シェイプ・オブ・ウォーターの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/) で、ギルレモデルトロ監督/ゴールデングローブ賞最多の7部門ノミネート/「シェイプオブウォーター」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さんシェイプオブウォーター解説レビューの概要
1.シェイプオブウォーターはアンデルセンの◯◯?
2.◯◯と◯歳のヒロインのラブロマンス
3.序盤1分でヒロインの◯◯シーン
4.シェイプオブウォーターは◯◯の逆襲の物語
シェイプ・オブ・ウォーター、町山さんの評価は・・
(町山智浩)
あの本日ですね、アメリカではですねゴールデングローブ賞のノミネート作品候補作が発表になったんですよ。
(海保知里)(山里良太)
はい。
(町山智浩)
ゴールデングローブというのは、あのアメリカにいる外国人のですね、特派員の人達。まぁ映画関係のそのジャーナリストが投票して決める賞なんですけれども。はい、これはアカデミー賞に続くですね、アカデミー賞を占う前哨戦と
言われています。
はいそれでですね、最も多い部門賞の数のですね 、7部門にノミネートさとされたシェイプオブウォーターという映画を今日は紹介します。
(山里良太)
お願いします。
(町山智浩)
はい、えーこのシェイプオブウォーターはですね。
作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞、作曲賞
ノミネートですね。
(山里良太)
おー、すごい!
(海保知里)
いっぱいノミネートされていますね!
(町山智浩)
今かかっている後ろでかかっている音楽はそのまああの、ノミネートされた作曲賞の音楽なんですけど。
(海保知里)
神秘的な感じでねー。
シェイプ・オブ・ウォーター、直訳すると「水の形」だが?
(町山智浩)
そうですね、口笛ですねはい。あのちょっとメルヘンチックな感じがすると思うんですよ。
はい。で、このシェイプオーターというタイトルは「水の形」という意味ですけどあの水の形ってないですよね?
(山里良太)
ないですね。
(海保知里)
うーん、そうですね。
(町山智浩)
いろいろ考えさせられるんですけども、はい。これまぁ早い話がアンデルセンの人魚姫のような物語です。
(山里良太)
あー!
(海保知里)
そうなんですか!
(町山智浩)
はい、人魚姫は人魚の女の子が王子さまに恋をするんだけど声が出なく
なってしまって、足をもらう代わりにねっていう悲しい話だったんですけど。
この話は人魚の方が王子さまです。シェイプオブウォーターは。
(山里良太)(海保知里)
はぁ〜〜〜!
(町山智浩)
人間の方があの、まあ女の人で、声を失っているという話です。
(山里良太)
逆なんですね、ちょっと。
(町山智浩)
はい。で、これでただ、人魚の王子さまっていうのはアマゾンでね、捕獲された半魚人です。
(山里良太)
人魚の雄って言いかたが合ってるかわかんないけど。そうか、男の人魚は半魚人か・・・。
(海保知里)
半魚人になっちゃうんですね!
(町山智浩)
写真があると思うんですけど、半魚人ですね。
(山里良太)
はんぎょ・・、半魚人ですね!
あの・・、魚(ぎょ)感が強いですね!?
(町山智浩)
はい、身体中鱗がついてて、えぇ、ヒレもついてるという半魚人が王子様で。お姫様に当たるのはサリーホーキンスという女優さんなんですけど、写真があるかな?
(海保知里)
はい。
(山里良太)
あります。
(町山智浩)
あの、まあこの人は40歳のお掃除のおばさんなんですよ。
えっ!て感じですよね。
(海保知里)
うーん、なんかちょっと・・・。
(山里良太)
あのめちゃくちゃ綺麗なヒロインって感じじゃないですね。
美女×野獣ではない
(町山智浩)
はい、そうですそうです。
ハイあのそれでまあ彼女はまあ声が不自由でしゃべれないんですね。
はい、この2人のあのまあラブロマンスなんですよ、この映画。
すごく不思議な感じだと思うですけど、はい。これ監督あのギレルモデルトロ監督という。それも写真があると思うんですけど。
(山里良太)
あのパシフィックリムの!
(町山智浩)
そうです!パシフィックリムの監督です。ヘルボーイとかも。
あの、ふっくらと豊満な。
彼と並ぶと!彼と並ぶと僕痩せて見えますよね(笑)。
(海保知里)
あはははは笑
(山里良太)
今ね、ちょうどね。町山さんとのツーショットの写真も手元にあるんですよ。兄弟みたい笑
(町山智浩)
あ、そうですか!なんだよ!町山さん痩せて見えますねって言ってくれないのか笑
(海保知里)
あはははは(笑)
(山里良太)
いやいや、痩せて見えますよ町山さん(笑)
(町山智浩)
まあまあ兄弟みたいなもんですよ。
歳も近いし怪獣とかアニメが大好きなんで。どうしようもないオタクなんですけど、二人ともね。
(山里良太)
そうなんですね(笑)。
(町山智浩)
彼はメキシコで育ったんですけど見てるものは全く同じでした。
(山里良太)
そうなんですね、日本のそういう特撮とかすごい愛してくれてくれてるんですよね?
(町山智浩)
そうなんです、ウルトラマンとかマジンガーZ見て育ったんで。まぁ国を離れていても同じような心の持ち主なんですけど。
(山里良太)
そうなんですね。
ギレルモデルトロ監督は日本の特撮、ウルトラマンやマジンガーZが好き!
(町山智浩)
はい(笑)。
で、彼が作った話がこのすごく不思議な半魚人とあの人間の女の人のラブロマンスの、そのまあこのシェイプオブウォーターなんですけど。
まあこの半魚人とまぁお掃除のおばさんっていうことでちょっと普通の感じじゃないです。
ね。この女の人、主人公のヒロインの女性が朝起きるとこから始まりますけど、この人お掃除に行くんで朝じゃなくて夜になってから起きて出勤するんですよ。
でそこから始まるんですが、
いきなり朝の日課としてオナニーをされます。
(山里良太)
あら・・いきなり・・?
(海保知里)
どうしました・・そんなんですか・・?あらあら・・(笑)
(町山智浩)
みんなが考えてるような映画じゃないんですよ。
いきなり最初の1分でオナニーきますから。40代女性の。
(海保知里)
びっくり・・・はぁ〜・・・。
(町山智浩)
出会って1分で、あの、なんとかってやったり。
(山里良太)
いやいや、合体シリーズじゃないですよ(笑)。
(町山智浩)
はい、そういうことじゃないんですけどね(笑)。
(山里良太)
違いますよね?そういうことじゃないんですもんね?(笑)
(海保知里)
(なんのことだ?なんのことだ?)
シェイプ・オブ・ウォーターの舞台について
(町山智浩)
はい、で、この話はですね舞台が1962年のアメリカなんですよ。
で、あのボルチモアっていう、まあワシントン DC 。首都に近いところの街なんですけど、
そこに研究施設がありまして。政府の秘密研究施設がありまして。
そこのまあ研究所でですね 。アマゾンで捕獲した半魚人の研究をしているんですよ。
で、まぁエラ呼吸が出来るんで、
その戦争に使えるかもしれないということで。
その頃はアメリカとソ連のはものすごい科学競争してるんですね。
冷戦状態でそのベトナム戦争とかをやっている最中なんでどっちが勝つかって科学技術、軍事技術の競争している時代なんですよ。
(山里良太)
はいはい。
(町山智浩)
で、半狂人の技術があれば戦争に勝てるかもしれないと。
(海保知里)
こういう発想になるんですね!
(山里良太)
すごいなあ・・・半魚人を兵器として!
(町山智浩)
半魚人を兵器として使えると。まぁこれサイボーグ009とかにも出てくる話で。
元々ソ連の、あの SF小説でベリャーエフって人が書いた「両棲人間」っていう話があるんですけど。
それも人間にエラを移植して、あの水陸両用にするって話なんですね。
(山里良太)
へえ〜〜〜・・・
その当時はよく言われたことなんですよ。
(海保知里)
そうなんだー!
(町山智浩)
そういう研究をしているんですけど
その研究をしている男がですね、マイケルシャロンという俳優が演じてるまぁあの
政府の役人なんですがすごい顔してるんですが、この人は写真ありますか?
(山里良太)
あります。結構な悪人な顔な感じかな・・・。
(町山智浩)
この人あの獅子舞の獅子みたいな顔ですね
(山里良太)
はい、濃い顔してますね
(海保知里)
いい表現!
半魚人とお掃除係の出会い
(町山智浩)
鬼瓦というか・・。
でこの人が半魚人をですね、もう徹底的に拷問してるわけです。言うこと聞かせようとして。
そう、ものすごく怖いんですけど。まぁそこでお掃除のその、まあサリーホーキンスが、まあこのイライザっていう役名なんですけど半魚人と出会って恋をしてしまうんですね、うん。
でも拷問されているわけだからなんとかしなきゃっていう話になってくるんですよ。
(山里良太)
はい!はい!はい!
(海保知里)
へぇーー!!!
(町山智浩)
でこのヘんがね、まずこのマイケルシャノンが演じるこのもう軍人がものすごいんですよ!強烈で!
あの、まず最初に出てくるところでこのおそうじトイレの掃除をしているところに来るんですね、彼が。
ってあのまあおしっこするわけですけど手を洗わないんですよ、彼。
(海保知里)
あれ?汚い・・。
(山里良太)
はぁ・・おしっこして・・?
(町山智浩)
で、うわ!って感じでこのヒロインのイライザが見てると
「あのな、手洗うっていうのは女々しい奴のやることだ!」って言うんですよ。
(海保知里)
そんなあ!
(町山智浩)
そうかー!?とか思うんですけど、
この人はとにかく冷戦状態でソ連と戦ってるんで徹底的な強くなければいけないと思い込んでる男で。
あの、いつも鏡を見ながらですね、
「俺は強い、俺は勝つ、俺は強い」って言い聞かせてるんですよ。
(海保知里)
鼓舞させてるんですね・・。
(山里良太)
イッてるなあ・・。
(町山智浩)
で、その当時ベストセラーだった「パワーオブポジティブシンキング」っていう本を読んでるんですね。
(海保知里)
それなんか聞いたことありますよ。
(町山智浩)
それはあのマクドナルドの創業者が愛読してた本なんですよ。ハウンターって映画の中で。
あの、ドナルドトランプが唯一信奉している方がその本なんです。
(山里良太)
はぁーーーー!!!
(町山智浩)
もう彼は宗教とかまるでないんですけど、そのパワーオブポジティブシンキング積極的考え方の力だけは信じてるんですよ。
(海保知里)
うーーーん!
強いことが正しいんだ。勝つしかない。
(町山智浩)
そこに書かれてることは強いことが正しいんだ。勝つしかない。俺はできると思い込めってことばっかり書いてあるんですけど。
まあそういう時代なんですよ。力が全てって。力でその半魚人を抑えつけようとしてるのはそのマイケルシャノンさんなんですね。
(山里良太)
はい!
(町山智浩)
はい。で、この人はゾッド将軍とかそういう役ばっかやってる人なんですけど。
(山里良太)
怖い役ばっかやってんですね!
(町山智浩)
はい、スーパーマンの敵のね、はい。
で、あのなぜそんな話を今回作ったかというふうに。あのまあギレルモデルトロ監督にインタビューした・・・、あっ、僕インタビュー行ったんですけど
これは1962年の話じゃないんですよ、と。
監督が言うんですよ。
これは今なんだというんですね、彼。
(山里良太)
ほう!
(海保知里)
ヘえーーー!
(町山智浩)
で、これは今何がアメリカで起こっているかというとドナルドトランプが大統領になって、移民は追い出せとか、イスラム教徒は入れるなとか。あとまあ
セクハラしても自由なんだとか言って誰にも責められないわけですね。トランプは。
そういうまあ、状況っていうものを描きたかったんだけれども。それを今の状況で描くと多分もうものすごい炎上するだろうと。論争になっちゃうんだろうと。
でも昔々こういう時がありましたっておとぎ話にすれば大丈夫なんだよねって言ってましたね。
(山里良太)
ヘえーーー!
(海保知里)
そういう狙いがあったんだ!
監督の過去作品について
(町山智浩)
はい。で、彼はこの前に作った映画で「デビルスバックボーン」
って映画と「パンズ・ラビリンス」という映画があるんですけど。
それはあの、スペインがフランコ将軍のまあ政権で独裁・・・まあ軍事独裁国家だったときの話なんですよ。
ものすごいもうファシズムで、まぁ政府がですね民主をまあ押しつぶしているときにそのまあ女の子のですね、想像力がそれと戦っていくという話だったんですね、今までは。
はい。で、ただ今回はそれはアメリカに持ってきてよりかなり直接的にはなってるんですよ。
ただ、さっき言ってたパンズ・ラビリンスってものすごいその・・・フランコ将軍のところで。もう独裁国家なんだけども、まぁ女の子がですね、えぇまぁメルヘンな世界を想像していくわけですよ。
(海保知里)
うんうん。
(町山智浩)
で、今回のこの主人公のイライザはまあ孤独な女性ということになってるんですけど、50年代のミュージカル映画が大好きで。フレッド。アステアとか。
さっき言ってた曲とかもなんですけど、いつもその恋に恋してるんですね。
で、自分がヒロインになって歌って踊っている姿を想像するんですよ。
口はきけないんですけど。
(山里良太)
うんうん。
(町山智浩)
はい。で、そういうその想像力とかメルヘンの力と、そのまあ強烈なその力によるその政治みたいなものが戦っていく話になってますね。
(海保知里)
ふーん!
(山里良太)
なるほど!
(町山智浩)
だから歳後半の方でですね、えぇまぁ半魚人のプリンスを助けなきゃなんないわけですよ。
すごい拷問されて殺されちゃうから。
で、最終的な解剖してそのやっぱりエラを研究しようって話になっちゃうんじゃないですか。
何とか助けなきゃならないときに、まあそのイライザの一緒に住んでる・・・一緒に住んでるわけじゃないですけど、隣人で。この人に今アカデミー賞じゃなくて・・・あのゴールデングローブの助演男優賞候補になってるんですけどリチャード・ジェンキンスさんというですね、名優、おじいちゃんが
演じてるイラストレーターが隣に住んでるんですよね、うん。
この人はまあ助けてくれるんですけど。この人はねえ、ええまあゲイなんですよ。
というのもこの1962年当時はゲイであることはもうバレたらどうしようもなかったんですよね。
(海保知里)
そんな時代ですね。
(町山智浩)
うん。それこそゲイバーに警官が踏み込んでってそこにいる客をボコボコに殴っても全然許された時代だった。
ゲイである事には人権がまるでなかったからそれは絶対に言えない時代だったんですね。
彼もだからその声がない、声が出ないそのイライザと同じで声を発することができない。本当の自分をしゃべることができない、いうことができない“声を奪われた人”なんですよ
で、またお掃除のその人たちもみんなですね、ほとんどが黒人かラテン系の人たちなんですね。
でこの頃、これ舞台がメリーランド州なんですよ。
(山里良太)(海保知里)
はい。
(町山智浩)
メリーランド州ってのはワシントンのすぐ下なんですけど一応南部なんですよ。
(海保知里)
そっか南部になるんですか。
(町山智浩)
そうです。南北戦争の時は南部だったんですよ。
だから黒人の人権がないんですよ。
(山里良太)
あぁ、そっか・・・。
(町山智浩)
だからすごく政府の極秘施設なんだけれども、そこで掃除してる人たちはかなりいろんなものを見てしまうわけじゃないですか。
でもそれで許されているのは“彼らを人間だと思ってないから”なんですよ。
(海保知里)
うーん・・・。
(町山智浩)
なんにも発言権がないだろうということで。
で、身体障害者であるヒロインとそのまあ黒人のあの掃除のおばさんたちが、実はもう非常に抑圧された、人間としてみなされていないんですね、その当時は。
身体障害者であるヒロインは人間としてみなされていなかった
(海保知里)
あ〜〜・・。
(町山智浩)
でも彼ら、そのなんというかまぁあの・・・これ監督が言ったんですけど彼ら「The others」なんだって言ってるんですよ。
(山里良太)(海保知里)
The others??
(町山智浩)
The othersってのは他のって意味ですけど。その頃のその1962年くらいのアメリカ、まだその黒人の公民権運度が始まったばかりの頃なんで人権がなかったんですね。
(山里良太)(海保知里)
うんうんうん。
(町山智浩)
だからアメリカ人って言うと白人だけだったんですよ。
(海保知里)
ふーん・・そうなってくるんだ。
(町山智浩)
そう。映画見てもそのその当時の映画ではあの白人だけしか、あのヒーローやヒロインにはなってないんですよね、当時は。それ以外の人たちはなかった人たち。居ない事にされてる人たちなんですよ。
(山里良太)
うーん・・。
(海保知里)
ひどいな・・。
(町山智浩)
だからThe othersって言ってるんですけど、監督は。このThe othersたちの逆襲の話なんだって言ったんですね、このシェイプオブウォーターは。
(山里良太)
ほう!!!
(海保知里)
はいはいはい。
シェイプ・オブ・ウォーターは、「The Others」たちの逆襲
(町山智浩)
はい。でまぁ逆襲していくんですけど、彼らが。
で、とにかくギレルモデルトロ監督はなぜこの映画を作ろうと思ったかっていうと、その、実は子供の頃から、あのだから6歳のころからから。彼54歳だけど。
6歳の頃からずーっとこれ作ろうと思ってたんです。
(山里良太)
へえーーー!
(海保知里)
そんなに長く思ってたお話なんだ・・・。
(町山智浩)
でねえ、6歳の時にテレビで、その・・・「大アマゾンの半魚人」ってユニバーサル映画を観たんですね、うん。
1954年の映画なんですけど、それが有名な半魚人の第1作なんですよ。
(山里良太)(海保知里)
ふーん!
(町山智浩)
で、アマゾンにアメリカ人の探検隊が行ってそこにその半魚人が住んでいるんですけど、あのたった一人生き残った半魚人がいて。それがその探検隊が連れてきたその女性に恋しちゃうんですよ。
ところがその探検隊、最後その半魚人を殺して終わっちゃうんですね、話が。
もちろんそのその当時だから半魚人はとにかく怖いやつでね、探検に行ったらこんなのがいたんで、あの殺しましたって話になってるんですけど。
どう考えても今の視点から考えるとおかしな話じゃないですか。
勝手にアメリカ人が入ってアマゾンで、そこに住んでいる原住民を殺しているという話なんですよ。
それを正義として描いてるんですよ。
でも彼はメキシコ系の人なんで、メキシコ人なんで。あのギレルモ監督は、デルトロ監督はね。
(山里良太)
はい。
(町山智浩)
南米側の人の気持ちですよね、見るとき。その時どう思ったかっていうと、その探検隊の女の人ジュリア・アダムスさんっていう女優さんなんですけど。そのジュリア・アダムスさんと半魚人が駆け落ちする漫画を書き始めたんですって6歳の時に。
(山里良太)
6歳!?
(町山智浩)
そう。映画の中では殺されてしまうから、あの二人で駆け落ちして自転車でピクニックに行ってアイスクリーム食べたりするって漫画をずっと描いてたんですって。
で、いつかこの二人を・・・あのなんていうか。まあ結ばれてほしいなということでずっと子供の頃から思ってて。
(山里良太)(海保知里)
うーん。
(町山智浩)
で、とうとう本当に実現したっていう話なんですよね。
ギレルモ監督が小さい頃から描いていたストーリーを実現
(海保知里)
すごい・・・ものすごいじゃあ強い思いがこもってる作品なんですね、じゃあ。
(町山智浩)
すごく思いがこもってるですよ。まぁこの映画実は彼はお金かなり出したんです、自分で。自腹切ってるんですね。
(山里良太)
えっ!自腹で!?
(町山智浩)
自腹かなりきってるんです彼。
どうしてかっていうとまず映画会社がお金を出したがらなくて、もしお金出すってなったら口を出すっていう状況になってますよね。
(海保知里)
そっかそっか、そうでしょうね、うん。
(町山智浩)
どういう風に口を出すかっていうと、「ヒロインをもっと美女にしろ」って来るわけですよね。
人気がある美人女優にすれば客が入るから、それだったらお金出すよって言ってくるんですよね。
で、もう一つくるとしたらこの半魚人が実はハンサムな王子さまでしたっていうふうに持ってくるかもしれないですよね。
(山里良太)
あー、なるほど、そうですね。
(町山智浩)
でもそれだけは絶対にしたくなかったって監督は言うんです。
(山里良太)
美女と野獣のパターン。
(町山智浩)
そう、美女と野獣ですよ。でも美女と野獣っておかしいよって言うんですよ。このデルトロ監督は。
美女と野獣は野獣でも好きよって話でしょ。心が良ければ。
(山里良太)
見た目じゃないよっていう。
(町山智浩)
見た目じゃないよって話なのに、最後見た目は良い王子様に戻るってのはおかしいじゃないですか。
(山里良太)
なるほどね。
(海保知里)
確かに確かに。
”美女と野獣”にはしない、強い意思
(町山智浩)
「あなたはそのままでいいのよ」って言ったんだから、もしハンサムな王子様になったら「元の野獣に戻してよ!」って言うべきなんですよ。
(山里良太)
本来そっか、それを好きになったんですもんね。だって。
(町山智浩)
そう。おかしいだろうと。
で、しかも見た目じゃないのよって言ってんのになぜヒロインが美女なんだっていう。
(山里良太)(海保知里)
はあ〜〜〜!
(町山智浩)
おかしいだろうと!
で、そのまあカエルを好きになると・・・お姫様がね?
で、カエルにキスすると王子様になったりする話があるじゃないですか。おかしいだろうと。
カエルのままでいいんじゃねーのと。見た目じゃないんだろうと。
(山里良太)
うんうんうん。
(町山智浩)
だったらそれをテーマと・・・
テーマから要するに歪んでるんだと。美女と野獣は。
だからちゃんとテーマ通りに作りました!っていう話なんです!
(山里良太)
あー!面白そう!!もうそれだけで・・・。
(町山智浩)
見た目じゃねーんだったら見た目じゃねーで貫き通せっていう。
それだったら俺自腹払うぜと。
(海保知里)
すごい。
(町山智浩)
映画会社とかに文句言われないで済んだって言ってましたね。
(海保知里)
へえーー!
(山里良太)
結構抑えたんですか?価格的にはその・・・制作費。
シェイプ・オブ・ウォーターの制作費について
(町山智浩)
あぁ。金額はかなり抑えて。この人パシフィックリムとかものすごい金額で撮ってるんですけど。1億5000万ドルなんです。パシフィックリムって制作費が。
(海保知里)
おーーー。
(町山智浩)
で、今回2000万ドルで抑えたって言ってますね。
ギャラとか全然取らないでやってるんですけど。やっぱり、それはやっぱり
ハリウッド的な美男美女の話されるのだけは絶対に嫌だったんですよね、彼。
(山里良太)(海保知里)
はぁ〜〜〜・・・。
(町山智浩)
まあシェイプオブウォーターっていうのは、その「水の形」っていう意味・・・まあ意味ですけど。
例えば「形のない物っていうものは実は大事なんじゃないか。」
「目に見えないものが大事なんじゃないか」ってことを言いたいんですね。
例えば愛には形がないわけですよね。
(山里良太)
はい。
(町山智浩)
で、この2人はこの半魚人とこのまぁ主人公のイライザは、その目に見えない美しさがあるんですよ。
そういうことを言いたい。すごく、ものすごく。あの彼自身のもう6歳のころからデルトロ監督が言いたかったことをもうぶちまけた映画なんで。
で、今回そのゴールデングローブで最多部門ノミネートってのはこれはすごいなと思いますね。
(海保知里)
そうですね。
(町山智浩)
負けなかったんですね。
(山里良太)
初志貫徹。
(海保知里)
初志貫徹。そして虐げられた人たちを主人公にして・・
いやー、見えないもの、ちょっとグッときますね。
すごいシーン、あります
(町山智浩)
ただちょっとグロくて、あの、オナニーもありますんで(笑)。
(山里良太)
冒頭でしたっけ町山さん?
(海保知里)
いきなりでしたっけ?
(町山智浩)
いや、あのもっとすごいシーンもありますね。
(海保知里)
え、もっと!?
(町山智浩)
だからね、その辺がね、やっぱり「大人のメルヘン」って感じですね。
(山里良太)
あはははは!
(海保知里)
大人のメルヘン(笑)。
(町山智浩)
あの、ちなみにですね、半魚人はずっと裸です。
(山里良太)
あっ、でました裸情報(笑)
リスナーが心配してましたよ、ないんじゃないかなーつって。
(海保知里)
よかった、よかった。
(町山智浩)
裸なのにどうやって。あそこはどうなってるのって部分もちゃんと説明があります。
(山里良太)
あはははは!
(海保知里)
あ、そういう疑問にも答えてくれるのかしら?(笑)
(町山智浩)
と、いう大人の映画でした。
(海保知里)
ちなみにこちら日本公開は3月1日だそうですね。楽しみにしたいと。
(町山智浩)
はい、アカデミー賞最有力候補ですね。
(山里良太)
おお!
(海保知里)
はい、これも忘れずにということで。はい、今日はシェイプオブウォーターを紹介いただきました。
町山さんどうもありがとうございました。
(山里良太)
ありがとうございましたー!
(町山智浩)
どうもでした。
<書き起こし終わり>
シェイプ・オブ・ウォーター〇〇に入る答え
1.シェイプオブウォーターはアンデルセンの人魚姫?
2.半魚人と40歳のヒロインのラブロマンス
3.序盤1分でヒロインのオナニーシーン
4.シェイプオブウォーターはThe othersの逆襲の物語
でした!