フジヤマコットントンの町山智浩さんの解説レビュー
記事内に商品プロモーションを含む場合があります
映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『こねくと』(https://www.tbsradio.jp/cnt/)で、『フジヤマコットントン』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『フジヤマコットントン』解説レビューの概要
①フジヤマコットントンは、富士山の近くの障害者施設で綿物を作っている人達の話
②青柳拓監督は『東京自転車節』というドキュメンタリー映画の監督・撮影・主演だった人
③青柳監督の母親が働いていた障害者施設のドキュメンタリー
④青柳監督は小さい頃から○○○の人達と接してきた
⑤”障害者”という属性ではなく”個人”と接しなければ人はわからない
⑥普通に、自分達と同じようにただ生きているだけ
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
町山さん『フジヤマコットントン』評価とは
(町山智浩)でもう1本はね、『フジヤマコットントン』というドキュメンタリー映画です日本の。これも今週の10日土曜日から、ポレポレ東中野などで公開なんですが。これね、監督のね青柳拓監督という僕が前に色んなとこで紹介した『東京自転車節』というドキュメンタリー映画の監督・撮影・主演だった人ですね。
(石山蓮華)はい。
(町山智浩)これはコロナで大変な時にですね、彼は自転車でUber Eatsの配達員をやって自転車で。そのお金がなかったんですよ全然彼。だからUberで儲かるんじゃないかってその当時言われてて。Uber Eatsでね。それで本当に儲かるのか実験するっていうまぁドキュメンタリーコメディだったんですよ。これはね、まぁはっきり言って全然儲からないんですけど。本当にね、なんというか生活の為にやってるんですけどそのうちに、せっかく人々の食べ物を運んで繋いでいくんだから何とかコミュニケーションを取れないだろうかっていう事で頑張るんですが、ウーバーってみんなアレなんですね、みんなドア置きになっちゃってるんですよね今ね。
(でか美ちゃん)あぁ置き配、特にコロナ禍ではそうでしたね、対面しないようにっていうんで。特に多かったと思う。
(町山智浩)で彼は結局誰とも繋がれなくて、ものすごいつらい、お金が儲からない以上にそれがつらい。孤独で非常につらい思いをするというドキュメンタリーがその『東京自転車節』だったんですが。その青柳監督がですね、今回撮ったのがですね。彼のお母さんがずっと働いてた障害者施設のドキュメンタリーなんですよ。で、そのまぁ障害者の人達がそこで働きながら暮らしてるのを1年間追ったものなんですね。で、どうして1年かっていうと、その施設ではですね、あ、”フジヤマ”っていうのはね、富士山の近くにある所だからなんですけど。
(石山蓮華)フジヤマコットン。
(町山智浩)はい。コットントンっていうタイトルはね、そこでね綿花の種を蒔いて、綿花を種から育ててですね、糸を紡いで織物を作っていくという事をやってるんですよ。その障害者の人達が。
(でか美ちゃん)それでコットン。
青柳監督の幼少時
(町山智浩)それが1年なのでコットン、で、コットントンなんですけども。で、この青柳監督はね、すごく幼い頃からそのお母さんの職場って事で障害者の人達をずっと接してきた人なんですね。だから子供の頃からだから、障害者の人を障害者としては見なくなってるんですよ彼は。で、この映画は色んな、ダウン症の人とか色んな形の知的障害の人とかが出てくるんですが。その人達が障害者であるとか、どんな障害を持ってるって事は全然どうでもいい映画になってます。それよりも、1人1人の人間がですね、どういう人なのかっていう事を描いていく映画になってるんですね。で、これは障害を持った人だったり、あと例えばさっき、白人っていうだけで付き合おうとするベンくんという話をしたんですけども。
(町山智浩)白人っていうのも障害と同じで人種だから、それは属性であって、その人じゃないですよね。それで実際付き合うと属性って消えちゃうんですよ。その人個人になる。その人個人になるまで接しなければやっぱり人はわからないんで、やっぱり”白人”とか”韓国人”とかそういう形で属性でしか捉えないっていうのは、やっぱりそれ見てないんですよ。実態を見てないんですよ。わかってないんですよ。だからそれが、ひどい事になっていくんですね。で、青柳監督がこの『フジヤマコットントン』を撮ろうとした理由っていうのは、相模原で障害者施設の虐殺事件がありましたよね、2016年に。その施設で働いてた男性がですね、障害者の人達を国に負担がかかるとかいう理由でですね、大虐殺した訳ですけども。その中で出てくるのは、障害を持った人達には価値がないんだと、いう考え方があった訳ですけども、じゃぁ価値って何?っていう事なんですよ。えっ、人って価値があったり、なかったりするの。価値がない人は生きちゃいけないのっていう根本的な問題なんですよね。で、この『フジヤマコットントン』で障害者の人達を見てれば、価値がない人なんていないんですよ。そんな人はたぶんいないんですよ。おそらく。だから、そういった事に対して、ちょっとわかってないんじゃないのと。いう事がわかるんですね。で、これでなぜ綿花を育ててるかって言うと、みんな綿のパンツとか履いているでしょう、綿のシャツとか着てるでしょ。でも綿ってどうやって作られるか知らないでしょ。知らないで生きてるんですよ。
(石山蓮華)なんかね、もう製品の状態でやっぱり手にする事が多いですよね。
(町山智浩)そう。種から花が出て、その花を取ってそこから種を分離して、綿繰りっていうのをするんですけど。そういう作業とか、全然知らないでしょみんな。
(石山蓮華)そうですね。
知らないから起こる
(町山智浩)それと同じだと思うんですよ障害者の人達を知らないっていうのは。で、何人がとか、クルド人がとか言う人もいるけど、あんた話した事あんの?って事ですよ。全部知らない事から起こるんですよ。全て同じなんだという事は非常によくわかってくる映画が、この『フジヤマコットントン』なんで。本当に優しいけれども何も起こらない。何も起こらないけど優しい映画なんで、この青柳監督のね、優しさが非常ににじみ出た映画なんで是非見ていただきたいなと思います。
(石山蓮華)はい。ありがとうございました。
■後日談
(石山蓮華)そしてもう1本ご紹介いただいた『フジヤマコットントン』いうドキュメンタリー。私もね、でか美ちゃんもご覧になって。すごく私はよかったなと思いました、『コットントン』。仕事を通じて人間がどう豊かになっていくかっていうのをこう、まっすぐに描いた素晴らしい作品だなと思って。そのテーマとしては差別とか、そういうレッテルを問い直す作品なんですけれど、本当にこう、なんだろうな。全く説教臭くなく、端正な映像で朗らかに楽しく見られまして。で、なんか仕事中急に泣き出す人がいたりとか、仕事の進みが人より遅い事に悩んでいたりとか、仕事の後あてもなくモールをウロウロしていたりとか。もう自分を見るような感じでも楽しく見ましたね。
(でか美ちゃん)私も見させてもらって。私は年始の録音放送の時に、私がおすすめ映画が紹介するっていう流れで『月』という映画を紹介したんです。月もフィクションでドキュメンタリーではないんですけど障害者施設の事を描いてて。そこはフィクションとして私が思う部分ももちろんあったんですけど。年始の放送でもちょっと言ったんですけど、私兄が精神疾患の方があるので、そういうこう施設とかで暮らしてるんですね。なんで、この『フジヤマコットントン』に出てくる、みらいファームにいらっしゃる方が持っている障害とかとはまた兄のはちょっと違うんですけど、精神疾患なんで。なんかね、うちの兄もずっとこう、なんだろうな、施設にいた頃と、ちょっと軽くなったので外泊届とかをそんなにいちいち出さなくていい段階の施設に移るとかがあったりして。社会と繋がる度にね、やっぱり元気になってくんですよね。だから妹として、言い方がその極端かもしれないけど、お兄ちゃんが楽しく生きてたら社会復帰しなくていいと私は思ってるし、思ってたんですけど、社会と繋がる事でお兄ちゃんが元気になっていくんだっていうのを結構間近で見てきたんで、なんかみらいファームの皆さんのね、織物だったりとか自分の得意な事を見つけてちょっと表情が柔らかくなる瞬間とかっていうのは、なんか結構身近な出来事に近い感覚として見れたんで、すごくこう優しい気持ちになったし。自分は兄がいるのでそういう感情で見れたけど、身近にね、そういう方がいない方も、なんか想像が及ばない部分はどうしてもあるとは思うんで、見る事で普通に、自分達と同じようにただ生きているだけだというかね。なんかそれがすごい伝わるドキュメンタリーだなっていう風に私も感じて。すごく優しい気持ちになりました。
普通に、自分達と同じようにただ生きているだけ
(町山智浩)うんうん。これ監督の青柳さんがね、もう本当にちっちゃい頃からお母さんが障害者施設で働いてたんで、普通に出入りしてて。そういう人達がまぁ差別されるとか。最近のひどい話だと生産性がないとかですね。だったら国に迷惑をかけてるんだから死んでも構わないって事で殺人事件まで起こった訳ですけども。じゃぁ本当に身近で子供の頃から接してるその青柳さんはどう思ったかっていうと、ただの人達であって、人とみんな違う、違い方があるだけなんだと。という感覚でそのまま撮ったっていうのはね、すごく・・そういう環境にいたという監督さんもね、そんなに多くないと思うんで、頭で考えたものじゃなくて、やっぱり体で、心で撮ってるっていうところがすごくいいんですよね。で、1人のね、障害者の人が・・あ、1人じゃないみんななんですけど、すごくいい言葉を言うんですよ。みんな。
(でか美ちゃん)そう!最後の方ですよね。
(町山智浩)そう。本当にね泣けちゃうんですけどね。
(石山蓮華)なんか・・希望の花を咲かせるんだって言ったりしてましたね。
(町山智浩)希望の花、咲かせちゃってもいーい?とか言うんですけど。
(石山蓮華)あぁそうだそうだ!そうでした。
(町山智浩)うわー!って思いましたよね。あぁいい言葉だなと思って。だからその障害って何だろうとね。すごく頭が良くても、ずるい事ばっかりしてる人はいる訳ですよ。官房長官とかね!ほんとに、4千何百万円をね、クビになるっていう2週間前にね自分の方にね取っちゃったっていうね。
(石山蓮華)こすいね〜。
(町山智浩)これはただの、殆ど、そんなのありかよっていう人とね、障害を持ってる人と、それこそ世の中にとって大事か大事じゃないかって話をして殺人した人がいるけど、もっと考えろお前!って思いましたね。
(石山蓮華)そうですね。いや是非『非常に残念なオトコ』も『フジヤマコットントン』も、見ていただきたい映画でした。
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
④青柳監督は小さい頃から障害者の人達と接してきた