パラサイト 半地下の家族の町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)
で、ポン・ジュノ監督アカデミー賞受賞作品、『パラサイト 半地下の家族』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こし します。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『パラサイト 半地下の家族』解説レビューの概要
①ソウルの最底辺の人たちが住む家、半地下。
②半地下に住む貧乏な家族が、別の誰かになりすまし、お金持ちの家に内部から寄生(パラサイト)して乗っ取っていくという話
③貧富の差が拡大している韓国の現状 所得上位の平均賃金が○○円に対し、下位は○○円
④パラサイトと似たテーマを扱った昨今の作品について
⑤今年のベスト3に入る作品
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『パラサイト 半地下の家族』町山さんの評価とは
(町山智浩)
年末なんでまたアカデミー賞関係の作品を紹介します。
今回紹介する映画はですね、すでにカンヌ映画祭でパルム・ドールというグランプリを受賞して、
今アメリカで公開されて大ヒットしている映画なんですけれども、
アカデミー賞の作品賞にもなりそうな韓国映画「パラサイト 半地下の家族」をご紹介します、はい。
これ韓国語映画で韓国が舞台なんですけれども。
その韓国語映画というか、外国語映画の中で、まぁ歴代トップぐらいのすごい大ヒットをアメリカでしているんですよ。
(赤江珠緒)
すごいですね!ヒットしているっていうのがすごいな。
(町山智浩)
はい。外国映画賞の枠じゃなくて作品賞の枠でノミネートされるんじゃないかと言われてますね。
で、内容はですね。
まぁちょっと古い話ですね。ドリフターズのコメディのような映画です。
(山里亮太)
えっドリフターズ!?
ドリフターズのコメディのような映画
(町山智浩)
ドリフターズのコメディってセットを作るじゃないですか。でっかいセットを。家とか。
で、そのセットでギャグをやるじゃないですか。
でハラハラさせるじゃないですかなんかミッションがあって。
いかりや長介さんが「今日の作戦はなんとか」とか言って
(赤江珠緒)
うんうん。目の前に坂があったりしてね。
(町山智浩)
そうそう。家が半分切れていて、中が全部見えるようになっていて。
ああいう感じのコメディなんです。
で、主演はですね。あの「タクシー運転手 約束は海を越えて」で世界の映画ファンを泣かせた、
あのソン・ガンホですね。
あのまぁ本当に庶民という。。
渥美清さんのようなね、あの誰もが共感できるあのおじさんの役をやってる人ですけども。
で、これパラサイトというタイトルは寄生虫という意味です。
パラサイトシングルとか言いますよね。
(山里亮太)
はい。
半地下に住む家族
(町山智浩)
半地下の家族ってなってるんでパラサイトは家族なんですよ。
で、ソン・ガンホがお父さんの家族がいて、奥さんと後息子とその妹がいるんですけども。
全員がですね、まぁ仕事がろくにない状態で、その日暮らしのワーキングプアなんですね、はい。
キム一家って言うんですけども。
で、半地下に住んでるんです。1階じゃなくて半分地下のところに住んでるんですよ。
(赤江珠緒)
半地下に住んでいる?
(山里亮太)
そういう構造があるんですか?
(町山智浩)
あるんです。それはあとでまた詳しく説明しますけども。
ソウルの最底辺の人が住んでる家なんですね、家賃が安くて。
ところが偶然、その長男の男の子は勉強ができるんですが、
彼はただお金がなくて大学に行けなかったんですよ。
で、高校の友達から「大金持ちの丘の上の豪邸のお嬢さんの家庭教師をやらないか?」
と言われるんですね。
で、実はその女の子はものすごく可愛いからその友達は他の奴に紹介すると取られちゃうんじゃないかと思って、
信頼できる彼に頼んだんですね。
で、その家庭教師は始めると今度はまあすごい家なんですけども。ものすごい豪邸で丘の上にあって。
で、そこのお母さん、奥さんから「うちの一番ちっちゃい男の子、5歳ぐらいの男の子が、
どうもなんか落ち着きがなくて、ちょっと何かおかしいみたいなの」って言われるんですね。
「ああ、それはアートセラピーて治りますよ」
とかっていう風に、その家庭教師て入った息子が言うんですね。
(赤江珠緒)
アートセラピー?
(町山智浩)
はい。その家庭教師の息子は自分が大学生だって嘘をついて入るんですけど、経歴を偽ってるんですね。
(赤江珠緒)
ああ、経歴を偽っているんですね。
経歴を偽り家庭教師に
(町山智浩)
だって「大学に行っていない」って言ったら大金持ちが家庭教師に雇うわけがないじゃないですか。
その落ち着きのない息子さんに、
「私の知り合いはアートでそういう不安定な情緒を治すことができるので、その彼女を紹介します」
って言って自分の無職の妹を潜り込ませるんですよ。
(赤江珠緒)
ああ、なるほど。
(町山智浩)
はい。その妹もアーティストとしてはものすごく才能があるんですよ。
ただ、お金がないから美大に行けてないんですね。
はい。そういう感じで一人一人。。4人家族の一人一人を、別の誰かになり済まさせて、
このお金持ちの家、パク家って言うんですけども。
その家に一人一人潜入させて行って、内部から寄生していって乗っ取っていくっていう話なんですよ。
(山里亮太)
へー!
内部から寄生し、お金持ちの家を乗っ取っていく
(町山智浩)
だからパラサイトて言うんですよ。
その誰かになりすます過程が、ちょうどその「ミッションイン:ポッシブル」みたいで
ハラハラさせるんですけど。
でミッションインポッシブルって、誰かに変装したり、身分証明書を偽造したりして内部に入るのもハラハラするんですけど、中に入ってからもなんか上からぶら下がったりしてハラハラするじゃないですか。
(赤江珠緒)
はいはい。
(町山智浩)
それもあるんです。
(赤江珠緒)
えっこの状況で、ぶら下がることあります?
(町山智浩)
そういう、「あっ、見つかる!」っていうようなハラハラドキドキというか、まあバカバカしくて笑っちゃうようなギャグもあるんですよ。
(赤江珠緒)
へー! ああ、面白そう!
(山里亮太)
コメディなんですね。
お金持ち家族が家族旅行中、キム一家はやりたい放題
(町山智浩)
これでそのお金持ちのパク家が一家全員で家族旅行に行くって言うんですね。
で、その貧乏なキム家が中に入ってヤリたい放題やるわけです。
(赤江珠緒)
ああ、うんうん。もうみんな、勝手知ってる家になっているんだ。
(町山智浩)
そう。それですごい楽しい感じがするんですけども、
だんだんと怖いことに少しずつなっていくなっていくんですよ。
で、もう後半はホラーになっていくんです。
(赤江珠緒)
後半はホラーに?
(町山智浩)
これね、あんまり説明するとあれなんですけども、
とにかくジャンルがコロコロ変わるし、展開もコロコロ変わって。
もう全く5分後の予想がつかない映画になっています。だからストーリーはこれ以上は説明できないんですよ。はい。
(赤江珠緒)
なるほど。でもあの『グエムル-漢江の怪物-』の監督ですもんね。
(町山智浩)
そうなんです。あれは怪物と戦うソン・ガンホ一家の話だったんですけども。
(赤江珠緒)
あれも最初はコメディのようで、「あら? アクションが入ってきた・・」みたいな感じで。
色々となっていきましたもんね。
コメディかと思いきや、アクション、ホラー
(町山智浩)
そうそう。同じ監督なんで。ホンジュノ監督のタッチなんですよ。
コメディなのかホラーなのか、非常に考えさせられる映画なのか、全部がありっていう映画になっているわけですね。
だから、お客さんはゲラゲラ笑ったりゾッとしたり、おお―っ!ってなったりするので、もうジェットコースターみたいに振り回される映画なんです。
ただね、これはちょっとストーリーを説明できないので背景を説明させてください。
まず半地下っていうのはこれ、写真があるはずなんですけども。ちょっとご覧になっていただけますか?
(赤江珠緒)
はいはい。おおーっ!
(山里亮太)
ああ、こういうことなんですか。
(町山智浩)
はい。窓が天井のところにあって。
で要するに、家の壁の真ん中から上の部分だけが地上に出てて、真ん中から下は全部地下に入ってるんですよ。
(赤江珠緒)
そうですね、窓枠の下の部分がちょうど、外で言うと歩道の所に面しているという。
だから人の足元しか見えない窓みたいな感じですね。
(町山智浩)
そうなんですよ。
だから、人がその路上で水撒いたり、立ち小便をしたりすると、それが家の中に入ってきちゃうんですよ。
(赤江珠緒)
うわー!
(町山智浩)
ひどいんですよこれ。
(赤江珠緒)
それはちょっと嫌だなー。
(町山智浩)
で、あとトイレがあるでしょ。まぁ不思議な所にあるんですね。
トイレが天井のところにあるんです。
床よりも1メートル半ぐらい高いところにトイレが置いてあるんですよね。
(赤江珠緒)
階段を2段ぐらい上がってトイレに。
王様トイレ
(町山智浩)
そうなんです。
それはね、もともとは地下がなかった建物に半地下を作ったので、その下水管よりも床が1メートル半ぐらい低くなってしまっているんですよ。
だからトイレが家の中で一番高い所にあるんで、そういう半地下の家のトイレの事を
王様トイレと言うらしいですね。
(赤江珠緒)
トイレが王様。えええええ。
(町山智浩)
で、こういう家は本当にいっぱい韓国にあるんですよ。
(赤江珠緒)
こういう作りのお家が?
(町山智浩)
はい。元々はソウルは北朝鮮から核攻撃を受ける可能性があったんで、
そのビルの下に防空壕を作らせたんですね。
ところが、そのソウルの地価がどんどん上がっていったので、その半地下を住居に改造して貸し出していったらしいんです。めちゃ安な値段で。
ただね、もう湿気がすごくて風通しが悪くて、日が当たらないから、もうカビ臭くて。
服とかも全部カビ臭くなっちゃうらしいんですけども。
(赤江珠緒)
住環境としては最悪ですね。
(町山智浩)
最悪なんですよ。
ただ、安いんです。安いって言っても4万円くらいらしいんで。まあ、いかにソウルの家賃が高いのかっていうのがわかりますけど。
(赤江珠緒)
ね、これで4万円って高いよ。
ソウルの不動産価格は高騰
(町山智浩)
ソウルは今、東京より高いぐらいになってる。不動産価格も。
だからマンションの平均価格が7800万円だから、東京より高いですよね。
だから、その半地下から逃げ出せない人たちがいっぱいいるんですね。
で最悪なのが、排水の問題で。洪水が韓国では日本と同じで連続して起こってるんですよ。
地球温暖化の影響で。
(赤江珠緒)
あぁ、気象状況はねぇ、はい。
(町山智浩)
はい。もう次々と起こって。
2001年にも起こっていて2008年にも起こって。
5年おきくらいにものすごい洪水がソウルで起こって、で地下に浸透しないもんだから水が全部
その半地下の方に流れ込んでくるんですよ。
(赤江珠緒)
こわっ!冠水どころの騒ぎじゃないですね。
(町山智浩)
人が大量に死んでいるんですよ。
ソウルでのその都市水害での問題は大問題になってるんです。
で、特にこの半地下がある所っていうのは、街でも一番その山の手ではなくて、下町の一番安いところにあるんで、はい。
そこに全部洪水が流れ込んじゃうんですよ。で、大問題になってるんですがそれでも韓国の人達全ての、約2%ぐらいがこの半地下に住んでるらしいですね。36万人以上住んでるだそうです。
(赤江珠緒)
そんなにも!
(町山智浩)
そう。だけど、そのまあお金持ちのパク一家っていうのは、もう丘の上に住んでんですね。
彼らは例えばどのくらい金持ちかっていうと、まず犬に人間の食べ物を与えてるだけじゃなくて、そのお手伝いさんにインスタントのジャージャー麺作ってって言うシーンがあるんですよ。
でも「サーロインステーキも入れてね」って言うんですよ。インスタント麺にサーロインステーキを入れているんですけども。
そのぐらい、そのまぁ格差ができちゃっているんですね。その金持ちの家はIT企業のCEOなんですよね。
(赤江珠緒)
うーん。
(山里亮太)
あぁ、なるほど。
(町山智浩)
これは、この間僕がたまむすびで紹介した「国家が破産する日」という映画の後、韓国はこういう社会になってしまったんですよ。
(赤江珠緒)
はー!
韓国の社会について
(町山智浩)
あれは、1998年のその国際通貨基金のIMFが、韓国を指導して構造改革をやったんですよね。
それはまあ、大規模なリストラと非正規雇用の拡大と大企業の優遇なんですね。
で、中小企業はまぁ全部潰れて、それから20年経ってますから格差がものすごく拡大しちゃったんですよ。
で、いわゆるその輸出型の大企業ね、サムスンとかヒュンダイとかLGとかに、どんどんその富が集中していって。もう就職に関してはほとんどコネ就職だけになっちゃったんですよ。
で、金持ちの家でないと勉強が出来てもよっぽどできない限り代表に入れない。で、大企業以外の中小企業がなくなっていて、正規雇用も減っているから、もうみんな貧乏です。
(赤江珠緒)
なんかどこもかしこも似たような話が起きちゃってますよねー。
(町山智浩)
まったくそうなんですよ。で、どのくらいの差ができているかと言うと2018年の韓国の所得の上位20%の月の収入の平均が91万円なんですね。月ですよ。
んで、一番ドンケツの20%の世帯の月の平均収入は13万円。91万円対13万円ってどんだけ酷いのこれ。
だから、このパラサイトって映画が全くその韓国のその状況をわかりやすく描いてるんですね。
半地下に住んでいる人たちと、丘の上の大金持ち達とを。
で、非正規雇用率が36%なんですよ。
だからこれ、半地下に住むしかない人達がいっぱいいるわけですよ。
ちなみに日本の非正規雇用率は37%でもうちょっと高いですが。
「こんなところになんで住んでるの?働けばいいじゃん」と思うんですけども、働いても働いてもワーキングプアなんですよ。
(赤江珠緒)
うーん
ワーキングプア。韓国の格差社会について
(町山智浩)
この映画の中で、何度もその息子がですね。プランはあるの?なんかプランを考えなきゃって言うんですね。
「ここから脱出するプランは?」とか、「彼らの所に潜入するプランは?」とか言うんですけど。ソン・ガンホ扮するお父さんはプランなんかないよって言ってるんですよ。
何か計画したってどうせうまくいかないからって言うんですよ。僕、ポンジュノ監督にこないだ会って聞いたんですけど、あのセリフは強烈だってっていうふうにポンジュノ監督が言ってるんですよ。
韓国人というのは、まあ日本でもそうですけれども、とにかく勉強して一生懸命真面目にやっていい大学に入っていい会社に入れば、それで結婚して家も建てて子供もてて豊かな生活、豊かな老後が送れるっていう、その大きな
計画、人生の計画通りに生きろというふうに教えられてきたんです。それによって韓国の行動成長というのは成り立ったんですね。
日本もそうですよね。勤勉って。ところが、98年以降にそれが成立しなくなっちゃったんです。
(赤江珠緒)
そうかーそれってもう、希望がないってことですもね、何か勉強してもしょうがないっていうのはね。
(町山智浩)
そうです。いくら勉強したところで真面目にやったところで、金持ちになれないです。将来は全く分からないという状況になっちゃうんですね。
だから計画しても無駄だって言うんですけど。で、韓国でこの映画を何故ポンジュノ監督が作ろうと思ったかというと、今韓国で、若者たちが”三放世代”と呼ばれているんですよ。
(山里亮太)
さんぽうせだい・・字・・は?
(町山智浩)
字は三つを手放した世代っていう。
(赤江珠緒)
はい、放す、はい。
(町山智浩)
はい。まず恋愛と結婚と出産を諦めたんですね。
(赤江珠緒)
んー。
韓国で起きている、三放世代
(町山智浩)
でそれだけじゃなく、更に進行して、正規雇用と家を持つことを諦めたんです。五つ諦めたから五放世代っていうね。その後さらに人間関係、友達を持つこと、つまり非正規雇用で働いてるから友達なんかできないんですよ、忙しくて。
友達を持つことを諦めて、会社に正規雇用で入れないから同僚も持てないんです。どこに飛ばされるか、わからないから、派遣だから。で、友達を持つ事と、「もう一つ夢を諦めたんで七放世代とも言われている。
(赤江珠緒)
うわぁどんどん悪化してますねぇ。。
(町山智浩)
どんどん悪化してて、まあ大変な時代になっていると。で、だからね、あの左派の野党だった、あのムン前政権が成立したんですよね。
で、あのムン大統領は、最低賃金を世界基準にすると。1500円くらいに引き上げると。いう事を公約としてやったんで、最初支持率は80%以上なんですよね。だから三放世代から支持されたんですけど、やってみたら全く状況が良くならないならないと。
(赤江珠緒)
ならないのか、底上げても。
(町山智浩)
ならないんですよ。っていうのは中小企業がその最低賃金だと維持できないんですよ。会社を。お金が全然儲からないから。だから逆に雇用が減っちゃったんですね。企業も潰れちゃったんです、ある中小はね、うん。
(赤江珠緒)
じゃぁもっと上から流さなきゃいけなかったって事ですか?
(町山智浩)
そう、でもあるんですけど、上の方に行ったらダメなんですよ。下からあげなきゃダメなんですよ。
(赤江珠緒)
大企業がもっと下にお金を流すように・・
(町山智浩)
下から行かなきゃダメなんですよ。
下から持ち上げなきゃいけないんだけども、要するに中小企業自体はお金ないわけだからね、現在支持率が30%減っちゃって、完全に希望を失っちゃってるんですよ、韓国の人たちは。
だからね、この中で半地下よりも低いレベルの人が出てくるんですよ。
彼らは努力を諦めて金持ちからのおこぼれだけを期待して富裕層を神のようにリスペクトする人たちとしてでてくるんですよ。すごい状況になってて、ただポン・ジュノ監督に会った時に言っていたのは、このこの映画を作っている時に、あの是枝監督の万引家族を見てちょっとびっくりしたって。
テーマが非常によく似ているって。貧困のどん底にいる家族達が、非常に不正な手段でなんとか生きていこうとする話だったんで。って。
それで、この映画ができた後、これもたまむすびで紹介したジョーダン・ピール監督の「アス」という映画を見てびっくりしたと。
それはあの貧困層に置かれている家族が暴力で金持ちの家を乗っ取ろうとする話で。
(赤江珠緒)
そうだ。
万引き家族にテーマが非常によく似ている
(町山智浩)
すごくよく似た映画が、このパラサイトの前後に作られているんだけど、そのポン・ジュノ監督は、「これは僕らがつるんでるわけじゃないよ」って言ってたんですよ。
(赤江珠緒)
そうなんですね。だって町山さんが前に紹介してくださった「家族を想うとき」という作品も、そんな話でしたもんね。
(町山智浩)
そうなんですよ。
「家族を想う時」の監督は、ケン・ローチっていうイギリスの監督なんですが、彼がその前に撮った「わたしは、ダニエル・ブレイク」という映画もやっぱり貧困家族がなんとか生き延びようとするという話なんですね。
貧困の人たちが家族を形成して、そっちもカンヌ映画祭でグランプリを取っていて。
「万引き家族」もカンヌ映画祭のグランプリ。この『パラサイト』もカンヌ映画祭でグランプリ。3年連続で貧困家族の話なんですよ、グランプリが。
(赤江珠緒)
示し合わせたわけでもないのに、世界のあちこちでいろんな監督がこれを取り上げざるをえない題材になっているということですね。
(町山智浩)
そういうことなんです。それと、この監督たちはさっき言ったみたいにケン・ローチがイギリスの人なんですよ。
ジョーダン・ピールはアメリカで是枝裕和監督は日本、ポン・ジュノは韓国なんですけども。この4ヶ国に共通することがあるんですよ。それは貧困率の高さなんですよ。
貧困率はアメリカが17.8%、イギリスが11.1%、韓国が17.6%、日本は15.7%なんですよ。先進国ですよ?これ。だからこの4ヶ国から似たような映画が出てきたんです。
で、貧困格差を示すジニ係数が韓国0.36、日本0.34、イギリス0.35、アメリカ0.39なんですよ。
先進国の中でこの四カ国は最悪の状況なんです。だからこんな映画が出てきたんです。
(赤江珠緒)
見事に反映してますね。
是枝裕和監督『万引き家族』とジョーダン・ピール監督『アス』、ポン・ジュノ監督『パラサイト』、格差社会の底辺の家族の(大きさに差はあれど)反抗を描いた映画が日米韓同時に出現したのは、この三国が北欧型とは真逆の弱肉強食社会で限界に来てるからだろうな。 pic.twitter.com/WrNUDm1f07
— 町山智浩 (@TomoMachi) September 6, 2019
(町山智浩)
そうなんですよ
まあこれは大変なことになってるなと思いますけど、ゲラゲラ笑ってゾッとするんですよ。
最後は非常に論争を呼ぶ終わり方になってるんで、見た後皆さんでも話し合うといいと思いますけど。
はい。で、この映画は2020年1月10日公開です、はい。
(山里亮太)
見たいなこれ。
(赤江珠緒)
いや町山さん、これはまた中身の濃い映画なんですねこれは。。
(町山智浩)
はい。もう今年のベスト3に入りますね
(赤江珠緒)
今日は町山さんに「パラサイト 半地下の家族」をご紹介いただきました。
日本では1月10日公開です。ありがとうございました!
(町山智浩)
どもでした!
<書き起こし終わり>
○○に入る言葉のこたえ
③貧富の差が拡大している韓国の現状 所得上位の平均賃金が91万円に対し、下位は13万円
でした!