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マミーの町山智浩さんの解説レビュー

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2024年08月22日更新
この『マミー』という映画はもう色んな事を考えさせる、あの本当に優れたドキュメンタリーだと思いました。しかも結末、アッ!と驚く結末になりますこれ。(TBSラジオ「こねくと」より)

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『こねくと』(https://www.tbsradio.jp/cnt/)で、『マミー』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。

町山さん『マミー』解説レビューの概要

①1998年の和歌山毒物カレー事件の真相を追ったドキュメンタリー
②マミーは林真須美さんが自分の事を呼ぶ呼び方。子供達に対して。
③林真須美さんの○○の可能性
④裁判で採用された3つの証拠
⑤1つ目は林家にあったヒ素とカレーに混入したヒ素が一致した
⑥2つ目は林真須美さんがカレーの鍋の蓋をあけていたという目撃
⑦3つ目は保険金詐欺
⑧証拠のどれもが信憑性に欠ける事がわかっていく

※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。

『マミー』町山さんの評価とは

(石山蓮華)そして町山さん今日は?

(町山智浩)今日はね、前ちょっと以前紹介しようと思ったんですけど、色んな事情で出来なくなった『マミー』というドキュメンタリー映画をご紹介します。

(石山蓮華)はい。先程オープニングのメニュー紹介でもお伝えしましたが、こちらの『マミー』は、和歌山毒物カレー事件の真相を追ったドキュメンタリーです。公開を目前に控え、判決が確定した林真須美死刑囚の過激な誹謗中傷など緊急事態が起き、このコーナーでも先月紹介する予定だったんですが、配給会社の方針が競技中となったため、急遽内容を変更してお届けしました。

その後、映像の一部に画像加工を施して上映する事となり、先週8月3日になりました。そして今回こねくとでも、親族の方への最大限の配慮をして紹介いたします。という事で町山さん改めてよろしくお願いします。

(町山智浩)はい。よろしくお願いします。はい。『マミー』は今公開中なんですけれども、イメージフォーラムとかですね、東京では。この映画ですね、”マミー”というのはお母さんの言い方ですけど、カレー事件で死刑囚になってる林真須美さんが自分の事を呼ぶ呼び方なんですね。子供達に対して。で先ほども話に出ましたけどその親族の人達に対するその嫌がらせが続いてるんで、それは本当に問題なんですけれども。この映画ね、すごくね面白いです。

(石山蓮華)いやなんかそのもう公開したって事で友人が見て、すごいこれは見た方がいいって・・うんなんか熱っぽく言ってました。

マミーは林真須美さんが自分の事を呼ぶ呼び方。子供達に対して。

(でか美ちゃん)ね。だって26年前の事件ですけど、で私達はだから7歳とかね。あの6歳とかだと思うんだけど、覚えてますもん。やっぱり強烈に覚えていて、林真須美死刑囚の、なんか顔とかもやっぱなんかもう本当に毎日報道してたなっていう。

(石山蓮華)そうですね。

(でか美ちゃん)うん。だから大人になるにつれて色んな事件の話とか出てきて、え、その可能性あるのって思ってたので。その冤罪の可能性がね。思ってたから。

(町山智浩)はい、そうですね。これどういう事件かって言いますと、1998年にあの和歌山でですね、町祭りのカレーを食べてた住民達67人がヒ素中毒で倒れて、そのうち4人が死亡するというすごい事件だったんですけども。まぁ無差別殺人だという事ですごい話題になった訳ですけども。その時に、その林真須美・・ちょっとあえて”さん”と呼びますね、この映画を見た後なので。林真須美さんが死刑という判決を受けたと。ところがこの映画は、本当にそうなのかという事で、二村真弘監督がですね、本人が色んなところを回ってそれを検証していくという内容ですね。まず死刑判決が出たためにはですね、理由が必要な訳ですけど、3つの証拠が裁判では採用されたんですね。1つは、カレーの中から発見されたヒ素と、この林さんの家にあったヒ素が一致したと、いう事だったんですけども、シロアリ駆除の仕事をしていましてこの林家は。で、その時に使ったヒ素が残っていて、それを分析した結果、カレーの中に入っていたヒ素と、物質として同じだという風に特定されたんですね。

裁判で採用された3つの証拠

で2番目の証拠というのは目撃証言、これは近所に住んでいた高校生がですね、林さんと、その娘さんがカレーを煮込んでいるところを見たと。その時に蓋を開けて味見をしているような姿を見たと言ってるんですね。はい。で3つ目の証拠とされたのが、林真須美とその夫が、保険金詐欺をずっとしていたと。その際に、ヒ素を使っていたと。この3つの証拠によって有罪となったんですが、これを1つ1つこの映画は検証していくんですね。でまず1個目のヒ素の同定と言うんですけども同じものであるという鑑定なんですが、これはね確かに同じ物かもしれないんですが、当時広く販売されていたものなんですよ。

(石山蓮華)だからどこでも買えたもの・・?

証拠を検証していくと・・

(町山智浩)そうなんです、当時色んな所で売っていたもので、このヒ素は。害虫駆除の為にね。だから同じものであっても全然おかしくないんですよ。で、もう1つの2つ目の目撃証言というのは、これは実際にこの監督達がですね、本当にその家から、このガレージでカレーを作っていたところがどのように見えたのかと事を実際にやってみるんですよ。しかもこの目撃証言についてはレース

のカーテン越しに見ていたという事になってるんで、レースのカーテンを通してですね、どのくらい見えるかって事を実験するんですね。今はほとんど見えないんですよ。これも・・あともう1つ、そのカレーの鍋が2つあって、その見えた窓から見えるカレーの鍋は1つだけだったんですけども、その見えた鍋を蓋を開けていたという証言だったんですが、その見えた鍋の方からは、ヒ素が発見されていないんです。これはもうかなりおかしいのと、もう1つすごい大きい問題があるんですが、これは映画ではあんまり強く強調してはいなかったんですが、実は裁判において法廷で証言しない場合の証言というのは証拠として普通取り上げないものなんですよ。この証言は裁判、法廷での証言がないんですよ。何故かと言うと、これ証言した人はですね当時高校生でですね。障害事件を繰り返していたために、証人としてのですね信憑性が薄いって事で検察側が呼ばなかったんですよ。ところが皆さんま裁判物とかご覧になれば分かるように、その法廷で証言してそれを証拠として取り上げるっていう手続きが必要なんですね。証拠となるためには、証言が。

(石山蓮華)はい。

(町山智浩)証言はそれがないと証拠として普通取り上げられないんですよ。これは、今回のこの事件に関しては法定での証言なしに証拠としてしまってるんですね。

(石山蓮華)イレギュラーに運用されてるって事ですね。

法定での証言なしに証拠としている

(町山智浩)そうなんですよ。この最初のヒ素の件も、そのいわゆる物的証拠にはならないんですね、広く市販されていたものなので。2つ目の証言も、その証拠として採用する証言の条件を満たしてないんですよ。これ、実は証拠なき判決なんですよ。

(石山蓮華)それでこう人が死刑囚になってしまうていうのは・・えぇ。

(町山智浩)これはすごい問題なんだと、ただその当時そのすごいマスコミが散々取り上げていた部分というのは、こういった証拠の部分ではなくて、その3つ目の証拠とされている、その証拠とは言えないんですが、(証拠と)されている保険金詐欺を繰り返していたという部分なんですね。そのマスコミはその林さんの事を毒婦と呼んだりね、印象をすごく悪くしていった訳ですけれども、ただ、これは事件そのものとの関連性が非常に曖昧なんですよ。というのは、保険金殺人で、ごめごめんなさい保険金詐欺でですね、この林家はものすごい莫大な利益を得ていて、2億円の家のローンプラスもう何億円もですね、次々と不正に保険金を手に入れていたので、ものすごく幸せだったんです。お金持ちだったんです。で、なんでも変買えたんですよ、好きなものは。

これ無差別殺人をする理由はないんですよね。

(石山蓮華)そうですよね、うん。

(町山智浩)つまり動機がないんですこの事件。つまり証拠がなくて、動機もなくて自白もないんですよ。これはちょっとありえないですね。

和歌山毒物カレー事件には動機がない

(でか美ちゃん)ここまでの話を聞いて思ったのは、捜査してた上で保険金詐欺をしていたという事が分かったんであれば、そのカレーの事件はまた別として別件として逮捕されるべきだったという事ですよね。何故か、一緒くたにされちゃったって事ですよね。

(町山智浩)一緒くたにされていたんですが、その過程が実はこの映画で分かるんですよ。

(でか美ちゃん)おお〜。

(町山智浩)まず別件でその保険金詐欺で逮捕されるんですけども、林さんは。

(でか美ちゃん)あ、されてるんだ。

(町山智浩)で、その一緒にやっていた共犯者である夫が出てくるんです、この映画。彼が様々な証言をこの映画の中でするんですが、まぁ、あっ!っと驚く内容なんですよそれが。あのね、なんというか、こんな映画でまぁ被害者も犠牲者も出てるような事件なんですけども、この映画のこの林健二夫の林健二の証言の部分はですね、彼がまぁ実際に画面出てきて喋るんですけど、これちょっとね笑うしかないんですよ。

(石山蓮華)ええ〜!ちょっと想像がつかないですね。ここまでの話だと。

林真須美さんの夫のシーンは笑うしかない

(町山智浩)こんな悲惨な事件なのにも関わらず、彼の言ってる事聞いてると、笑うしかないんですよ。コメディかこれと思いましたけど。ちょっとびっくりする内容で、これは実際に映画を見ていただくしかないんですけれども、具体的にはどういった事かというと、この保険金詐欺に対する林真須美さんの関わりは非常に薄いものだという事が分かってくるんです。

(でか美ちゃん)そっちもそんなに関わってないんだ。

(町山智浩)関わってないんですよあんまり。積極的に。というのは全部林健二が仕組んだ事なんですね。

(でか美ちゃん)夫婦でやってて夫がかなり中心になってた。

(町山智浩)勝手にやってるのも実際にあるんです。その勝手にやった理由っていうのもこの中で出てくるんですけどこの映画の中で。爆笑しちゃうんですよはっきり言って。

(でか美ちゃん)爆笑!?えぇ。

(町山智浩)もうビックリするような事を言うんですよ彼。

(でか美ちゃん)想像つかないけど・・うん。

(町山智浩)この内容で、笑うしかないのこれっていうね。恐るべき展開なんですよ。じゃあ林真須美さんは、その保険金詐欺にかかってなかったのになんで逮捕されたのって事になってくる。

(でか美ちゃん)ね、いよいよそう思っちゃう。

なぜ林真須美さんは逮捕されたのか

(町山智浩)これはマスコミがそういう風に書いたからなんですよ。それでもうマスコミの中で彼女は詐欺師で毒でもう金儲けをしてるんだと。だから殺人もしたんだと。その辺がよくわからない訳ですけど、なぜ無差別殺人するのか分からないんですけど、何故か印象的に関連付けられて、そこで後から刑事とか検察とかが、そのマスコミに答えようとするんですよ。

(でか美ちゃん)えええ?

(町山智浩)世間がもうワイワイワイワイ騒いでるからこれなんとか彼女を犯人しなきゃなんないんじゃないのって形になってくるんですよ。

(でか美ちゃん)えーー。そんな事ね、いい訳ないというか。

(石山蓮華)あまりにも理不尽ですよね。

(町山智浩)いい訳ないんですけど、どうなるかというと、まずその保険金詐欺で彼女を逮捕しなきゃなんないとなる訳ですね。夫のとこに司法関係者が行く訳ですよ。検察とかね。で、「お前の女房がやった事にしてくんね」。

(でか美ちゃん)えぇ何それ。

(町山智浩)っていう話になってくるんですよ。ビックリしますよ本当に。

(でか美ちゃん)だし、それ「うんオッケー」って言う訳ないというか。普通に。

(町山智浩)そうしないとお前はひどい刑務所入っちゃうよ。で、もう1人被害者として被害者の人がいるんですね。その被害者に何度も何度もその林真須美はヒ素を飲まして、それでその保険金を取ってたんだという風に報道されたんですね。その被害者は同居みたいな感じだったらしいんですけど、でも何度も何度も飲ませて飲み続けるっておかしいじゃないですか。

(でか美ちゃん)おかしいってまぁ、気づくはずだというかね。

司法の問題

(町山智浩)でしょう?共犯なんですよ。それもそういう事がどんどん分かってくる訳ですよ。で、これは大変な事件だなと。いう事でそのま最終的にはその司法の問題になってくんですよね。こういった事をしてしまった検察。警察。この判決を出してしまった裁判所っていう問題になってくるんですよ。というね、すごい映画で。ほとんど何も喋れませんでしたけど、映画を見てね、見てもらうしかないというね。

(石山蓮華)そうですね、こう見て考えなきゃっていう事は、この映画のすごく大きなテーマだと思うんですけど、ただそのこう報道があった時に、やっぱりこの人が犯人です、この人が絶対悪いですみたいな風にこう報道されていると、どうしてもなんか自分も、この人が犯人なんだってその言われた事をこう疑いもせず、まぁそうだろうと決めて私かかっちゃうし、実際子供の時はそんなような事にこう疑いを持つ事もなかったですよ。

(町山智浩)ないですよね。でテレビとか雑誌とかであれだけもう彼女は犯人だから早く捕まえろって風になっていくと、逆にもう司法の方もどうしようもないじゃないですか、それに答えざるを得ないじゃないですか。

(でか美ちゃん)でもそこでこうどれだけメディアがガーっとこう白熱加熱していたとしても、そこでこう真実を追うというか、それが司法だったり警察の役割なんじゃないかと私は思いますけど。

(町山智浩)もちろんそう思いますよ。

(でか美ちゃん)そうであってほしいですが。なんかそういう背景もきっと映画に描かれてるって事ですもんね、そうなっていってしまう流れというか。

(町山智浩)1番大きいのはそういう流れを作る事によって、本当の犯人が分からなくなっちゃいますねね。

(でか美ちゃん)ねー!そうですよね。

(石山蓮華)起こっている事はどうして起きたのかっていう事が、うん。

(町山智浩)あまりにも大きな流れがね、できると今の日本っていうか昔からそうですけれど、どこの国もそうですけども、それに逆らうっていうのは本当に大変な事なんだなと思いますね。この事件があった時に1人でも、いや彼女は犯人じゃないんじゃないのか?おかしいんじゃないか?っていう人がいたとしたら多分めちゃくちゃ叩かれたんですよ。

(石山蓮華)そうですね。

(町山智浩)でテレビ局の方でも、そういう事を言った人がいると、あいつ出すなって話になる。視聴者の皆さん怒ってらっしゃるぞみたいな感じで。反対意見が誰も言えないんですよ。でもよく考えるとこれ冷静になって、この監督さんは非常に若い人で当時あまりよく知らなかったって言ってるんですね。だからそういったマスコミのもう本当にもう一方向に突き進む方向っていうものにあんまり染まらないでいたから、多分この二村監督は、これ単純に調べてみようと。よく知らないから。という所からやってるんで、非常にそのなんというか真っ白な心でね。見ていくとおかしいよという事になっていくと。で、この映画の中でね、犯人に決まったじゃないかって人が出てくるんですよ。通行人の人でね、その冤罪だっって運動してる人に対して、そんなみんなが言ってんだから犯人に決まってんじゃないかって言うんですよ。

みんなが言ってるから犯人

いや、ちょっと考えてみてください。ちょっとおかしいと思いませんかっていう風に言われると、「うん、うん、うん。。そうなのか」ってなるんですけど、ちょっとおかしいと思いませんかっていう人が本当にみんなが一斉にワー!と右を向いてる時に、ちょっと左に向いてみない?って人はいないんですよね。それ本当に怖い事だなと思いましたね。はい。で今ね、その家族の人に対する嫌がらせがあってですね。まだそういう事やる奴がいるんだと思うんですけど、その中でお子さんの1人は一家心中してるんですよね。だからもう本当にこういう・・何故そんな事を。。今も起こってるじゃないですか。今ネットでね、もうほとやめてくれと思うんですけど。あとやっぱり、司法が本当に日本は本当に昔からですけど本当に全然信じられなくなってるっていうのはね、結構絶望的な気持ちになりましたね、見てて。あの最近ほら映画でもう1本あって、『正義の行方』って映画あるんですけど、それ飯塚事件っていう事件で、これね、エルピスっていうドラマのね。あの元になった事件ですね。

映画「」のポスター

これも完全な冤罪だと思いますけど、それとあの『袴田事件』件ですね。

映画「」のポスター

これに関してはその強盗殺人だったんですけれども、『正義の行方』の方もそうなんですが、DNAは要するにDNAの検証が信用できないって事になってく訳ですよ。特に袴田事件の場合にね、血のついた服っていうその証拠を、警察側が捏造した可能性が非常に高いんですね。で、これに関しても冤罪だって事で判決が出たにも関わらず検察がそれを認めないで、認めないままで行くと、犯人とされた人がもう老衰でなくなっちゃうんで、彼は犯人のまま死ぬ事になっちゃうんですよ。容疑者のまま。で、警察側は間違ってないっていう事を、プライトだけは維持できるんですね。でもこんな事態が次々と起こってて、それで自民党の裏金議員とか1人も捕まらないとかおかしいでしょ今。

(でか美ちゃん)おかしい。なんかこう、この毒物カレーの事件もそうですけど、その警察が初動捜査のミス認められないみたいなのが本当に最近も大分の引き逃げ殺人事件とかでも私はすご感じてて。なんかもう正直誰が見ても、初動操作ミスじゃない?って。もう今認めて、パッとそっちに切り替えて動いてくれた方が警察への印象むしろいいけどって思うんですが。まぁ認められないんですよね。

(町山智浩)まぁあらゆるところでね、その司法への信用がね失われてく状況に日本はある訳ですけれども。これは本当に怖い事でね。本当に人々みんなのね市民意識とかね公民意識というものはどんどん消えてく事になると思うんですよね。それも含めてですね、この『マミー』という映画はもう色んな事を考えさせる、あの本当に優れたドキュメンタリーだと思いました。しかも結末、アッ!と驚く結末になりますこれ。(笑)

(でか美ちゃん)えぇ!ちょっと!

(町山智浩)ここで落ちるのっていう。

(石山蓮華)劇場で見ないとダメですねこれ。

(町山智浩)ここに落ちるかこの映画っていうね。唖然としたまま終わりますよ。

(でか美ちゃん)最初配給会社の方針をこう待つというタイミングになった時は、この映画を見たい見たいって思う事も、親族の方にとってはどういう思いなんだろうとか思いましたが、やっぱ解説聞くと見て知る事もきっとあるから、見なきゃですね。

(石山蓮華)という事で今日は公開中の映画、『マミー』をご紹介いただきました。

■後日談

(石山蓮華)先週は和歌山毒物カレー事件の真相を追ったドキュメンタリー、『マミー』をご紹介いただきました。

(町山智浩)はい。

(でか美ちゃん)2人も見てきましたけれども。

(石山蓮華)見てきました。なんか、もう見た後にもうどう・・。人の感想がすごく気になるし、どこから感想を言っていいのかすごくこう迷う部分もあるんですが、まぁその1つの事実を明かす事のその・・なんだろう、はいなんだろうその曖昧さで人の人生がこんなにこう翻弄されているっていう事が今起きていて、それに対して私は何ができるんだろうってすごくこう思ってしまう。でも本当にこう見てよかった、ごくいい映画だと思いました。

(町山智浩)はい。いやもうでも、はっきり言って、笑いません?一箇所。二箇所くらい。

(でか美ちゃん)町山さんが、いやもはやもう笑っちゃうシーンありますよって言ってたシーンが、ここだなっていう部分は確かにあったんですけど、そのなんだろう、事実は小説よりも奇なりっていうのを、事件当時のそのメディアがこう作り出した道筋みたいなものを見ていても感じてたんですよ。この世間一般が知ってる和歌山毒物カレー事件に対しても、こんな事が現実にあるんだ、すごいこんな極悪の主婦がいるんだと私思っちゃってたんだけども。本当にその事実の、まぁ誰が新犯人だどうだみたいな単純な部分じゃない背景というか、なんかもう理解がちょっと追いつかない。

(町山智浩)追いつかないですね。

(でか美ちゃん)そう追いつかなくて笑っちゃうというのはすごく分かりました。ここだなっていう。

(町山智浩)これはそのヒ素を使った、保健金詐欺の被害者とされている、そのヒ素を飲まされたとされる林真須美さんの夫の林健二さんて人がですね、そのヒ素を飲むに至った経過を、まぁ世間で知られてる事と違う本当の話っていうの彼が告白するんですが、えっ!そんな軽い気持ちなのっていう。(笑)

(でか美ちゃん)そう。そうなんですよ。

(町山智浩)死ぬよアンタっていうね。

(でか美ちゃん)なんかこのマミーを通して、そのでか美なりに思った真実はこういう事だったのかなっていうのも、結局マミーというメディアに影響された私の感想だし、で当時はやっぱニュースを見てた私の感想だしと思った時に、なんかその・・どういう風にこれから色んなものを受け取っていけばいいのかなってすごく考えちゃいましたね。

(町山智浩)1大きいのは僕はこの保険金詐欺の事を、大きくなんていうか報道したメディアも、彼女を刑事事件でね、裁判で死刑判決をした関係者、司法関係者も、もう彼らにとって完全に過去の事であって、もう終わった事なんでほっといてくれっていう感じなんですね。近所の人もね終わってないですね。

(でか美ちゃん)そうですよね。

(町山智浩)もう知らねぇよもう終わったし、私もうそういう役職にいんだからってみんな逃げちゃうんですけど。そうじゃないんです、何も終わってないんですね。証拠もなければ動機もわからないし、自白もないんでね。だから終わったなんて事は本当にその当事者達にとってはないし、そこで殺された人達にとっても本当の真相が分からないままな訳ですから。

(でか美ちゃん)そうですね。

(町山智浩)被害者の遺族にしても、こんな事でね、うっちゃっといていいのかなと。いう事ですけど、やっぱり1番ビックリするのは、そのね旦那があのヒ素をね、「ペロッといったんですわ」ていうね。(笑)

(でか美ちゃん)いやそう。

(石山蓮華)いや〜〜。

(でか美ちゃん)コナン君のネットミームじゃないんだからっていう。

(石山蓮華)えっそんな人本当にいるんだなっていう。

(町山智浩)それでもう死にそうになったんだって、当たり前だよっていうね。

(石山蓮華)そうですよ。

(でか美ちゃん)びっくりですよね。

(町山智浩)びっくりしますけどね。

(石山蓮華)びっくりしました。

(町山智浩)まぁとんでもない話なんで。

(石山蓮華)それだけじゃないんですもんね。

(町山智浩)それだけじゃないんですよ。何度でも行くんですよそれは。

(でか美ちゃん)この映画『マミー』の軸になってますけど、その林真須美のご家族の方とある方が軸になられてますけど、この方があの母親は無実だと思うっていう主張をするのって、すごく勇気いったと思うんですよ。まぁ今も、今現在も。だから、なんか世の中にはもしかしたら、その冤罪っていうものが私達が知らないだけであるかもってやっぱ考えちゃいましたね。

(町山智浩)いやいっぱいあるという風に考えた方がいいんですよ。結局人間がね、死刑判決でも何でもする訳ですから。だから、死刑っていうのは、人は間違えるもんだという事を前提にするとやっぱり死刑っていうのはない方がいいんですよね。何パーセントか必ず間違ってる訳ですから、それを防ぐためにね。ちなみにね韓国はね面白いんですけど。韓国は死刑が廃止になってないけど廃止の国なんですよ。

(石山蓮華)どういう事ですか?

(町山智浩)死刑判決はするんです。昔から。・・絶対に執行しないんです。

(でか美ちゃん)なるほど。でもやっぱりその凶悪な事件に対して、被害者の遺族の方の気持ちとかを考えた時に、死刑って絶対に廃止した方がいいっていうものなのか私はまだ分からない、自分の考えが本当に定まってないんですけど。そういうのってその遺族の方どう・・ね。

(町山智浩)死刑判決をする事である程度満足はするんだと思うんですね。ただやっぱり何度も言いますように人間は必ず間違えると。正確な完全に間違いのない司法っていうのは存在しない訳ですから、もう0.何パーセントでも間違いがあるんだったらば死刑は執行しないというのがまぁ1番妥当な線なのかなと僕は思ってますけれどもね。

(石山蓮華)やっぱ人を殺せる権力っていうものの使い方っていうのはすごく考えさせられる映画でした。

(町山智浩)今日、ご紹介する映画の主人公も死刑判決を食らってる人ですよ。

(石山蓮華)あ、そうなんですね。

(町山智浩)はい。今日紹介する映画はですね、来週8月23日に日本公開される、『ソウルの春』という韓国映画を紹介します。

→『ソウルの春』町山さんの解説はこちら

※書き起こし終わり

○○に入る言葉のこたえ

③林真須美さんの冤罪の可能性

 

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