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引用:IMDb.com

パラサイト 半地下の家族のライムスター宇多丸さんの解説レビュー

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2021年06月01日更新
面白さ、そして語り口のシンプルさ、スマートさ、深さ。驚きもサプライズもある。 そしてユーモアと残酷さもある。撮影とか美術とか音楽の質の高さもある。 これだけ絶賛するしかないのが、本当に悔しいぐらいなんですが。(TBSラジオ「アフター6ジャンクション」より)

RHYMESTER宇多丸さんがTBSラジオ「アフター6ジャンクション」(https://www.tbsradio.jp/a6j/)
で、ポン・ジュノ監督の歴史的アカデミー受賞作品「パラサイト 半地下の家族」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。

映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

宇多丸さんパラサイト 半地下の家族 解説レビューの概要

①メールの量は多め
②その全体の○割がなんと褒め
③ストレートにむちゃくちゃ面白い上、痛烈な社会批評とドスンと腹に来る余韻が残るハイレベルな1本
④ポン・ジュノ監督と4度目のタッグとなるソン・ガンホや、監督の信頼が非常に厚い女優イ・ジョンウンさん等
キャストについて
⑤元々すごかったポン・ジュノが、さらにさらにすごくなって帰ってきた、すごい1本を撮ってしまった、そんな1本。そりゃあ当然、劇場でウォッチしてください!

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」でラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

『パラサイト 半地下の家族』宇多丸さんの評価とは

(宇多丸)
さぁここからは、私、宇多丸がランダムに決めた最新映画を自腹で鑑賞し評論する週間映画時評「ムービーウォッチメン。」
今夜扱うのはこの作品!「パラサイト 半地下の家族」

「殺人の追憶」「グエムル-漢江の怪物-」「スノーピアサー」などなどの、ポン・ジュノ監督最新作。
全員が失業中の貧しい家族が、IT企業を経営する富裕な家族にパラサイト、寄生を始めたことから思わぬ事態に発展していく。

主演は、ポン・ジュノ監督と4度目のタッグとなるソン・ガンホ。
共演は「最後まで行く」などのイ・ソンギュンなどなど。
第72回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール最高賞を受賞。
そして第92回アメリカ、アカデミー賞で作品賞、監督賞を含む6部門、主要部門ですからね、ノミネートされるなど世界中で高い評価を集めております。
アジア作品映画でアカデミー作品賞にノミネートされたのは初、ということでございます。

ということで、この「パラサイト 半地下の家族」を見たよ、というリスナーのみなさまからの、
ウォッチメンからの監視報告を頂いております。メールでね。ありがとうございます。

引用:IMDb.com

『パラサイト 半地下の家族』見た人の感想

メールの量は、とても多い。
先週の「フォードvsフェラーリ」に続きメールの数は多め。
そして先週以上に絶賛評が多く、全体の9割が”褒め”でございました。
褒めている人の主な意見は、

・前半は笑いながら見ていたが、後半からどんどんすごいところに連れて行かれ、最後はズドンと重い宿題を渡された。
・すさまじい脚本で、今もその要因を引きずっている。
・家、町並み、演技、小道具、画面に映るすべてが完璧。ポン・ジュノ監督の最高傑作。いや、韓国映画史上でも最高傑作では?

等々ございました。

一方、主な否定的な意見は、
・ラストに納得がいかない。
・格差社会へのメッセージとしては弱いのでは?
・映画の中でのフィクションラインが曖昧で乗れない。

などがございました。
ということで、代表的なところをご紹介しましょう。

『パラサイト 半地下の家族』高評価の方のレビュー、感想

*オレンジエコーさん。
「パラサイト 半地下の家族」ウォッチしてきました。
期待以上の名作かつ怪作で、奇っ怪な怪と書いて怪作で、ポン・ジュノ監督の新たなステージではないかと思います。
どちらの家族、えぇ半地下に住んでいる貧乏な家族と金持ち家族、どちらの家族にも愛着を持てるからこそ、誰にとっても他人事ではないと感じさせる脚本やキャストはもちろんの事、何と言っても美術や撮影が素晴らしかったです。

監督の過去作では「団地」や「列車」という箱庭を用いて社会を描いてきましたが、今度は「家」という最小単位。多くの映画で空虚に描かれがちな豪邸やそこでの暮らしが、スタイリッシュで温かみもありながら、どこか奇妙で滑稽。
つまり本当の意味で美しく描かれ、あの家が登場人物みんなにとってのファム・ファタールであるという、まぁノワールにおける運命を狂わしていく運命の女、ファム・ファタールであるという説得力が半端なく、現代における金持ち描写の最高峰だと思います。
他にも魅力を挙げればきりがありませんが、「映画を好きでよかった。感謝。圧倒的感謝です!」と感じさせてくれる最高の映画体験でした。

たしかに、金持ち描写っていうのをさ、説得力ある感じで、しかもね、その映画の中身とちゃんとリンクさせてっていうのはね、意外と難しいことかもしれませんけどね。それを見事にやっている、というご意見がございました。

一方ですね。この方はイマイチだったという方。

『パラサイト 半地下の家族』批判的なレビュー、感想

*ポコターンさん。
自分にとってこの映画のリアリティラインはあまり合わない感じでした。
娯楽作品として見れば過不足なく手際のよい物語の語り口、適切な演出でポン・ジュノ作品を初めて見た自分でも実力は十分に伝わってきます。
しかしながら、下層階級の家族が上流階級の家庭に食い込んでいくというお題目のために、都合の良い展開が多すぎるなと感じました。

それでいろいろと書いていただいて、「自分にとってこの映画は全体的にフィクショナルすぎてフワフワした印象でした」というご意見でございます。

というところで皆さんね、メールありがとうございます。

引用:IMDb.com

『パラサイト 半地下の家族』宇多丸さんの感想

「パラサイト 半地下の家族」、私もですね、まず昨年度の「週刊文春エンタ!」星取り表のために、いち早く見させていただいて。
で、今回のムービーウォッチメンのために、あとインタビューのためにもね、ちょっと見返したりもしましたけど、今回のムービーウォッチメン用にTOHOシネマズ日比谷で2回、見て参りました。
だから計4、5回はもう繰り返し見てる感じだと思いますけども。

はい。ということで、平日昼にも関わらずですね、この日比谷もですね、ご年配の方々を含めかなり埋まっていて、実際に配給会社の方もね、「記録的ヒットだ」というようなことを仰っているようです。
もちろんさっきから言ってるようにもう、世界的にね、高い評価を得ている!ということもありますし、日本の出ている映画評なども本当に、たしか週刊文春のシネマチャートでも全員満点とか、軒並み超高評価。ね。えぇ、僕もまぁ満点付けましたしと。

圧倒的な前評価の高さ

えぇ、とにかくすごい圧倒的な前評判の高さに加えて、実際の作品自体がですね、確かになるほど、割とこう、誰の目から見ても明らかな形でまずはストレートにむちゃくちゃ面白いんですよね。
映画としての語り口、まさに極上だし途中には見た誰もが度肝を抜かれるであろう仕掛けも用意されている。
その上、痛烈な社会批評と、最後にはそのね、皆さんが仰っしゃっているようにドスンと腹に来る余韻が残るという、要はあらゆる意味で、ぶっちぎりハイレベルな1本なので、これにまぁちゃんと日本でも観客が集まっているっていうのは、とてもいい事であると私も嬉しく思います。

ポン・ジュノ監督

えぇ脚本・監督のポン・ジュノ。
長編デビュー作、2000年の「ほえる犬は噛まない」から本当にすでに「ああ、これはすごい才能だな」という感じでしたけど、
僕がやってきた映画時評の中ではですね、2009年の「母なる証明」。
これウィークエンド・シャッフル、シネマハスラー時代2009年11月23日に扱いましたが、
その後、ポン・ジュノさんはですね、フランスのグラフィックノベル、バンド・デシネ原作で、豪華ハリウッドスターたちをキャスティングした「スノーピアサー」2013年の作品であるとか、それに続いてやはり豪華ハリウッドスター多数出演、Netflixでもう莫大な金額をかけて作った「オクジャ」っていう、これは2017年の作品と、要するに世界進出モードのSF大作というのが続いた訳ですが。
ま今回の「パラサイト」で、久々にその韓国のね、ドメスティックな社会の現実をアイロニカルに描き出すという、言わば十八番の路線に回帰した、という風に言えると思います。

引用:IMDb.com

ポン・ジュノ監督にインタビュー

まあ今年、この番組でも1月8日にオンエアーいたしました、ポン・ジュノさんとソン・ガンホさんの今回の「パラサイト」のタイミングで私インタビューをさせていただきました。
これ、みやーんさんの非公式書き起こしもね読めますから。こちらも読んでいただきたい。
で、そこでポン・ジュノさんが仰っていたのは、企画自体はですね、「オクジャ」よりも前に始まっていたというのもあって、外国か韓国かという制作環境の違い、というよりは、やっぱり制作規模、”作品のサイズ”が、「殺人の追憶」「母なる証明」のように、自分にぴったりなサイズにまぁ今回戻ってきた、という気持ちが、その部分が大きい、ということを仰っていました。
そこがすごい印象的でしたね。
まあ笑いまじり冗談まじりのムードでしたけど、「これからはずっと小さい映画を作っていきたい。なんてね。大きい映画は作りたくない。」なんてことは仰ってましたけどね。
実際の所ですね、今回の「パラサイト」はまあ、そのインタビュー中でも仰っていたようにですね、実は大掛かりなところは超大掛かり、お金もしっかりかかった一作なのは間違いないのですが、と。

世界映画史に残る傑作

まあ、とにかくひとつ言えるのはですね、ハリウッド規模の大作製作をですね経て、さらにまぁ一回り作家として成長されたポン・ジュノさんはですね、本作「パラサイト」でのその語り口、過去のいずれ劣らぬ傑作群よりすでにもう世界映画史に残る傑作、名作を残している人なんですが、それらと比べても、明らかに、ソリッドさ、無駄のない的確さ、まぁ明晰さというか、それをさらに増していってですね。
それが映画としての、普遍的な、誰が見てもわかる面白さとか、誰が見てもわかる深みとか凄さとして結実している、っていうことなんですね。
まあその意味で、前からむちゃくちゃすごかったのに、はっきり更ににすごくなった、というのが今回の「パラサイト」だと言えると思います。

パラサイトの話の構造

まず、その話の構造がですね。
あっ!ちなみにあの、今日も決定的なネタバレはもちろんしないようにします。
ポン・ジュノさんもね、いろんなところで「しないでください」って言うのはありますから。
決定的なネタバレはしませんけども、もちろん色んなディテールだとか、「こういう場面がありました」なんてことは触れるので。
全く情報を入れたくない方は・・まぁそもそも、全くまぁ。。ふと聞いちゃっている人もいるでしょうから。
「パラサイト 半地下の家族」が評判になっているから、全く情報を入れずに行きたいという方はね、追い追いね、タイムフリーであるとかラジオクラウドとかで追い追い聞いていただく、まあ、その間はね、他にもいろんな楽しい局が、楽しいラジオをやっていると思いますんでね。ははは、なんてことを言うんだろう、私はね(笑)。

引用:IMDb.com

話の構造がシンプル

ということでまずね、今回の「パラサイト」。
まぁ話の構造がそもそも今までのポン・ジュノ作品に比べて、ものすごくシンプルですよね。
親子4人、定職がないまま綱渡り的な生活をしている貧しい家族がいてと。
その彼らの貧しさの象徴というか、まあ韓国に実際に多くあるというその半地下の住居っていうのがある訳です。
これ、パンフレットに載っている町山智浩さんの文章によればですね、元はそのね、北朝鮮の攻撃に備えた防空壕だったものが住居として使われるようなったという事らしいんですね。
で、この”元は北朝鮮の攻撃に備えるための、うんぬん”っていうのは、ご覧になった方は既に、ね、お分かりでしょうが、後半に出てくるアレとまぁ呼応している、ということがございますよね。

台湾カステラの店

ちなみにこの家族が貧しくなってしまったきっかけとして、お父さんが事業に失敗して、その事業というのが「台湾カステラ」のお店を出したという。えぇ。
これもやっぱり実際に韓国で近年流行って、でバタバタッと潰れていったという、そういう実際の事実をベースにしているというのがあります。
えー、まあとにかくその職が欲しいという家族4人がですね、それぞれ身分を偽って、ある超お金持ちの家に入り込んじゃうと。前半は、彼らが次々と策略・謀略を仕掛けていって、
まあこの策略・謀略も、主人公家族がしきりと「計画がある」「プランがある」ということを口にするんですけど、これがラストに行くにしたがって、その「計画」という言葉がですね、まぁ僕には計画がある、私には俺には計画があるっていうのが、重い意味を持ってくるというあたりも、ご覧になった方はお分かりのあたりだと思いますね。
まあ、とにかくある「計画」を持って策略・謀略を仕掛けていって、金持ち一家たちがですね、まんまと間抜けにも騙されていくというプロセスを、デフォルメされたコメディタッチで、非常にコメディタッチで見せていくわけですね。

まあ一種のコンゲーム物的な面白さと言いましょうかね、騙して潜入していくという、コンゲーム、詐欺物ですね。その面白みがある。

社会階層の異なる人物が富裕層に入り込む、途中まではよくある話

こんな感じでですね、社会階層の異なる人物とかがですね、ブルジョワ家庭に入り込んで、そのブルジョアならではの欺瞞を盗み見たり、あるいはそれまでは保たれていた平穏、秩序をかき乱したりしていく的な話ってですね、昔から定番的に、ここまではある話なんですよね。よくある話。
それこそ前述のインタビューの中でも触れた、キム・ギヨン監督の、1960年のまさに韓国映画クラシック「下女」とかですね。
これ、ポン・ジュノさんも言及していましたけども、階段の使い方とかを含めて本作に大きく影響を与えている、これは間違いないことでしょうし。

まあ「小間使の日記」とかですね、「テオレマ」とかも入れてもいいかもしれませんね。
まぁ「素晴らしき放浪者」そういうのも入れてもいいのかなルノワールのね。とか、色々とあるわけです。
個人的には、「家族ごとパラサイトしてくる」っていうこの感じは、「魔太郎がくる!!」にですね、そういうエピソードがあるんですよ。それをちょっと連想したりしましたけどね、はい。
あとは同じ藤子不二雄Aさんの作品だと、「ひっとらぁ伯父サン」とかも、家にパラサイトしてくる、乗っ取られる話ですよね。

引用:IMDb.com

楽しく見られる

まあ、ともあれ前半はそんな感じで、ある意味観客も、いわばジャンル的安心感の枠内で、楽しく見られるわけですよ。

「あぁ、まあまあ、これ乗っ取ってくる感じね。ああ、面白い、面白い」って。
行く先が見える感じで楽しめる訳です。
ただ、それでもですね、単に主人公家族がブルジョワ一家をまんまと篭絡して痛快だとなるだけではなさそうだな、つまり、ふっとこう梯子を外されるような瞬間も実はいくつか事前に周到に仕掛けられていて、
例えば、ソン・ガンホ演じるこのね、半地下の家族のお父さんがですね、先方の金持ちの家の奥様、これチョ・ヨジョンさんが、黒木瞳的奥様感と言いましょうか、と2人きりになってある秘密を共有する、という場面。
これ、これまでのそういうね、入り込み物、家族が入り込み物、異物入り込み物なら、ここで奥様側も”ドキ!”っていうね、主人にはない何かワイルドみにドキ!みたいな、そういう展開になりがちな所を、実際にここで彼女が返してくる反応というのは・・というあたり。

ソン・ガンホのリアクション

そして、それを受けてのソン・ガンホさんの物言わぬリアクションがまた、おかしくも哀しい、っていう感じが本当に最高なんですけども。
あるいは、やはりソン・ガンホさんのそのね、お父さんと、金持ち一家の主であるパク社長。
これ、演じてるイ・ソンギュンさんね。「最後まで行く」という、あれ僕はすごい好きな映画がありましたけど、あれで主演をされてましたが。
それがですね、パク社長に向けてそのソン・ガンホが、「奥さんを愛していらっしゃいますもんね」って。
まぁお世辞半分に言っている事なんだけど、それに対して思いのほか冷めた反応が返ってくるってあたり。
これもやっぱり終盤と呼応していますね。「奥さんを愛していらっしゃいますもんね」っていうこのセリフね。
というあたりで、「あれ?」っていうね、なんかその今までの入り込み物の温度感とはアレ?ちょっと違うのか?っていう、ふっとそういう梯子を外されるような瞬間が用意されてはいる。
まあとにかく一見、まんまとブルジョワ一家に取り入っていく半地下家族というのが前半なわけです。

家族団らんの酒盛りを始める

でま、そのね、その金持ち一家がキャンプに出かけるということで、その邸宅が空いたと、
それをいい事に、堂々と家族団らんの酒盛りを始める一同と。
なんですけど、まずそのガラス張りのリビングね。
全面ガラス張りのリビングっていう所で、まずちょっと不安が、募りますよね、見てるだけでね。
なんか見られちゃう感じがするし。
そして外が激しい雷雨になる、と共にですね、物語全体が想像もつかなかった方向に一気に転がりはじめていくというのが、まさにこの映画の、キモ中のキモな訳ですね。

特にやっぱり、「あっ、何かが・・決定的に何かがおかしい方に行く」っていうキッカケが、人物の思ってもいなかった角度の姿勢というのが、ポン・ジュノっぽいですよね。
そんな姿勢!?この空間でその姿勢はない!っていうことが起きてる、っていうね、はい。あたりだと思います。

引用:IMDb.com

闇の奥に何かがある

当然、ちょっとここから先の話は、具体的には言いませんけども、何が起こるかは具体的に言いませんが、ただちょっと抽象的な説明の仕方を重ねますけども。
ポン・ジュノ作品、これまでも非常に印象的だった、”闇の奥に何かがある”っていうショットは今までポン・ジュノ、”奥に何かがある”っていう感じはすごく今までも印象的に使われてきたんですけど、今回はさらにその闇の奥にですね、要するにその得体の知れない領域に、主人公家族も我々観客も、まさにカメラと共に文字通り”連れて行かれてしまう”っていう作りになってるわけです。

これまでもポン・ジュノ作品、既存のジャンル的なその予想の範囲を超えて、最終的に得体の知れない領域に行ってしまうという作品ばかり撮ってきました。
見終わってみると「何だ、この感情は?」とか、「最高の映画だし、最高に面白かったけど、今どんな気持ちになれと!?」っていうね、言葉で説明できないところに連れて行かれるっていうのは今までもありましたけど、今回の「パラサイト」は、それが、ストーリーそして映画としての語り口と、シンプルに一致しているんですね。

今まで思ってたような世界じゃなかった

主人公のその家族たちと観客もですね、要は今までこの世界、物語世界がこうだと思っていたような物語世界が、実は全く違う本質を持ってることがはっきりしてしまう。
それによって世界の意味がひっくり返るような感覚を、主人公家族と同時に我々観客も、直接的に味わうことになる訳です。
今まで思ってたような世界じゃなかった。
そして、先ほど言いました、そのポン・ジュノさんとソン・ガンホさんへのインタビューでも触れた通り、ここに至って、その大邸宅のですね、まぁすごく印象的にある階段であるとか、その上下の構造。あるいは、あの金持ちの家に行くために、まぁ坂を登ってこう来るわけですよね。
その、地理的な構造、つまり階段や坂を介した上下の構造が、物語的なテーマと実は直結してたんだってことに、我々観客はそこで気づくわけです。

”半地下”の家族って、そういうことか!

「ああ、”半地下”の家族って、そういうことか!」みたいなね。
うん。で、もちろんポン・ジュノ映画、これまでも地形の高低差とかそういうのを、印象的に使ってきました。
たとえばそうだな、「母なる証明」だったらね、あの死体が置かれていた、あの2階の屋上の高台の所から見晴らした街とか、そういうのは使ってましたけど、今回の「パラサイト」はそれがストーリーやテーマとシンプルに直結している、まさに映画ならではのストーリーテリング、っていうのがすごくスマートにできてると言うか。
またですね、やはりこれまでもポン・ジュノ作品、際だって上手かった非常にミニマルなシチュエーションなんだけど、それを最大限のスペクタクル、サスペンスに仕立て上げてしまう手際。

引用:IMDb.com

ポン・ジュノ監督作、『母なる証明』

例えばその、さっきから言ってる「母なる証明」で言えば、ジンテっていう不良の家をお母さんが脱出するシークエンスとか、本当に最高でしたよね。
小さなシチェーションなのに、すごいでっかいサスペンス、スペクタクルがある。
ですけど今回の「パラサイト」の中盤はですね、まさにそのテクニックの、拡大、連発版ですね。
まぁその、要は「家屋内かくれんぼ」だけでですね、これだけハラハラドキドキしかもいろんな引出しでさせられるだけでも、まあやっぱり半端な腕じゃないですし、
しかも今回の「パラサイト」では、その家屋内かくれんぼのハラハラドキドキにもですね、テーマと直結したやっぱりそこでも上下の構造。上にいる人、下にいる人、そしてクライマックスの布石となる”匂い”という、非常に残酷なモチーフを絡めてきてる訳で、二重、三重にすごいわけですね。

匂いのくだり

ちなみにこの匂いというくだり。
半地下住居のその匂いというのはですね、韓国の方はですね、割と「ああ、あの匂いか」ってわかるような、結構具体的なものとしてあるらしいんですけどね。
でも、我々にとっては、やっぱり僕がインタビューの中でも言った通り、映画においては不可視な「匂い」というのを使って差別というものを表現されると、もうこっちはどうにもできない。
「お前は臭い」と言われるとどうにもできないっていう、残酷な差別の構造としてやっぱりこれは非常に演出として生きている。

高低差によって示されたその社会の構造

で、ともあれ、さっきから言ってるように高低差によって示されたその社会の構造。
そのまさに、まさに文字通り「下流」にいる者たち同士がですね、構造全体の不条理には怒りが向かず、なんならそっちはですね、構造全体の不条理に関して諦めちゃってるから、「リスペクト!」までしちゃってですね。
で、その下にいる者同士で、食いぶちを確保するために争い合うっていう、そういう悲しい、でもぶっちゃけこれが現実にはやっぱりよく噴出する構造でもあるというその展開の果てにですね、プラスもちろんさっきのインタビューでも触れた、一大スペクタクル。ね、シーンが用意されています。

これはもう、「ああ、ここがこんなスペクタクルになっちゃうのか!」という見せ方。
しかもそれがやっぱりテーマとも直結している、という展開の果てにですね、
ここは元のシナリオ以上に、ソン・ガンホが演じる説得力によって、よりくっきりしたメッセージが込められたものに変わったらしいんです。

引用:IMDb.com

演出、そして俳優陣の力

要するに、とある人物の行動がシナリオではもっと、どういう意志でやったものかが曖昧だったのが、ソン・ガンホが演じるならこれは説得力を持たせられるんだって事ではっきりと意志を持ってとある行動を取る、というクライマックスへと突入していく。
インタビューでポン・ジュノさんも仰っていた通りですね、このシンプルな語り口と構造を、真に豊かなものにしているのはやっぱり、そのさっき言ったソン・ガンホさんとかを含めてですね、まぁもちろん、見事というほかない美術や撮影、それら全てを緻密にね、コントロールして、イメージボードを書いてコントロールしているポン・ジュノ演出はもちろんなんですけど、やっぱりソン・ガンホさんをはじめとする俳優陣の力というのが当然大きいわけです。

ソン・ガンホの表情に注目

ソン・ガンホさんね、その、のほほんとした親父から、終盤にかけて、特に笑顔が完全に消えるんですね彼からね。
そのシリアスなトーンっていう所の演技はもちろん見事なものですし、
あとやっぱりソン・ガンホは、声がいい、というあたり。
声がいいという所で言いますと、特にラスト周辺で、それが非常に抜群に生かされるのは、その半地下ファミリーの息子、チェ・ウシクさん演じる息子さん。
オープニングと対になったそのラストショット。
ね、オープニングと同じく、その半地下でカメラがグーッと下りてくるとその息子の顔になる。
まさにポン・ジュノ映画の幕切れにふさわしい、あの眼差しですね。えーあれも見事なものでしたし、
娘のね、パク・ソダムさん演じる娘もですね、非常にストリート感、下等感っていうのと、転じて演技としてのハイソな知性みたいなものを本当に見事に演じ分けられてて素晴らしかったですし、
あとお母さんのあのね、チャン・ヘジンさんのね、元ハンマー投げメダリストっていう、あのなんか「太いキュートさ」って言うんですかね?図太いキュートさという、あれも本当に見事なもんでしたしね。

家政婦ムングァン役のイ・ジョンウン

あと、今回一番実は重要なのは、追い出される家政婦役。
ムングァンという役の、イ・ジョンウンさん。
イ・ジョンウンさんは、「母なる証明」の、被害者の女子高生のお葬式のシーンで母親に食ってかかる、一番目立っていたあの女の人。
あるいはですね、「オクジャ」のあの生き物の、鳴き声を演じている。
だからその、ポン・ジュノさんの信頼が非常に厚い女優さんなんだけども、今回も本作のある意味一番、要の役ですね。悲しゅうて、おかしゅうてやがて悲しいというあたり。

引用:IMDb.com

リスペクト!

そして、ネタバレできないので詳しくは言えませんがやっぱり「リスペクト!」のあの人。
要するにそのさっき言った社会の不条理な構造に関して、諦め切った人、その思考の狂気性、ピュアさ込みで見事に体現されてますね。あの人の佇まい、バナナの食べ方。
ねっ!とかね!はい。もちろんね、金持ち家族も素晴らしい。金持ちの娘・ダヘさん。チョン・ジソさんですか。普通にアイドル的に、なんか坂道にいそうだな、みたいな感じですごいかわいかったですけどね。

そんな感じでですね、まぁちょっとネタバレできない範囲も多かったんでね、このぐらいにしておきますが。
ラストに向けて、語りの位相がシフトしていく。ね。
この人のナレーションかと思ったら、この人のナレーションになっている、語りの位相がシフトしていく事によって、現実と想像の境がどんどん淡いが、曖昧になっていったかと思いきやの、さっき言ったその、オープニングと対になった着地で、そして音楽もちょうどそこで着地っていう。このドスンと来る余韻。
結局やっぱり、現実に持って帰らされる。あなたたちは?ってこう来るわけですね。

とにかく!すべてが、あらゆる面ですごいレベル

ということで、面白さ、そして語り口のシンプルさ、スマートさ、深さ。驚きもサプライズもある。
そしてユーモアと残酷さもある。撮影とか美術とか音楽の質の高さもある。
もちろん演技の素晴らしさもある。とにかく!すべてが、あらゆる面ですごいレベルというか。。
もう、これだけ絶賛するしかないのが、本当に悔しいぐらいなんですが、だって、褒めるところしかないんだもんっていう。
元々すごかったポン・ジュノが、さらにさらにすごくなって帰ってきた、すごい1本を撮ってしまった、そんな1本。そりゃあ当然、劇場でウォッチしてください!

あのポン・ジュノ作品はですね、細かいところのキャスティングの”顔チョイス”が本当にセンスいいことで知られているんですけども、今回は特にね、あの終盤の刑事。あいつ、あいつの顔が出てきた時に、「いやー、やっぱりポン・ジュノの顔選び、最高!」って思いましたけどね(笑)

*書き起こし終わり。


○○に入る言葉のこたえ

②その全体の9割がなんと褒め でした!

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