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引用:IMDb.com

ムーンライトの町山智浩さんの解説レビュー

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2020年05月06日更新
メリル・ストリープさんは最期にですね、亡くなったキャリー・フィッシャーさん、レイア姫のキャリー・フィッシャーさんの言葉を引用して、こう言ったんですよ。 「我々は心を打ち砕かれることがあります。」と。「でも、それを拾い集めて作品を作るんです。」と言ったんですよ。まさにこの『ムーンライト』は、そういう作品でしたね。(TBSラジオ「たまむすび」より)

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/) で、
バリー・ジェンキンス監督のアカデミー受賞作品「ムーンライト」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。 
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

町山さん『ムーンライト』解説レビューの概要

①ゴールデングローブ賞ドラマ部門作品賞受賞『ムーンライト』
②監督と脚本家の運命的な共通点
③テーマは、大ヒット映画『〇〇』と同じ!?
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。 TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。 

 

まずは、ゴールデングローブ賞を受賞したラ・ラ・ランドについて

(町山智浩)
それで、また別の映画賞の話をちょっとしたいんですけども。
昨日、アメリカの方でゴールデングローブ賞が発表になったんですね。

(赤江珠緒)
そうですね。

(町山智浩)
これはアカデミー賞の、なんというか前哨戦と言われているもので、これでだいたい今年の賞をとりそうなものがわかると言われているんですが。
これはハリウッド外国人記者協会の人たちが選ぶんですね。
そんなに人数はいないんですけれども、ハリウッドに入っている雑誌とかの特派員の人たちが選ぶんです。世界中から来ている。
で、今回僕が『たまむすび』の方で紹介させてもらって、
「今年のアカデミー賞に全部行くだろう」って言っていた映画で、ミュージカルで『ラ・ラ・ランド』という映画のことを紹介したんですけど。これが7部門独占ですね。

(赤江珠緒)
すごいなぁ。

(町山智浩)
作品賞、監督賞、主演女優、主演男優、作曲、主題歌、脚本賞を全部持っていっちゃったと。

(赤江珠緒)
へー!

(町山智浩)
で、まあこれはアカデミー賞に行くでしょうね。

(赤江珠緒)
そうですか。町山さんも大絶賛でしたもんね。

(町山智浩)
はい。ただ、これすごく難しい映画で。たぶんハリウッドでは大絶賛なんですよ。
これは、表現をしたり、演技をしたり、音楽を作ったりするアーティストについての話なんですね。
アーティストとかそういった人がいったいどういうものを犠牲にしてアートを得るのか? という物語なんですよ。
だから、そういう中で生きている人にとってはものすごく切実な映画なんですけど、そうじゃない人にとってはちょっとわからない映画でもあるので。このへんが難しいところだなと思っているんですけど。

(赤江珠緒)
ふーん。

(町山智浩)
で、ゴールデングローブ賞、そういう演じる側じゃない人。
映画を作ったり、芸術を作る側じゃない、記者の人たちが選ぶ賞でとったので、すごく一般性を勝ち得てきたなと思いますけどね。
はい。そういう映画が『ラ・ラ・ランド』で、僕はこれは素晴らしい映画だと思っているんですけど。

(赤江珠緒)
はい。

(町山智浩)
で、それは『ラ・ラ・ランド』が作品賞をとったのはミュージカル・コメディー部門なんですね。
ゴールデングローブ賞には作品賞が2つあるんです。ミュージカルとは別に普通のドラマの方はドラマ部門といって別の作品賞になるんですよ。

(赤江珠緒)
ああ、そうなんですね。

引用:IMDb.com

ゴールデングローブ賞、ドラマ部門を受賞したムーンライトについて

(町山智浩)
で、そちらの方を受賞した映画を今日はちょっと紹介したいんですが。
それで作品賞を受賞したのが『ムーンライト』という映画です、はい。
これ『ムーンライト』っていう映画は、出演者が、まぁほとんど99%黒人なんですよ。

(赤江珠緒)(蓮見孝之)
ふーん。

(町山智浩)
はい。で、これがすごくその重要なのが、去年ゴールデングローブとかアカデミー賞とかにノミネートされていたのは白人ばっかりだったんですよね。

(蓮見孝之)
はぁ。

(赤江珠緒)
ん~。おっしゃってましたね。うん。

(町山智浩)
はい。で、これ白人ばっかりでおかしいじゃないかって言われてたんですけど、今年はこの『ムーンライト』であるとか『ラビング』っていう映画が、その、白人黒人の結婚を描いた映画なんですね。
昔、南部では白人と黒人の結婚が禁じられてたんです。それの、えー、まぁ突破口を開いた夫婦の話が『ラビング』なんですけど、
えー、それとか、まぁあの黒人の人達の、なんていうのかな、非常に今年は多くてですね、ゴールデングローブも。
多分アカデミー賞も多くなってくるんですけど。
だからまぁすごくハリウッドっていうのは、いろんな人たちがいるんだっていうのを証明することになったと思います。はい。

(赤江珠緒)
ふーん。

ムーンライトの制作は、ブラッド・ピットの会社

(町山智浩)
で、この『ムーンライト』っていう映画はこのね、あとね、すごいのはね、やっぱりまたしてもブラッド・ピットの会社が作ってるんですよ。

(赤江珠緒)
ほー。ブラッド・ピットさん。はい。

(町山智浩)
ブラッド・ピットすごいんですよ。

(赤江珠緒)
すごいんですね。

(町山智浩)
前にも、その、アカデミー賞を獲った「それでも夜は明ける」っていうやはりその黒人の、自由黒人の人が南部で無理矢理奴隷にされちゃった話があったんですけども。

(赤江珠緒)
うんうん。

(町山智浩)
あれもブラッド・ピットでしたね?

(赤江珠緒)
うん、そうでした。

(町山智浩)
ブラッド・ピット、すごいですよ。あの、アカデミー賞とか、沢山その家に多分あるんですよ。トロフィーが。

(赤江珠緒)
へー。

(町山智浩)
でもね、ブラッド・ピット一人ですよ。今。

(赤江珠緒)
ん?

(町山智浩)
奥さん、子供連れて逃げちゃったじゃないですか。ブラッド・ピットって。

(赤江珠緒)
はいはいはい。そっちのニュースも大きかったですね。

(蓮見孝之)
そっかそっか。

(町山智浩)
ねー。だからまぁ家に帰るとオスカーがゴロゴロ転がってるけど、一人で寂しくて。

(赤江珠緒)
いやいやいや。

(町山智浩)
プロデューサーとして優秀でもね、まさかね、そんなことになるとは思わなかったですよ。

(赤江珠緒)
そうですよね、うん。

引用:IMDb.com

ムーンライトは、黒人だけが住んでいる町、実在する町が舞台

(町山智浩)
それは置いといてですね、この『ムーンライト』っていう映画はですね、あの、これ、フロリダのマイアミという町がありますけども、そこの近くにあるですね、黒人だけが住んでる町があるんですよ。
実際にある町で、リバティー・スクエアというところで、その753世帯しかないところなんですけども、そこを舞台にした話なんですね。

(赤江珠緒)
はい。

(町山智浩)
で、そこで育った子供が主人公で、1980年くらいに生まれた子が小学校、高校、大人になるっていう三段階で描いている映画です。
『ムーンライト』は。その一人の少年の成長を描いています。

(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
で、この男の子が黒人で貧乏で、ものすごく貧しいんですけども。さらにゲイってことで、ものすごい、その、虐められて育っていくんですね。
そう聞くと、「貧乏で黒人でゲイ」っていうと、その、すごく日本の観客の人から非常に遠いものになってくるじゃないですか。一般の観客の人からは。

(赤江珠緒)
うん、まぁ確かに。

(町山智浩)
そういうことじゃないんだっていう話をしていきたいんですけれども。

(赤江珠緒)
ええ。

貧乏で黒人でゲイ、一般的には遠い物だが・・

(町山智浩)
これまず監督がバリー・ジェンキンスっていう人で、この人、映画二作目なんですけど、長編は。
この人自身がこのシナリオを見つけた時に、「これ俺に関係ねぇや」と思ったらしいんですよ、最初。

(赤江珠緒)
あ、その人自身が。うん。

(町山智浩)
その人自身が。この人自身、バリー・ジェンキンスは、黒人なんですけどゲイじゃないから。
で、この脚本書いた人はですね、えっと、タレル・アルヴィン・マクレイニーという人で、この人は実は自分がゲイで、自分自身の子供の頃の話として書いてるんですね、この脚本を。

(赤江珠緒)(蓮見孝之)
へー。うんうん。

(町山智浩)
はい。だからちょっと関係ない感じがしたらしいんですよ、監督は。

(赤江珠緒)
はい。

(町山智浩)
ところが読んでみて、あと、この脚本家のマクレイニーのことを知って驚いたのが、
彼と、その監督が、歳が一歳違いで、同じ小学校に通って同じ町に生まれていたんですよ。

(赤江珠緒)
へー。

(蓮見孝之)
たまたま?

(町山智浩)
そのフロリダのリバティー・スクエアっていう750世帯のうちのどこかに、監督も脚本家も住んでいたんですね、子供の頃。

(蓮見孝之)
へー。

(赤江珠緒)
じゃあ、すれ違ってるかもしれないんだ。

引用:IMDb.com

主人公の男の子と、監督は全く同じ人生だった

(町山智浩)
そうなんですよ。で、驚いたのと、この主人公の男の子、このマクレイニー自身は子供の頃、母親にネグレクトされて、完全に育児放棄されたんですけど、母親が結局麻薬中毒なっちゃったんですね。

(赤江珠緒)
うわー。もう、ひどい環境でしたね。うん。

(町山智浩)
で、シングルマザーでね。
それで結局母親は育てられないんで親戚の所とか施設に預けられたりして大変な目に合うんですけど、このマクレイニーさんは。
その話なんですが、監督自身も全く同じ人生だったんそうなんですよ。

(赤江珠緒)(蓮見孝之)
へー。

(町山智浩)
それで、「これは俺がやるしかない」って言って映画にしたのがこの『ムーンライト』なんですね。はい。
で、このリバティー・スクエアっていう所がですね、95%がアフリカ系なんですよ、住民の。

(蓮見孝之)
へー。

(町山智浩)
で、本当にアフリカ人しか、アフリカ系の人しか出てこない映画なんですよ。アメリカ映画なんですが。

(赤江珠緒)
へー。

(町山智浩)
ただね、この映画はね、観てまずすぐハッとするのがね、とにかく撮影が綺麗なんですよ。

(赤江珠緒)
映像が?

(町山智浩)
映像がものすごく綺麗で。まず背景がキラキラ輝くですね、その、フロリダの光と木漏れ日とか緑の葉っぱとかですね。
海の光とか、そういうのがものすごく綺麗で、ずっと映画が輝いている状態なんですよ。
で、それだけじゃなくて、出てくる人全員黒人なんですけど、全員が彫刻のように美しいんですよ。

(赤江珠緒)
それは撮る技術ですか?

(町山智浩)
あのね、肌がブロンズのように光ってて、彫刻みたいなんですよ。

(赤江珠緒)(蓮見孝之)
へー。

(町山智浩)
で、これ主役の男の子が大人になった時を演じるのがですね、トレヴァンテ・ローズっていう元陸上の選手で、体がものすごく綺麗なんですよ。

(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
その人のヌードがずっと映るシーンがあって、本当に彫刻みたいなんですよ。

(赤江珠緒)
あ、そうなんですか。

(蓮見孝之)
はぁ。

ムーンライト、全員が彫刻のように美しく見える技術

(町山智浩)
美しい!って。これほど黒人の人、アフリカ系の人の身体を美しく撮った映画は、多分前代未聞なんですよ。

(赤江珠緒)
あ、そんなに。

(町山智浩)
すごいんですよ。で、その風景も背景もすごく美しくて、こんな美しい映画の背景、風景っていうのは映画で見たことないですよ。

(赤江珠緒)
え。

(町山智浩)
だから光が画面から差してくるんです。木漏れ日が、観客に向かって。

(赤江珠緒)(蓮見孝之)
へー。

(町山智浩)
で、はっきり言うと、その『君の名は。』っていうアニメーション映画ありましたけど、あの背景にそっくりなんですよ。

(赤江珠緒)
ふーん。

(町山智浩)
で、どうしてこんなに綺麗なんだろうと思ってネットを探したら、これは実は作ったもんだと分かったんですよ。

(赤江珠緒)
あ、普通に撮ったんじゃなくて、作ったもの。

(町山智浩)
これね、「カラーリスト」っていう、色を塗る人って意味ですけど、カラーリストっていう職業の人がいて、これ全部撮影された後、全部デジタルで加工してるものらしいんですよ。

(赤江珠緒)
えー。映像に?

(町山智浩)
映像に。で、どうしてこんなに綺麗なんだと思ったら、木漏れ日とか光っていうのは、完全にその光にするために、
全部その部分の色を抜いて、要するにフィルムを透明にするような形でもって、そのプロジェクターの光を直接観客に反射するようにしているらしいんですよ。

(赤江珠緒)(蓮見孝之)
はー。

(赤江珠緒)
だから『君の名は。』も凄い透明感というか、そんなんありましたもんね。

(町山智浩)
木漏れ日がすごかったでしょ。

(赤江珠緒)
はい、風景が。

(町山智浩)
それを、この映画も全く同じことやってるんですよ。

(赤江珠緒)
えぇー!でも、こっちは映像で。

(町山智浩)
そう、本当にこっちは実写でやってるから凄いんですよ。手作業でやったらしいですけど。
これあのアレックス・ビッケルという人が全部やったらしいんですよ。この加工を。

(赤江珠緒)
へー。

(町山智浩)
で、黒人の肌が物凄く綺麗って言いましたけど、
それも実は綺麗なのは、光が、その、反射している部分の色を抜いて白く光らせてるかららしいんですよ。

(赤江珠緒)(蓮見孝之)
ふーん。

(町山智浩)
さらに、その、黒い所がものすごく綺麗なのは、
これは、実際に存在しない青い色を足してるんですって。

(蓮見孝之)
へー。

(町山智浩)
だからね、これあまりにも美しいんでね、本当にうっとりするんですけど、逆に言うと、
こんなに加工しちゃうってことは、もう何も信じられないってことですね。

(赤江珠緒)
まぁ、そうですね。

(町山智浩)
作ってるってことだから。作れちゃうから。

(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
ただね、この『ムーンライト』の映像の美しさは全世界に衝撃を与えるんで、多分真似しますよ、みんな。
おそらく日本では、夏ぐらいには、この撮影をそっくり真似したコマーシャルが大量に出てくると思いますよ。

(赤江珠緒)
あー。そうですかー。

(町山智浩)
はい。これが、やり方さえ分かっちゃえばできるんで。

(赤江珠緒)
じゃあ映画界がまた変わるかもしれない。

(町山智浩)
映画界が変わると、これが良いことか悪いことかちょっと微妙なんですよね。
あとから作りかえてるわけですから。変えちゃってるわけですから。これはちょっと衝撃なんで。
まず『ムーンライト』っていうのは撮影が衝撃なんですよ。

(赤江珠緒)
はい。

引用:IMDb.com

ムーンライトのストーリーについて

(町山智浩)
で、話も結構キツくてですね。これ、主人公が子供の頃に、そのまぁ、母親が全然育てられなくていじめられるって言ったんですけど、
演じてる人はナオミ・ハリスっていう女優さんで。
そこに写真があると思うんですけど、この人は、あの『007』でジェームス・ポンドのパートナーのマネーペニーさんを演じてた女優さんなんですよ。

(赤江珠緒)
うんうんうん。

(町山智浩)
で、『007』だとゴージャスなスパイ、女スパイの役なんですけど、
この映画だと本当に生活に疲れ切った、もう、すごく悪い母親なんですよね。

(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
ただ、この人もともとアフリカ系っていうかジャマイカ系のロンドン育ちで、完全なイギリス人なのに、
フロリダの黒人の役を演じていて、しかもアメリカの南部の黒人の英語を話していて、俳優ってすごいなと思いましたね。
全然違う人間になっちゃうんですね、はい。

(赤江珠緒)
そっか、そっか。

(町山智浩)
で、このお母さんが全然子供にご飯も作らないし、男を連れ込むと、「あんた、これから彼氏とエッチするから出てって!」って、
小学生の子供を追い出すような酷い母親なんですよ。

(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
で、居場所がない上にナヨナヨしてるから学校では近所の子供達に、
「お前、オカマじゃないか。」とかって差別的な言葉を、ゲイであることを責められるんですね。

(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
で、居場所がなくなった主人公を偶然拾ってくれて、ご飯を食べさせてくれた叔父さんがでてくるんですよ、近所の。
それがフアンっていう名前の人で、この人もね、マハーシャラ・アリっていう人が演じていて。
うちの近所の出身なのに、キューバ出身の黒人の役を演じててね。この人化けてるんですけど。
この人が、誰も構ってくれないし、全員から否定されている主人公の男の子を自分の息子のように可愛がって、美味しいご飯を食べさせてあげて、一緒に遊んであげて、で、水泳を教えてくれるんですよ。

(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
黒人の人は水泳できない人が多くてね、すごく水死事故が多いんですよ。

(赤江珠緒)
そっか、そっか。うんうん。

(町山智浩)
それはやっぱり泳ぎ方っていうのは、プールに連れて行って親が教えないと泳げないから。ちっちゃい頃に。

(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
だから今、黒人に水泳を教えるってことは非常に社会運動になってるんですけど、アメリカでは。
だからこれを教えてあげるんです。これ、父親が水泳に連れていってあげることは非常に大事なんで。
それを代わりにやってくれるんですね、このフアンていう近所のおじさんが。

(赤江珠緒)
唯一の救いですね。

(町山智浩)
救いなんですよ。で、このおじさんの言葉の中にあるのは、昔キューバで、月の光の下で遊んでたら、
「月の光の下だと黒人の男の子は、青く光って見えるよね」って言われたよっていう話をするんですけど。

(赤江珠緒)
うん。

ムーンライトは全て実話

(町山智浩)
それがこのタイトルの意味と、加工する時に黒人の肌に青い色を入れている理由なんですけどね、はい。
ただこれね、全部実話なんですよ、監督と脚本家にあった。この監督も脚本家も、途中で母親が麻薬中毒になって完全に捨てられちゃうんですよ。

(赤江珠緒)
んー。

(町山智浩)
で、もっと恐ろしいことが、このフアンっていう、実在の、脚本家に優しくしてくれたおじさんをモデルにしてるんですが、
実は母親に麻薬を与えていたのは彼だったんですよ。

(赤江珠緒)
えー!!

(町山智浩)
ドラックディーラーだったんですね。
で、酷い話だったんですけど、そこから先はもちろん映画を観てもらうってことなんですが、
ただ、この脚本家と監督は、この地獄のような所で育って、ただ、文才があったんですね、二人とも。
で、学校で先生に「お前ら天才だから」って。お前らってことはないですよね、一人一人別々だから。
「君は天才だから、いい学校に行きたまえ」って推薦してくれて、お金も集めてくれて。
特にマクレイニーっていうその脚本家は名門イェール大学に進んで、最終的にはマッカーサー奨学金という天才だけに与えられる奨学金を得ているんですよ。

(赤江珠緒)
じゃあもう、その自分の才能だけで切り開いてきたんですね。

(町山智浩)
切り開いてきた。二人とも、それを見つけてくれた人がいたから良かったんですけど、
見つけてくれなかったらね、こうなってたかもしれないっていう話が
『ムーンライト』っていう映画なんですよ。

(赤江珠緒)
ふーん。

(町山智浩)
だからね、結構キツイんですけど。
ただね、ゲイでもない人、貧しくもない人、その、黒人でもない人ってのは関係のない映画なのかっていうと、
実はそうではないんだと。

(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
で、この映画一番ポイントなのは、「自分が何者なんだろう」って。
誰からも肯定されない、否定されてきている主人公が悩んでる時に、その、まぁ、ある人が彼にこう言うシーンがあるんですね。
「自分が何か、自分が何になるかは自分で決めるんだ。」と。「絶対に他の誰かに決めさせるな。」って言うんですよ。

(赤江珠緒)
あー、うん。

引用:IMDb.com

ムーンライトのテーマは、ズートピアと同じ

(町山智浩)
それがすごく大きいテーマで、これって『ズートピア』と同じテーマなんですよね。

(赤江珠緒)
うん。

(蓮見孝之)
そっかぁ。

(町山智浩)
で、演技をしていくってこと自体に意味もあって。
今回その時間がないから話せないんですけど、メリル・ストリープさんがゴールデングローブで功労賞を受賞した時に、「我々俳優っていうのは自分じゃないものを演じるんだ。」と。

(赤江珠緒)
はい。

(町山智浩)
「それが仕事なんだ。」と。「知らない人になる、全然関係のない人になるってことは、その人たちを理解するってことなんだ。」と。

(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
ということを言って、その後ドナルド・トランプは演説で身体障害の人のマネをしてからかって支持者たちの笑いを取るってしたことを、
すごくメリル・ストリープは嘆くっていうね。

(赤江珠緒)
そうですね。日本でもニュースになってますよ。すごいスピーチされたって。

(町山智浩)
はい。まさにその演技をするってことは、自分と遠い人を知ることだし、
映画を観るってことも、自分とは関係のないって思ってる人の心を知ることなんですよね。

(赤江珠緒)
は~。

(町山智浩)
だからこれはもう、すごくて。トランプが当選してしまったことで、まぁこのね、もう一人の女優さんでヴィオラ・ディヴィスっていう人が、
「アメリカの理念っていうのは・・」、『ズートピア』の理念ですけど、
「・・差別のない、誰でもなりたいものになれるっていうのがアメリカの理念だったんだけども、トランプが選挙で勝ったということは、その理念を世界に掲げてたのに、アメリカ人自身がその理念に追いつけなかったんだ。」って言ったんですよね。

(赤江珠緒)
う~ん。

(町山智浩)
だから、「心を打ち砕かれるような思いです。」と、メリル・ストリープさんは言ったんですけど、
まぁ、最期にですね、亡くなったキャリー・フィッシャーさん、レイア姫のキャリー・フィッシャーさんの言葉を引用して、こう言ったんですよ。
「我々は心を打ち砕かれることがあります。」と。
「でも、それを拾い集めて作品を作るんです。」と言ったんですよ。

(赤江珠緒)
は~。

(町山智浩)
だからまさにこの『ムーンライト』は、そういう作品でしたね。はい。

(赤江珠緒)
そうですか~。わ~、いや、すごいですね、やっぱり。作ってる人たちの信念がね。
そこに全部込められていますね、うん。

(町山智浩)
はい。これは今年の春に日本公開される予定です。

(赤江珠緒)
そうですね!今日はゴールデングローブ賞ドラマ部門作品賞を受賞した映画『ムーンライト』をご紹介いただきました。
町山さん、ありがとうございました!

(蓮見孝之)
ありがとうございました!

(町山智浩)
どうもでした。

 

<書き起こし終わり>


〇〇に入る言葉のこたえ

③同じテーマの映画は『ズートピア』でした!

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