパ』のアンドリュー・ガーフィールドは愛する人を失っちゃうんですけれども、そうやってもう、スパイダーマンになったが故に愛する人を次々と失ってくんですね。だから悲劇の物語でもあるんですよ。
で、そうしたスパイダーマンの20年間の歴史みたいな物。ドラマを、今回の『ノー・ウェイ・ホーム』は全部受け止めるんですよ。見事に。で、その今までずっと繋がってきたスパイダーマンの悲しみであるとか、そういった物をがっちり受け止めて、しかもそれをね、ものすごく優しく切ないやり方で美しく着地させるんですよ。
(赤江珠緒)へ〜〜!
『ノー・ウェイ・ホーム』は20年間のスパイダーマンの歴史を全部受け止める
(町山智浩)もう・・本っ当に涙がボロボロ出てきて。
(赤江珠緒)どこにどういう風に着地すればいいんだろうな、本当・・ねえ。
(町山智浩)それをご覧になってくださいよ!
(山里亮太)なるほどな!今までの敵が総出演で、どんちゃん騒ぎのド派手な映画になるのかなと思いきや!
(町山智浩)前半コメディなんですよ。
(山里亮太)すごいですね!
(町山智浩)そう。そこからものすごく切ない展開になっていくんで。まぁすごいですね。ただ1作目の『スパイダーマン』と、2作目と、アンドリュー・ガーフィールド版の『アメスパ』は見といた方がいいと思います。そうしないと、彼らが背負ってる悲しみが一体何なのかわからないんですよ。それは是非見といて下さい。という事で『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』がもうベスト!なんですが!もう1本ベストがありましてですね。それがねぇ、劇団ひとりさんが監督した『浅草キッド』なんですよね。
(山里亮太)はーい!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
②ボロ泣きになった作品