TATAMIの町山智浩さんの解説レビュー
記事内に商品プロモーションを含む場合があります
映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『こねくと』（https://www.tbsradio.jp/cnt/）で、『TATAMI』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『TATAMI』解説レビューの概要
①アカデミー賞ノミネートのイラン映画
②柔道の映画
③イランの主人公の女性が優勝一歩手前で、イラン政府に○○しろと言われる
④イランはイスラエルを国として承認していない
⑤対戦相手がイスラエル人なので、対戦をするとイスラエルを承認した事になる
⑥主人公は両親を○○されてしまう
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『TATAMI』町山さんの解説とは
（町山智浩）でね、もう1本実はイランを舞台にしたっていうか、イランについての映画があって、これもね再来週公開されるんですけど。それねイラン映画なんですけど『TATAMI』っていうタイトルなんですよ。これ柔道の映画です。
（でか美ちゃん）じゃぁ本当に”畳”のTATAMIなんですね。
（町山智浩）ほんとの畳。原題も『TATAMI』。柔道世界選手権に女性の選手が出場するんですね。なんかこれね勝ち抜きなんですよ。めちゃくちゃきついと思うんですけど。
へぇ。なんかルールが・・結構違うというか単純過ぎますね。（笑）
（町山智浩）いやぁ勝ち抜きだとキツイですよ。
（石山蓮華）試合数がねぇ。
（町山智浩）試合数すごいから。ところがね、この主人公の女性はどんどん勝っていくんですよ。でこのままだと一気に優勝するかもしれないとなったら、イラン政府が棄権しろって言うんですね。それテレビで見てて。
イランの主人公の女性が優勝一歩手前で、イラン政府に棄権しろと言われる
（町山智浩）で、どうしてかって言うともう1人勝ち進んでるのがイスラエルの選手なんですよ。で、イラン政府はイスラエルっていう国を承認してないんですよ。イスラエルという国は不法にあそこを占拠してるっていう事で、それなのに国際大会で戦っちゃうと国として認めた事になっちゃうから。だから棄権しろって言うんですね。これ実際にあった事件なんですね。男子の柔道で、日本の大会であったらしいんですよ。でも棄権したくない訳ですよ、このヒロインは。主人公は。だって一生懸命やってる訳だから。で勝ちそうなんだもん、優勝しそうなんだもん。そしたら、これ試合してる最中イランと国際電話で話してるんですけど、お父さんお母さんがイラン警察に拘束されちゃうんですよ。
（石山蓮華）えっ。急な話で。
（でか美ちゃん）すごい棄権に向けての圧力。
（町山智浩）お父さんお母さん生かしてほしかったら棄権しろって言うんですよ。でもそれでも、どうしようって悩んでると、今度は旦那と息子がいた。旦那と息子がやられちゃう。で今度旦那と息子さんが国外に脱出しようとするんですよ。ちっちゃい息子さんがね。っていうね、映画自体はその数時間の柔道大会を描いてるんですけど、そこで勝ち進むに従ってどんどん危険になっていくっていうサスペンス映画なんですよ。
（でか美ちゃん）うわ〜勝ちたいけどっていう感じですよね。
（町山智浩）そうなんです。これね、どっちもイラン映画なんですけど、とんでもないね実態を、これもイランの人がね国外に脱出して撮った映画なんですけど。命がけで映画撮ってるんですよ本当にみんな。すごいなと思いますよ。映画を撮る事で生きるか死ぬかなんですよ。
（石山蓮華）本当にそうですね。
命がけで映画を撮影
（町山智浩）すごい状況なんですけど。で、ちょっと説明すると『聖なるイチジクの種』っていうタイトルだとちょっとピンと来ない感じするんですけど、これはねイチジクっていうのは寄生系の木で、ヤドリギっていうやつなんですね。で、他の木に根を差して、その木を枯らして乗っ取っちゃうというね、ものなんで、実は寄生系のヤドリギっていうのは古来から世界中で非常に崇拝されてるんですよ。すごい生命力が強いっていう事で。古今東西。ただ、それはこの映画のタイトルにつけてるのは、一体誰がイチジクなのかっていう事なんですよ。つまりイランという国に寄生しているのは一体誰なんだ。そしてその国を枯らそうとしてるのは誰なんだという事ですね。まぁそのひどい政府なのかね、そこに革命を起こそうとしてる女性達なのかっていう事ですけど。この監督ね、同じようなテーマを結構撮ってて、この前に撮った映画がね、なんと日本の監督の作品とタイトルが同じで、『悪は存在せず』っていうタイトルなんですよ。
（石山蓮華）あ、そうなんですか、『悪は存在しない』っていう映画がありますよね。
（町山智浩）そう。そっちと違ってこっちのイラン映画の方は主人公がね善良な優しいお父さんなんですよ。で家でも優しくておとなしくて。それでお母さんにもよくしてて、奥さんにもね。それでみんなから愛されてるんですけど、勤め先に行くと、やってる仕事は反体制学生の絞首刑のボタンを押す係なんですよ。で彼自身は全く善良な市民なんだけれども、ただ生活を守るために非常に悪い政府に加担してるというね、話で。だからテーマ的には非常に同じなんですけども。いわゆるその凡庸な悪と言われてる、そのナチが大虐殺をしてる時にね、それに加担してた人達はただのお役所仕事としてやってたと。だから自分は悪くないっていう事を言っていたりする訳ですけど、そういった事をこの映画はテーマにしていて。
あともう1つはこの4人の家族っていうのがイランという国そのものを表現してるんですね。お父さん、お母さん、娘達はね。この手法っていうのは実は過去にあって、『ミツバチのささやき』というねスペイン映画があるんですよ。
1973年の。これね、スペインが軍事政権だった時にそこで作られた、子供向け映画として作られたんですけど、子供向け映画のように見せて実はこれ女の子2人とお父さんとお母さんの話なんですけど。そのスペイン軍事政権下で酷い目に遭いながらも何とか生き延びようとしてるスペイン国民自体を表現してるんですよね。
だから、そうしないと作れなかったから。政治的な内容だって事になると弾圧されちゃうから、子供映画のように見せかけて作るっていう手で。。まぁちょっとそれも狙ってたんですけど途中でばれちゃうんですけど。で、まぁ他人事のように思う訳ですが！もう僕にとっては他人事ではないんですよ。
トランプ大統領が先週ですね、キリスト教徒に敵対する人達を取り締まる大統領令というのを出しました。これは何と驚いた事に司法省、要するに法律をつかさどるところの下にですね、反キリスト教を取り締まるためのタスクフォース。要するに特別部隊というのを設置するという宣言がなされたんですよ。
（石山蓮華）恐ろしいですね
（町山智浩）事実ですよこれ。一応政教分離の法則というのがあって、イランみたいに政治と宗教が合体しちゃうと大変な事になって国民の自由を潰しちゃうから、アメリカは一応憲法で、政治と宗教、国と宗教は離れていなければならないという風に規定されているんですが。それを真正面からぶち破ってくる大統領令を出しましたよ。
（でか美ちゃん）てか政教分離って日本も色々思うところあるけど、基本中の基本じゃないですか。
（町山智浩）基本中の基本ですよ。
（でか美ちゃん）その上で信仰の自由があって、どういうものを信じてもいいと思うんですけど。そんな事したら駄目に決まってない？って普通に考えたら思いますけどね。
（町山智浩）完全に憲法違反なんで、もう大変な事態になってるなと。思うんでね、イラン映画っていうのはもう本当に今まで遠い国の話だったんですけど、まさか自分の足元で起こるとはね。もうびっくりしてますよ今。という事でね、この映画は今週公開ですね。『聖なるイチジクの種』は。
（石山蓮華）そして今日は改めまして、今週14日公開になる映画、『聖なるイチジクの種』。そして再来週28日に公開になる『TATAMI』という2作品をご紹介頂きました。
（町山智浩）もうね、今の世の中どこの国もイランが他人事じゃないですよ本当に。イランは昔自由な国だったんですよ、実際本当に。女性がミニスカートを履いていた国ですよ。それもこんなになっちゃうんで本当に他人事じゃないのでぜひご覧ください。
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
③イランの主人公の女性が優勝一歩手前で、イラン政府に棄権しろと言われる
⑥主人公は両親を拘束されてしまう
