ドンバスの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『ドンバス』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『ドンバス』解説レビューの概要
①2014年にウクライナから独立しようとしたロシア系の住民がすごく多いドンバスが舞台。
②ただこの映画、○○○○
③ロシア系の人達によるドンバス地域の政治はデタラメだった
④ロシアがフェイクニュースを作っているシーン
⑤セルゲイ・ロズニツァ監督は悪い事は全部叩くけど、どちらでも叩くぞという人
⑥警察署が○○○○に
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『ドンバス』町山さんの評価とは
(町山智浩)はい。でね、もう1つの映画がね、『ドンバス』って、そのもの。『ドンバス』いうタイトルの映画で、これね、5月21日に東京のシアター・イメージフォーラムっていう所で公開されるんですけども、これそのものズバリ、その2014年にウクライナから独立しようとしたロシア系の住民がすごく多いドンバスが舞台なんですよ。ただこれ、コメディなんですよ、なんと。
(山里亮太)え。
(赤江珠緒)コ、コメディ?
(町山智浩)ブラックコメディなんですよこれ。これすごいんですけど、この映画ね、12ぐらいのシーンがあって、それぞれがコントみたいになってるんですよ。それがまた怖いコントなんだ。
(赤江珠緒)えぇっ?
ロシア系の人達によるドンバス地域の政治
(町山智浩)すごい怖い感じなんですけど。まぁ、これとにかく2014年に・・ウクライナっていうのは昔ロシアに占領されちゃって、それでソビエトにも一部にされたんで、ロシア人達がどんどんと中に入り込んで入植したんでね。ロシア人が多い地区が、ロシア側に入りたいっていう事で独立をしたって事で、それで結局、その地域の政権を取っちゃうんですね。政治を行うんですけど、それがデタラメなんですよ。ロシア系の人達による、そのドンバス地域の政治がね。
(赤江珠緒)うーん、うん。
(町山智浩)で、1番最初の方はですね、お化粧をしてるんですよ、みんなが。メイクアップルームで。でね、「ちょっとこれ本物っぽくないわね。」とか「もっと盛った方がいいわよ。」とかなんか言ってるんですよ。すると「はい、皆さん。これから撮影で〜す。」とか言って、連れて行かれるんですね、その俳優さん達が。それはおばさんとか子供とか色んなタイプの人がいて。で行くと、バーーン!って音が爆発して、バスが粉々に吹っ飛ぶんですけど、で、そこの周りに今までメイクして集められた人達がいて、テレビカメラの前で、「あぁびっくりしたわ。今ここを通りかかったら大変な爆発が起こったの。」とか言ってんですよ。
(赤江珠緒)ええっ?
(町山智浩)フェイクニュースを作ってるんです。
(山里亮太)ふぇぇ〜〜!すご!
フェイクニュースを作っている
(町山智浩)そう。「ウクライナのテロリストよ!」とか言ってんですよ。
(山里亮太)はー!
(町山智浩)ロシア系のドンバスの政府が、ウクライナのテロをでっち上げてるっていうシーンなんですよ。
(赤江珠緒)はぁ〜〜〜!
セルゲイ・ロズニツァ監督
(町山智浩)で、これね、監督はね面白い人でね。この人スタッフとかでロシア系の人がいたりして、非常にその中間的な人で、今回そのウクライナ政府がロシアと戦闘になったから、ロシア系の文化を一切禁じるという命令を出したんですね、法律を。それに対してこの監督は、それはロシア文化という物が攻めてきた訳じゃないんだからと。言ってそれに抵抗してですね反対したりしてるような監督なんですよ。すごく、なんていうか、政治と現実は違うんだと。人と政治も違うし、みたいな事をはっきりと言う監督なんですね。これ、セルゲイ・ロズニツァという監督なんですけども。この人この前にはこの間紹介したマイダン革命っていうその、キエフでもって・・
(赤江珠緒)あっ広場でね。
(町山智浩)広場でね。ロシア寄りの政権がウクライナの人達を虐殺した事件がありましたけど、それのドキュメンタリーを撮ってたりして。もう、何でも撮る人なんですよ結構。それで、最新作っていうのはこれがまたすごい映画で、ナチスがウクライナに入った時に、ウクライナの中に右翼的な人達、反ユダヤ系の人達がナチスと手を組んで、バビ・ヤールという所でウクライナに住んでるユダヤ人を大虐殺した事件があるんですけど。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)アインザッツグルッペンという、移動虐殺部隊というナチスの部隊と、ウクライナ内部の右翼が結託した事があって。それを告発する映画を撮ってるんですよ。新作は。『バビ・ヤール・コンテクスト(Babi Yar. Context)』。だから、悪い事は全部叩くけど、どちらでも叩くぞという人なんですね。
(赤江珠緒)そういう事ですね。どっち側の事も・・という事ですね。
(町山智浩)そう。誰の味方でもないし誰の敵でもあるというね。そのセルゲイ・ロズニツァという監督のこれすごい映画で。とにかくね、次々とロシア系の人達によるとんでもない事が起こって、そのウクライナ側に立った人もいる訳です。つまり、みんな一緒に暮らしてたんですよそれまで。
(山里亮太)そっか。
(町山智浩)ウクライナ系の人も、ロシア系の人もね。で内戦になっちゃったんで、ロシア系の人がそこを制圧したんで、ウクライナ系の人をですね縛って・・電柱に縛って道端に置いてくんですよ。
(赤江珠緒)ええっ?
ウクライナ人を縛って放置
(町山智浩)こいつはロシア側の敵だと。ウクライナ側の奴だっていう事でウクライナの国旗をその人に着せてですね、通行人の人達みんな自由にしてくださいって。
(赤江珠緒)うわ〜・・そうなっちゃうのか。
(町山智浩)そう。そうすると、ウクライナの犬め!とか言って道歩いているおばさんとかがバンバン殴ってボコボコにするんですよその人の事を。それをね、殆どシーンをねワンシーン・ワンカットで撮って、すごく変なね、間抜けなユーモアみたいな物をそこにくっつけているね、非常に奇妙な映画なんですよ。
(赤江珠緒)へえ〜。
(町山智浩)で、1番すごかったのはね、車を盗まれた男性が警察に行くっていうシークエンスがあってですね、そこがすごかったんです。それね、まず警察に行くと、警察の人が三菱のジープ乗ってるんですよ、結構いいジープね。「あっ、お巡りさん!それ僕の車ですよ。」って言うんですよ。「んっ?なんだって?」って。「今届けたんですけど。」って言って。「ほら、ここにもちゃんと書類があるでしょう?」って言って。「うん?うん、そうか。うん、わかった。うん。それで?」って言うんですよ。
(赤江珠緒)えっ?
(町山智浩)「いや、この車、返してほしいんですけど。」「うん?うーん・・じゃ、この書類にね、サインして下さい。」って。でサインしようとその書類を読むと、”この車を警察署に譲る”・・「譲りませんよ!誰が譲るんですか?車、盗られたんですから。お巡りさんが盗ったんですか?」って言うんですよ。「うーん。そうだ、ねえ?」みたいな感じなんですよ。ひどいんですよ。
(赤江珠緒)無法地帯だ。
(町山智浩)無法地帯なんですよ。で、「いや、これちょっと返してほしいんですけど、これ、結構いい車だったんですけど。それこそ300万ぐらいして。。」って言うと、「うーん。じゃぁ100万でどうだ?」って言うんですね。
(赤江珠緒)誰に?(笑)
警察署が無法地帯に
(町山智浩)警察署長が。で、100万で買うって事なのかな?って聞くと、「いや、そうじゃなくて、君が、あの、ね。あの・・私達にね、100万くれるって事で。」って言うんですよ。「なんで車盗られて100万金払わなきゃいけないんですか!」って言うと、「うーん。君はなんか家族とかいるかな?お子さんとか。」「いますよ。幼稚園の娘がいます。」「うーん。かわいいだろうね?」って言うんですよ。「誘拐とか気をつけた方がいいよ。」って言うんですよ、警察署長が。
(赤江珠緒)えぇっ。。
(山里亮太)うっわ!脅し文句ですよ、定番の。
(町山智浩)「ひゃ、100万ですか?」って言うと、「うるさいね〜。一言多いから150万にするぞ。」って言うんですよ。で、「もう一言多かったら200万にするからな!」って言うんですよ。すごい世界ですよこれ。
(赤江珠緒)なんなんですか本当。。
(町山智浩)これ、もんのすごくキツいサンドウィッチマンのコントですよこれ。(笑)これ頭の中で・・ってか映画見ながらそのかわいそうなおじさんは伊達さんでね、想像したりしてましたよ。富澤さんがその警察署長で、「うーん。困ったねーじゃぁ200万でどうかね?」っていうね。すごい世界で。それでもう結局諦めて、「わかりました。」って言うと、「じゃぁ君そこで家族とか知り合いの人にね、携帯で現金持ってくるように言いたまえ。」と。ね。「そこのドア入って、そっちの部屋で連絡して、お金を持ってくるように言ってね。」って言うと、彼がその部屋に入ると、ものすごいたくさんの人がいて、みんな携帯で電話かけながら、「300万!300万を持ってきてくれ〜!」とか言ってるんですよ。「そうしないと殺される!」って言ってるんですよ。これ警察署なんですよ。
(山里亮太)ええっ?
(町山智浩)すさまじい映画なんですよ、これ結構。で、この監督のセルゲイ・ロズニツァ監督は、「これは全部実話である。」って。
(赤江珠緒)実話〜!?
「これは全部実話である。」
(町山智浩)いくつかの部分はYouTubeに上がってた物とかインスタとかに上がっていた映像や会話から取ったし、ドイツのジャーナリストが実際に行って見た物もあると。で、全部本当の事を映像がなかったりしたんで、それを俳優さん達に演じさせて再現した物なんだって言ってんですよ。これはすごい内容でね。
(山里亮太)そっかぁ・・。
(赤江珠緒)いやでも今回のね、そのブチャのニュースとかが届いた時に、ロシア側があれはフェイクニュースだってすぐもう一蹴してるじゃないですか。フェイクニュースをもう自分達もバンバン作っている、そういうのが当たり前にある世界に慣れてるから、もうそれがあんな通用しないだろって事が通用しちゃうんですね?
(町山智浩)そうそうそう。要するに、”自作自演だ”って言ってるのは自分達自身が自作自演してるからなんですよ。
(赤江珠緒)は〜!そんな言い訳?みたいな話なんだけど。
(町山智浩)そう。やっぱこれで怖いのは降参したりね、降伏したりね、停戦して譲っちゃうと、そこに住んでる人達は本当に皆殺しになっちゃうなっていう事で。しょっちゅうそういう事をやってて、実はこのドンバス地域っていうのはウクライナ軍が1回突入した事があって、2014年に。そしたらロシア軍に取り囲まれちゃったんで、もうしょうがないからって事で降伏して脱出しようとした事があるんですよ。そしたら、ロシア側が、これ町がね、イロヴァイスクっていう町なんですけども、ドンバスのね。で、この人道回廊ってのを作るから、ここでウクライナ側に逃げていいですよって。ここは安全ですよって言われて、そこでウクライナ軍達はそこでウクライナ側に撤退しようとしたら、ロシア側が用意した人道回廊なのに、そこでボコボコに砲撃されて、皆殺しになっちゃった事件があるんですけど。
(赤江珠緒)いやちょっと・・。
(町山智浩)もう、全然信用できないんです。
(赤江珠緒)本当ですよね・・。
(町山智浩)すごい世界なんですね。と言うね、強烈な映画がこの『ドンバス』と『親愛なる同志達へ』で。もうすぐ日本・・というか今週公開になるのが『親愛なる同志達へ』で、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開でその後全国公開です。『ドンバス』の方も5月21日からイメージフォーラムで2週間だけ限定公開で、その後まぁ、各地で公開される予定です。はい。
(赤江珠緒)もう何を信じてね、どうやって終わっていくのかって・・。
(町山智浩)大変な世界ですね。
(赤江珠緒)困ったもんですね。はい。改めて『親愛なる同志達へ』はヒューマントラストシネマ有楽町ほかで4月8日から全国公開。『ドンバス』はシアター・イメージフォーラムで5月21日から2週間の限定公開でございます。じゃぁ町山さんアメリカの方ももっとウクライナに支援しようっていう世論ですかね?
(町山智浩)もう、どうしようって事ですよね。今までみたいにちょっとした対戦車ロケットとか、そういうのだけでは済まない感じになってきたんですね、ここまで来るとね。
(赤江珠緒)はい、わかりました。町山さん、ありがとうございました。
(町山智浩)はい。どもでした!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
②ただこの映画、コメディ。
⑥警察署が無法地帯に