ジュディ 虹の彼方にの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)
で、ルパート・グールド監督のイギリス・アメリカ合作の伝記映画『ジュディ 虹の彼方に』のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『ジュディ 虹の彼方に』解説レビューの概要
①大スタージュディ・ガーランドは、とても不幸だった。
②薬と酒で転落する人生
③役の境遇と重なる!?主演レネー・ゼルウィガーについて
④LGBTのシンボル、レインボーフラッグの元となった歌とは
⑤パニックの中歌ったのは「◯◯◯◯◯は終わったの」という歌
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『ジュディ 虹の彼方に』町山さんの評価とは
(赤江珠緒)
映画評論家、町山智浩さんのアメリカ流れ者。
今日はカリフォルニア州バークレーのご自宅からです。
もしもし、町山さん?
(山里亮太)
もしもーし。
(町山智浩)
あの、選曲いいですね。
(山里亮太)
お?
(赤江珠緒)
うん?
(町山智浩)
選曲が素晴らしいですね。
(山里亮太)
どこの選曲が?
(町山智浩)
先ほど。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
あ、ブルーハーツ?
(町山智浩)
ブルーハーツの『英雄にあこがれて』を流したじゃないですか、フルで。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
はいはい。
(町山智浩)
すごいですよ!
(赤江珠緒)
あ、そこから聞いていただいていたの?
はい。
(町山智浩)
今、あれを流す・・すごい!
(山里亮太)
えっあれ、えー?
なんか我々が知らない中にそんなメッセージが?
(町山智浩)
ちゃんと曲、聞いて!(笑)。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
えー!
(赤江珠緒)
これはね、あの松の重くんが。
(山里亮太)
うちのディレクターさんが?
(赤江珠緒)
うん。音楽大好き、松の重ちゃんがわかってかけてくれたと。
(町山智浩)
松重豊さんのご子息ですね。
(山里亮太)
そうそう。あ。
(町山智浩)
素晴らしい!
(赤江珠緒)
おっよかった!
(町山智浩)
もっとやれ!って言ってください。
(赤江珠緒)
もっとやれと?
(山里亮太)
おっ、両手を上げてますよ!
『ショーシャンクの空に』みたいに。
(赤江珠緒)
ガッツポーズ、ちゃんと町山さんに届いていたみたいになってますよ。
あ、良かった良かった。
(町山智浩)
最高でした、はい。
(赤江珠緒)
あーそうですか。
(山里亮太)
あー絶賛。
(赤江珠緒)
ありがとうございます。
(町山智浩)
ということで今日はですね。
えー、また最高な音楽の話をちょっとさせてください。
はい、じゃあ曲お願いします。
〜♪〜
『虹の彼方に(Over the Rainbow)』
(町山智浩)
はい。これはご存知ですよね?
(山里亮太)
(赤江珠緒)
はい。
(町山智浩)
これは、あのージュディ・ガーランドさんの歌『虹の彼方に(Over the Rainbow)』ですけれども。
はい。これは『オズの魔法使い』というまぁ映画で歌われるんですね。
(山里亮太)
はい。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
昔はね『オズの魔法使い』日本ではね、必ず大晦日ぐらいに昼のテレビでやってたんですよ。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
へぇー!
(町山智浩)
毎年やってましたね。だからもう何十回も見ましたけど。
(赤江珠緒)
あぁ、そうか。
(町山智浩)
お年の方はみんな覚えてると思います。これと『スヌーピー』なんですよ、年末は。
(山里亮太)
へー!
(赤江珠緒)
へー!あ、そうですか。
(町山智浩)
ウケけてる人がいます。覚えている人みんないると思いますけど。
で、今日紹介する映画はこの歌を歌っている、その『オズの魔法使い』でドロシーを演じたジュディ・ガーランドの晩年というか、
死の直前のイギリス・ロンドン公演を描いた映画『ジュディ 虹の彼方に』という映画を紹介します。
オズの魔法使いでドロシーを演じたジュディ・ガーランドの晩年を描いた映画『ジュディ 虹の彼方に』
(赤江珠緒)
ふ〜ん!
じゃあ、実話ってことですね。
(町山智浩)
はい。まぁ実話に近いものですね、はい。実話を元にしたフィクションですけども、はい。
えーこれはですね、この間・・昨日発表された、ゴールデングローブ賞という、まぁ、ハリウッドの外国人記者が選ぶまぁ映画賞で、
主演のレネー・ゼルウィガーさんが主演女優賞を獲得しました。
(山里亮太)
はー!
(赤江珠緒)
おぉー!
(町山智浩)
はい。ジュディ・ガーランドを演じました、はい。
で、ジュディ・ガーランドという人がですね、えーどのくらいすごい人だったのかっていうのはもう世代的にこうかなり昔の人なので、
(山里亮太)
はい。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
あんまり分からない人も多いと思うんですね。
(山里亮太)
はい。
(町山智浩)
なにしろその『オズの魔法使い』は1939年の映画ですから。
(赤江珠緒)
1939年・・はい。
(町山智浩)
戦争前にこれだけの極彩色の超大作をハリウッドは作ってたんで、戦争にまぁ日本が勝てるわけがないですが。
(赤江珠緒)
そーかぁ。うん。
(山里亮太)
すごいな。
(町山智浩)
だってもう今のSFXとほとんど変わらない規模っていうか、その何百倍もの規模の映画だったんですよ。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
へぇーー!!
1939年の映画『オズの魔法使い』は今のSFX以上の規模
(町山智浩)
はい。だからそんな国に戦争で挑むなよと思いますけど。
(赤江珠緒)
そうですねぇ。
(町山智浩)
はい。
で、この方はですね、実は非常に不幸な人生を歩んで、えー1969年に47歳で亡くなったんですよ。
(山里亮太)
若い・・。
(赤江珠緒)
えっ、でもそんな。
大スターじゃないんですか?
(町山智浩)
大スターだったんですけど、非常に不幸だったんですね、はい。
でー、この人がどれだけその、まぁすごい歌手と言われているかは、まぁ歌詞を・・実際のその歌を聞いてもらうのが一番だと思いますんで。
えー彼女の1番すごかった、脂が乗っていたですね、1961年のカーネギーホールでの公演での『Come Rain Or Come Shine』をちょっとお聞きください。
〜♪〜
(赤江珠緒)
うわぁ!
(山里亮太)
かっこいい。
(赤江珠緒)
気持ちいい。
ジュディ・ガーランドさんについて
(町山智浩)
ものすごいんですよ。この声のパワーが。
(赤江珠緒)
伸びがねぇ、すごい。
(町山智浩)
はい。この人ね、身長が149センチしかなかったんですよ。
(赤江珠緒)
うーうん。
(町山智浩)
だからSuperflyみたいな感じで。
(赤江珠緒)
そうですねぇ。
(山里亮太)
確かに。
(町山智浩)
このちっちゃい体からものすごい声が出るんですよ。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
で、しかもこの、まぁスイング感というかですね。
まぁ、ロックとかジャズとかそういうジャンルを超えたものすごい歌い手だったんですね。
(赤江珠緒)
うんうん。
(町山智浩)
で、日本では、美空ひばりさんがよく比較対象になるんですよ。
(山里亮太)
へぇー!
(赤江珠緒)
はぁー!
ジュディ・ガーランドは日本では美空ひばりが比較対象
(町山智浩)
美空ひばりさんって演歌っぽい歌の歌手だと思っている人は多いと思うんですけど、
(山里亮太)
はいはい。
(町山智浩)
もともと彼女はジャズでロックでファンキーなんですよ。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
うーん!
(町山智浩)
だから、すごく似ているんですね、そのソウルフルな歌声とかが。
それと非常に子役のまぁ幼い頃から出てきて、天才と言われて。でもまぁ実人生があんまり幸福ではなかった点とかも非常によく似てて。
美空ひばりとジュディ・ガーランドは非常によく似てるとよく言われます。
(赤江珠緒)
へぇー!
(町山智浩)
はい。まぁ声がとにかく太いんですよ。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
うんうん。
(町山智浩)
で、すごいパワーなんですけれども。
でも、でもね、人生は不幸になっていくんですよ。ジュディ・ガーランドは。
(山里亮太)
えぇ。
(赤江珠緒)
なんでなんだろう。何があったんだ?
(町山智浩)
そうして子役で出てきたんですね。
(赤江珠緒)
うん。
ジュディ・ガーランドの人生は不幸になっていく
(町山智浩)
で、まあ高校生のミュージカルみたいなのに出ていたんですけれども。
で、すごい量でその頃は映画を作ってたんですよ。えーテレビがなかった時代なので。
(赤江珠緒)
はい。
(町山智浩)
もう毎日映画の撮影があるっていう状態なんですよ。
(赤江珠緒)
へぇー!
(山里亮太)
うんうん。
(町山智浩)
もう毎週毎週映画が変わるっていう時代があったんですよ、昔。
(山里亮太)
へぇー!
(赤江珠緒)
そんなに!はい。
(町山智浩)
はい。で、契約をMGMというミュージカルの会社と契約しててですね、こき使われていたんですけども。そうするとやっぱり疲れてくるじゃないですか。
そうすると「この疲れが取れるお薬がありますよ」ってお薬を飲まされてたんですよ。
(山里亮太)
えっ飲まされてた・・?
(町山智浩)
飲まされてた。いわゆる覚醒剤です。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
ええっ!?
(町山智浩)
この当時は日本でもアメリカでも覚醒剤は合法だったんです。
(山里亮太)
はぁ!
日本もアメリカも、当時は覚醒剤は合法だった
(町山智浩)
薬屋で売っていました、普通に。
(山里亮太)
へぇーー!!
(赤江珠緒)
ああー!そうか。
え、じゃあもう渡していた?
(町山智浩)
そう、事務所が出していたんですよ。覚醒剤を飲ませていて。
で、サザエさんとか初期のサザエさん見ると、普通に薬屋で売っている光景が見られますよね、ヒロポンとかね。
(山里亮太)
あぁ〜!
(赤江珠緒)
ヒロポンってね、戦後はそう言われてましたもんね。
(町山智浩)
そう。特攻隊の人に渡すためだったりもしたんですけども、働かせるために。
で、ジュディ・ガーランドもその薬を子供の頃から飲まされてて、
(山里亮太)
えぇー。
(町山智浩)
中毒だったんですよ。
(山里亮太)
えぇー!
(赤江珠緒)
あぁー!
ジュディ・ガーランドは覚醒剤中毒になってしまった
(町山智浩)
で、覚醒剤を飲んでるから眠れないじゃないですか。
(山里亮太)
はい。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
そうすると、今度、睡眠薬を渡されるんですよ。
(赤江珠緒)
えぇー。
(山里亮太)
はぁ〜!
(町山智浩)
で、完全に薬漬け。で、どんどんどんどんおかしくなっていったんですね。
で、彼女は、まぁなんというかですね、大スターだったにもかかわらず、体とか心がどんどんおかしくなって壊れてきちゃったんですよ。
(赤江珠緒)
うん。
(山里亮太)
そりゃそうだ・・。
(町山智浩)
で、そのうちに、そのー現場に来ない。撮影現場に来ない、えー遅刻する、欠席するを繰り返すようになったんですよ。
(赤江珠緒)
うんうん。
(町山智浩)
他人事じゃないですよ、本当に(笑)
(赤江珠緒)
いやいやいやいや。
そこは大丈夫、大丈夫。
(山里亮太)
思い出したっ。
(町山智浩)
誰のせいでもないですが僕の場合は(笑)
(山里亮太)
ははは(笑)
ジュディ・ガーランドは薬漬けになり、壊れていく・・
(町山智浩)
あの、まあね、それでどうなったかというと、契約を切られちゃうんですよ。
(山里亮太)
まぁ〜・・。
(赤江珠緒)
そんなにこき使ったのに?
(町山智浩)
そう、きつかったのに。自分は会社のために働いたのに。事務所のために。
でーまぁ離婚もされて、それでまぁ神経衰弱で精神病院に入る、手首を切って自殺を図る。
(赤江珠緒)
えぇー!
(町山智浩)
で、そういうのを繰り返す。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
で、どうなったかというと、もう映画に出れない状態になっちゃうんですよ。
(山里亮太)
うん。まぁそうだよなぁ。
(赤江珠緒)
あららら、うん。
(町山智浩)
ハリウッドから締め出されて。
(赤江珠緒)
うん。
再起をかけた映画『スタア誕生』
(町山智浩)
で、再起をかけて1954年に『スタア誕生』という映画を作るんですね。
(赤江珠緒)
はい。
(山里亮太)
はいはいはい。
(町山智浩)
あの『スタア誕生』の、まぁ元祖みたいなもんです。
(山里亮太)
はい。
(町山智浩)
まぁこれ自体がリメイクなんですけども、2度目か3度目の映画化なんですが、はい。
で、彼女がまぁ一介の歌手だった人が、そのまぁ見出されてスターになるという物語で。
まさに自分がスターとして再生をしようとしたんですよ。
(赤江珠緒)
ほぉー、うん。
(町山智浩)
で、ハリウッドはお金を出してくれないからどうしたかというと、当時の夫がお金を出してくれて、プロデューサーをやって。
で、夫婦で自費をつぎ込んで、その『スタア誕生』を作るんですね。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
ほぉー!
(町山智浩)
でその内容がね、またね、薬漬け・・じゃない、酒漬けになった、えー夫が死んでいくっていう話で、『スタア誕生』は。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
はい。
(町山智浩)
えー彼女自身もアル中だったんですその頃ね。
だからほとんど現実に近いギリギリのラインを狙ったところなんですね。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
うん。
『スタア誕生』は現実に近いギリギリのラインを狙った
(町山智浩)
で、まぁ痛々しい内容なんですが、まぁリアルだから。
すさまじい演技だったので「これはアカデミー主演女優賞を獲るだろう」って言われてたんですよ、ジュディ・ガーランドは。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
そしたら、えーハリウッドはもう彼女に仕事をさせたくないっていうことでもって、
(山里亮太)
へぇ。
(町山智浩)
彼女にアカデミー賞をあげなかったんですね。
(赤江珠緒)
えっ!?なんで!もうさせたくないと?
(町山智浩)
そう。締め出すためですね。
(赤江珠緒)
えぇー!
(町山智浩)
で、ハリウッドは、そのやっぱり業界の人たちが投票をするし、その、えー俳優とかプロデューサーが投票権を持ってるんで、そういうことになるわけですよ。
(赤江珠緒)
あぁーそうかー!
(町山智浩)
そう、これは業界の内輪の賞なんで。
(赤江珠緒)
はい。
ハリウッドから締め出す為、アカデミー賞を与えられなかったジュディ・ガーランド
(町山智浩)
はい。で、そのお金を全部つぎ込んでますからこの夫婦は、お金もなくなっちゃうんです。
(赤江珠緒)
うーん。
(町山智浩)
で、この映画、今回あの3月に公開される『ジュディ 虹の彼方に』は、もうそうやってその『スタア誕生』が失敗して、旦那とも離婚して、ものすごい借金を抱えて。あれだけの大スターだったにもかかわらず、一銭もない状態で。
(赤江珠緒)
えぇ!
(町山智浩)
車の中で暮らすみたいな状況になっていて。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
えー。
(町山智浩)
クレジットカードも使えないっていう、もうどん底のどん底から始まるんですよ。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
うん。
『ジュディ 虹の彼方に』は、『スタア誕生』が失敗し離婚し一銭もない、どんぞこの状態から始まる
(町山智浩)
で、えーしかもこの人、この頃は46、7歳なんですけれどもジュディ・ガーランドは。
その頃の写真を見ると60代みたいに見えるんですよ。
(赤江珠緒)
えっ?だってお若い時の写真がありますけども、めちゃくちゃ美人ですよ?
はぁそう・・。
(町山智浩)
やっぱり薬と酒ですね。
(山里亮太)
そっかぁ・・。
(赤江珠緒)
あららららー・・。
(町山智浩)
はい。もう見た目が完全に60代になっちゃんです。
(赤江珠緒)
う〜〜ん。
(町山智浩)
でーもう、相変わらずその中毒状態だから仕事ーまぁクラブとかに出て歌ってもちゃんと歌えないとか。
で、お金が一銭もない。で、子供も取られちゃうかもしれないんですね、旦那に。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
うーん。
(町山智浩)
まあヤク中で仕事もないわけですから、お金もないし。
(赤江珠緒)
まぁそうですねぇ、うん。
(町山智浩)
で、どうするか?っていうところからこの映画は始まるんですよ、この映画。
(山里亮太)
おー!そこから。
(赤江珠緒)
えぇー!うん。
超どん底から、どうするか?という所から『ジュディ 虹の彼方に』は始まる
(町山智浩)
超どん底、はい。
でーこのジュディ・ガーランドを演じるのはですね、レネー・ゼルウィガーという女優さんなんですけども。
この人もずーっとハリウッドから消えてた人ですよ、この人。
(山里亮太)
えぇっ!
(赤江珠緒)
へぇー!
(町山智浩)
この人『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズですごく有名ですよね?
(赤江珠緒)
あぁー!!はいはい。
(町山智浩)
覚えてます?
(赤江珠緒)
人気でしたね『ブリジット・ジョーンズの日記』はい。
(町山智浩)
はい。で、あと『シカゴ』にも出てますね。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
ふーん!
(町山智浩)
この人、天才だったんですよ一種の。
(山里亮太)
はぁ。
『ブリジット・ジョーンズの日記』のレネー・ゼルウィガーがジュディ・ガーランドを演じる
(町山智浩)
ってのは、このレネー・ゼルウィガーっていう人はアメリカ人でテキサス生まれなんですけど、
『ブリジット・ジョーンズの日記』では完璧なロンドン訛りでしゃべってるんですよ。
(赤江珠緒)
んー!
(町山智浩)
で、『シカゴ』では歌って踊ってるでしょう?
一種の天才なんですよ、この人。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
でも、精神的に非常に弱いところがあって。
しょっちゅうその、インタビューをすっぽかす・・僕もインタビューをすっぽかされてます1回。
(山里亮太)
へぇー!
(赤江珠緒)
そうなんですか。
(町山智浩)
はい。で、いろんな人と恋をして、もう次々と別れるっていうのを繰り返してて。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
非常に精神の不安定な人なんですね。はい。
で、レネー・ゼルウィガーってちょっと顔を見ると、ちょっとアジア人っぽくないですか?
(赤江珠緒)
うん。
(山里亮太)
たしかに。
(町山智浩)
目が細くて。
(赤江珠緒)
はい。
(町山智浩)
この人ね、サーミ人なんですよ。
(山里亮太)
ん?サーミ人?
(町山智浩)
えーと『アナと雪の女王2』ってご覧になりました?
(山里亮太)
あ、はいはいはい。
(赤江珠緒)
あぁー!!はい!
(町山智浩)
あれで、最後にそのあの国の、まぁノルウェーが舞台なんですけど、まぁノルウェーのような国ですけど。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
北方の少数民族が出てきますよね?
(赤江珠緒)
はい。
(町山智浩)
あれ、サーミ人なんですよ。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
うんうんうん。
レネー・ゼルウィガーはサーミ人
(町山智浩)
サーミ人は、そのノルウェーとかスウェーデンとかの、その北欧の、北極圏近くにいる少数民族なんですけども。
彼らはモンゴロイドの血がDNAが入ってるらしくて、あの、顔が平坦なんですよ。レネー・ゼルウィガーはサーミ系です、この人。
(山里亮太)
ふーん!
(赤江珠緒)
そうか、はいはい。
そう言われると。
(町山智浩)
で、独特の顔立ちをしてるんですけれども。
えーこの人とにかく歌って踊れて、いろんな訛りを自由自在に操れるのに、まあ精神的に不安定で。
して結局その17年間ほとんど映画に出ないという状態になってたんですよ。
(山里亮太)
へぇー。
(赤江珠緒)
あぁ、そうだったんですか。
(町山智浩)
マスコミにも出ない。
でー、まぁ彼女自身が最近インタビューで言ったのは「はっきり言って鬱になってた」と。
(赤江珠緒)
へぇー。
(山里亮太)
はー!
(町山智浩)
で、まぁ休養をしてたんだと、言ってますね。はい。
だからその点で非常に近いですよね、ジュディ・ガーランドに。
(山里亮太)
ふーん!
レネー・ゼルウィガーはジュディ・ガーランドに非常に近い
(赤江珠緒)
そうですねぇ。
(町山智浩)
で、ジュディ・ガーランドはその時に、あの、どん底のところでその、まぁロンドン公演というのを、えー企画を持ち込まれて、ロンドン公演にかけると、いうのがこの映画の話になってるんですけど。そのレネー・ゼルウィガー自身もその、まぁほとんど忘れられていてハリウッドからは。
あのね、17年間にね『ブリジット・ジョーンズの日記3』以外に何も出ていないし、マスコミにも一切出てなかったんですよ。
(山里亮太)
へぇー!
(赤江珠緒)
ふーん!
ずいぶんなブランクですもんね、そうなるとね。
(町山智浩)
すごいブランクなんですよ。
だからその復帰にかける、カムバックにかけるという点で同じなんですよ。
(山里亮太)
なるほど!!そっか、ぴったりだ。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
ぴったりなんですよ、感情移入の仕方がね。
(赤江珠緒)
うん。うん。
(町山智浩)
で、まぁジュディ・ガーランドはそれでロンドンに行って、まぁナイトクラブで、公演をして。
ここでまた良い結果が出れば、そこからまたキャリアがカムバックするかもしれないと、いうことで最後のチャンスにかけるんですけども。
(赤江珠緒)
うん。
ジュディ・ガーランドの最後のチャンス
(町山智浩)
全然ダメなんですよ。
(山里亮太)
あらぁ。
(赤江珠緒)
ダメかぁ、うん。
(町山智浩)
やっぱりね、もうほとんど眠れないんですよ。
(山里亮太)
あぁー。
(町山智浩)
不眠症になっちゃっていて。で、薬は断ったんですけれども、リハビリをやって。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
でもやっぱり不眠症は治らないんですね。で、薬はやらなくても、お酒はあるじゃないですかそこらへんに。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
はい。
(町山智浩)
だからやっぱりお酒を飲んじゃうんですよ。もう、これはもう、ハリウッドの大問題で、今あのーねぇ、もうベン・アフレックがまぁアルコールと戦って、それを映画にするって言ってますけど。ブラピはそれで、離婚されましたからねぇ。アル中で。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
はぁー。そっかぁ。
(町山智浩)
これはもう大変で、お酒はそこらで買えますから。
(山里亮太)
そっかぁ。
(町山智浩)
ヤクは売人に会わないと買えないですけども。
(赤江珠緒)
う〜ん。
(町山智浩)
で、もうコンサートが始まるっていうのに、舞台に現れないんですよ。
(山里亮太)
うわぁ。
ジュディ・ガーランドはアルコール中毒と戦っていく
(町山智浩)
大変なことですよ、ねぇ。
あのー他人事じゃないですよ。
(山里亮太)
ははは(笑)
大丈夫、町山さんは大丈夫ですよ!
あの1回だけですから。
(町山智浩)
ねぇ。どこに行ったんだ!
(赤江珠緒)
どこいったんだ!うん。
(町山智浩)
ね。ってことになるわけですよ。
で、これどうするんだっていうハラハラの映画になっていますね、これ。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
へぇ〜!
(町山智浩)
大丈夫なのか、おい?みたいなね。はい。
でね、あのージュディ・ガーランドという人は、実は日本ではそんなに知られていないんですけど、アメリカではですね、えーあの、LGBTの人たちのシンボルになっているんです。
(山里亮太)
へぇー!
(赤江珠緒)
あ、そうなんですね。
(町山智浩)
あの、LGBTの人たち、まぁゲイとかレズビアンの人たちは、レインボーフラッグというものをシンボルとして掲げているんですね。
(山里亮太)
(赤江珠緒)
はい。
(町山智浩)
あれはね、あの『虹の彼方に』っていう歌が元になっているんですよ。
(赤江珠緒)
えっ!そうなんですか!
(山里亮太)
はぁー!
そういえばめっちゃ好きだなぁ。
レインボーフラッグは、『虹の彼方に』という歌が元になっている
(町山智浩)
はい。あれはね『Over the Rainbow』という歌はね、歌詞が実は悲しい歌なんですよ。
(山里亮太)
へぇー!
(赤江珠緒)
んー?
(町山智浩)
あれはね『オズの魔法使い』でドロシーが歌うんですけども。
(山里亮太)
はい。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
「虹の彼方に幸せの国があるというの」っていうんですね。
(山里亮太)
うんうん。
(町山智浩)
「そこには青い鳥が飛んでいくけれども、なぜ私はあそこに行けないのかしら?」っていう歌なんですよ。
(赤江珠緒)
えっそうなの?なんかちょっと子守唄的に、なんかいい歌みたいに聞いていましたけど。
あ、そう。
(町山智浩)
歌詞は悲しい歌「私は幸せがつかめないの」っていう歌なんですよ。
(山里亮太)
へぇー!
(赤江珠緒)
えぇー!
(町山智浩)
だからそれを彼女がすごくシンボルとして歌ってたのは自分自身の1番の有名な歌として歌っていたのは、彼女自身の人生とかぶるんですよね。
(山里亮太)
はぁー!
(町山智浩)
どうしても幸せになれないんですよ。
で、それを聞きながらその、まぁ当時のゲイの人たちは、1950年代、60年代のゲイの人たちは本当に人権がなかったですから。
(赤江珠緒)
うーん。
(町山智浩)
あの、ゲイバーとかに行くと、警官に殴り込みをかけられて逮捕されちゃったり、殴られたりしてた時代なので。
で、会社では絶対にそれは言えないし。
(赤江珠緒)
はい。
(町山智浩)
ね。そういう中で、まぁ自分を、自分たちをジュディ・ガーランドに重ねていたらしいんですよ。
(赤江珠緒)
へぇー!
(山里亮太)
ふーん!
(町山智浩)
で、ジュディ・ガーランドが亡くなった時に、アメリカではそのゲイの人たちによる最初の暴動が起こってるんですよ。
(山里亮太)
へぇー!
(赤江珠緒)
そうなんだ。うん。
ジュディ・ガーランドが亡くなった時、アメリカではゲイの人たちによる最初の暴動が起きる
(町山智浩)
だからすごく重要な人なんですね。このジュディ・ガーランドという人は。
この人自身はゲイではなかったんですけども、周りがゲイばっかりだったので。
(山里亮太)
はー!
(町山智浩)
はい。で、『オズの魔法使い』に出てくるあのー、人たちの中にもゲイがいるんですよ。
(赤江珠緒)
あっ。
(山里亮太)
え?
(町山智浩)
はい。で、すごくそのゲイの人たちに、まぁ非常にその、まぁ理解を示してたんですけれどもね。
(赤江珠緒)
ふーん!
(町山智浩)
でね、もう本当に歌えなくてロンドンに行って。
レネー・ゼルウィガー扮する、えージュディ・ガーランドは大変なパニックになって。
それで舞台に出されちゃって、それでこの歌を歌うんですよ『BY MYSELF』っていう歌を。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
でも、最初は歌えないんですよ、声が出ないんですよ。
お客さんの顔も見れないんです。
それが、この歌はね『BY MYSELF』っていうのは「私はもう愛だの恋だのは興味ないの。そんなのは、おままごとは終わったの。私はもう誰にも頼らないで1人で生きていくしかないのよ」っていう歌なんですよ。
(山里亮太)
はぁー!
(赤江珠緒)
おおーっ!
〜♪〜
『BY MYSELF』を歌うジュディ・ガーランド
(町山智浩)
「私はもうたった1人で、たった1人で自分の人生を背負っていくしかないし、誰にももう頼れないの」
っていう歌を、ゆっくり歌い始めるんですね、ジュディ・ガーランドが。
そのうちにそれが彼女の、もう心と歌と体が一体になっていって、だんだんだんだん声が出てくるんですよ。
(赤江珠緒)
へぇー!
(町山智浩)
このシーンでね、レネー・ゼルウィガーは実際に歌ってて。
(赤江珠緒)
え、実際に?うん。
(町山智浩)
実際に歌っています。彼女が踊ってるシーンだけは口パクなんですけど、このシーンは本当に歌ってます。
(赤江珠緒)
ふーん!!
(山里亮太)
へぇーー!!
(町山智浩)
で、しかもこれね、ワンカットなんですよ。
(山里亮太)
へぇー!!
(赤江珠緒)
えぇー!!
(町山智浩)
この1曲4分あまりをボロボロの状態からステージに立って「私、歌えるかしら」って声が出ない状態から、だんだんだんだん声が出ていって。
声がだんだんだんだん大きく出ていって、最後は歌と心と彼女自身とその観客が一体になるっていうところまでをワンカットで撮っています。
(赤江珠緒)
うわ、すごい!
これは演じるのが大変だなぁ。
へぇ、えぇー!
ワンカットで撮影された歌唱シーン
(町山智浩)
これはすごい。これ、もう本当に歌の力で涙が出るっていうのを、もう実感したシーンですね。
(赤江珠緒)
ふーん!
(町山智浩)
この歌がね、またね歌詞がだから、最後に「私はたった1人でこれで生きていくけども、これが私で、誰にも何も言わせない」と。
「私のことを知ってる、私自身のことを知っているのは私しかいないんだから」っていう歌なんですよ。
(赤江珠緒)
すごい!
(山里亮太)
はぁ〜!
(赤江珠緒)
あ、でもその境遇からそこの境地にねぇ、まぁ単に行けるってすごいな。
(町山智浩)
すごいなって思いますけど。まぁでも、ちょっと壮絶すぎるんですよね(笑)
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
軽く聞ける歌がないっていう問題もひとつあるんですけども。そういう意味でね、はい。
(赤江珠緒)
はは(笑)
(町山智浩)
えーまあね『Get Happy』っていう歌があって、それは「なんでもいいから幸せになりましょう」っていう歌を歌ってるんですけど。
これは「もう地獄に行くんだから、笑って地獄を迎えましょう。この世の終わりが来たってもういいじゃないの」っていうヤケクソな歌だったりして。
(赤江珠緒)
本当ねぇ。めちゃくちゃ開き直っているもんね。
へぇ。
(町山智浩)
そう、だからね、ある意味パンクみたいなところがあるんですよジュディ・ガーランドって、はい。
でね、まぁこの歌がで流れるところで、これは僕はアカデミー賞に行くな!と思ったんですよ。
(山里亮太)
おぉっ!
(赤江珠緒)
おぉ!そうですか!
じゃあそんなブランクがあった、えーレネー・ゼルウィガーさんが獲るかもしれない?
『ジュディ 虹の彼方に』はアカデミー賞候補!
(町山智浩)
はい、はい。
で、もうゴールデングローブ賞も獲ったので、これはアカデミー賞いくかなと思ってますけども。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
えー対抗はね、あのー前に話した『マリッジ・ストーリー』のスカーレット・ヨハンソンなので。
(赤江珠緒)
あー見ましたよ!
(町山智浩)
あれもすごかったでしょう?
(赤江珠緒)
はい、すごかった。
もうリアリティありましたどちらもね。
(町山智浩)
そう・・優しく話しているところからもう、ボロボロに傷ついて泣くところまでをワンカットですからね。
(赤江珠緒)
うん。
(町山智浩)
カットは切ってますけども、ワンショットで撮っていますからね。
だからもう女優の戦いがものすごい厳しいレベルになってるなと思いますけど、今回のアカデミー賞。
(赤江珠緒)
いやぁーそうかぁ。
今回のアカデミー賞は女優の戦いが厳しいレベルに
(町山智浩)
はい。まあ、楽しみですけどね、はい。
そういう点でね、えー『ジュディ 虹の彼方に』は3月6日から日本でも全国ロードショーです。はい。
(赤江珠緒)
わぁこれも本当ねぇ?
歌もいいですもんね。
(山里亮太)
ね!
(町山智浩)
すごいいいですよ。
(山里亮太)
その背景の壮絶さたるや・・。
(赤江珠緒)
いや本当よ。大スターでそのままかとねぇ。思っちゃうところがね。
えー、『ジュディ 虹の彼方に』は3月6日から全国ロードショーということで。
町山さん、ありがとうございました。
(山里亮太)
ありがとうございました!
(町山智浩)
どうもでした。
<書き起こし終わり>
○○に入る言葉のこたえ
⑤パニックの中歌ったのは「おままごとは終わったの」という歌
「遅刻をしたことがある」ということで主演と重ねる町山さんのトークが楽しいので是非聞いてみて下さい!