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引用:IMDb.com

別れる決心の町山智浩さんの解説レビュー

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2023年01月31日更新
このジワジワした感覚。これがね、今までパク・チャヌクっていう監督は、『お嬢さん』でもそうですけど、ものすごく直接的なエロチシズムとかセックスシーンとかを出したり、あと復讐三部作とか、強烈なバイオレンスだったんですね。もう本当に血みどろのシーンとかを見せてた人で。それなのに今回は徹底的に抑える事で、逆に1番セクシーな映画になってるという。(TBSラジオ「たまむすび」より)

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)で、『別れる決心』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

町山さん『別れる決心』解説レビューの概要

①タイトルはラブストーリーだが、どこに話が転がってくのか全然わからない映画
②サッとなんでも出すドラえもんのような刑事
③○○○を好きになってしまう刑事
④直接的な表現が多かったパク・チャヌク監督
⑤今作は徹底的に抑える事で逆に1番セクシーな映画に

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

『別れる決心』町山さんの評価とは

→『パーフェクト・ドライバー』町山さん解説レビュー

(町山智浩)でもう1本の方は、逆になんだか訳がわからない映画なんですよ。職人技とは全く逆の方向です。非常に奇妙な奇妙な映画で、『別れる決心』という映画なんですけれども。これはですね、パク・チャヌクという韓国の、ニューウェーブの巨匠で、ポン・ジュノと並んでですね、韓国映画を世界的な物にした監督ですね。『オールド・ボーイ』とかですね、復讐三部作とか、アメリカでも映画を撮ってますし、あと『お嬢さん』っていう映画をたまむすびで僕紹介しました。

映画「」のポスター

映画「」のポスター

(赤江珠緒)あ〜見ましたよ!『お嬢さん』!

(山里亮太)見ました!

(町山智浩)エロい映画ですね。

(赤江珠緒)何回何回どんでん返しがあるんだ、みたいな。

(山里亮太)最後オワッ!って絶対なるやつ!

(町山智浩)そうそうそう。あれは日本が韓国を支配していた頃の、日本人のお嬢さんと韓国人のお手伝いさんのラブストーリーなんですけど、話がどんどん転がっていって、日本まで最後来ますし。

(赤江珠緒)ねぇ!

(町山智浩)何がなんだかわからないっていうすごい展開で、しかも結構スカッと終わる映画が・・。

(赤江珠緒)そう!面白かった!

(山里亮太)面白かった〜あれ!

(町山智浩)ねぇ面白かったんですよ、エロかったしね。

(赤江珠緒)あれ妊婦の時見に行った、映画館に。(笑)

(町山智浩)あれ胎教によくない映画ですけどね、ちょっとね。(笑)

(山里亮太)すごい言葉もいっぱい出てくるしね。(笑)

(町山智浩)そうね。日本だと放送禁止の言葉がいっぱい出てきますよね。韓国の人にとっては何でもない外国語だからね、平気で言ってますけど。(笑)そういう事でですね、そんな非常に変な映画ばっかり撮っているパク・チャヌク監督がですね、今回は刑事物なんですけれども、刑事物なのか、ラブストーリーなのか。ちょっとわからない。どこに話が転がってくのか全然わからない映画なんですね、この『別れる決心』は。まぁタイトルを見ると完全にラブストーリーなんですけどね、『別れる決心』ってね。

(赤江珠緒)はい。

引用:IMDb.com

どこに話が転がってくのか全然わからない映画

(町山智浩)非常にメロドラマ!な感じなんですけど。これね、主人公の刑事がですね、いきなり射撃訓練する所から始まるんですけど、これが佐々木蔵之介さんによく似た俳優さんですね、この刑事さんはね。ものすごく、射撃の的に正確に当ててるんですよ。もうど真ん中しか当たってないんですね。で、非常に慎重で完璧な刑事だって事がわかるんですよ。で、いつも服にはですね、ポケットが12個ぐらい付いてるんですよ、改造して。で、ありとあらゆる物がそこから出てくるというドラえもんみたいな人なんですよ。

(赤江珠緒)すごい。じゃぁ準備も万端で。

(町山智浩)スッとさ、ティッシュ出してくれる人っているじゃないですか。

(赤江珠緒)はいはい。

サッとなんでも出すドラえもんのような刑事

(町山智浩)サッとこうハンカチ出す人っているじゃないですか。この人はサッと色んな物を出すんですよ、リップクリームとかニベアとか色んな物を次々と出す、ドラえもん刑事なんですけど。とにかく用意周到で、超完璧な刑事なんですね。ところがある事件と出会うんですよ。それは山に登ってたロッククライミングを愛好する金持ちの男が転落死して。ただその奥さんがですね。非常に若い美しい中国人なんですね。これを演じるのはタン・ウェイさんという人で、この人はアン・リー監督の、これアメリカでも非常に当たった『

映画「」のポスター

っていう映画で世界的に評価された人で、『ラスト、コーション』っていうのは、やっぱり日本が上海を支配していた時に、中国人だけども日本側に寝返って、中国側の抗日ゲリラ、反日ゲリラを、狩り立ててる悪い奴がいたんですね。で、その彼の情報を引き出す為に、彼女が餌として彼に近付いて、セックスしながら情報を引き出すっていうスパイ物だったんですよ。『ラスト、コーション』っていうのは。

(赤江珠緒)あ〜、はい。

(町山智浩)で、彼女は10年以上前にそれに出て、まぁ全裸でですね、ものすごいセックスシーンを演じて世界的に注目された女優さんなんですけれども。で、そのタン・ウェイさんが容疑者としてね、旦那を殺したんじゃないかと。いう事で、取り調べを受ける訳ですよ。で、その旦那の死体の爪には彼女の皮膚があったんですよ。そうすると、掴み合いをして殺したんじゃないかっていう風に疑いますよね?

(赤江珠緒)まぁそうか、はい。

(町山智浩)そうすると彼女は、いや、それはここを引っかかれたんですって言って、取調室でスカートをまくって、その上の方の太ももの方のひっかき傷を見せるんですよ。すると刑事さんドキドキですよ。ドキドキで、もうどんどん彼女を好きになってっちゃうんですけどね。

(赤江珠緒)ええっ!?うん。

(町山智浩)なんか女優さんみたいだなっ、女優だよ!って思いましたけども。(笑)それで、もう好きになっちゃって取り調べの時にですね、最高級のお寿司をね注文したりするんですよ。

(山里亮太)ははははは。(笑)

(赤江珠緒)あら!

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殺人の容疑者を好きになってしまう刑事

(町山智浩)もう見るからにうまそうな1万円ぐらいの超高級寿司をね、取り調べてで・・カツ丼でしょ、普通。ねぇ。いきなり、だからすごいお寿司を出すんでね、他の刑事とか、あんな寿司は取り調べにねえだろ!とか怒り狂ったりしてるんですけど。(笑)そういうね、えこひいきしちゃうんですよ、容疑者に対して。この刑事さんが。あれだけ優秀だったのに、もうメロメロになってって。それでどんどんどんどん彼女を調べていくんですけど、でやっぱり怪しいから張り込みをしてですね見張る訳ですよ。双眼鏡で彼女のマンションの部屋を窓からね。で、見てるうちに、そのマンションに自分も入ってる自分の姿を想像しちゃうんですよ。

(赤江珠緒)ええっ。

(町山智浩)で彼女がタバコを吸ってると、そのタバコの下にスッと灰皿を出す自分とかを妄想するんですよ。

(赤江珠緒)うわ〜、なるほど。

(町山智浩)刑事なんだけども。

(赤江珠緒)うん、うん。

(町山智浩)大丈夫かお前っていう話になってって。ちょっとおかしいんですよ。コメディみたいなんですよ。その辺が。で、あとものすごくですね、さっき言ったみたいに、タン・ウェイさんはものすごいヌードシーンで出てきた人なのに、今回はもう一切そういう直接的なシーンがまるでなくて。この2人も殆どですね、指先が触れ合う程度しか触れ合わないんですよ。ちょっとキスぐらいはするんですけど、殆ど触らないです。

(赤江珠緒)うんうんうん。

(町山智浩)だから、逆にその2人の抑えた感じが、ものすごく、ちょっと指が触れ合っただけで、2人ともドキッ!としたりする感じが、すごいリアルでエロチックなんですよ。

(赤江珠緒)へぇ〜〜逆に。

(町山智浩)逆にね。見せない事で。

(赤江珠緒)なるほど。

リアルでエロチック

(町山智浩)で、彼女の手にね、貼ってあった絆創膏を取り替えてあげるんですね・・絆創膏もいつも持ち歩いてるんですよ、この刑事は。ドラえもんなんで。佐々木蔵之介さんに似てますけどドラえもんなんですよ。

(山里亮太)はははは。

(町山智浩)それで、絆創膏を貼るでしょう?すると彼女は1人になった時に、ふとその絆創膏に口づけをするんですよ。わかる?

(赤江珠緒)あれ彼女の方も・・?気持ちがこう、思いを寄せてるの?

(山里亮太)好きなの?

(町山智浩)そのシーンでそうわかる訳ですよ、見ている方も。それってない?誰か好きな人に貼ってもらった絆創膏に思わず口づけするみたいな感覚って。もうねーか?

(山里亮太)えー・・引き出しがないなぁ。

(町山智浩)ねーか!もうそんなのない歳か!

(山里亮太)いや、過去の青春時代を思い出してもないですよ!(笑)

(赤江珠緒)そうね、過去を思い出してもなかった、ごめん。(笑)

(町山智浩)今ものすごく思い出そうとしてたけど時間がかかり過ぎてますよね。(笑)過去が遠くなっちゃってるから。(笑)ただ、この彼女の気持ちっていうのはそういう形でしか示されないんですよ。

(山里亮太)なるほど。

引用:IMDb.com

ジワジワした感覚

(町山智浩)このジワジワした感覚。これがね、今までパク・チャヌクっていう監督は、『お嬢さん』でもそうですけど、ものすごく直接的なエロチシズムとかセックスシーンとかを出したり、あと復讐三部作とか、強烈なバイオレンスだったんですね。もう本当に血みどろのシーンとかを見せてた人で。それなのに今回は徹底的に抑える事で、逆に1番セクシーな映画になってるという。

(赤江珠緒)へ〜!

(町山智浩)これはね、うまいんだなぁと思いますね。

(赤江珠緒)でも、被疑者と刑事っていう事ですもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。で、調べれば調べるほど、どんどん怪しくなってくんですよ彼女が。どう考えてもおかしいぞと。しかも彼女は中国から韓国に来てるんですけども、中国でどうも殺人を犯したらしいと。

(赤江珠緒)あら。

(町山智浩)それで密かに密入国してきたと韓国に。で、殺された旦那っていうのは、実はその移民局の役人で、彼女を好きになったんで、韓国に移民させたんだけれども。っていう関係がわかってくるんですよ。

(赤江珠緒)はぁ〜〜。

(町山智浩)で、この彼女は体に入れ墨をしてるんですが、それはこの殺された男のイニシャルなんですよ。

(赤江珠緒)えぇ?

(町山智浩)で、この男は自分の持ってる物すべてに自分のイニシャルを刻み込んでいたんです。

(山里亮太)わわ!

(町山智浩)怖いでしょう?

(赤江珠緒)怖い・・!

(町山智浩)怖い話になってくんですよ。だから彼女には殺す動機がある訳ですよ、旦那を。で、どんどん彼女は怪しくなれば怪しくなるほど、刑事はどんどん彼女が好きになってっちゃう。「ダメだろそれっていうね。(笑)

(赤江珠緒)困ったもんだなこれは。

(町山智浩)そういうね、だから見てると、うわっ!どんどんダメになってく!大丈夫か?っていう映画なんですけど。それでいてね、この真面目な人がそういう事でどんどん失敗していくのって、やっぱりこう、笑っちゃう所あるんですよね。まぁ俺みたいなのが失敗すると、まぁ当たり前だなってなるんですけど。(笑)

(赤江珠緒)ははは。(笑)

真面目な人のおかしさ

(町山智浩)またやってんのかと思いますけど。(笑)こういう真面目なね、佐々木蔵之介さんがね、ドラえもんのね。が、どんどんどんどんヤバイ所に足を踏み入れてくおかしさみたいなね。あ〜〜ダメダメダメ!っていうおかしさがね、おかしいんですよこれ。というね、これは不思議なミステリー。

(赤江珠緒)そうですね。捜査する以上その彼女の事は注目しなきゃいけないんですもんね、仕事柄ね。

(町山智浩)そうなんです。だからこれね、すごく面白いのはね、この中でセリフで出てくるんですけど、「あなたのことを知りたい」っていう事で調べていって、知りたい知りたいと思う気持ちは、やっぱり恋なんだと。逆にそれがなくなったら愛は終わるんだみたいな話が出てくるんですよ。

(赤江珠緒)はぁ〜〜!

(町山智浩)人を愛するというのは、そのよくわからない人、どんな人なんだろうって知りたいっていう気持ちが恋愛なんだと。いう話が出てくるんですよ。実はこの刑事奥さんいるんですよ。

(赤江珠緒)あららら!

(町山智浩)そう。これね、刑事と犯人というものを通してですね。恋愛とは何かみたいな事を結構語ってる映画になってますね。

(赤江珠緒)え〜〜。あらどういう結末になるのか、コレまた気になる映画ですね。

(町山智浩)これまたとんでもない結末なんですよ。この刑事はね、とにかく迷宮入り事件とか未解決事件が大好きなんですよ。で、未解決事件の現場写真とか壁中に貼ってるんですよ、部屋中に。すると、この彼女がですね。あなたは私より未解決事件の方が好きなの?みたいになってくんですよ。で、未解決事件をですね、要するに未解決のままだから彼がそれに取り憑かれてるから、解決しちゃえばいいって解決したりするんですよ。(笑)

(山里亮太)ええー!(笑)どんな話急に!(笑)

(町山智浩)すごいでしょう?嫉妬してるの。未解決事件に。あなたこれに夢中だから解決しちゃうわって解決しちゃうんですよ。どんな話なんだっていうね。これもう解決したから、この写真貼らないでいいでしょってバリバリ剥がして焼き捨てたりするんですよ。

(山里亮太)へぇ〜!

(町山智浩)他の女の写真に嫉妬してるみたいなシーンなんですよ。なんだこの映画?っていうね。非常にね面白い映画ですね。

(赤江珠緒)それが『別れる決心』。

(町山智浩)タイトルから内容が全然わかんないですね。原題通りなんですが。(笑)

(赤江珠緒)あぁそうなんですね。『パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女』は1月20日日本公開です。そして『別れる決心』は2月17日に日本公開となります〜。町山さん、今日もありがとうございました!

(山里亮太)ありしたー!

(町山智浩)どもでした!

※書き起こし終わり

○○に入る言葉のこたえ

③殺人の容疑者を好きになってしまう刑事

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