暴力脱獄の町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『暴力脱獄』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『暴力脱獄』解説レビューの概要
①暴力脱獄、暴力は全然関係ない映画
②原題は『Cool Hand Luke』
③かっこいい手という意味で、この手というのは○○○○の手を意味する
④「なんにも持ってないって事が、最強の手なんだ。」
⑤刑務所では、看守のルールと牢名主のルールがある
⑥いじめられても純粋無垢な笑顔でいるポール・ニューマン
⑦この『暴力脱獄』は、○○っていうのは刑務所なんだという話
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
※この前の話は『ハスラー』町山さん解説書き起こしで見る事ができます。
『暴力脱獄』町山さん解説の書き起こし
(町山智浩)で、もう1本の方がもっと衝撃だった映画で、『暴力脱獄』という映画です。
(赤江珠緒)タイトルがまたすごいですね。
(町山智浩)すごいタイトルですよね、暴力脱獄!!全然暴力関係ない映画なんですけど。
(赤江珠緒)ええっ!?
(町山智浩)これはね、『暴力教室』という映画が当たったんで、『暴力』って付ただけで、全然内容は関係ないんですね。
(赤江珠緒)あぁそうなんですね。
(山里亮太)ええっ。。
(町山智浩)日本語タイトルこれねぇ、つけたのはねぇ水野晴郎さんじゃないかって僕怪しんでるんですが、まぁいいや。(笑)
(赤江珠緒)へぇ〜!
(町山智浩)ひどいタイトルなんですが。原題は『Cool Hand Luke』っていうんですよ。
(山里亮太)全然違う。
原題は『Cool Hand Luke』
(町山智浩)これは、”Cool Hand”っていうのは”かっこいい手”っていう意味なんですけど、この手っていうのはポーカーをする時の手の事なんですよ。
(赤江珠緒)あ〜。。
(町山智浩)役の事です。どんな手なんだ?って言うじゃないですか。ストレートフラッシュとか。その手なんですね。これ、ルークはポーカーをやるんですけども、刑務所の中でね。その時に、すごい賭け金をガンガン上げてくんですよベットを。で自信たっぷりにニコニコしてるんで、みんな降りちゃうんですけど、手を見ると、ブタなんです。
(赤江珠緒)あぁ、全然大した事ないのに。
(町山智浩)そうなんです。そうすると、「お前ブタじゃないか!」って言われるとこのルークは、「なんにも持ってないって事が、最強の手なんだ。」って言うんですよ。「なんにも持ってない事が1番強いんだ」って言うんです。すごく深い話なんですよこれも。でこれ、舞台はフロリダの刑務所なんですね。フロリダというね半島はね、実は刑務所に入っている囚人達によって強制労働で開拓された所なんですよ。
「なんにも持ってないって事が、最強の手なんだ。」
(赤江珠緒)へ〜!あぁそうなんですね。
(町山智浩)この間フロリダに行って知ったんですけど。ひどい話なんですよね。で、これ原作者が本当にそこで開拓やらされた経験が元になってるんですけども。そこで強制労働をされてる中にですね、新しい囚人として、ルークというポール・ニューマン扮する男が入ってくるんですけども。もうみんな強制労働をさせられてボロボロで、もう笑顔も何もない暗〜い感じになってるんですね囚人達は。そこでですね、徹底的にその看守たちが押さえつけるんですよ、その囚人達をね。お前らには自由なんか何もないんだ。ここにはルールだけある!みたいな事を言って。そうすると、そこに新しく入ってきたポール・ニューマン扮するルークは、全く看守の言う事を聞かないんです。で、ルールを破りまくるんです。脱走しまくるんです。何度でも。不良少年なんですけども、ところがこの、刑務所ってのは刑務所の看守だけじゃなくて、刑務所の囚人の中にもルールがあって権力があるんですね。
(赤江珠緒)あ〜。
(町山智浩)まぁ言われますけど、牢名主というのがいて。
(赤江珠緒)牢名主ね、日本で言うね、はいはい。
刑務所では、看守のルールと牢名主のルールがある
(町山智浩)看守がいない所でも、囚人の中で威張って、ルールをですね押し付けてくる権力が存在する訳ですよ。で、看守と囚人の権力の両方からルークが睨まれる訳ですよ。
(赤江珠緒)そうか。そうなりますね、うん。
(町山智浩)逆らってばっかりだから。でもなんでこんなにこのルークををみんながいじめるかっていうと、ルークがいつもニコニコしてるからなんですよ。怖がらないんです。言う事を聞け!みたいな事を言われてもニヤニヤしてるんです、薄笑いしてるんですよ。いつも。楽しそうな感じですね、薄笑いっていうよりはもうちょっと。子供のような笑顔なんですよ、このポール・ニューマン。赤ちゃんみたいな笑顔をしてるんでそれが売りだったんですけど。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)要するに純粋無垢な笑顔をしてるんですよ。ニコニコして。
(赤江珠緒)うん、そんな状況で。
いじめられても純粋無垢な笑顔でいるポール・ニューマン
(町山智浩)だから、押さえつける側は悔しくてしょうがないんですよ。いくらやっても怖がらないから。で、徹底的にいじめられて、虐待されていくんですよ。特にその牢名主の、ドラッグラインというこれ名優ジョージ・ケネディが扮する大男がですね、もうめちゃくちゃにいじめるんですね。殴って蹴って。ところが、いくら殴ってもルークは立ち上がってくるんですよ、ボロボロになって。このへんは、梶原一騎先生の『あしたのジョー』がすごい影響を受けてます。
(山里亮太)ほぉ〜〜。
(町山智浩)『あしたのジョー』の少年院編はかなりこの映画と似てるとこがあって、公開と同時ぐらいに掲載されたんですが、謎なんですけども、すごく似てるんですよ。これはマンモス西とジョーの関係なんですね。
(山里亮太)は〜!
(町山智浩)で、あまりにもニコニコしてるから、もう負けたよって感じで、このジョージ・ケネディは、逆にルークの事を好きになっちゃうんですよ。しかもルークは、中で色んな楽しい事をして、脱走して、看守達の鼻をあかすんで段々人気者になっちゃうんですね、囚人達の。そうすると、もう本当に許せない訳ですよ看守。
(赤江珠緒)そうですね。
(町山智浩)で、ここで、この話は一体何なんだって事なんですよ。この『暴力脱獄』は。一体何についての映画なんだと。これは、人生っていうのは刑務所なんだっていう話なんですよ。
(赤江珠緒)えっ?
この『暴力脱獄』は、人生っていうのは刑務所なんだという話
(町山智浩)人間は生まれついて完全に自由じゃなくて、生まれや身分、ねぇ。経済的な状況があって、色んなルールに縛られてると。学校でも職場でも。ねぇ。刑務所と同じじゃないかと。
(赤江珠緒)は〜そういう事。
(町山智浩)しかも、最後はどんなに成功して金持ちになったとしても、死が待ってる。じゃぁ、人間は全て死刑囚と同じじゃないかっていう話なんですよ。で、そこからどうしても逃げられないんだったら、どうしたらいいのかと。それは、決してそういったルールに縛られないで自由に楽しく生きるしかないじゃないかっていう話なんですよ。
(赤江珠緒)すごい、哲学的な。。
(町山智浩)哲学なんですよ。だから刑務所の映画かと思って見てるとそうじゃないんだっていう事が途中でわかってくるんですけども。これは刑務所映画の最高傑作と言われている『ショーシャンクの空に』は、この『暴力脱獄』にものすごく影響を受けて作られていて、そっくりのシーンもあります。
(赤江珠緒)へぇ〜〜!ショーシャンクが、へぇ。
(町山智浩)あっちが”最高傑作”と言われてますけど、こっちの方が史上最高です。
(赤江珠緒)そうか。じゃぁこれは見よう。『暴力脱獄』。はい。
道の果てにあるもの
(町山智浩)これはね、彼らは強制労働で道を作らされてるんですね。その道の果てに何があるかっていうと、教会があるんですよ。教会っていうのは、神の家なんで天国、あの世を意味するんですね。人生っていうのは道を切り開いて死ぬまでの物なんだっていう事を意味してるんですよ。でその中で、苦難であっても、どんな事があっても笑おうぜ。笑わなくなったら負けなんだっていう話なんですよ。この映画はそういう意味で本当にすごい映画なんで『暴力脱獄』は。
(赤江珠緒)すーごいですね!へ〜。”暴力脱獄”では確かにちょっと、そこに辿り着くとはっていう。(笑)
(町山智浩)ちょっとアレなんですけど。(笑)まるで聖書を読んだような哲学がある映画なんで、是非ご覧いただきたいと思います。
(赤江珠緒)へ〜そうなんだ。ポール・ニューマン特集は10月21日からシネリーブル池袋、新宿ピカデリー他、全国順次公開となっております。いやもう俄然見たくなりましたね。
(山里亮太)ねぇ!
(町山智浩)もう是非ご覧ください。
(赤江珠緒)町山さん、ありがとうございました。
(山里亮太)ありした。
(町山智浩)どもでした!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
③かっこいい手という意味で、この手というのはポーカーの手を意味する
⑦この『暴力脱獄』は、人生っていうのは刑務所なんだという話