オデッセイの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)
で、『オデッセイ』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『オデッセイ』解説レビューの概要
①宇宙サバイバル映画
②火星に1人取り残されたマット・デイモン
③ロケットは引き返せず、新たな迎えのロケットも火星にたどり着くまでに4年はかかる。
④船長が残した70年代ヒットソングに励まされるマット・デイモン
⑤ずっとノリノリの古い歌が流れるので、ノリノリで○○○○○○みたい。
⑥著作権の問題で歌の歌詞が翻訳されないが、是非歌詞の意味を知ってから鑑賞して欲しい。
⑦オデッセイは日本だけのタイトル。原題は『火星の人(The Martian)』
⑧オデッセイはギリシャ物語の「オデッセウス」から来ている
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『オデッセイ』宇宙サバイバル映画
(町山智浩)
今日はですねアメリカで大ヒットしている、ものすごいヒットしてるんですけども、『オデッセイ』という、宇宙サバイバル映画を紹介します。
(赤江珠緒)
いやだからこのね、宇宙サバイバルって聞いて、これが明るくなるのかと。
(山里亮太)
あぁねぇ、深刻な話っぽい・・。
(町山智浩)
これが明るいんですよ。
(赤江珠緒)
明るいんですか!
明るい宇宙サバイバル映画
(町山智浩)
僕も驚きました。で話はどういうのかっていうと、火星に行った宇宙飛行士がですね、たった1人で火星に取り残されてしまうっていう話なんですよ。
(赤江珠緒)
うん。絶望じゃないですか。
(町山智浩)
はい。絶望的な状況です。はい。で、話はですねまず火星でロケットでですね、NASAの宇宙飛行士達が行きまして、火星に。すごい遠いんですけれども、それでまぁ着いてですね、6人の宇宙飛行士がそこで研究所を作って、基地を作ってですね、1ヶ月間調査をしようとしてるんですけども、嵐が来ちゃうんですね、ものすごい。で、その嵐が来たんで、至急地球に帰ろうって事になって、みんなでロケットに乗ろうとするんですけど、その途中でその、嵐で基地のアンテナが折れてですね、それが飛んできてですね、宇宙飛行士の1人の、マット・デイモンにグサー!!って突き刺さっちゃうんですよ。
(赤江珠緒)
ほおー!
置いていかれたマット・デイモン
(町山智浩)
で他の宇宙飛行士達は、こりゃマット・デイモン死んだなと思って。(笑)ロケットに乗って地球に帰っちゃうんですね。
(赤江珠緒)
わ・・はぁ。。
(町山智浩)
あらーっていう感じなんですよ。ところがね、マット・デイモン大したケガじゃなかったんですよ。
(赤江珠緒)
えーっ!!うん。
(町山智浩)
で、生きててですね、生きてたんだけど、火星だと。で火星っていうのはね、空気が地球の200分の1しかないんですって。
(山里亮太)
へー・・。
(赤江珠緒)
うんうんうんうん。
空気が少なく、酸素も殆どない
(町山智浩)
それで、人間が必要とする酸素は、しかも殆どなくて、殆どが二酸化炭素なんですって。
(赤江珠緒)
はい。
(町山智浩)
で、空気がまずないと。で、あとものすごく寒いんですね火星は。南極とかそれぐらい、もっと寒いらしいんですけど。であと水が・・水が最近火星から発見されたんですけど、地下にあるだけで、簡単に取れたりしないらしいんですよね。基本的に砂漠。
(赤江珠緒)
え〜、はい。
(町山智浩)
で、あと食料は一応持って来たんですけれども、少ししかないんですよ。
(赤江珠緒)
うん。
宇宙ロケットは引き返せない
(町山智浩)
で、これ宇宙ロケットがね、引き返せばいいじゃないかって思うんですけど、宇宙ロケットって引き返してそのまた助けに来るだけの燃料を持ってないんですね。
(山里亮太)
なるほどっ・・ギリギリ・・。
(町山智浩)
だから彼らは地球に帰ったままなんですよ。で、じゃぁ地球から新しいロケットを打ち出せばいいじゃないかって思うんですけど、地球で新しいロケットを作って、発射して、火星に助けに来るまで、4年かかるんですって。
(赤江珠緒)
4年!?
火星まで4年
(町山智浩)
4年かかるんですって。(笑)じゃぁマット・デイモン生きていけるのかなって。大丈夫かっていう話なんですね。それが今回の『オデッセイ』っていう映画なんですけれども。でまぁ本当に絶望的な状況で。たった1つですね、そのマット・デイモンの基地、火星の基地に残されていた、たった1つの心の支えはですね、その宇宙船の船長が地球から持ってきたですね、CDが置いてあるんですよ1枚。で、それ聞くぐらいしかですね、心が休まる時がないんですけど、そのCDがまたですね、その宇宙船の船長の趣味で。何故か70年代ディスコヒット曲集だったんですよ。
(山里亮太)
ふ〜ん!
(町山智浩)
でね、この映画、全編に渡って70年代ディスコヒットがかかりまくっているという非常に奇妙な映画なんです。(笑)
(山里亮太)
えっ!なんか映像とあんまり合わなそうな気がするんですけどね、歌が。
セルマ・ヒルストンの76年の大ヒット曲『Don’t Leave Me This Way』
(町山智浩)
そうなんですよ。たとえば1曲目ちょっと聞いていただけますか。これはセルマ・ヒルストンの76年の大ヒット曲『Don’t Leave Me This Way』です。どうぞ。
〜音楽〜
(山里亮太)
サバイバル感ないですね。
(赤江珠緒)
ほんとですね。(笑)
(町山智浩)
はい。この歌はですね、私を置いて行かないでって言う・・
(赤江珠緒)
あっそのまんまなんですね!(笑)
(町山智浩)
そのままですね(笑)。歌詞のままです。あなたに去られたら私はもう生きていけないわっていう歌なんですよ。
(山里亮太)
はぁ〜!ピッタリだ!奇跡的に。
歌詞がピッタリ。「私を置いて行かないで」
(町山智浩)そう。火星に置き去りにされたマット・デイモンの気持ちそのままなんですけども。はい。ちょっと聞いて下さい。いい曲なんで。はい。
〜音楽〜
(町山智浩)はい。この歌ね、70年代大ヒットして、僕みたいな、どうしようもなくオタクでもね、その頃っていうのは僕、高校でしたけど。高校、大学の頃ってのは、僕みたいな人ですらディスコに行ったくらいディスコブームの頃だったんですよ。
(赤江珠緒)
ええっ!町山さんがディスコへ!?(笑)
(山里亮太)
ええっ!想像つかない。(笑)
(町山智浩)
高田馬場にもディスコあったんですよ昔。この時代は。70年代終わりって言うのは。
(赤江珠緒)
えっ!じゃ町山さんも・・?
リチャード三世
(町山智浩)
パチンコ屋さんの上に、”リチャード三世”っていうディスコがありましたよ。高田馬場に(笑)。
(赤江珠緒)
リチャード三世!(笑)
(山里亮太)
また時代を感じますね!(笑)
(町山智浩)
そういう所にも行ってましたけども。(笑)そこでこの曲がかかってね、この「ウーベイビー♪」っていう所で全員でばーっと盛り上がるんですけど。(笑)まぁそれはいいんですが。(笑)
(赤江珠緒)
へぇー!
(山里亮太)
時代!(笑)
歌に励まされ頑張るマット・デイモン
(町山智浩)
そういうね、僕の世代にはもうめちゃくちゃノリノリの曲ばかりかかってるんですけど。で、こういう歌にね励まされてマット・デイモンは頑張る訳ですよ生き残るために。で、例えば酸素はね、火星は二酸化炭素があるから、二酸化炭素から分離すれば酸素はできるんですって。で、そういう技術は今もうすでにNASAはあるらしいんですよ。それで酸素を作ると。で今度酸素があれば、今度、ロケット燃料がちょこっと残ってるんで、ロケット燃料は水素なんですね、水素を燃やすんですよ。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
だから水素と今度酸素をくっつけて水を作ることができるんですよ。
(山里亮太)
ほおー!
マット・デイモンは植物学者
(町山智浩)
これやりましたよね、化学の実験でね。ね、学校でね。で、今度、水と酸素はあるけれど食べ物がないんですね。ところがこのマット・デイモン、植物学者だったんですよ。で、なんとかねジャガイモの種イモだけはあったんですけど、これをどうやって育てるかと。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
でも土はないんですよね、火星っていうのは砂漠なんだけど、その植物が生えてないから栄養分が一切ないんですよ、土に。でもね、人間は栄養分をお尻から出しますよね?
(山里亮太)
おぉ!
(赤江珠緒)
あー!はい。排泄物で?(笑)
ジャガイモの有機栽培をする
(町山智浩)
そう。(笑)それでまぁ有機栽培をするんですジャガイモの。
(山里亮太)
あらー!
(赤江珠緒)
できるかぁ。
(町山智浩)
はい。そうやって食べ物を作って、なんとか、サバイバルしていこうというね、話なんですね、この『オデッセイ』っていう映画は。4年間。はい。で、これで生きられるってなると、ここでかかる2曲目、いってみたいと思います。はい。グロリア・ゲイナー『恋のサバイバル』。
グロリア・ゲイナー『恋のサバイバル』
〜音楽〜
(赤江珠緒)
わ、この曲・・!
(町山智浩)
はい。この歌、知ってる人はもうノリノリだと思いますよ新宿二丁目方面では。はい。これはね、さっきの歌と歌詞の始めの所が同じなんですよ。”あなたが去った時、私はもう生きていけないと思ったわ”っていう歌詞なんですよ。
(山里亮太)
はぁはぁはぁ。
(町山智浩)
”でもその後ね、でも幾つもの孤独な夜に耐えて私は強くなったの。生きていく方法を学んだの。私は生き延びるわ。生きていくわ”っていう歌詞なんですよ。
(赤江珠緒)
なんかたくましく復活する歌ですもんね。
(町山智浩)
そうなんですよ。
(赤江珠緒)
えっ、これが実際にこのシーンでかかる?
ゲイの国歌
(町山智浩)
まぁこれはね、映画館でかかった時ですね、この『オデッセイ』を見た時にね、僕サンフランシスコの方に住んでますんで、まぁ世界一のゲイのメッカなんですよ。
(赤江珠緒)
ほう!
(町山智浩)
だからこれがかかった時にもう、みんなノリノリでしたね!はい。
(赤江珠緒)
はははは(笑)
(町山智浩)
これいわゆる、ゲイの皆さんにとっての国歌。アンセムと言われている曲なんです。
(山里亮太)
そうなんですか!
(赤江珠緒)
そこまで!?へぇ〜!
(町山智浩)
そうなんですよ。だからもうこれがかかってみんなノリノリでしたけど。はい。
(山里亮太)
また違った楽しみがね。(笑)
ずーっとノリノリでミュージカルみたい
(町山智浩)
で、まぁあの・・急にここでポジティブになってって、頑張ろうって話になってくんですけど、この映画こういう・・地獄みたいな状況で、生き残る話って皆もう極限状態でものすごいサスペンスじゃないですか、普通。ところがこの映画ずっとこういう曲が流れてるんで、もうずーっとノリノリでミュージカルみたいなんですよ。
(赤江珠緒)
ええっ。・・不思議!
(町山智浩)
だから、ええー!って。こんな映画あったのか!って言う感じで、新しい!と思いましたね。これね、監督はね、リドリー・スコットというもう・・巨匠ですね。でこの人は、『エイリアン』、あのエイリアン、怖い怖い『エイリアン』ですね。あと、『ブレードランナー』ね。そういうすごいまぁ重々しいですね、傑作の数々を撮ってきたリドリー・スコットですけど、今回ノリノリですよ。
(赤江珠緒)
へぇ〜!
(町山智浩)
もうディスコでノリノリっていうね、とんでもない映画になってますね、はい。
(山里亮太)
これでも、アレなんですかね、緊張感を削いじゃうみたいな事ないんですか?曲がちゃんとハマってくるんですかね?
(町山智浩)
緊張感はないですけど、元気になりますよ。はい。
(山里亮太)
そうか、明るいSFですもんね。これね。
明るいSF
(町山智浩)
そうなんですよ。で、彼が・・マット・デイモンが生き残っている事がわかったんで、NASAの方でもなんとか彼を救出するための作戦を立てるんですよね。で、一生懸命みんな考えるんですけども、このマット・デイモンっていうのは、もともと『インターステラー』っていう映画が去年ありましたけど、あれでもなんか宇宙の彼方に行って1人で暮らしている男の役でしたね。(笑)
(山里亮太)
そうだ!出てましたね、それで。
(町山智浩)
で、この人元々、新人として出てきた時も、『プライベート・ライアン』て映画で、第二次大戦の時にドイツ軍のまっただ中にいて、それをトム・ハンクスが助けに行くっていう映画だったんですよ。
(山里亮太)
はー!
(赤江珠緒)
よく取り残される人。(笑)
よく取り残されるマット・デイモン
(町山智浩)
よく取り残されて救出されている、救出され役者だなマット・デイモンって思いましたけどね。(笑)人に迷惑ばっかりかけてるんですけど。(笑)
(山里亮太)
はははは。(笑)役ですけどね!(笑)
(町山智浩)
そうなんですけどね、役ですけど。はい。でね、NASAがなんとか彼を助けようとしてですね、作戦を皆で立てる所で、かかる曲がですね、この曲なんです。はい。デビッド・ボウイ『スターマン』。
デビッド・ボウイ『スターマン』
〜音楽〜
(町山智浩)
はい。これも明るいでしょ?
(赤江珠緒)
うん、明るい。
(町山智浩)
これ歌はね、スターマンっていうのは『宇宙の男』っていう意味ですけど、宇宙の男があの空の上で皆を待っているよっていう歌なんですよ。
(山里亮太)
ほう!シンクロしまくりですね曲!
宇宙の男があの空の上で皆を待っているよ
(町山智浩)
そうなんですよ。だからね、ミュージカルみたいに歌詞が全部、その状況を説明してるんですね。
(赤江珠緒)
は〜!ただ、ほのぼのしてますね!
(町山智浩)
そうなんですけど、日本では、上映する時に、使ってる歌の歌詞を・・訳詞を基本的につけられないんですよ、字幕で。あの著作権の問題があるらしいんですよ。
(赤江珠緒)
あっそうなんですか・・!それがわからないと、ちょっとねぇ。。
(山里亮太)
そっか。もったいないよねぇ。
(町山智浩)
そうなんですよ。僕よく、字幕の監修をやる時に”訳詞をつけてくれ”っていう風に言うんですけど、ちょっと著作権上、問題があってって言われるんですよね。
(山里亮太)
え〜〜・・そっかぁ。。
訳詞が付けられない
(町山智浩)
だからせっかく歌詞がこう、画面とシンクロしてるのに、わからないっていう事があるんで、日本で見る人たちの為にね、今説明してるんですけどね。(笑)
(山里亮太)
なるほど!
(赤江珠緒)
なるほど!これを聞いた上で行けばね。なるほど。
(町山智浩)
そうなんですよ。ちゃんと全部意味があるからねっていう感じなんですけど。はい。で、これデビッド・ボウイの歌で、これディスコじゃないんですけどね。これデビッド・ボウイにはね、そのものズバリの歌で、『Life On Mars』っていう歌もあるんですよ。
(赤江珠緒)
ほお!火星での・・
(町山智浩)
”火星の生命”とか”火星で生きる事”っていう意味なんですけど。ただそっちはね、なんかね。スローバラードだから合わないから使わなかったみたいです。今回は。
(赤江珠緒)
あー、そうなんですか。へぇ〜!
オデッセイは日本だけのタイトル
(町山智浩)
だからこっちになってるんですけど。で、これね、映画ね、『オデッセイ』っていうタイトルはね、日本だけのタイトルなんですよ。で、元々のタイトルは、『火星の人(The Martian)』って言うタイトルなんです、この映画。要するに、マット・デイモンが火星に行って、火星の人になっちゃった訳ですね。
(赤江珠緒)
へぇ〜、わかりやすいですね、うん。
オデッセイはギリシャ物語の「オデッセウス」から来ている
(町山智浩)
わかりやすいんですけど、ただ日本ではこれを『オデッセイ』にしたのはまた別の意味があって。あの、オデッセイって言うのは、ギリシャの物語で、”オデッセウス”っていう人がいたんですね、ギリシャに、昔。
(赤江珠緒)
あ〜!はい。
(町山智浩)
王様なんですけども、トロイの木馬を発明した人なんですよ。
(赤江珠緒)はいはい。
(町山智浩)
でトロイ戦争でトロイの木馬を発明して、俺は頭いいぜって威張ってたら、ポセイドンっていう海の神様の怒りを受けてしまって、家に帰れなくなっちゃったんですね。
(赤江珠緒)
もう10年以上帰れなかったっていう、英雄。
(町山智浩)
そうなんですよ、地中海をグルグル回って。だからその、家に帰ろうとして帰れない人が一生懸命家に帰ろうとする話をみんな『オデッセイ』って呼ぶんですよ。
(山里亮太)
はえ〜〜!
(町山智浩)
だからこれはマット・デイモンの『オデッセイ』な訳ですね。
(赤江珠緒)
なるほど!
家に帰ろうとして帰れない人=オデッセイ
(町山智浩)
ちなみに『2001年宇宙の旅』っていう映画も、地球から木星に行って帰ってくる話なんで、『2001年宇宙のオデッセイ(2001: A Space Odyssey)』っていうのが原題なんですけどね。
(赤江珠緒)
ふーん!
(町山智浩)
はい。でも、大抵の勤め人のお父さんはみんなオデッセイですね毎日ね。
(山里亮太)
そうですね。家に戻ろうとする。(笑)
(赤江珠緒)
はははは。なぜ帰れない。(笑)
(町山智浩)
なぜ帰れないって。(笑)途中で色んな物に誘惑されて帰れなかったりね。あの朝帰ってきたりする変なオデッセイもありますが。はい。(笑)で、この映画本当に死ぬかもしれないっていう話なのに、全然暗くならないんですよ。
(赤江珠緒)
ふーん。
(町山智浩)
すごい不思議な映画でね。
(赤江珠緒)
不思議ですね。
(町山智浩)
でね、特にね、お客さんがノリノリの曲でね、すごく良かったのがね、ドナ・サマーの『ホットスタッフ』です。お願いします。
ドナ・サマーの『ホットスタッフ』
〜音楽〜
(山里亮太)
えっ!この曲・・!
(赤江珠緒)
えっ!この曲もかかるの?
(町山智浩)
そう。(笑)
(山里亮太)
この曲はよく聞くね〜!
(町山智浩)
これはいいでしょ?ここんところがいいんですよ。イントロがね。ここん所ね。
(山里亮太)
ここね。えっこれ、どこでかかるんですかこれ。(笑)
(町山智浩)
これは秘密なんですけど。これ歌詞がね、すごくエッチな歌詞で。今夜は私、なにかホットスタッフ、つまり熱い物がほしいのよっていう歌なんですよ。
(赤江珠緒)
は〜〜。
熱い物が欲しい
(町山智浩)
はい。熱い物って言ってもお味噌汁とかじゃないですよ。
(赤江珠緒)
わかってます!わかってますよ、はい。(笑)
(町山智浩)
わかってます?大人の物ですよ。はい。
(赤江珠緒)
鍋とかじゃないんでしょ?わかってますよ〜。
(町山智浩)
鍋とかじゃないです、はい。
(山里亮太)
どこなんだろう、火星でそんな・・えぇっ?
(町山智浩)
はい。この歌はね、『フル・モンティ』っていう映画で使われていたの、ご存じですか?
(山里亮太)
はいはいはいはい!
(町山智浩)
あの、おっさん達がストリップする映画です。
(赤江珠緒)
ああ!!はいはい。
フル・モンティという映画でも使われていた曲
(町山智浩)
だから要するに”熱い物”っていう歌なんで、その男性ストリップの曲として使われてて、それ以来もう男性ストリップの定番なんですよ、この歌は。
(山里亮太)
はぁ〜確かにそのイメージ。
(町山智浩)
で、ですね。あの・・安心してください!
(山里亮太)
えっ?
(町山智浩)
この『オデッセイ』、ちゃんとマット・デイモンのフル・モンティがあります!
(山里亮太)
はははは!(笑)いや、ですから・・!
(赤江珠緒)
安心してくださいって!(笑)別に・・
マット・デイモンのフル・モンティ、完全オールヌードあります!
(町山智浩)
後ろ姿なんですが、完全オールヌードです!
(赤江珠緒)
えぇっ!?
(町山智浩)
で、安心してください。履いてません!
(山里亮太)
はははは!(笑)じゃぁ安心できないですよ!
(町山智浩)
いやー、しかもね、お尻の間からですね、足の間からですね、ちゃんとマット・デイモンのホットスタッフが見えますから!
(山里亮太)
いやいやちょっと大問題でしょ!!それは!!
(町山智浩)
いやー、これ日本だとどうなるのかな?よくわかんないですけど。
マット・デイモンのあそこはCG?
(山里亮太)
え?え?見えてるんですか?海外のは。
(町山智浩)
シルエットですけど、ちゃんと見えてるんですよ。ただね、あまりにそれがね大きいので、作り物説が出てます。今アメリカでは。
(赤江珠緒)
はははははは!(笑)
(町山智浩)
CGじゃねーの?とか言われてますね。
(赤江珠緒)
あぁそうですか。(笑)
(町山智浩)
マット・デイモン、なんか見栄張ってねえか、とかね。色々言われてます。そう。
「監督ちょっと大きくして、俺のホットスタッフ。」って言ってたんじゃないかって言われてますね、はい。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でもCDの曲が
(赤江珠緒)
そうかー。いやでもね、町山さん以前紹介して下さったあの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』っていうのが、宇宙でなんかCDの曲が流れるっていう・・ありましたよね。テープがねぇ。
(山里亮太)
カセットテープ。
(赤江珠緒)
あんななんか、イメージですかね?
(町山智浩)
今、それ流行っているみたいですよ。
(山里亮太)
あっ!あの手法が!
(町山智浩)
それ流行っているみたいです、もう。これからそれで行くと思います。日本映画もそうなるんじゃないかなぁ、なんか突然、CDがあったぞ、これっていう展開がね。
(赤江珠緒)
へぇ〜!
(山里亮太)
はーーなるほど。確かにいいんだよな、あの演出って、楽しいです。
(町山智浩)
懐かしいんですよ。それでもう結構みんなね、体をゆすって踊ってね、見てるっていう珍しいSF映画ですね。
(赤江珠緒)
へぇ〜〜なるほど。
(山里亮太)
なるほどね、流行ってるんだ。
とにかく落ち着いているマット・デイモン
(町山智浩)
ただね、これ、まぁ・・ディスコの問題もあるんですけど。音楽のせいで明るいっていうのもあるんですけど。これ、とにかくね、全くパニックにならないで落ち着いてるんですよ、このマット・デイモンがずっと。で、それの理由はまず1つね、マット・デイモンに家族がいないんですよ。この映画の中だと。
(赤江珠緒)
は〜〜はいはい。
(町山智浩)
だから恋人とか、自分の子供とかがいたらたぶんね、会いたい会いたい!ってなっちゃうんだけど、いないから淡々としてるんですね。
(山里亮太)
へぇ〜あんまりドラマが生まれない感じなんですか?
(町山智浩)
そう。その部分では必死になってないんで、アレって思う人もいるかもしれないですけど、でもね、『アポロ13』っていう映画が昔ありまして、それ実話でね、アポロ13号っていう月に行く宇宙船が事故を起こして地球に帰れなくなっちゃった実際の事件があって。で、宇宙飛行士たちが地球に帰るためにあらゆる手を尽くすんですけど。それトム・ハンクスだったんですけど、それもね、宇宙飛行士、誰一人としてパニックにならないんですよ。
(赤江珠緒)
えぇっ・・ならない?
なぜ宇宙飛行士は落ち着いている?
(町山智浩)
家族に会わせろ!とか、会いたい!とか泣いたりしないんですよ。これね、どういう事なのかって、宇宙飛行士の人に実際に会って聞いた事があって。スペースシャトルに乗った人で、中国系のパイロットの人でしたけど。そういうのでパニックになる人は宇宙飛行士にならないよ、選ばれないよって言われましたね。
(赤江珠緒)
あぁ〜〜!だって精神的にものすごい強靭さが求められるって言いますもんね。
(町山智浩)
そうなんですよ。性格的にそういう所で淡々とその、作戦を遂行する。たった1つの望みでもその成功に賭けるっていうようなタイプの人じゃないと宇宙飛行士にならないらしいんですよ。落とされちゃうって。
(赤江珠緒)
へぇ〜!
(山里亮太)
じゃぁリアルなんですね!そのマット・デイモンも。
(町山智浩)
はい。その辺がリアルですね。ちょっと時間があったらじゃぁ、最後の曲。『ラブ・トレイン』、オージェイズ、聞いてもらえますか?
オージェイズ『ラブ・トレイン』
〜音楽〜
(山里亮太)
ほんとノリノリな曲ばっかりだ。
(赤江珠緒)
ほんとだよね。
(町山智浩)
これがね、また楽しい曲でね。”愛の列車にみんな、乗ろうよ”っていう歌なんですよ。で、ロシアの人も中国の人も乗るよっていう歌詞なんですよ。
(山里亮太)
ほお!
(町山智浩)
これあの1973年に当時のアメリカのニクソン大統領が、中国との国交回復を成し遂げたんで、この曲がヒットしたんですよ。
(赤江珠緒)
へぇー!
(町山智浩)
で、これが『オデッセイ』の中でかかるシーンは、まぁ大体予想がつくと思うんですけど、中国マーケットをものすごく意識したシーンでしたね。(笑)
中国で放送できるよう、中国マーケットを意識したシーン
(赤江珠緒)
あぁ〜!今ハリウッドはね、そういう事が多いと聞きましたけども。
(山里亮太)
なるほど!中国のね、シーンを入れないと中国で流せないから。
(町山智浩)
はい。でも、よくこの曲見つけてきたなと思いましたよ、ちゃんと歌詞がピッタリだから。
(山里亮太)
確かに。選曲すごいな。
(町山智浩)
みんなで中国もアメリカもロシアも協力しようよっていう歌なんですよ。
(赤江珠緒)
ふーん!
(町山智浩)
だからこれ選曲がとにかくすごかったですね、『オデッセイ』は。
(赤江珠緒)
ね。なんか作っている人も段々楽しくなってきた感じが。うん。
(山里亮太)
これ当てはまるぞ!みたいな。
曲選びが1番楽しい
(町山智浩)
こういう曲を考えている時が1番楽しいんですよ。
(赤江珠緒)
そうでしょうねぇ。(笑)
(町山智浩)
本当に。クウェンティン・タランティーノもね、曲を考えている時が1番楽しいって言ってましたね、映画を作る時に。
(赤江珠緒)
へーー!
(町山智浩)
どの曲を使おうか?っていう時が1番楽しいって。
(山里亮太)
遊んでる感じしますもんね。
(赤江珠緒)
ねぇ!そうですよね。
(町山智浩)
日本公開は2月5日ですけども、まぁサントラが出ると思いますので。あの、もう僕と同じぐらいの歳の人はもう、涙ボロボロだと思いますよ。腰がね思わず動いてると思います。
(赤江珠緒)
いや〜町山さんがね、まさか、ディスコでノリノリだったとは。
町山さんがディスコでノリノリ
(山里亮太)
行ってたの想像つかないですよ。
町山さんがディスコでノリノリ
(町山智浩)
みんなやっていたんです、その頃は。
(赤江珠緒)
へ〜〜!
(町山智浩)
そういう時代だったんですよ。はい。
(山里亮太)
映画見る前に聞きこんで行った方が。
(赤江珠緒)
そうですね。ちゃんと曲の意味をわかってから行ったらね、なお楽しいかもしれませんね。
(町山智浩)
そうなんですよね。
(赤江珠緒)
うん!今日は映画『オデッセイ』をご紹介頂きました。日本では、先ほども申し上げました、来年の2月5日公開となります。町山さん!じゃぁ町山さんもね、ディスコ話なんかも今後またおいおい、教えて頂いて・・!
(町山智浩)
そんなのないですよ!(笑)ホットスタッフの話とかね!はい。そういう・・マット・デイモンのがいい!とかね!
(山里亮太)
CG疑惑!(笑)
(町山智浩)
ベン・アフレックとどっちが大きいか?とか、そういう話ですね!はい。
(赤江珠緒)
わかりました。(笑)じゃぁ町山さん、また来週、お願いします!ありがとうございました。
(町山智浩)
どもでした。
(山里亮太)
ありしたー!
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
⑤ずっとノリノリの古い歌が流れるので、ノリノリでミュージカルみたい。