マッドマックス 怒りのデス・ロードのライムスター宇多丸さんの解説レビュー
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RHYMESTER宇多丸さんがTBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」(https://www.tbsradio.jp/utamaru/)
で、ジョージ・ミラー監督作「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
宇多丸さん「マッドマックス 怒りのデス・ロード」解説レビューの概要
①リスナーからのメールも宇多丸さんも終始テンション高め!
②旧作ファンも唸らせる、旧作にも劣らない、いい意味で予想を裏切る作品!
③主人公を通して監督が伝えたかった「英雄像」!
④アクションだけの映画じゃない!他にもすごい点はたくさんある!
⑤宇多丸さんがつけた点数はなんと「○○」点!!!
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」でラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」宇多丸さんの評価とは
(宇多丸)
さぁここから11時までは、劇場で公開されている最新映画を、映画ウォッチ超人こと「シネマッドマックス宇多丸」がフューリーウォッチング。もしくは「シネ ウォー・ボーイズ宇多丸」が、イモータン・ジョー先生の祝福とも言うべきこの銀のスプレーを吹きかけながら盛大にお送りする、そんな怒りの映画評論コーナーです。怒りのといっても、本日は別に怒っているわけではございません。むしろ喜んでいるのでございます。
今夜扱う映画は、先週ムービーガチャマシンを回してめでたくも決まったこの映画!V8!V8!「マッドマックス 怒りのデス・ロード IMAX3D・字幕版」!フゥー!やべー!あー!アガってきた!
荒廃した近未来を舞台に壮絶なカーアクションを描いて、世界中に影響を与えた「マッドマックス」シリーズ30年ぶりの新作。同シリーズの生みの親であるジョージ・ミラーが再びメガホンを取り、主役を「ダークナイト ライジング」のトム・ハーディが受け継ぐ。共演はシャーリーズ・セロンだということでございます。今、銀色のスプレーを塗って、もう歯が、口がすごいキンキンしますけど。ラジオネーム「ハチノコ」さん。「ハチノコ」さんがこれを送ってくれたの?あ、そうですか。ラジオネーム「ハチノコ」さんが、「食用銀スプレーを送ります。これでお前も『ウォー・ボーイズ』!」ということでございます。ありがとうございます!そうだ、Tシャツだって「ニュークス」バージョンですから。「What a lovely day!」ですから。完全にニュークス気分ですよ。いやいや、ニュークス気分でいいのか?分かんねぇけど。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の反響がすごい!
はい、ということで、すっかり祭りが始まっております。さあ、ということでこの「マッドマックス 怒りのデス・ロード」もう観ましたよと、リスナーの皆さんからのメールいただいてます!メールの量は、ぶっちぎりで今年最多!最多です。一番多い。番組史上でもトップ3に入るレベルでございます。「崖の上のポニョ」「パシフィック・リム」級ってことでございます。
そして賛否では、「賛」が圧倒的、褒めてる方が圧倒的ということでございます。
・ヤバい!オールタイムベスト!
・ストーリーは単調だが、でもどうでもいい。圧倒的なアクションのつるべ打ちでクラクラした。ジョージ・ミラー監督
ありがとう。
・9回しか観てなくてすいません。
など、テンションの高い感想が目立ちました。
否定的意見は1割もなかった。ちょいとはあったのかな。
何故か皆さん勝手に得点を付けており、下は88点から、最も高い点数、多い点数は5億点、5億点の人が多かった。最大は2兆点。勝手に、俺に無断で勝手にインフレさせてんじゃないぞ、っていうのはありますけど。すべてを合計すると、おそらく3兆点前後。知らんがなって。「トム・ハーディ可愛い」「ニュークス萌える」。「ニュークス」という新しいキャラクター出ますけども。という女性もちらほらございました。代表的なとこをご紹介しましょう。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を鑑賞した一般の方の感想・評価
*聖アカヒトさん
圧倒的!暴力が世界を秩序立て、やっとの思いですがりついた希望は、残酷にも空手形でしかない。狂気と混沌に満ちた世界の中で人間の生だけが力強く躍動し続け、「人間賛歌」というのをテーマとして映画的に伝えるより、映画自体をドライブさせて生きたものにしてそのエネルギーをダイレクトにぶつけてくる表現の方が好きな自分にとって、本作はオールタイムベスト級の一本になりました。あと100回くらいは観直して、ジョージ・ミラーに土下座してもありがとうと伝えたい。本当最高でした!
(宇多丸)
ちょっと駄目だったという方もご紹介しましょうか。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」への批判的な感想・評価
*マルさん
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」観てきました。今はなき「新宿ミラノ座 サンダードーム」の初日、文字通り駆けつけ、しかしそのあまりのつまらなさに愕然としてから早30年。
(宇多丸)
要は、3作目が、ちょっと期待外れだった方が、旧シリーズファンで多いということですけど。
*マルさん 続き
再びがっかりさせられました。改めて「マッドマックス」は2で終わっていたんだなと実感させられる作品でした。確かに「サンダードーム」よりは物語の緊密さが増し、スピード感があったとは思いますが、素晴らしい出来の車やセット、小道具はすべて2の厚化粧に過ぎません。加えてマックスの脇役感が半端なく、物語に一向に入り込めず感情移入できなかったのが痛かった。僕の中では「マックス」は終わりました。
という、旧シリーズファンもいらっしゃった。あと、この方絶賛の方で。「ワタナベ ヒデタカ」さんという方。この方要は映画館で熱狂してしまい、ジョージ・ミラーのクレジットが出た瞬間に、映画館で叫びながら拍手喝采を送り、隣の席の全く知らない人、同年代ぐらいの、この方40代の方ですけど、男性とガッチリ握手まで交わしてしまったという。この方のご友人の方も、特に1と2にあったマニアックなハードコアパンクバンドのデモテープをたまたま聞いてしまったような、粗削りなヤバさは薄れていて、僕のその友人からは「こんなのは『マッドマックス』じゃない」という意見も出たと。それも分からないわけじゃないけども、いや、こんだけやってればいいだろ。ま、基本的に「ワタナベ」さんは絶賛意見でございます。
ということで、今日、皆さん大量に頂いておりますし、祭りでございますので、ちょっと「放課後 podcast」も後でやるのかな?ちょっとやるということになっておりますので、皆さんのメールはそちらでもちょっと紹介してみたいと思います。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」宇多丸さんが鑑賞した感想とは・・
ということで私も、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」、一応今回「IMAX3D・字幕版」というくくりですけど行ってまいりました。なめんなよ!5回いろんなバージョンで観てきたぞ!あの揺れるやつ以外は全部観てきたぞ!2D字幕と吹き替え3Dを観てまいりました。もちろんIMAX素晴らしかったんですけど、結構情報量がめちゃくちゃ多い分、意外と2Dも結構いいぞというのが。2Dは結構お勧めです、私。咀嚼するには2Dいいんじゃないでしょうか。あと吹き替えも全然悪くなかったです。まあね、あのエンディング曲の差し替えのとこがね、ちょっと「あっ」っていう。「誰も得しねーな」っていうのは、思ったとこですけど。そういう意味でIMAX版はやっぱ、IMAX版でまず観て、2D版がいいんじゃないですかね。まあ、それはいいや。
宇多丸さんはマッドマックス、リアルタイム世代
まず言っときたいのは、私宇多丸自身も1969年生まれですが、もろに旧シリーズ、メル・ギブソン主演のリアルタイムで衝撃を受け続けてきた、本当にリアルタイムできたファンでございます。で、「マッドマックス」シリーズがどういう世界に影響を与えたとか、後程特集もやりますし、僕じゃなくてもあちこちにありますんで、それはもう省略しますよ。ただこの完全リアルタイム世代でリアルタイムにショックを受けてきたんです。「なんだこりゃ!とんでもない映画がきた!」その時のショックっての知ってるわけですから、要は旧作シリーズの例えばオマージュみたいのがありました。そういうのに反応するっていうのはもちろんあるとしても、はっきり言って新作の「マッドマックス」やるっていっても、ハードル高いわけですよ。そん時のショックは超えないだろうって、ちょっとある種、ちょっと高を(括って)。絶対面白いし絶対いいけど、まあ言ってあんとき結構負けてんね、とかそんぐらいかなと思って観たんです。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」結論から
結論から言うと、期待をはるかに超えて、ブッッ飛ばされました。はっきり言って、僕の中では旧シリーズ余裕で、余裕で越えてきたっていう感じです、僕の中では。むしろもう「あれ、もう戻れないかも」って思うくらい。どころじゃなくて、旧シリーズと比較としても越えてきた。どころじゃなくて、僕、大げさじゃなく映画史更新レベルっていうことだと思う。映画史を更新レベルの一作にマジでなってる、というふうに僕は思いました。あまりにブッ飛ばされて、最初に1回観た時点では、ちょっと感想が言葉にできなかった。で、ようやく3度目の字幕2Dで、ようやく「これはすごいんじゃないっすか」。で、5回目でようやくあそこってどういうこととかそういう話ができるようになってきた、そういう状態でございます。そもそも、映画の歴史はアクションの歴史、っていうか、映画ってアクションじゃんって思うわけですよ。特に「逃走と追跡」っていうのは、映画史の最も重要な縦軸だと思うんですよ。「逃走と追跡」を描くってのは。「大列車強盗」というのが始まって、ジョージ・ミラーもよく名前を出すバスター・キートンであるとか、あとま当然、ジョン・フォード「駅馬車」。「駅馬車」当時はもう、要は革命的アクション映画ですから。革命的アクション映画としての「駅馬車」。そっからなんでもいいですよ。「ベン・ハー」のあの場面があったりとか。「ブリット」があってだとか、いろいろ歴史があって。当然「マッドマックス」の旧シリーズってのは、アクション映画というか、アクションっていう「逃走と追跡」という映画史のぶっとい幹の中の革命的作品・シリーズだったわけです。
アポカリプト
で、例えば僕が「アポカリプト」という映画を褒める。「アポカリプト」ってのはもちろんメル・ギブソン監督。メル・ギブソンってのは「マッドマックス」の主演であって。その「アポカリプト」ってのは、猛烈に「マッドマックス」の、ある意味最新裸版みたいな映画だったわけですけど。要はまさに、僕がすごく評価し続けるのも、まさにその歴史的な、映画の歴史っていうのがこの一本にギュッと詰まって、なおかつその描写・密度・スピード全てにおいて、現代的にブラッシュアップされてる。で結果、伝統の先にあるのに、誰も観たことない映画になってるって。そこがやっぱり僕はすごいと思った。「アポカリプト」いつも持ち上げてたんですけど。その意味でいうと今回の「マッドマックス」は、まさにその歴史を完全にしかも数段階、ネクストレベルにいきなり上げちゃったみたいな一作じゃないでしょうか。
話のプロットは極限までシンプル
で、ここ大事なんですけど。ちょっとこのメールの意見でも、褒めてる方の中でもちょっと散見されるので。要は、お話のプロットが極限までシンプルなんです。確かに行って帰ってくるだけの話。まさに一本道で、シンプルではあるんです。でも、ちょっと僕これ大事なことなんで言っときたいですけど、この映画、だからといって、プロットがシンプルでセリフがあんまりないからといって、映画の中で語られてることが少ないってことは意味しないというか。逆です、この映画。ものすごく映画の中で語られてることが多い映画なんです。というかストーリー的な意味もそうなんです。それはセリフというか、言葉的に語られないだけであって。じゃあ何で語るかっていったら、アクションで語るんですよ!ビジュアルとアクションで語るんですよ!それが映画じゃないんですか!
超面白い映画5本分くらいのアクション
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」がとんでもなく素晴らしいなと思うのは、普通の、超面白い映画ってあるじゃないですか。例えばそれこそ「マッドマックス2」超面白い!っていうレベルでいいですよ。超面白い映画5本分ぐらいのアクション。それは要するに、ただ単にぶん殴り合ったりしてるとこだけじゃない。映画は全部アクションなんですけど。5本分ぐらいの映画的アクションのビジュアルのアイデアがぶち込まれ、でそれがしかも絶え間なく、しかも常に複数同時進行してるような感じなわけです。まずアクションとしてももちろんすごいですよ。もう、こんなアイデアがあんのかとか。こんなにヤバいアクションが観れんのか、しかも同時進行でドンドンドンドン数珠つなぎで、もうすごいっていうのはあるんだけど。素晴らしいのはそれがそのままキャラクターの描写とか設定の描写であるとか、あるいは直接ストーリー上の推進力になっていったりで。要するに、完全に純映画的なストーリーテリングっていうところに特化した機能をしているっていうことだと思うんです。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の1幕目
例えば、この映画始まって最初の30分間、要するに1幕目、完全にノンストップで、しかも言葉による設定も、この世界はこうこうこう出来てて、こうこうこいつらはこうで、そういう説明ないまま。で主人公マッドマックスと同じように、捉えられた状況から、訳分かんない、何なんだこの世界はっていうままに、最初の30分間ノンストップで続くんです。なので最初の1回とかは多分圧倒されたままで、この30分間なんなんだ、このジェットコースター、うわーっなんだなんだっ!思うかもしんないけど。でもちゃんと例えばこの世界の世界観、この世界がどういうシステムで回されててとか、この人達はどういうのでって、ちゃんとビジュアル込みで、ちゃんと描かれてる、分かるようになってると。
全セクションのレベル
もちろんこれは、全セクションのレベルが異常に高いっていうことです。撮影はもちろん美術とか衣装とかもちろん演技とかもそうですけども、メイクアップとか何でもいいですけど。全部のレベルが異常に高いの。全部のレベルが異常に高いので、言葉じゃなくてもビジュアルとかアクションで設定とかストーリーとか全部伝わってくると。なのでプロットはすごいシンプルだしセリフは極端に少ない、さっきも言ったけど。セリフは少ないんだけど、その少ない台詞の中にものすごく込められた、配置とかがむちゃくちゃうまいんで考え抜かれてるわけです。例えば、「タネ」っていうものの言葉の使い方とかが、数少ないセリフ中で見事に対比として置かれてたりして、「あぁ!」感動するようになってるので。
それぞれのキャラクター
最終的には、出番の多い少ないに関わらず、それぞれのキャラクターにしっかり厚みのある物語がちゃんと見えてくるし、とても最終的に非常に寓意に富んだ深みのあるテーマがちゃんと浮かび上がってきて。要は、話的にはシンプル、プロットはシンプルだけど、実はドラマとして、ストーリードラマとしてもすげぇどすんと感動させられるようにちゃんとできてるってことなんです。語り口がアクションと、純粋アクションというだけのことで。そしてしかもそのテーマ設定の、実はこれまでジョージ・ミラーが「ベイブ」とか「ハッピー フィート」とか、要するに「マッドマックス」以降割とファミリームービーのヒットメーカーとしてやってきてますけど、それも含めて過去作でずっとジョージ・ミラーが結構一貫して語り続けてきたことの、今回は集大成的でもある。例えば、「ある群れ」っていうのを、その中の一人のはぐれ者が革命していくっていう話。これ一見「マッドマックス」とか全然関係ないようにみえる。例えば「ロレンツォのオイル」とかだって、人間という群れのその固定観念を夫婦が変えてくって話。「ベイブ」だって「ハッピー フィート」だってそうなわけですよ。群れの固定観念をはぐれ者が革命の話。
損得を超えた利他的な行動こそが真に英雄的
あとは、損得を超えた利他的な行動こそが真に英雄的である、という。これも本当にジョージ・ミラー、特に「マッドマックス2」以降繰り返し描いてることだと思うし。あと今回の「マッドマックス」最大の特徴としてよく語られてます。要は、非常にフェミニズムメッセージがもうはっきり打ち出されてます。なんだけど、ジョージ・ミラーの映画今までも強い女性キャラ割と普通にいた。例えば「マッドマックス2」のあの女戦士。普通に強い女戦士。互角にやるなんて。普通に出してた。だけど例えば特に女たちが男に逆襲ってみたいな。「イーストウィックの魔女たち」とか。そんなのもあったりとか。それの集大成的だったりする。そしてそれを容赦ないそのエクストリームな描写でやる、表現でやるっていうのはもちろんジョージ・ミラーっていう監督、「マッドマックス」以来のあれなんですけど。
マッドマックス撮影手法について
たとえ「ベイブ」や「ハッピー フィート」でさえエクストリーム表現なんですけど。同時に、例えば「マッドマックス」でも直接的なゴア描写、残酷描写みたいなのは実はそんなにないんです。モロに変なの、気持ち悪いの見せたりはそんなにしないし、基本的な演出はむしろすっげーオーソドックスな手法なんですよ。むしろ例えば、今時のぐらぐらカメラとかなんかガクガクカメラ揺らしたとかそういうことしないんです、全然。むしろしっかり構図をちゃんととって、位置関係もはっきり分からせる撮り方をしている。カットははやくても。なので、ゆえに激しいアクションのつるべ打ち、カットがものすごく細かくても、さっき言ったようにそもそもストーリーテリングとそのアクションシーン自体からストーリーテリングと直結したロジカルな組み立て方をしているわけなのもあって、要は今時のハリウッドアクション大作にある、派手になればなるほどなにがなにやら起こってよくわかんないっていう、そういうことには全くなってないんです。ただ情報量が多いので、げっそりしますけど。これ観終わった後、強烈な眠気に毎回誘われますから。終わった後、バターンて倒れたくなる。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は映画の基本を突き詰めた一作
ということで、本作「マッドマックス 怒りのデス・ロード」はそういうその映画の基本、映画の根幹、映画っていうものの本質、その純度を現状可能な限りまでこう突き詰めた一作だと。だから超エンターテインメントですよ。アクションシーンものすごい誰が見たって「すんげぇことやんな!」驚ける。しかもそれをCGじゃなくてできるだけリアルアクションでやった。すんげぇことやる。でしかもそれが、物語とロジカルに組み合ってるから、観てて全然、要は俺がよく言うカーチェイスの間ストーリーが止まるとかそういうことはない。ずーっとストーリーは進行したまま。で、キャラクターもそれによって深みを増して。こいつとこいつがここで組むとか。そういうので連携するとかで、どんどん深まってく。なのに!ルックの斬新さも相まって、エンターテインメントなのに、超アート映画的なエッジもあるってことなんですよ。
とにかくルックが素晴らしい。
とにかくルックが素晴らしい。バッキバキのね。撮影監督のジョン・シールさんだって70代ですよ。もちろんこの間の技術的進化ってのは、もちろん大きいというのはあると思いますが。あと、これも大きい。全編通して「音」、非常に音楽的にサウンドデザインがされてる。音やセリフとかが非常に音楽的にシーンとシーンをつなぐ役目。次の展開ってのを音楽的にこう、呼び込むような。ほとんどミュージカル的な作り込みになってるあたりもすごくフレッシュなあたりだと思います。もちろん「ハッピー フィート」ってね、あれはもうまさにヒップホップ、ほとんどヒップホップミュージカルって言っていいやつだと思いますけど。だからミュージカルって意味でも得意技がきてると。これ「ジャンキーXL」という、見事な仕事したんじゃないでしょうか。
あと、編集のマーガレット・シクセルさんの力が強いでしょう、多分。「マッドマックス」的な、ちょっとこうキレッキレ感というか、はたぶん撮影のジョン・シールさんとその編集の力が非常に大きいんじゃないかと思います。あと、もうちょっと、もう要素が多いんでどんどん言います。
マッドマックス怒りのデス・ロード、俳優陣について
もう俳優陣も文句なし!もうね、特にやっぱ誰もがもう今回感動せざるを得ないシャーリーズ・セロンはすげぇ!事実上主演ですけど、フュリオサっていう女戦士というか、女大隊長。シャーリーズ・セロンすごい。もうアクションも素晴らしいけど、もちろん非常に複雑な悩みを持ったキャラクターっていうのを、やっぱりセリフではなくちょっとした表情の変化とかで、「あ、彼女だって怖いんだ」とか「彼女だって不安なんだ」とかそういうのがやっぱ伝わってくるとか。
あと、トム・ハーディのマックス。これはこれで今回の話にはとっても合ってるんじゃないでしょうか。特にやっぱり優しさの部分。やっぱメル・ギブソンに優しさは感じられない。要は先ほど言った損得を超えた利他的な行動こそが真に英雄的であるという、非常にジョージ・ミラー的な着地に今回いくときに、要は今回描かれた人間を完全に「物」として扱うこの世界で、彼もまさに「物」として扱われる。血液輸血袋だって言われて、血が入った袋だって言われてて、その人がラストで同じく輸血をするんだけど、この意味の180度の転換。そしてそこで、ある名前をめぐる伏線。非常にベタだって言えばベタだけど、非常に的確な演出と積み重ねがあるからこそ、もうドーンとくる感動。あそこでの、「俺の名は・・・」て時の、あの感じはやっぱりトム・ハーディマックスだからじゃないですか。
トム・ハーディのマックス
で、そしてそのトム・ハーディのマックスが成功したことで、要は同一設定、同一俳優じゃなくてもこの「マックス」シリーズ、要するにまた別の神話として永遠に続けられます、これ。要は「用心棒」みたいなことです。「木枯し紋次郎」とか「用心棒」みたいので、彼がいろんなとこ行って、でこうサポートするというあれで。もう永久に続けられるようになったっていうことじゃないでしょうか。
あと忘れちゃいけない!ね!「ニュークス」という、さっきから何度も言っている「ウォー・ボーイズ」という、白塗りの坊主の、かわいそうな若者たちいるわけですけど。それの演じるニコラス・ホルト。ニコラス・ホルト当然「アバウト・ア・ボーイ」のあの男の子。「シングルマン」でもいい役やってました。そして「X-MEN: ファースト・ジェネレーション」でも出ました。非常にどこに出ても無垢で純粋な感じが出る人ですけど。今回も非常に禍々しい役であるはずの、やっぱり彼の純粋さ・無垢さってのが「あぁー不憫、不憫だー!こんなインチキ宗教みたいの信じて。」。
ウォー・ボーイズ
でも、ウォー・ボーイズやっぱり、アガるんですよ。やっぱこれは今回の悪役の「イモータン・ジョー」演じてるのは、1作目の「トゥーカッター」演じた人が演じてますけど。頭がいいんですよ、やっぱり。要するに、この世界を支配するには何が必要かってのをきっちり分かってる。資源を抑える。それからあと子孫繁栄のためにこれをやる。そして、宗教的熱狂の中に、宗教をでっち上げることでもう一押し。特に自分の兵隊を支配する。命をも捨て喜んで捨てさせる。現実のメタファーと非常に深いものがありますけど。このウォー・ボーイズ。ちなみに「ウォー・ボーイズ!」って出てくるの、僕はデュラン デュランの「ワイルド・ボーイズ」っていう、あれのビデオ、ラッセル・マルケイという、やはりオーストラリアの監督が。これも完全に「マッドマックス」フォロワーとしてのビデオだと思いますけど。「ウォー・ボーイズ!」っていう。「ワイルド ボーイズ!」っていう。ちょっとぜひ皆さん「ワイルド・ボーイズ」のビデオ見直していただくと、非常に「ウォー・ボーイズ」っぽかったりすると思いますので。逆オマージュかなと思ったんですけども。まあそれはいいや。「イモータン・ジョー」の世界観とかも非常に、設定の作りこみが非常に読み込み甲斐があるというか、非常に素晴らしい具合になっている。
子産み女
あとは、例えば「子産み女」ってひどいですよね、「産む機械」としての女の人ですよ。5人キャラクターいるけど、5人ともキャラクター分けがもう映画観てれば、もう全員バッキリ分かるし、とか。後半登場する宮崎駿チックなあるチームとか、全員キャラクターが立って、しかもそれぞれにちゃんと物語があってっていう。
ということで、あのね、あー!もー!時間がない!本当はもうド頭から全シーン全カット、あれが良かった、あれがこれが良かったってやりたいんですけど、あえて挙げるなら例えばカーチェース以外のとこも素晴らしいんです。例えば、マックスと、さっき言ったシャーリーズ・セロンやってるフュリオサ、そしてニュークス、そして女たちの四つ巴の格闘シーン。ガーディアンズとかもそうだけど、後にチーム化してくやつらの、ああいうちょっとワン仕掛け入った、ちょっとコミカルな格闘とかすごくいい。あそこのフュリオサが飛びかかってくる前までの構図の取り方とか、実は異常に計算し尽くされている。あのフュリオサがいい塩梅で死角になる、なりかけみたいなのが上手いんですよ。
緩急の付け方
とか、こういうふうに実は緩急つけて要所要所に止まってるシーンもちゃんとあるんです。それが上手いんです。緩急のつけ方が。「武器将軍」っていうのが「わぁー!わぁー!」って来る場面がありますね。ヴェルディの「レクイエム」鳴って来る。あそこでマックスとフュリオサが、要はバトンタッチからのスタイピングシーン。要は今回銃器描写が、何ていうかな、こう連携プレーみたいな。これはちょっともうハワード・ホークス的な、連携気持ちいいみたいな感じ。もいいですし。その後武器将軍がどうやって最後を迎えたのかが見えなくて残念、って意見があってそれも分かるんだけど。いやここは「七人侍」の「久蔵」オマージュでしょうが!と。向こうでなんかやって取って帰ってくる。久蔵オマージュも、そういう見せ方も超かっこいいですし。あと武器将軍と一緒に出てくる「人食い男爵」。乳首いじりをずっとしてる最低キャラなんですけど。あいつがクライマックスで「あるキャラ」を轢き殺すんですけど、そん時の表情とかが最低すぎて最高!とか。あと武器といえば、槍とかもうね、「あ、こんな槍の見せ方見たことねー!」。あとビヨーンビヨーンてね、こうたわむやつ。あれオーストラリアのパフォーマンス集団で「ストレンジ フルート」っていうのがいて、それにジョージ・ミラーが「あ、そういう大道芸いたよな。」つって、違う仕掛けなんですけど、インスパイアされてやった。ちなみにその大道芸的なの「ベイブ2」にも出てくるけどね、ジョージ・ミラーさんて、ていうのがありましたけど。
ギター男やイワオニ族
あとまあ当然、「ギター男」が!とか。「イワオニ族」のあのバイクの跳び方もハンパねえぞ!とか。もうキリない!もう全部言ってきたい!詳しい情報はもちろんプログラム、パンフレット素晴らしいので、絶対買ってください。パンフレット絶対、マスト。あとこの後のヨシキさんのゲスト特集。あと監督インタビュー。こちらで詳しく解釈の方やると思いますんで。
とにかく、これだけは言っときたい!今回の「マッドマックス 怒りのデス・ロード」。これがそういう映画賞とかの賞、今年ってか今年度ってかこの流れで、総なめじゃなかったら、俺、おかしいだろってやっぱ思います。それも例えばアカデミー賞だったら技術賞は当たり前。作品賞、監督賞レベル。ちゃんとそのレベル。シャーリーズ・セロンは主演女優賞レベル。なんなら俺カンヌでグランプリとかそういうことでいいと思うっていうか。もう芸術性とかでもちゃんと評価していいというふうに思うっていうか。
大画面用演出、多数あり
大画面用演出多数あります。小さい画面じゃ分かんない、要するに大きいところにポツンと何かがあるという演出も結構あるので。あと音も凄く重要なんです。大轟音で、ギター男の「グァーン!」みたいのは、そういうのも。あと、向こうから音が微かに聞こえてくるとか。小さな音の演出もすごく大事な、音もすごく重要なので。映画館はもう当然です!これを「DVD待つ」とか言ってるやつはもういい!もうお前は。本当。とかあと、これも大事。リアルタイムで映画館で観たよってことが自慢できるタイプの作品なので絶対行ったほうがいい。今回IMAX・字幕版云々って言ったけど、どれでもいいから!いいから!ということだと思います。
点数のインフレが激しい!
皆さん点数をつけられてるようなので、何点か。今んとこ今回この流れでいうと、非常にインフレ激しくて。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」が500億点なんてこと言いましたけど。ただ今回のこの「フューリー ロード」は、シーン毎、いやさカット毎にウン億点レベルがもうずーっと続くんです。「あー、ウン億点、ウン億点、ウン億点」がずーっと続くんですよ。それが止まんないんです、最後まで行くんで。最後フュリオサがぐーっとあがってった瞬間で、「おー、最後までウン億点出まくり!」みたいな。もう大変でした、計算すんのが。で、監督インタビューによれば今回約2,700カットあるということなんで、まあワンカット当たりウン億点出てるわけですから、これはもう単純計算で少なく見積もっても「5,000億」点。これ5,000億点。だって出るんだもん、これ計算で。これちゃんとこう、だってしようがないだもん。計算したら「5,000?あれ5,000億点だなぁ。」みたいな。「お、5,000億点だ。」ていう、こういう感じなんで。皆さん5,000億点の映画やってんですよ?5,000億点の映画、そんな観れます?そんなあります?お前の塩梅だろうが、って話になるけど。
おれの塩梅はとにかくいいんだよ!騙されたと思って、とにかく今行かない奴はバカだ!「マッドマックス 怒りのデス・ロード」ぜひ劇場でウォッチしてください!
<書き起こし終わり>
○○に入る言葉の答え
「⑤宇多丸さんがつけた点数はなんと”5,000億”点!!」でした!