ボヘミアン・ラプソディの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)
で、クイーンという伝説のロックバンドのフレディ・マーキュリーの伝記映画で『ボヘミアン・ラプソディ』(Bohemian Rhapsody)のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『ボヘミアン・ラプソディ』解説レビューの概要
①男性グループの彼らが何故「クイーン(女王様)」なのか?実は、スラングで○○という意味があった!
②フレディ・マーキュリーは、コンプレックスがひっくり返ってナルシズムになったみたいな人でそれが歌詞全体全てに出ている。
③ライヴ・エイドで歌った曲の歌詞に秘められた意味は感動物です。
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
フレディ・マーキュリーの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』
(町山智浩)
こんにちはー。今日はね、11月9日に、殆ど全世界同時ぐらいにですね、クイーンという伝説のロックバンドのリーダーのフレディ・マーキュリーの伝記映画で『ボヘミアン・ラプソディ』という映画が公開されるんで、まあちょっとクイーンをわからない人も多いと思うんですよ。
(山里亮太)
聞けばねぇ、あぁ、あの曲なんだ!ってすぐわかるんでしょうけど。
(赤江珠緒)
あぁこの曲もこの曲もとかありますけどねぇ。
クイーンはどんなバンドだったのか
(町山智浩)
そう。独特のまぁ曲調なんで、クイーンっていうのが一体どういうバンドだったのかっていうお話をちょっとさせていただきたいんですね。僕は完全にリアルタイムで1975年に彼らが『オペラ座の夜』っていうレコードを出しまして、その時中学生だったんで、もうガツン!と来て、クラス全員でその数枚しかないアルバムをみんなで回し聞きするみたいな世界だったんですよ。
(赤江珠緒)
じゃやっぱり最初は衝撃的、な感じですか?
キッスとクイーンとエアロスミスの衝撃
(町山智浩)
大衝撃でした!キッスとクイーンとエアロスミスの衝撃っていうのがあったんですよ。僕らの世代にとってのビートルズみたいなもんですね。でまず1曲目聞いていただきたいんですけども『We Will Rock You』!
〜♫〜
(町山智浩)
はい。これは聞いた事あるでしょう?
(山里亮太)
もちろん!
(赤江珠緒)
あります、あります、はい。
(町山智浩)
どこで聞きました?
(赤江珠緒)
ラグビーの、イメージ。
(町山智浩)
そう!サッカー、ラグビー、野球場。ねぇ、スポーツのイベントで客を盛り上げるためにやりますよね。「ドンドン、タッ!ドンドン、タッ!」ってやつですけども。これがクイーンの歌なんですけども、これはね、歌詞がね、道にたむろしている仕事のない若者たちとかですね、老人とか貧乏な人たちに対して呼びかけている歌なんですね。「俺たちはいま、屈辱の中にあるけれども、いつかこの世の中をロックしてやるぜ!」っていう歌なんですよ。
(赤江珠緒)
やっぱり”立ち上がろう!”って鼓舞している感じですか?
ロック=揺さぶる
(町山智浩)
”立ち上がろう!”っていうかね、「ロックする」っていう言葉の意味は、ロックは「ロックンロール」の「ロック」なんですけど、「揺さぶる」っていう意味なんですよ。船の揺れ方の事なんですねロックっていうのは。「この世の中を揺さぶってひっくり返してやろうぜ!」っていう歌なんですよ。
(赤江珠緒)
ほぉ〜、うんうんうん。
(町山智浩)
まさにロックンロールのロックなんですよ。
(赤江珠緒)
じゃあ”転覆”的な意味合い?
世の中を転覆させてやれ!
(町山智浩)
そう!「世の中を転覆させてやれ!」っていう事なんですよ。で、これはすごく意味のある歌だったんですけどクイーンにとって。クイーンっていうバンド名を、聞くと、変だと思いませんか?写真見た時に、どこがクイーン?とか思いませんでした?
(山里亮太)
確かに。むしろ王様の感じの方が。
(赤江珠緒)
確かに。女の人もいないのに?みたいな。
(町山智浩)
女の人いないでしょう?しかもリードボーカルのフレディ・マーキュリーさんを見てどう思いました?
(山里亮太)
いや髭の、感じが。。
フレディ・マーキュリーの印象
(町山智浩)
あぁ、ハードゲイ的なね、こういう髭のね。えっなんでクイーン?とか思いませんでしたか?なぜ女王なの?って。
(赤江珠緒)
でも、あまりにも「クイーン」っていうのが入ってきていてそれが当然かのようになっていたから、そこに対してはあまり疑問を持っていなかったけど・・はい。
(町山智浩)
あーそうなんですか、僕らの時クイーンが出てきた時っていうのは『Killer Queen』っていうレコードで出てきたんですけども、そしたらリードボーカルの人がはっきり言ってすっげーブサイクなんでみんなびっくりしたんですよ。
(山里亮太)
えっ?
フレディ・マーキュリーのキャラの濃さ
(町山智浩)
えっ!ちょっとお笑いに近くねぇ?これ?」っていう感じだったんですよ、はっきり言って。出っ歯だしすごく。それはこのね『ボヘミアン・ラプソディ』っていう映画の中でもすごく最初の方で描かれるんですよね。で、それはすごく大きな、そのフレディ・マーキュリーさんっていうボーカルの人にとっては、非常にその顔が独特であるという事は映画の中でも大きな大きなテーマになっているんですよ。あぁ、そうか。だからギャグ漫画とかにいっぱい出てくるんですよフレディ・マーキュリーさんって。江口寿史の漫画にも出てくるし、『マカロニほうれん荘』にも出てくるし、少女マンガにもいっぱい出てきます。やっぱりそれは顔が独特でそれまでの美少年系の美形とはちょっと違うところにあったからなんですよ。その辺はね、しかも最初はおかっぱで出てきたんですよ。出っ歯でおかっぱだから結構強烈でしかもヒゲが青いんですよ。
(山里亮太)
へー!!濃いなぁー!
名曲『ボヘミアン・ラプソディ』(Bohemian Rhapsody)
(町山智浩)
だから「すごいな!このキャラ、すごくね?しかもクイーン?」っていう感じだったんで、最初に出てきた時にはものすごくびっくりした感じだったんですけど。はい。で、それはすごく大きなテーマなんですね、彼にとって。音楽全体に対する。で、これはまぁ1番有名な曲、『ボヘミアン・ラプソディ』(Bohemian Rhapsody)を聞いてもらえますか?
〜♫〜
(町山智浩)
もうこの「Mama,just killed a man」っていう、これ僕の世代だと全員フルコーラスで殆ど歌えると思います!はい。
(赤江珠緒)
今もう歌ってらっしゃいましたもんね、イントロから。(笑)
(町山智浩)
はい!全部歌えますよ、僕の世代、50ぐらいの人は。そのぐらいもう、大変な衝撃だったんですよ、これがヒットチャートに出てきた時に。なぜならば、どう聞いてもロックじゃないじゃないですか?ねぇ。最初はそれこそオペラみたいな曲なんですね?はい。で、途中からロックンロールになっていくんですけども、音楽ジャンルとしてものすごく複雑なんですよ。で、これはフレディ・マーキュリーさんっていう人が、元々その、ありとあらゆる音楽を勉強した人で、そのオペラからクラシックからアメリカの黒人のゴスペルソング、ブルース、えーとロカビリー、それこそ民族音楽。そういったものを全部勉強してきた教養を全部詰め込んだのがこの『オペラ座の夜』というアルバムだったんですね。
(赤江珠緒)
えぇ。
Queenは非常に特殊なバンド
(町山智浩)
で、クイーンというバンドは非常に特殊なバンドで、ロックだけやってきた人たちの集まりじゃなかったんですよ。このフレディ・マーキュリーさんは元々アートスクールの美術大学に通っていた人で、レコードジャケットとかの王家の紋章みたいなクイーンのマークは、あれは全部彼が書いているんですよ。
(赤江珠緒)
あっ!あれも書いてらっしゃるんですね!
(町山智浩)
そう、アーティストなんですよ。で、ギタリストのブライアン・メイさんは本職は、ロケット工学者です。
(山里亮太)
へぇ〜〜っ!
(町山智浩)
で、ドラムのロジャー・テイラーは歯医者さんです。
(赤江珠緒)
あ、そうですね。
(町山智浩)
あ、それは知っていた?で、ベースのジョン・ディーコンさんは電気技師だった人なんですよ。
(山里亮太)
へぇ〜〜っ!
みんな手に職を持っているインテリ集団
(町山智浩)
だからみんな手に職があるインテリで、その人たちが結集していてすごく面白いバンドなんですよね?はい。特にこの『Bohemian Rhapsody』っていう曲は5分以上あるんですよ。で、最初はこの曲をシングルで出すってなった時に、「それじゃラジオがフルコーラスでかけてくれないだろ?」ってなって。それで。ちょっと音を大きくしてもらえます?あっここからですよ!「I see a little silhouetto of a man♪Scaramouch,scaramouch will you do the fandango♫」ね!!すごいでしょう、これ!
(赤江珠緒)
うん!
(町山智浩)
ここ!「Gallileo,Gallileo,Gallileo Figaro magnifico♫」っていうやつですね!
(赤江珠緒)
あぁ、ここね!
(町山智浩)
すごいでしょう、これ!「He’s just a poor boy from a poor family♫」
これ、僕の世代は本当にもう、もう歌詞カードとか見なくても全員こう。。
(山里亮太)
見てませんもんね、今。
(町山智浩)
そう。見なくても全員歌えますよこれ。(笑)
(山里亮太)
抑えきれない感じで。(笑)
(町山智浩)
そう。でもこれ、伴奏、入っていないでしょう?声だけですよこれ。
(赤江珠緒)
ミュージカルみたいな、ここだけ聞くとね。
ロック、でもオペラ
(町山智浩)
そうそう。オペラなんですよ。で、すごい、こんなものがロックのヒットチャートでナンバーワンを取るなんて前代未聞だったんですよね。で、しかも長い。後半にならないと展開していかない。で、これはレコード会社がすごく反対して、これをシングルにするなんて、無理だ!と。サビがないじゃないか!みたいな話になって、そしたらそのフレディ・マーキュリーさんが「5分で長いって言うんだったら、あんたの奥さんっていうのはよっぽどつまらない性生活をおくっているんだね!」って言ったんですよ、プロデューサーに。(笑)
(山里亮太)
粋な返しだな!(笑)
(町山智浩)
粋な返しでしょう?ねぇ!ただこの曲っていうのは本当にもうクイーンにとってもロック史にとっても残る、すごい曲だったんですけども、これは歌詞が謎だって言われているんですよずっと。「ママ、僕はある男を殺しちゃったんだよ。これから刑罰を受ける、まぁ死刑になる。」と。「でも、お母さん。僕なんか生まれてこなかったと思ってください」っていう、お母さんに対して歌っている、西条八十のような。「Mama,Do you remember♫」みたいな感じなんですよ。
(赤江珠緒)
ははっうんうん。
ボヘミアン・ラプソディの歌詞の意味の一説
(町山智浩)
で、ただこの歌詞は一体、じゃあ何の事を歌っているんだ?ってずっと言われてきたんですね?ただそれは、今ある説がありまして。主人公が殺してしまった人というのは、フレディ・マーキュリー自身だという風に言われているんですよ。っていうのはフレディ・マーキュリーっていうのは本当の名前じゃないんですよ。この人本名はね、ファルーク・バルサラっていう名前なんです。
(赤江珠緒)
全然違いますね。
(町山智浩)
全然違います。インド系なんですよ。
(赤江珠緒)
はぇーっ!あぁお顔もそう言われたら、インド系の方!はい。
フレディ・マーキュリーの本名はファルーク・バルサラ
(町山智浩)
そうなんですよ。はい。お父さんもお母さんもインド系で、で、その名前を捨てて「フレディ・マーキュリー」に。正式(な名前)にしてるんですよね。
(赤江珠緒)
芸名じゃなくて?戸籍までって事?
(町山智浩)
戸籍までです。戸籍ないですけどイギリスには。
(赤江珠緒)
あぁそうかそうか。
名前を変えた=ボヘミアン・ラプソディの歌詞
(町山智浩)
だからこれはフレディ・マーキュリーっていう「お母さんに産んでもらった少年を僕は殺したんだよ」っていう歌ではないかと言われているんです。「生まれ変わったんだ。でも、みんなには、それは罪だと。言われて責められるんだ。お母さん、僕なんか生まれてこなかったと思ってください」っていう歌なんだと。ていう風に言われているんです。
(赤江珠緒)
えぇーーっ切ない。。
フレディ・マーキュリーのコンプレックス
(町山智浩)
これはですね、すごく、フレディ・マーキュリーさんはね、すごいコンプレックスがあったらしくてですね、ものすごく、パフォーマンスを見ていると、ものすごくナルシストに見える訳ですよ。ねぇ。ああいうルックスなのに女装とかが好きだったりね、豪華な服を着て本当にエンターテイナーで。「みんな、見て!」っていう感じに見えるんですけど、その一方ですごいコンプレックスがあったらしいんですよ。自分の容姿とか出自だったりいろんな事にね。で、ちょっとね、すごくいい歌があるんで聞いてほしい歌があってですね『Somebody To Love』愛にすべてを、お願いします。
(町山智浩)
これは『Somebody To Love』という歌でこれね、『ハッピー フィート』っていうアニメの中でペンギンが歌っているシーンですごく有名なんですけど、この歌、歌詞はどういう歌かっていうと、「毎朝、僕は起きるたびに死にたくなるんだ。」と。「鏡を見ると神様を呪うんだ。」と。「なんでこんな姿に生んでくれたんだ?」っていう歌なんですよ。
(赤江珠緒)
えっ?ちょっとこう、曲調を聞いているとなんかすごく美しい曲だなと思って今聞いてましたけども。
コンプレックスの歌
(町山智浩)
すごい美しい曲なんですよ。で「僕に愛する人をくれないか」っていう歌なんですよ。コンプレックスの歌なんですよ。で曲はね、ゴスペルなんですよ。すごくアメリカのゴスペルに影響を受けているんで。
(赤江珠緒)
ちょっと祈りっぽい感じになっているんだ。
(町山智浩)
そう。お祈りなんですよ。神様に対する。ちなみに彼は、ゾロアスター教徒でしたけどね。
(赤江珠緒)
ゾロアスター?
コンプレックスがひっくり返ってナルシズムに
(町山智浩)
すごいですね。その辺がね、すごくコンプレックスとナルシズムがあって、すごい出っ歯だったんですけども、逆にそれをお金があるので歯列矯正すればよかったのにしなかったんですよ彼は。それで、やっぱり歯を直したら負けだと思ったんでしょうね、この歯が俺なんだ。この歯が素晴らしい歌を作り出しているんだ。っていう事で、それを誇りに思う方向に転換していって。はい。その辺もすごくコンプレックスがひっくり返ってナルシズムになったみたいな人なんで、それが歌詞全体全てに出ている人なんですね。で、1番彼の中で、1番彼が葛藤したものっていうのは、セクシャリティーの問題だったんですよ。このフレディ・マーキュリーさんの。フレディ・マーキュリーさんって、見た目どう思いました?
(赤江珠緒)
見た目ね、なんかあのー、やっぱり、割とピタッとした服とか着られていて。
(町山智浩)
ハードゲイでしょう!?
(赤江珠緒)
あぁ、そのイメージが。
(町山智浩)
ハードゲイですよ、はっきり言って。
(山里亮太)
色んな言葉探してたのに。(笑)
ハードゲイ
(町山智浩)
ハードゲイっていうものが1番流行った時が1980年代の終わりなんですけど、その時に芸能人で真正面からその格好をしてきたのがフレディ・マーキュリーさん。角刈りに近い感じで髭で、ランニングで白い、それで筋肉モリモリで、パツンパツンのパンツで出てくるっていう。ハードゲイっていうものはアメリカですごく流行っていて大変な問題になっているっていう事を聞いてて、それが本当に出てきたっていう形だったんですよ。
(赤江珠緒)
ふーん。
(町山智浩)
でなにが問題になっていたのか?っていうのは後で説明しますけども。でも、フレディ・マーキュリーさん自身が、愛していたのは女性だったんですよ。
(赤江珠緒)
あっそうなんですか?
(町山智浩)
メアリー・オースティンさんっていう人を、愛していたんですね。で、ちょっと曲をかけていただけますか?『Love Of My Life』。
〜♫〜
(町山智浩)
これはえっと、バロック的な歌なんですけど、これは「僕の生涯を通して愛する人は君だけだ」っていう歌なんです。「僕を捨てないでくれ」っていう歌なんですけど、これはメアリーさんという女性に対して歌っています。で、彼ははっきり言って生涯、彼女だけを愛し続けたんです。
(赤江珠緒)
そんな一途に?えぇ。
(町山智浩)
そう。で、ほとんど一緒に暮らしていたし最後まで。財産も殆ど彼女に上げているんですよ。遺産も。ただ、彼は彼女を心では愛しているんだけども、体は、男の人を求めていたんです。
(赤江珠緒)
はぁ〜、そんな複雑な感じ、の。。
ハードゲイの危険なセックス
(町山智浩)
引き裂かれる感じだったんですよ。で、彼自身もすごく悩んで辛かったみたいですね。はい。で、1番問題なのは、その時に何が問題になっていたのか?っていうとその、ハードゲイって人たちは非常に危険なセックスをしていたんですよ当時。で、フフッ金属製のリングをあそこにはめて、それでまぁセックスをするというような、傷がつくような事、痛い事をやっていて。その時、実はエイズというものがまだわかっていなかったので、それで非常にそのエイズに感染して大量の死者を出すという事になってくるんですよ。80年代の頭に。
(赤江珠緒)
はー・・はい。
(町山智浩)
で、ちょっと次に『地獄へ道づれ』をお願いします。
〜♫〜
(町山智浩)
えーとこれ『地獄へ道づれ』って歌なんですけども、これ歌詞はね「また1人また1人死んだ」っていう内容なんですね。これは1980年なんですけども、その後にそのエイズによって82年ぐらいからどんどん死者が出ていくと、いう状況を予言するような感じの歌になっちゃったんですね。で、フレディさん自身もエイズにかかってしまうんですけども、その時に非常に荒れていて彼は。アイデンティティーの問題だったり、その頃にはゲイである事を公表できなかったんですよイギリスでは。差別があって。
(赤江珠緒)
あー・・えぇ。えぇ。
(町山智浩)
言えなかったんですね。で、すごく辛かったりした所があってですね。
(赤江珠緒)
えっ、亡くなるまで公表はされていませんでしたっけ?
ライヴエイド(LIVE AID)で再結成
(町山智浩)
エイズ自体ははっきりと公表していなかったんですけどね。で、彼自身セクシャリティーをはっきりとは言っていなかったんです。まぁ見たらすぐにわかるんですが。でバンドもバラバラになっていったりしたんですけど。で、一瞬消えていくのかな?って思ったんですよ僕は。したら1985年にクイーンが一種再結成みたいな形を取りまして、『ライヴエイド(LIVE AID)』というアフリカの飢餓を救おうという全世界同日コンサートっていうのがありまして。そこでクイーンがですね、再結成されてですね、再結成というかまぁ復活してですね、登場したんですね。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
で、その時に実はもう既にもうエイズで、かなり死期が迫っていた状態だったんですよ。僕は全然知りませんでした。みんな知らなかったんです。公表されていなかったから。で、僕はその時にすごく感動をしたんですけども、ちょっと『We Are The Champions』をお願いします。伝説のチャンピオン。
〜♫〜
(町山智浩)
そう、これで久しぶりに出てきて非常に感動したんですけども、実はその時に彼はもう既に死に向かっていて、死を覚悟していた状態だったんですね。で、それを今知って、この歌を聞くと、すごい歌なんですよ歌詞が。これね、「僕は人生を通して債務を果たしてきた。刑罰も受けた。何の罪も犯していないのに。ひどい過ちも確かに少しはしたさ。でも色んな屈辱を甘んじてきたさ。でも、それを全て乗り越えてきたんだよ」っていう。自分の人生の事になっているんですよ、これ!
(赤江珠緒)
そのものをずっと歌ってこられた方なんですね。
(町山智浩)
そう。だから彼自身の、最初の『We Will Rock You』もそうなんですけど、負け犬とか屈辱を受けた人たち、いろんなものを抱えて言えない人たちのための歌を歌ったんですよ。
(赤江珠緒)
ふーん!
クイーンはスラングで、ゲイの女装をしている人
(町山智浩)
で、クイーンっていうバンド名もはっきり言うとクイーンってのは、スラングで、ゲイの女装をしている人の事なんですよ。
(赤江珠緒)
あぁ、そうなんですか!
(町山智浩)
そうなんですよ。ドラァググイーンって言うでしょう?
(赤江珠緒)
ああ、そうかそうか。
(町山智浩)
ねぇ。だからそういったもの、今まで差別があった時にその中で屈辱を受けながら、でも勝つ!負けないぞ!っていう歌だったんですよ。クイーンの感動というのは。実は。
(山里亮太)
はーーー!
(町山智浩)
で、この歌がねまたね、「これは僕のカーテンコールです。これもうショーは終わりです。この富と名声を僕にもたらしてくれたみなさんに感謝します。」って、お客さん達、全てのファンに向かって歌っているんですよ。
※I’ve taken my bows. And my curtain calls. You brought me fame and fortune and everything that goes with it. I thank you all.
(赤江珠緒)
別れを・・別れの曲だったんですか!
(山里亮太)
言ってたんだ!
(町山智浩)
別れの曲だったんですよ。で、「たしかに辛い道でした。でも、僕の挑戦を全人類が見ているんです。負けるわけにはいきません」っていう歌なんです。
※But it’s been no bed of roses. No pleasure cruise. I consider it a challenge before the whole human race. And I ain’t gonna lose.
(山里亮太)
へぇーー!
僕らは勝者なんだ。チャンピオンなんです!
(町山智浩)
で、「僕らは勝者なんだ。チャンピオンなんです!」っていう歌なんですよ。これをそのエイズで死が迫っている状態で実は歌ってたんですよ。もうすごい、まあびっくりしましたねだから。
(赤江珠緒)
それは強烈なメッセージになりますよね。
(町山智浩)
この歌はね今もう色んな映画で『ナーズの復讐』っていう映画があって。これはオタクの子たちがいじめっ子たちに復讐する映画なんですけど、それでも最後の歌はこれなんですよ、『We Are the Champions』なんですよ。
あとは『飛べないアヒル』っていうダメなそのアイスホッケーチームの子供たちが頑張る映画も、最後はみんなで『We Are the Champions』を歌うんですよ。だからすごく屈辱の中で頑張ってきた人たちが戦って勝った時には必ずこの歌を歌うっていうのがもうアメリカの伝統になっていますよね、世界の。クイーンっていうのはだからその、確かに綺羅びやかだったんだけども、その裏にはフレディ・マーキュリーっていう人の色んなコンプレックスとか屈辱とかそれとの戦いとか死とかですね、そういったものがあったんだっていう事がわかりますね。
(赤江珠緒)
なんか魂からの手紙みたいな歌だったんですね!
ボヘミアンの意味
(町山智浩)
そうなんです。『Bohemian Rhapsody』の「Bohemian」っていうのは、「ボヘミアン♪」でご存知のように、
(山里亮太)
葛城ユキ・・!
(町山智浩)
「流れ者、寄る辺なき者」っていう事なんですよ。で、どこにも仲間がいないんだと思っていたら、最後にいたんですよ。それはファンだったしバンドの仲間だった。「You are my best friend!」っていう事なんですよ。
(赤江珠緒)
はー!
(町山智浩)
それで「みんな、ありがとう!」っていう事なんですね。
(山里亮太)
すげー!!
俺たちは勝ったんだ!
(町山智浩)
「俺たちは勝ったんだ!」っていう、そういう感動的な映画が『ボヘミアン・ラプソディ』で11月9日公開ですが、たぶんね、大合唱上映とかを開くと思います!そうすると、ジャスラックが邪魔しにくるんですよ、カラオケと同じだから、金を取るぞ!とかって映画館に金を取りに来るんですけども、みんな蹴散らした方がいいと思います。(笑)
(赤江珠緒)
こんな魂の雄叫びを!?(笑)
(町山智浩)
『We Will Rock You』を歌いながらね、ジャスラックのやつらを蹴散らしてみんなで合唱上映するといいと思いますよ!
(山里亮太)
Rock Youって、揺さぶりますね!
(赤江珠緒)
そうですよねぇ!こんな魂の叫びのような曲の時にそんな細かい事を言いますか?
(町山智浩)
そんな「金取るぞ、カラオケだろ、金取るぞ」とか、「うるせえぞ、馬鹿野郎!」って思います。という事で、もう次の仕事があるんで失礼します!(笑)
(赤江珠緒)
わかりました。いやー町山さんもお忙しい中、ありがとうございます。
(山里亮太)
映画見たくなった!僕もね、これ予習は完璧でしょう!
(赤江珠緒)
こりゃクイーンは伝説だ。。はい。今日は『ボヘミアン・ラプソディ』公開直前、クイーン予習特集でした。町山さん、ありがとうございました。
(町山智浩)
どもでした!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
①男性グループの彼らが何故「クイーン(女王様)」なのか?実は、スラングで「ゲイの女装をしている人の事」という意味があった!