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引用:IMDb.com

ズートピアの町山智浩さんの解説レビュー

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2020年05月06日更新
子供の頃にこれ観とくと、大人になってからそういう場に行った時に、「あ、私は決め付けをしてたんだ。それじゃいけないんだ」っていうことをね、ちっちゃい頃から教えてくれるアニメですね、はい。(TBSラジオ「たまむすび」より)

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/) で、
リッチ・ムーア監督、バイロン・ハワード監督、ジャレド・ブッシュ共同監督、アメリカ合衆国のコメディ・アドベンチャー映画「ズートピア」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

町山さん『ズートピア』解説レビューの概要

1.冒頭、2020年オリンピックについての雑談
2.映画『ズートピア』は日本でもヒット中であるが、実際にアメリカに住んだことのある人が観るともっと楽しめる内容になっている
3.映画『ズートピア』に携わったスタッフは全員、「アナ雪」など過去ディズニーヒット作を共に作ってきたスタッフで構成されている
4.映画『ズートピア』のタイトルは、「Zoo(動物)」+「ユートピア(Utopia)」、全ての動物達が共存する理想の街、という意味が込められている
5.アメリカ人が観てこそ面白い理由を、劇中のストーリーを交えて解説
6.映画『ズートピア』に込められた真のメッセージ性について
7.『ズートピア』と類似したメッセージ性の強い過去のディズニーヒット作は『○○』
8.ラジオでかかっていた「プリンス」の曲について
9.まとめ。『ズートピア』は子供が観ても充分楽しめる内容になっているが、大人が観るとより一層面白くて興味深い、アメリカの政治的な実情を知ることができる映画である。

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。 TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

 

(赤江珠緒)
それでは映画評論家・町山智浩さん、 今週もアメリカカリフォルニア州のバークレーからですね、お電話で中継です。 もしもし、町山さん?

(山里亮太) もしもーし!

(町山智浩) はい町山です、よろしくお願いします。

(赤江珠緒・山里亮太)
お願いしまーす!

(赤江珠緒)
町山さん、日本ではあの、オリンピックのエンブレムが決まったりなんていうことになりましたけど。

(町山智浩)
・・え?あ、そうなんですか?

(赤江珠緒)
そちらにはそんなニュースは・・。

(町山智浩)
オリンピックやるんですか?やるんですか本当に?

(赤江珠緒)
オリンピックやるというニュースも届いてないですか?あれ?

(山里亮太)
20年にやりますよ2020年に・・。

(町山智浩)
大丈夫なんですか?だってあれでしょ?オリンピックってあれでしょ? あの村上隆のアートワークで、秋元康のプロデュースでAKBが踊って、EXILEが踊るんでしょ? 日本のオリンピックのオープニングって。

(赤江珠緒)
あ、だいぶ情報があの交錯してるかな?あれ?

(山里亮太)
えっ、そうなんですか? もうそこまで決まっちゃってるんですか?

(町山智浩)
え、そうなんじゃないの? ねえ・・もう・・見たいっていうか、いいんですか日本それでって思いますけど。 決まってないのか。

(赤江珠緒)
そうですね、即時路線でね。うん。

(山里亮太)
え、これ町山さんの予想とかじゃなくてそんな噂が流れてんの?
だとしたら、怖い・・。

(町山智浩)
いやー、だってそうじゃないの?分かんないですけどねえ、まあいいですが。

(赤江珠緒)
まあまあいいですが。

(山里亮太)
ドキドキしてきた。

(町山智浩)
ブラジルなんて今オリンピックできるかどうか分かんない状態になってますけどね、今ね。

(山里亮太)
大体なんかまだスタジアムが間に合ってないとかいう話になりますもんね。

(赤江珠緒)
あー、治安が、とか言ってますよね。

(町山智浩)
そうあとほら、あのジカガイダンスのせいで、ね。

(赤江珠緒)
あー、そうね。

(山里亮太)
あー、そうだそうだ。

(赤江珠緒)
ジカ熱。

(町山智浩)
女性とか本当に危険なんでね。
オリンピックというもの自体がもう、駄目なんじゃねえのって思いますけどね(笑)

(山里亮太)
だってもうあと何ヶ月かですよ。

(赤江珠緒)
そうですよね。

(町山智浩)
そう。大変なことになってますよね。はい。
・・えっと今日はですね、それは置いといて、いきなり触れないでくださいよ、なんの準備もしてないのに(笑)

(赤江珠緒)
そうですよね。なんとなく言ってみました。

(山里亮太)
町山さんが、ロゴに興味あるわけないじゃない!

(赤江)
いや、アメリカでニュースに出てるのかなと思って・・。

(町山智浩)
いや、オリンピックでAKBが世界の人を相手にね、「女の子は勉強なんかしなくても可愛ければいいのよ」って歌を歌って、大変な事態になるだろうと思いますよね・・はい。
まあそれは置いといて!

(赤江珠緒)
置いといて、置いといて置いといて。

(山里亮太)
俺笑っちゃったけど駄目だったかな・・。

(町山智浩)
置いといて、置いといてください。

(山里亮太)
置いときましょ。

ここからが本題、ズートピアについて!

(町山智浩)
はい、えーと、『ズートピア』なんですけども、ディズニーのアニメの最新作なんですけど、これもう日本で公開されていますね。

(赤江珠緒・山里亮太)
はい。

(町山智浩)
はい。で、えーまあヒットしてると思うんですけど、 公開後になっちゃったのはね、あの『Fake』の方が球として強かったんで。
スペシャルウィークにもってきたからなんですけど、すいません。

(山里亮太)
先週。

(町山智浩)
でもズートピアはね、アメリカに住んでる人が観るとわかる、もっと面白く楽しくなるネタがいっぱいあったんで、ちょっと是非話したいなと思いまして。

(山里亮太)
はいはい。

引用:IMDb.com

ピクサー傘下に入ってからのディズニー・アニメは傑作揃い!ズートピアも!

(町山智浩)
えっとこれはですね、ピクサーの下に入ってからのディズニーアニメってずっと傑作ばっかりなんですけど、これもそうでですね。
で、スタッフとかはね、今まであたってきたディズニーの『ベイマックス』とかですね、『アナと雪の女王』とか、あのへんのスタッフがもう全員集まって作ってるんですね。

(山里亮太)
えー、オールスターで。

(町山智浩) 『シュガーラッシュ』とかですね、『ボルト』とか。
オールスターっていうかこれね、監督3人、脚本家7人で、全員がですね、今まで『アナ雪』とかですね、『ベイマックス』とかのスタッフなんですよ。

(山里涼太)
えっ。
(町山)
監督3人で脚本家7人て、だから「七人の侍」みたいな感じでもう総動員かけてやってるんですけど、はい。

(山里亮太)
まとまるんですかね、話・・。

(町山智浩)
これはもうジョン・ラセターというピクサーのトップの人が、とにかくまとめるのがもう上手い人なんですよ、

(山里亮太)
へーっ!そりゃすごいな。

(町山智浩)
この人(ジョン・ラセター)、自分のやった映画あんまりまとまってないんだけど、他の人の映画をまとめるのが上手い人で、
『カーズ2』とかね、全然まとまってなかったんですけど(笑)。まあそれはいいや。

(山里亮太)
あー、『カーズ』の人。

ズートピアの意味について

(町山智浩)
そう、でですね、ズートピアの「ズー(Zoo)」は動物園ですね、「ユートピア(Utopia)」っていうのはなんていうかもう理想郷、理想の街、理想の国っていう意味ですけど、これはね、人間以外の動物達が進化をしてですね、文明を築いて、全ての動物が共存して幸せに暮らしてる、
平和に暮らしてるズートピアっていう街を作り上げた、っていう話になってます。
草食動物の色んなキリンとかですね、鹿とかウサギとかそういうのと、トラとかライオンとかの肉食動物が仲良く暮らしてる大都会なんですよ、ズートピアは。

(赤江珠緒)
もうちゃんと現代的な文明社会で暮らしてると、うん。

(町山智浩)
スマホとか出てきますよ。ネットとか、はい(笑)
で、主人公は女の子で、ウサギなんですけど野ウサギで、ジュディっていうんですが、その子が警察官として、ズートピアに就職するっていうところから始まります。
ところがそのズートピアでは何故か、肉食動物が次々と行方不明になってると。失踪事件が起こっていると。で、それをまあ捜査するという話なんですね。

で、一応警察官の刑事ものなんで、ミステリーになってるのであんまり詳しく言えないんですけど、えっとこれね、日本でもね絶対面白い話なんですが、アメリカ人のための話になってる所があって、それがわかるとね、もっと面白いんですよ。

(山里亮太)
なるほど。

引用:IMDb.com

アメリカ人のための話になっている部分がある、それがわかるともっと面白い

(町山智浩)
例えばね、こういう話って主人公がですね、行方不明になった人のナンバープレート・・あ、犯人のナンバープレートか、をですね、照合するために、日本だと鮫州とかにある免許試験場があるじゃないですか、自動車の。

(山里亮太、赤江珠緒)
はい。

(町山智浩)
ナンバーの登録とかするところね。そこがアメリカにも『DMV』っていうところがあるんです。
そこに行ってナンバーの照合をしてもらうシーンがあるんですよ、ウサギの警察官が。
するとそこで働いてる職員が全員、ナマケモノっていうことになってるんですね。
ナマケモノだから、
「ナンバ〜、照、合、するんです、かあ〜」とかゆっくり喋るんでイライラするっていうか、日が暮れちゃうっていうギャグがあるんですけど、これはアメリカのDMVがものすごく遅くて・・。

(山里亮太)
ああ〜、そういうこと。

(町山智浩)
ものすごく待たせるっていうことを体験してる人だとめちゃくちゃ可笑しいんですよ。

(山里亮太)
なるほど!

(赤江珠緒)
ああ〜そうなんですか。

(町山智浩)
だからね、アメリカの映画館でも笑ってたのは大人だけでした。

(山里亮太、赤江珠緒)
あーなるほど。

(町山智浩)
子供はね、試験場に行かないから分かんないんですよ。だから笑ってないんですけど。
あとね、結構これスタッフが自虐的なギャグをやってて、主人公がどうしても事件が解決しないことで悩んでると、こう言われるんですよ、
「これが他のアニメだったら、女の子は楽しく歌ってたら解決するのにね。’’Let it go’’」って言うんですよ。

(山里亮太)
おー!ああ!
アナと雪の・・。

(町山智浩)
アナ雪のこと、ちょっと、あの笑ってるんですけど、スタッフ同じですけど。

(赤江珠緒)
ねえ自ら自虐的に・・へえ〜。

(町山智浩)
そうなんですよ、で、あとね、羊のね、なんだっけな、えーと市長さんじゃないや、副市長さんが出てくるんですね。
その羊の副市長さんの毛が、羊だとフワフワじゃないですか、それを見てるうちに触りたくなって触ろうとするんですけど「触っちゃ駄目!」って言うシーンがあるんですよ。

(山里亮太)
はい。

(町山智浩)
これ多分、日本の人は全く意味がわからないシーンだと思うんですよ。

(赤江珠緒)
分かんない、全然。

(町山智浩)
これはね、アメリカでアフロヘアの女の子、要するにまあアフリカ系の血が入ってる人のチリチリの毛を見ると、女の子同士だったりすると「ちょっと触らせて」って言う人がいるんですよ。
「あーチリチリでふわふわねー」とか言って触らせてって言う人がいるんですけど、それがアフロヘアの人には絶対やっちゃいけないことなんですよ。

(赤江珠緒)
あ、そうなんですか?

(町山智浩)
そうなんですよ、一番イラっとすることらしいんですよ。

(山里亮太、赤江珠緒)
へええ〜・・。

(町山智浩)
で、それをその羊の毛でやってるシーンなんですね、だからこれは多分日本の人には全くわからないと思う。

(山里亮太)
分かんないですね。

(町山智浩)
はい。あとあの、主人公のウサギが警察署に入った時に、警察署の受付の人が・・人じゃないやヒョウなんですけど(笑)
ウサギがこの警察署に入ってくるっていうことは知ってたけども、「本当に可愛いね思ってたより」って言うんですよ。
言われたウサギの主人公はのジュディが、
「ウサギが他のウサギに対して'’可愛いね’’って言うのはいいんですけど、ウサギ以外の人がウサギに対して’’可愛いね’’」って言うのは・・」って言うんですよ、まずいんですよ、って言うんですよ。

これは、あの、ある特定の言葉がその人種同士だと言ってもいいけれども、その人種と違う人が言ったらいけないってことがあるんですよ。
で、これは例えばいわゆる『nigga(ニガー)』って言葉なんですよ。

(山里亮太、赤江珠緒)
うんうんうん。

(町山智浩)
『nigga』っていうのは、黒人の人、アフリカ人同士が言った場合は『my nigga(マイニガー)』とか言うんですけど、『仲間』って意味なんですよ。
友達みたいな意味なんです。でもこれを、白人とかが黒人に対して『nigga』って言うと『この奴隷め』って言っちゃう意味になっちゃう。

(赤江珠緒)
そっかあ。

(町山智浩)
だから絶対に言っちゃいけないんですよ。

(赤江珠緒)
じゃ、アメリカ実社会のそういった色んなことがちりばめれられてるんですね。

ズートピアは、街自体がアメリカを象徴している

(町山智浩)
このズートピアっていうのはそういう映画になってるんですよ。
で、このズートピアっていうその色んな動物が仲良く暮らしてる、街自体がアメリカを象徴してるんですね。

(赤江珠緒)
うんうんうん。

(山里亮太)
あーなるほど、色んな種類の、ね。

(町山智浩)
はい、でこれね、ある街にあるアイスクリーム屋さんに行くんですね、主人公たちが。
その壁にですね、「私たちにはお客さんにサービスをしない権利もあります」っていうプレートが貼ってあるんですよ、お店に。
これはアメリカではものすごく問題のあるプレートなんですよ、今も現在貼ってあるお店がたまにあるんですけど。
これは態度の悪い客とか、汚い格好をして入ってきた人とか、ホームレスの人とかを入れたくないよとか、そういう人達にそのお店のものを買わせたくないよっていう意味で貼るわけですね。酔っ払い客とかね。

でもそれ自体が法律的にどうなのかっていうのがいつも裁判になることなんですよ。
で、そのプレートは実際に使われていた時期があって、1960年代まで、アメリカ南部のレストランとかが、『白人専用レストランは黒人が来ても注文を取らないし、料理も出さない』っていう状態があったんですよ。
メキシコ系の人が来たりすると。南部ならではですね。

(赤江珠緒)
まさに差別ですね。

(町山智浩)
そういう時にそのプレートを貼って示すっていうのがあったんですよ。

(山里亮太)
へえーっ。

(町山智浩)
そういうシーンなんですよ。だからこの映画は実はすごくアメリカの非常に政治的な実状を描いてるんですよ、ズートピアっていう映画は。

(赤江珠緒)
ね、ものすごく可愛い動物のアニメに見えて・・へえー。

(町山智浩)
もちろんそれでも楽しめるんですけど、根底にあるのはそうじゃない所があるんですよ。リアルなものなんですよ。
で、もう一人、キツネのニックっていうのが出てくるんですね。

(山里亮太)
はい。

引用:IMDb.com

キツネのニックについて

(町山智浩)
キツネだっていうだけで「キツネは嘘つきだし、人を騙すから」って言われて、就職ができないんですよ。
色んなとこで弾かれちゃうんですよね。
キツネといえば、英語では「キツネのようにずるい」って言葉があるんですよね。
キツネだから信用できない、って言われるんですよ。

これは、要するにある一定の人種は全部不幸なんだっていう見方ですよね。

(山里亮太)
なるほど。

(赤江珠緒)
そうかあー。

(町山智浩)
これは、『racial profiling(レイシャル・プロファイリング)』って言われる、その人種による決め付けで、
一番問題があることなんですよ。
英語にも日本語にも動物を比喩に使うっていうのはありますよねいっぱいね。
でもそれ自体が決め付けで、いわゆる『stereotyping(ステレオタイピング)』って言われることなんですね。

「もうなんとかはなんとかだ」、
「キツネだからずるいんだ」みたいな。
「ウサギだから賢いんだ」みたいな、そういうことなんですよ。

(赤江珠緒)
ふーん。

ズートピアは決めつけの危険性や間違いを描く

(町山智浩)
それの危険性とか、間違いを描いてるんですね、ズートピアっていうのは。
だからね、動物が出てきて、みんな人間みたいに生活して楽しいねっていう話では実はないんですね。

(赤江珠緒)
ディズニー盛り込んでますね、メッセージ性を。

(町山智浩)
やっぱりあのね、これねすごい早いなって思うのは、
今現在、ドナルド・トランプとか、テッド・グルーズとか共和党の議員達は、例えばドナルド・トランプはこういうこと言ってるわけですね。
「メキシコ系の不法移民は全部叩き出せ。メキシコの人はみんな犯罪者とレイピストだ」って決め付けてるわけですよ、まさに。

テッド・クルーズに至っては、
「イスラム系の住民が住んでいるところは警察が巡回しろ!」って言ってるんですね。
これイスラム系イコール犯罪者であるって決め付けなんですよ。

それより前にこの映画製作されてたんですけどまさにドンピシャりなんですよ。

(山里亮太)
なるほどお〜!

(町山智浩)
はい、で、その草食動物に対して肉食動物は実際数が少ないですよね、アフリカなんかでも。

(赤江珠緒)
そうですね。

(町山智浩)
草食動物はそれこそ群をなしてたくさんいるけれども、肉食動物は少ないじゃないですか。
そういう人口比になってるんですよ、ズートピアも。

で、これ草食動物は「大人しくて文明的で」なんですねこの映画の中だと。いわゆるステレオタイプが。
でもこの草食動物が大人しくて肉食動物が凶暴であるっていうのも実はステレオタイピングで決め付けなんですよ。
どう思います?それに関して。

(山里亮太)
いやでもやっぱそのイメージでずっと考えちゃいますね、
ロバとか・・優しい・・。

(町山智浩)
でしょ。
アフリカで、一対一で戦った場合に、まあ象をのぞいて、最も最強な動物ってなんだと思います?

(山里亮太)
これ・・アフリカでしょ?ライオン・・。

(赤江珠緒)
あー、あのねえ、かばが意外と強いとか聞きましたけど。

(町山智浩)
カバも強いですね。はい。

(山里亮太)
ワニ?

引用:IMDb.com

最も最強な動物は・・

(町山智浩)
最強なのは、水牛なんですよ。

(山里亮太・赤江珠緒)
水牛?!

(町山智浩)
水牛、英語だからバッファローですけど、
「バッファロー、ライオン」で打ってインターネットで検索すると、水牛がライオンを殺しまくってる映像が山のように出てきますよ。

(山里亮太)
えー・・・
水牛、牛?

(町山智浩)
水牛最強なんですよ(笑)

(山里亮太)
そんなイメージない・・。

(町山智浩)
でも、牛だから草食ですよ。でも最強なんですよ本当は。
だから、草食イコール優しいってのは勘違いで、あとは、例えば羊っていうのは英語では『sheeps』で、大人しいって意味なんですね。
でも雄羊ほど凶暴な生き物はいないですよ。

(山里亮太・赤江珠緒)
え、ああー・・
そうか、確かに。

(町山智浩)
雄羊とか雄鹿は、その嫁とりの時に決定的な戦いをするんですよ、頭突きして。

(山里亮太)
あーそうだ。

(町山智浩)
で、それは時には相手を殺すほどやる時もあるんですよ。
しかもその時期は、人間とか自動車を見ても立ち向かってくるんですよ、彼らは。

(山里亮太)
雄鹿に襲われたことあるわ、俺。

(赤江珠緒)
えええ!?

(町町山智浩)
でしょ?!あれ殺されますよ下手すると本当に。

(山里亮太)
ええ、なんかすんごいタックルかまされたことありますもん。

(町山智浩)
そうなんですよ、だからアメリカでは雄羊なんていうのは『Ram(ラム)』って言って、
男らしさの象徴でもあるんです、凶暴な。トラックの名前になってますね。

(赤江珠緒)
あ、そうですか。

(町山智浩)
そう、だから草食動物、肉食動物ってのもすごくみんなね、決め付けしてるんですよ。
それこそさっきのあの、「DMVっていう試験場にいくとみんなノロマだ」っていうのもこれも一つの決め付けなんですけどね。

(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
でこれは僕もよくやっちゃうんで本当に危険なことなんですけど、だいたい主語も何人、
『何人はなんとかだ』ってこと自体が大体、通用しないですよね本当はね。

(赤江珠緒)
ああ〜、そうですよね本来はね。

(山里亮太)
確かに。

(赤江珠緒)
だって同じじゃないですもんね。

(町山智浩)
何にも決まらないですよ。

(赤江珠緒)
日本人の中でもバラバラなのにね。

決めつけについて突き詰めて考えた映画、ズートピア

(町山智浩)
そうなんですよ。
例えば、アメリカにインディアン先住民っていますけど、先住民の身体的特徴っていうのは、もう全くかけ離れてるのに、全部一括りにしてたりしますよね。

ただ、この映画はすごくそのことをものすごく突き詰めて考えていて、特にズートピアっていうのは本来だったら敵同士だったりその食ったり食われたりする関係の動物同士が仲良く暮らしてるんですけど、これはまさにアメリカをうたってるんですよね。
中国人もチベット人も仲良く暮らしてますよアメリカは。

ウクライナとロシアって戦争してるけど、アメリカだと同じ東ヨーロッパ系のレストランとか食料品店で働いたりしてて、隣人ですよ。

(赤江珠緒)
そうか、入り混じってるわけですもんね。

(町山智浩)
で、あとユーゴスラビアの内戦になった時に、セルビアとクロアチア人が殺し合いをしましたけども、セルビアとクロアチア人同士で結婚してる人とかはみんなアメリカに逃げてきましたよね。

アメリカに来たらセルビア人もクロアチア人も友達で隣人なんですよ。アルメニア人とトルコ人も、仲間なんですよ。アメリカに来たら。

(赤江珠緒)
そうですよね。

(町山智浩)
ズートピアっていうのはアメリカそのものを象徴していて、セリフの中で出てくるんですよ、
「もしあなたがキツネに生まれて、象になりたかったら、象にでもなれるのがこのズートピアなんだ」っていうんですよ。
これは、アメリカの国税みたいなもんなんですよね。なりたいものになれるんだと。

昔ヨーロッパでは、御百姓さんに生まれたら一生農民になるしかなかったのがアメリカ行ったら何にでもなれたわけですからね。
実際にそうかどうかっていうのを、実際にそうじゃなくてもそういう風にしようよっていうのがまあこういう映画なんですよね。

(山里亮太)
へえーっ。

(赤江珠緒)
割ともう根源のメッセージですね。

(山里亮太)
あ、昔から?

(町山智浩)
そうなんですよ、昔から。

(山里亮太)
え、何かありましたっけ?

引用:IMDb.com

わんわん物語も同じようなメッセージを・・

(町山智浩)
『わんわん物語』っていうのがあの1955年に・・

(赤江珠緒)
『わんわん物語』!?

(町山智浩)
ディズニー作ってるでしょ。
あれ主人公はコッカー・スパニエルのレディっていう血統書付きのコッカー・スパニエルなんですよ。
で、コッカー・スパニエルっていうのはイギリスに住んでイギリスからきたいわゆる『ワスプ(WASP)』を意味してるんですよ。
で、それが全く親のわからない浮浪児の男の子と結婚するって話ですよね。

(赤江珠緒)
はいはい。

(町山智浩)
で、子供を作るっていう。
あれは要するに何人でもない、アメリカ人っていう新しい民族が生まれるんだっていう話ですよね。

(赤江珠緒)
そうかあ〜!

(山里亮太)
そんな気持ちで観てなかったよ全然。

(赤江珠緒)
子供の時そんな、ほんとわかってなかったね、
なるほど。

(町山智浩)
で、そのトランプっていう浮浪児の男の子の犬の友達の名前は「ボリス」っていう名前で、あれはロシア系ですよね。
で、ペドロっていうのがいてこれはプエルトリカンなんですよ。
で、イタリアンレストランに行くんですよ。

(赤江珠緒)
あーそっかあー。

(町山智浩)
で、ワスプ以外の人たちとワスプが混じり合ってアメリカを作っていくんだよって話が『わんわん物語』だったんです。

(赤江珠緒)
ふーん!

(山里亮太)
ほう〜

様々なステレオタイプを表現

(町山智浩)
で、ディズニーは一貫してそれをやってるんですけどね。
ステレオタイプでやるってことは、正直危険なんだってことを言ってて、中でその、ウサギが運転するんで、「ウサギは運転が下手だよな」っていうセリフが出てくるんですけど、あれはアメリカでね、『女は運転が下手なんだ』っていうステレオタイピングがあるんですよ。それも言っちゃいけない。

(赤江珠緒)
いや考えたらでも、そういう決め付けってなんでか、こう自分のデータに分析して分類したいっていう、
そういう欲望なんですかね。
なんかしちゃいますもんね。そういう・・。

(町山智浩)
それはもう本当に僕もやっちゃうんですけど、それは本当によくないことなんですよね。

(赤江珠緒)
怖いですよね、人間がね、よくやりがちなことですけど。

引用:IMDb.com

話題はプリンスの曲へ

(町山智浩)
やりがちなんですよ、はい。
そういうことを子供の頃に楽しいアニメで教えてくれるのがね『ズートピア』なんですけど。
ちょっと今、プリンスが入った曲をシネイド・オコナーが歌ってる曲をかけていただきたいんですけど、
プリンスこの間亡くなったんですけども、これ聴いていただくと、これプリンスが書いた曲なんです。
『Nothing compare to you』って曲なんですけど。

この歌はジャンルとしてなんだと思います?

(山里亮太)
え?バ、バラード的な・・ゆったりとした・・。

(赤江珠緒)
うん。

(町山智浩)
これジャンルがないんですよねこの、プリンスの歌って。
これプリンスが書いた曲をシネイド・オコナーっていうアイルランドの歌手が歌ってるんですけど、まあ強いて近いものといえばゴスペルなんですけど、プリンスって本当にジャンルのない人だったんですよ。

彼はそのソウルミュージックとファンクミュージックとロックともうごっちゃになってて、黒人の間ではロックよりすぎるって批判されたりもしてた人なんですよね。
で、彼自身がその紫っていう色を自分のテーマカラーにしてたんですけど、あれは、青は男の子の色で、赤は女の子の色だからなんです。

(山里亮太、赤江珠緒)
はーっ。

(町山智浩)
男でも女でも関係ねえだろって色でパープルにしてたんですね、彼は。

(赤江珠緒)
それでパープル、はーっ。

(町山智浩)
で。プリンスのシンボルマークってのが、いわゆる男のシンボルマークと女のシンボルマークを足したものなんですよ。
どっちでもないよってことなんですよ。
ジャンルも決まってないし、決め付けっていうものを破壊してく人がプリンスでしたね。

(赤江珠緒)
そういうこと・・そういう枠組みみたいなのをね。

(町山智浩)
枠組みみたいなものを。
その点で、それがまあまさにアメリカだなと思うんですよね。
そういうことで無理やりズートピアからプリンスに繋げてみました、はい。

(山里亮太)
このタイミングでね、聞きたかったですもんね、町山さんの口からプリンスの件は。

(赤江珠緒)
なんといってもねー、うん。

(町山智浩)
で、この歌ですごくいいのね、歌詞でね、
「色んな男の人と付き合ってみたけれども、とてもあなたとは比べ物にならないわ」っていう歌なんですよ。
これは恋愛の歌ですけども、まさにプリンスのことをね、まさにプリンスが書いた曲ですけれども!!
今もう本当にこれみんなのプリンスに対する気持ちがうたわれてると思いますね。

(赤江珠緒)
あなたが最上であると。

(町山智浩)
他とは比べものにならないってことですよ、ジャンルに分けられないから。

(赤江珠緒)
はーっそうかあ。
いやちょっと、これじゃあズートピアはただ楽しい映画かなと思ってましたけど、
そういうことを感じながら観ると、また違うかもしれませんね。

(山里亮太)
より一層。

(町山智浩)
子供の頃にこれ観とくと、大人になってからそういう場に行った時に、
「あ、私は決め付けをしてたんだ。それじゃいけないんだ」っていうことをね、
ちっちゃい頃から教えてくれるアニメですね、はい。

(赤江珠緒)
はい、わかりました。
今日は、現在公開中のディズニーアニメ最新作『ズートピア』のお話でした。
町山さん、ありがとうございました!

(山里亮太)
ありがとうございましたー!

<書き起こし終わり>

 

〇〇に入る言葉のこたえ

7.『ズートピア』と類似したメッセージ性の強い過去のディズニーヒット作は『わんわん物語』

でした!

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