これは究極の愛の形だと思った。
PCにインストールされた人工知能型OSは、自らを「サマンサ」と名乗り、瞬く間に主人公セオドアの心を誰よりも理解する存在となる。
離婚調停中で傷心気味のセオドアは、同僚や友人よりも自分の心に近いサマンサに傾倒し、彼女をポケットに入るデバイスに入れてデートをするまでに至るのだ。
サマンサもまた、セオドアとの交流の果てに、愛情にも似た感情を抱くようになる。
だが、サマンサは生まれたばかりのOSであり、その知識欲はとどまることを知らない。
彼女はセオドアの元を離れ、ネットワークという知識とデータの海に旅立つことを決意するのだ。
セオドアとサマンサは触れ合うこともできない関係だが、短期間で見事な信頼関係を築き上げる。そこには外見がもたらす全てのしがらみを超えた、ある存在の中身をひたすら愛するという究極の愛があったのだ。彼らにとっては、別れすら一つの通過点に過ぎないのだ、と思わせてくれる強固な関係。なんとも羨ましいものである。
心で繋がる、という概念を本作で学べたように思う。