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ノースマン 導かれし復讐者の町山智浩さんの解説レビュー

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2023年01月17日更新
で、この映画は、この『ノースマン』っていうのは、その『ハムレット』っていうのはやっぱりシェイクスピアが書いた時代の時代設定になってるんですよ、衣装とか話し方とか全てがね。そうじゃなくて、そのバイキングの時代の9世紀、10世紀ぐらいの感じでそのまま映画にしたものなんですよ。(TBSラジオ「たまむすび」より)

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『ノースマン 導かれし復讐者』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

町山さん『ノースマン 導かれし復讐者』解説レビューの概要

①イングランドって何?ワールドカップでイングランドとウェールズとスコットランドが出場してる件
②ノースマンはノルマンの事で○○○○、○○○、○○○という意味
③ノルマンの物語はハリウッド製の映画が殆どなかった為制作
④父親を殺し母親である妃をめとった○○に復讐
⑤ストーリーはシェイクスピアの『ハムレット』
⑥『ノースマン』は時代設定に忠実で、バイキングの時代の9世紀、10世紀ぐらいの感じでそのまま映画にした
⑦クヨクヨ悩む『ハムレット』に対し、『ノースマン』は爽快
⑧『ノースマン』では『ハムレット』では明かされなかったもっと恐ろしいその自分の父の暗殺についての真相を知る事になる

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

『ノースマン 導かれし復讐者』町山さんの評価は

(町山智浩)最近ワールドカップやってるじゃないですか。それで、ちょっとなんかこういう会話をね、垣間見たので。あれ?と思って。イングランドとウェールズとスコットランドが別々に出場してるじゃないですか。

(山里亮太)はいはい、あ、そうだ。

(町山智浩)で、なんで?みたいな事をね、ネットで言ってる人がいたんで。

(赤江珠緒)あーそうか。ふーん。ま、イギリス全部含めてイギリスってイメージ、なるほど。

(町山智浩)そう。これは日本がね、いわゆる大英帝国をイギリスって呼ぶようになったせいで、ずっと間違いが起こってる。イギリスというのは要するにグレートブリテン、UKって言われてるね、連合王国の中の一部だけなんですよ。それを国全体としてイギリスって呼んじゃってるから、イングランドって何?ってなっちゃうんですけど。

(赤江珠緒)そっか。

イングランドって何?

(町山智浩)それで結構みんななんかよくわかんなくなってるんですけど、イングランドとウェールズとスコットランドは別々の国なんですよ。で、これが連合を組んで連合王国というのを形成してるんで。だからワールドカップとかバラバラに出てくるんですけどね。オリンピックなんかでは一緒に出てきたりするから訳わかんなくなるんですよね。で、この辺もすごくわかりにくい所があって。っていうのは、あの島自体は”ブリテン島”って言うじゃないですか。”グレートブリテン”って言うじゃないですか。

(赤江珠緒)ブリテンですね、うん。

(町山智浩)ブリテンって言って、イングランドって言って、何なの?みたいな事があって。すごくわかりにくいんですけど。元々島の名前が”ブリテン”なんですね。それは、そこに住んでた人達は”ブリテン人”っていう人達なんですよ。で、それは”ケルト”と言われてる人達で、ヨーロッパから流れてきた人達なんですけども、それを、イギリス全土にケルト系のブリテン人っていうのが住んでたんで、”ブリティッシュ”って言うでしょ?ブリティッシュ・エアウェイズ。それは、そういう意味なんですよね。ところが、その後に”アングロ人”という人達が来て、そのブリテン島の真ん中のあたりを支配しちゃったんですよ。

(赤江珠緒)あ〜、イングランドの所ですね、いわゆるね。

イギリスの語源

(町山智浩)それが、アングロサクソンと言われてるアングロ人の土地なんですね。で、それをイギリスの語源になるんですね、イングランドってのは。ところが、ややこしいのはアングロ人、イングランドっていう地名は実はオランダの地名なんですよ。

(赤江珠緒)あ、オランダ?うん。

(町山智浩)あ、オランダじゃないごめんなさい。(笑)えと、ドイツなんですね。ごめんなさい。ドイツとデンマークのあたりなんですよ。ごめんなさい、オランダはまた繋がってるんですけど。ややこしいんだこれがまた。ドイツの北にある地方があって、そこが、アングルと呼ばれてた、つまり”曲がってる”っていう意味なんですよ。アングラーって釣り師の事をアングラーって言うでしょ?釣りの針が曲がってるから。

(赤江珠緒)あ〜そうなんですね。うん。

(町山智浩)そう。それで、そのデンマークの半島のアングル地方っていうのは曲がってるから、そこに住んでる人達をアングル人と呼んでいて。それがイングランドを作ったから、だからイングランドとかイギリスっていうのは”釣り針”っていう意味なんですよ。しかも地名は、ドイツとデンマークの地名なんですよ。すごく変な事になってるんです。

(赤江珠緒)本当ですね、色々と入り混じってますね、本当に歴史上ね。

歴史上に色々入り混じっている

(町山智浩)入り混じっているんですよ。で、しかも、さっきオランダの話しましたけど、イギリス王国にはオランダの血も混じってて、しかもイギリスの紋章ってあるじゃないですか。そのクイーンとかが使ってるような紋章あるでしょ。あの紋章ってフランス語が書いてあるんですよね。で、イギリスなのになんでフランス語が書いてあるかっていうと、”ノルマン人”という人達がいて、それはノルウェーとかの人達ですね、北欧人なんですけど。その人達がバイキングだったんで、船に乗って斧とか振り回しながらフランスを侵略したんですよ大昔に。で、その侵略した地帯を”ノルマン人の土地”という意味で”ノルマンディー”と呼んだんですね。その人達がイギリスに攻め込んで、そのイングランドを支配しちゃったんで、その後。だからノルマン人はフランスに住んだ時にフランス語を覚えて、それでイギリスを支配したんで、イギリスの王国の紋章はフランス語なんですよ。

(赤江珠緒)は〜〜色んな民族によって、色を何度も何度も塗り替えられてるみたいな感じですね。

イギリス王国の紋章はフランス語

(町山智浩)そう。めっちゃくちゃややこしいんですけどね。で最初の話に戻ると、スコットランドとウェールズって一体どういう事なのかっていうと、ずっとブリテン島全体にブリテン人が住んでいたんですけど、真ん中の部分をアングロ人に支配されちゃったんで、その西の端と北の端にそのブリテン人は追いやられたんですよ。

(赤江珠緒)そっかそっか。で、いわゆるスコットランドとウェールズに。

(町山智浩)そう。北に行ったのがスコットランドで、西に行ったのがウェールズで、それぞれの王国を持ってたんで、それで、完全に占領するって形じゃなくて、連合を組んだんですね。だから、なんていうか、今スコットランドは完全独立しようとしてますよね今。イギリスからね。まぁイギリスからっていうとまたややこしいんですけど。UKからね、連合王国からね。という、ものすごくややこしい事がすごくヨーロッパでは起こってて。あっちゃこっちゃややこしいんですが、このブリテン人というのは実はフランスにも逃げたんですよ。それがブルターニュ地方なんです。

(赤江珠緒)ブルターニュ!ほ〜!

(町山智浩)ブルターニュ地方はフランスなんですけれども。まぁイギリス人に祖先がある訳ですよ。

(山里亮太)え〜!

(町山智浩)これ、めちゃくちゃややこしいんですよ。で、なぜそういう話をするかっていうと、そのノルマン人っていうのはどういう意味かっていうと、”ノルド”マンで、北の人達って意味なんですね。そういうタイトルの映画の『ノースマン』という映画を紹介します。

(赤江珠緒)はい。

ノースマンはノルマンの事で北の人達、北方人、北欧人という意味

(町山智浩)『ノースマン 導かれし復讐者』というタイトルなんですが、”ノースマン”っていうのは”Nordman”で、ノルマンの事なんですね。北方人、北欧人っていう意味です。これ1月20日に日本公開なんですが。これがその頃にバイキングの人達がヨーロッパ各地を冒険して、侵略していった時代の話なんですよ。で、主人公を演じるのはアレクサンダー・スカルスガルドという、この人はスウェーデン人なんですけど、ややこしいのはね、スカンジナビアっていう地方があって。スウェーデン人、ノルウェー人、フィンランド人ね。さっき言ったデンマーク。これ、大体ノルマン系で殆ど民族は同じなんですけど、国がバラバラになったんですよ。これもまたややこしいんですけど。しかもフィンランドにはアジア系のサーミ人がいたりしてね、ものすごくややこしいんですが。

(赤江珠緒)あぁそうなんだ。

ノルマンの物語はハリウッド製の映画が殆どなかった為制作

(町山智浩)で、この人はスウェーデン系なんですけれども、そのノルマンの物語っていうものはハリウッド製の映画が殆どないから作りたいっていう事でこの映画を制作しました、『ノースマン』という映画をね。これは時代は9世紀頃のデンマークで始まります。で主人公はスカルスガルドが演じる、アムレートという王子なんですけれども。次期国王になるはずだったんですけれども、自分の父親の国王が、これイーサン・ホークが演じてますが、叔父によって。つまりその国王の弟によって暗殺されちゃうんですよ。で、その主人公のアムレートはその時10歳だったんですけど、その現場を目撃して殺されそうになるんですが脱出します。

(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)で、父親を殺した叔父は、自分の兄の嫁である妃をめとって、王国を乗っ取るんですね。

(赤江珠緒)じゃぁアムレートの母を?

父親を殺し母親である妃をめとった叔父に復讐

(町山智浩)アムレートの母をめとっちゃうんですよ。で、その父を目撃したアムレートは名前を隠してですね、命からがら王国を脱出するんですけども、脱出しながら、父を殺して母を奪った叔父への復讐を誓うっていう話なんですが。まぁすごくなんて言うか話を聞くと、昔のね、王子様と王様の話だからって思うんですけども、これバイキングなんで。みんなね、裸に毛皮を着て、斧を振り回してるような筋肉モリモリの。そこに写真があると思うんですけど。そういう人達です、はい。

(赤江珠緒)じゃぁヨーロッパのいわゆる騎士みたいな、あぁいうイメージじゃないんですね。

(町山智浩)ああいうイメージじゃないです。もっと野蛮な、まぁアーノルド・シュワルツェネッガーみたいな感じなんですね。

(赤江珠緒)もっとワイルドね。本当ね、そうね。

(町山智浩)もっとワイルドなね。とんがった剣とかでこうフェンシングとかしたりするんじゃなくて斧で頭をかち割るっていう戦い方をしますから。

(赤江珠緒)そうですね、そんな感じですね。

バイキングらしいワイルドな戦い方

(町山智浩)こん棒とかでね。で、これ話を聞いてあれ?っと思った人はいるかと思うんですけども。これストーリーはシェイクスピアの『ハムレット』なんですよ。

映画「」のポスター

(赤江珠緒)は〜〜『ハムレット』もね、主人公がお父さんが毒殺されて、夢に出てきてね。

(町山智浩)そう。お父さんが死んでね、お母さんが、そのお父さんの弟と結婚するんだけども、その後お父さんの亡霊が出てきて、父の仇を打てってなんかプレッシャーをかけてくる話なんですけど。ただ、その『ハムレット』って日本でもよくお芝居とかでありますけども。大抵イケメンがやるでしょ?ハムレットの役は。優男でね。衣装なんかね、提灯袖の服にね、白タイツ履いたりして。

(赤江珠緒)そうですね、ザ・王子みたいな感じですね。

(町山智浩)そう。王子様っていう感じでやるんですけど。でも実はこれは、その10世紀前後のノルマンの、デンマークあたりのね、伝説が元になってるんですよ。この『ハムレット』っていうのは。

(赤江珠緒)あ〜そうなんですか、こっちが元。

(町山智浩)元ネタがあるんですね。それが『アムレート』っていう物語があって。どうも何らかの事実に基づいてるらしいんですよ。伝承として伝わってた物なんで。で、この映画は、この『ノースマン』っていうのは、その『ハムレット』っていうのはやっぱりシェイクスピアが書いた時代の時代設定になってるんですよ、衣装とか話し方とか全てがね。そうじゃなくて、そのバイキングの時代の9世紀、10世紀ぐらいの感じでそのまま映画にしたものなんですよ。

(赤江珠緒)は〜〜〜うん。

『ノースマン』は時代設定に忠実でバイキング時代をそのまま映画にした

(町山智浩)そう、だから、みんな殆どがウガーー!!って言いながら、ハンマー振るったりしてるっていうね。ものすごく野蛮で、頭を叩き割って脳みそが飛び散ったりするっていう内容なんですよ。でもその方が、歴史的事実に近いと。いう事で、ずっとね、たぶん思うんですけど。スウェーデンとかノルウェー人の人達は、シェイクスピアの『ハムレット』を見ながらね、デンマークの人達も、こんなんじゃねえよと思ってたと思うんですよ。

(赤江珠緒)ははは。

(町山智浩)こんなキレイな話じゃねえだろ?っていうね。俺達はバイキングだったんだから!っていうね。っていう風に思ってて、で、そういう本物に近くね映像化してるんで、まぁすさまじく血生臭い内容になってますね。またね、その『ハムレット』というのは1番有名なセリフはね、「生きるべきか死ぬべきか。それが問題だ。」というね、ハムレットのセリフで。とにかく復讐しろっていう風に父親から父親の亡霊からせっつかれるんですけど。クヨクヨクヨクヨ悩んでるんですよ。

(赤江珠緒)割とね、クヨクヨと。(笑)そうですね。周りも段々ちょっと不幸になっていったりしてね。

(町山智浩)そうそうそう。まぁ優男がクヨクヨ悩んで、悩んでいる間にかえって事態が悪くなってくっていうね。見てて非常にイライラするお芝居なんですよね。ところがね、本当の『ハムレット』であるアムレートはそんなんじゃないですよ。

(赤江珠緒)ほう!

クヨクヨ悩む『ハムレット』に対し、『ノースマン』は爽快

(町山智浩)もうとにかく何十人も最初からもうバッタバッタ切り殺していきますから。(笑)

(赤江珠緒)ほ〜〜!

(山里亮太)復讐に燃えて。

(町山智浩)バイキングですから。そんな悩んだりするような時代じゃないですよ。

(赤江珠緒)じゃぁもう敵討ちだと。

(町山智浩)そう。もうやるぜぇぇ!!みたいな感じで。(笑)もう全然違う世界になってるんですね。だから今までね、たぶんねバイキングの子孫の人達は本当にねシェイクスピア見てイライライライラしてたと思うんですよ。(笑)こんなんじゃねぇよお前ナヨナヨクヨクヨしやがって!やっちまえよ!」って思ってたと思うんですけど、やっちまえ!な内容になってるんですね。でね、またねこの話がすごくて、ヨーロッパを股にかけるんですよ。というのはバイキングはその頃フランスを占領して最終的にイギリスまで占領したって言ったんですけれども、そのノルマン人、ノースマンね。バイキングのその当時のですね10世紀前後の行動力というのはものすごいんですよ。とにかくもうそこらじゅうに行ってそのアイスランドとかグリーンランドも入植するし、アメリカにも渡ってるんですよ。

(赤江珠緒)えっ。アメリカまで?

(町山智浩)はい。これはね、だいぶ最近になって遺跡が発見されたんですね。アメリカに渡ってちゃんと街も作ってます。

(赤江珠緒)へぇ〜!あぁそうですか!

(町山智浩)すごい遠くまで行ってるんですよ。

(赤江珠緒)ヨーロッパ中に散らばっていった感じなのはイメージはあったけど、イタリアの方とかも行ったりね。アメリカまで!

バイキングの実行力

(町山智浩)そう。めちゃくちゃ遠い所まで行ってて、ものすごくガッツのある人達なんでクヨクヨ悩まない訳ですよ。悩んでるんだったらお前船に乗れ!みたいな世界なんで。でね、この映画の中でね、彼らがですねウクライナを侵略するシーンがあるんですよ。これね、ウクライナっていう国今すごく今、ロシアに攻められてるんですけど、ロシアもウクライナも実際に最初に国を作ったのはバイキングなんですよ。そこはスラブ系の人達が住んでたんですけれども、そこにスウェーデンとかノルウェーのバイキングの人達が攻め込んで、そこに王国を建てるんですよね。それがウクライナとかロシアの元になったキエフ大公国っていう国でですね、800年代に作ってるんですけど。すごいんですよそのバイキングの人達の実行力というか。

(赤江珠緒)本当ですね、ヨーロッパの歴史にかなり食い込んでいますよね。

(町山智浩)かなり実は作ってるんですね。しかもね彼らね、全くキリスト教徒じゃないんですよ。これすごくてね、彼らはいわゆる北欧の神話を信じてるんですね。

(赤江珠緒)あ〜〜、はい。

(町山智浩)だからしょっちゅう話に出てくるマーベルコミックスに出てくる雷様のソーっていう雷様がいますけど、そういうのを信じてて、ヴァルキリーと言われるね、ワルキューレ。戦いの女神といったものを信じてた、非常に野蛮というか戦闘的な宗教を持っていた人達でね。で、この映画の中ではただ、その頃既にローマ帝国がキリスト教化されてるんでキリスト教っていう物がある事は知ってるんですね。で、このアムレート達がキリスト教は怖いって言うんですよ。キリスト教とかいう変な人達がいるらしいなとか言うんですよ。なんか裸のおっさんがハリツケになってる物をみんなで拝んでるらしいぞって言うんですよ。

(山里亮太)あ〜〜〜。(笑)

バイキングも怖がるキリスト教

(町山智浩)これたぶんそうだったんでしょうね、怖かったんだと思いますよ。何を拝んでんだあいつらって。(笑)

(赤江珠緒)その表現間違ってはないと言うかね、そうか。

(町山智浩)間違ってはないんですけど。(笑)

(山里亮太)知らなかったらね、そう見ちゃうよね。

(町山智浩)そう。なんか気持ち悪い奴らなんだとか言ったりしててね、すごくおかしいんですけど。で、主人公のアムレートは父の仇を探してヨーロッパ中を駆け巡るんですけど。その後アイスランドまで行きますしね。ただ、その過程でちょっと違うのは、恋人を見つけるんですよ。その恋人はウクライナで捕虜にされてアイスランドまで連れて行かれる事になったスラブ人を、アニャ・テイラー=ジョイちゃんがまた演じてるんですね。

(赤江珠緒)あ、アニャちゃんが。

(町山智浩)はい。彼女ものすごい売れっ子になってるんで。

(赤江珠緒)ねぇあのクイーンズ・ギャンビットの。

(町山智浩)次々と色んなのに出てきてますけど。だからそれが『ハムレット』におけるハムレットの恋人のオフィーリアにあたるキャラクターになるんですね。オルガっていう名前にこの映画の中ではなってますけど。で、アムレートっていうのは、その元々の『ハムレット』の話っていうのは、復讐をしようとしてるって事がバレるとまずいんで、バカのフリをするというね、話が1番元の伝説なんですよ。で、あれですよ。『忠臣蔵』の大石内蔵助が。

(赤江珠緒)昼行灯と言われて。はいはい。

(町山智浩)そうです。復讐しようとしてると思われると困るから、ボケーとして酔っ払って。

(赤江珠緒)ちょっとできないフリをすると。

(町山智浩)そうそうそう、遊んでどうしようもないダメ〜〜な人のフリをしたじゃないですか。あれと全く同じ話なんですよ。

(赤江珠緒)なるほど。

バカのフリをして復讐をさとられないように

(町山智浩)で、ただ、シェイクスピアはそれを読んで、バカが主人公っていうのはまずいなと思ったのかよくわかんないんですけど。ハムレットは精神病のフリをするんですよね。で、実際精神病に近い感じでノイローゼで悩む訳ですから。復讐したらいいのかどうかってね、クヨクヨね。だからそういうね非常に哲学的な物語にしてったんですよ。だからシェイクスピアの『ハムレット』っていうのはその、近代人の哲学的な悩みみたいな物を始めて戯曲にした物として非常に評価されてるんですけども、元は、はぁ〜?とか言って、バカのフリをした復讐者の話なんで。(笑)全然違うんですよね。

(赤江珠緒)あぁそうなんですか。イメージがだいぶ違いますね。そうなると。

(町山智浩)全然違うんですよ。だからこれはね、シェイクスピアとかハムレットとか、なんか辛気臭ぇ話じゃないの?って思う人も多いと思うんですけど。本当はこれだったんだっていうのが見れるんですごい面白いですよこれ。もうとにかく非常に乱暴な話でですね。

(赤江珠緒)ねぇ。

(町山智浩)暴力的なんですけど。日本だと、お芝居とかで大抵イケメンの人がやってね。ほら市村正親さんとね、篠原涼子さんもこれで共演して結婚したんだもんね?

(赤江珠緒)そうか!

(町山智浩)確かそうですよね。で、市村さんとかこんなこん棒とか振り回せないですよだって。(笑)裸で。全然違う世界じゃんっていうね。あぁ、ヨーロッパの歴史は深いな〜っていうのがわかるんですけど。ただ、さっきも赤江さんが言ったんですけど『ハムレット』ってクヨクヨ悩んでたせいで、どんどん事態を悪くしてくんですよね。

(赤江珠緒)うんうん、オフィーリアもね。

(町山智浩)そう。愛するオフィーリアも死んじゃうしっていうか、オフィーリアのお父さんを間違って殺しちゃったりするんですよね。で、もうどんどん事態が悪くなって、最後はもう、殆ど登場人物全部死ぬっていう状況になるんですけど『ハムレット』は。

(赤江珠緒)そうそうそう。(笑)

(町山智浩)何やってんだこいつって。とっととやっとけばよかったじゃんって思うんですけど、見てると。(笑)で、こっちの方は、そういうクヨクヨはしないんですが、もっと恐ろしいその自分の父の暗殺についての真相を知る事になるんですね、主人公は。

(赤江珠緒)え〜〜。

『ノースマン』では『ハムレット』では明かされなかったもっと恐ろしいその自分の父の暗殺についての真相を知る事になる

(町山智浩)で、これ見てるとね、本当に『スター・ウォーズ』とか、『ロード・オブ・ザ・リング』とか、元はコレなんだって事がよくわかるんですよ。元はこの、要するに北方人達、ノルマン人達の伝説が『スター・ウォーズ』とか『ロード・オブ・ザ・リング』、指輪物語の元になってるんだって事がすごくよくわかります。

(赤江珠緒)う〜ん、なるほど。

(町山智浩)見てると、あっ!ここは『スター・ウォーズ』じゃん!みたいな所がいっぱい出てくるんで。これがやっぱりイギリスからね、アメリカに伝わってっていう所があるんで、色んなものが見えてくる、非常によくできた映画がこの『ノースマン』ですね。ただ、『ハムレット』よりもいい終わり方になってるのもすごいなと思いましたね。(笑)

(赤江珠緒)あぁそうですか。

(町山智浩)『ハムレット』って見た後ドヨーンとして帰るんですけど。ちょっといい感じになって、この血まみれ、グチョグチョの話が、ちょっといい気持ちにしてくれて終わるんですよ。ここもすごいなと思いましたね。

(赤江珠緒)へぇ〜!でも本当にバイキングの人達、色んな所の源流になってるから、そういうのが見え隠れしてるんですね。その後の作品にもね。

(町山智浩)そうなんですよ。ウクライナまで彼らが作ったなんて結構知らないですよね。という事で『ノースマン 導かれし復讐者』。”導かれし”っていうのも非常にね、意味深い内容になってますから是非ね、勉強にもなるし、すごくいい映画です。

(赤江珠緒)へぇ〜!来年(2023年)1月20日、日本では公開ということですね。『ノースマン 導かれし復讐者』でございます。町山さん、ありがとうございました。

(山里亮太)ありした!

(町山智浩)どもでした!

※書き起こし終わり

○○に入る言葉のこたえ

②ノースマンはノルマンの事で北の人達、北方人、北欧人という意味
④父親を殺し母親である妃をめとった叔父に復讐

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