主人公・炭治郎ら鬼殺隊の剣士達は指令を受け、最近何十人もの乗客達が行方不明になっているという無限列車へ調査に赴く。列車内で同じ命を受けた鬼殺隊最強の剣士の一人、炎柱・煉獄杏寿郎と合流した炭治郎を、恐るべき敵が待ち受ける。
原作は所謂少年漫画であり、基本的には炭治郎が仲間と共に戦いの中で強くなっていく過程を描いています。ですがこの作品に特徴的なのは、闘う敵にも精神的な弱さ、或いは人間的な部分があり、また主人公である炭治郎がこうした漫画にありがちな、ガツガツした元気いっぱいの少年ではなく、欲のない、仲間思いの少年であるという点です。
敵である鬼達は人間の尊厳を踏みにじる様な下劣な手段を当たり前の様に使ってきますが、彼らも元は人間であり、その下劣さの裏にもそれぞれのストーリー、哲学を備えていて、これが物語に奥深さや説得力をもたらしています。
また主人公・炭治郎の優し過ぎると言っても差し支えのない性格は、観る者の心を穏やかにし、感情移入を容易にさせます。
以上の様にシリーズ全体の特徴を踏まえてこの映画の話を移りますと、ポイントは何より、炎柱・煉獄杏寿郎の存在です。
彼の見せる圧倒的な剣さばきと突拍子が無くて可愛げもある性格は観る者の心を動かすのに充分だし、映画終盤に見せる圧倒的な精神性は、主人公である炭治郎を差し置いて、正にこの映画の主役と言って過言では無いと思わせてくれます。
他にもufotableが作る流麗なアニメーションや、エンディングで流れるLiSAの主題歌など、素晴らしいポイントは幾つもあるのですが、何より煉獄さんの存在により、映画は何段階も上の作品として語るに相応しい魅力を放っていると言えるでしょう。