サブスタンスの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『こねくと』(https://www.tbsradio.jp/cnt/)で、『サブスタンス』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『サブスタンス』解説レビューの概要
①主演デミ・ムーア
②ブルース・ウィルスと結婚し2000年代に入ってから子育てに集中
③素晴らしいカムバック作が今作の『サブスタンス』
④かつてスターだった女優さんが、禁断の○○○術に手を出してしまうというホラー映画
⑤若い女性に仕事を取られてしまう
⑥若返ったデミ・ムーアさんがめちゃくちゃ売うれる
⑦若返った間、払わなきゃならない代償がある
⑧60歳前後の女優さんは仕事が来ない、なので自分で作る。
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
映画『サブスタンス』町山さんの評価とは
(町山智浩)今日、紹介する映画もね、ちょっと音楽をかけてほしいんですが、かつてのスターの映画なんですよ。
(町山智浩)この歌は聞いた事ありますか?
(石山蓮華)あります。
(でか美ちゃん)もちろんです。
(町山智浩)これね、日本ではラブシーンとかがコメディとかがバラエティの中である時に、やたらとかかってたんですよ。90年代に。
(でか美ちゃん)なんかコント番組とかのイメージあります。
(町山智浩)そうそうそう。コント番組とかで2人の恋愛が盛り上がっていくとこでこの曲をかけるんですけど、なんでそうなったかっていうと、実は元になってる映画があるんですよ。それがね『ゴースト/ニューヨークの幻』という1990年の映画なんです。

(でか美ちゃん)大名作。
(町山智浩)これご覧になってます?
(でか美ちゃん)私は小さい時というか、なんか三重県でやたら放送してたんで、2回くらい見た事あります。正直な話、自分の強い意思持って見てるっていうよりかはやってるから見るっていう感じで。見た事あります。
(石山蓮華)私はですね・・実は見た事ないんです。DVDを借りた時に、絶対この予告で、ニューヨークの幻って出てくるんですけど、なんかそれで見た気になってて、未だに見た事ない名作映画ですね。
(でか美ちゃん)ろくろ回すとこがね。なんだかんだいいシーンなんですよね、こすられ続けてるけど。
(町山智浩)そうそう。陶芸をやって、ろくろを恋人同士で回すところがね、ロマンティックというかなんていうかね、エロティックなんですよ。もう象徴してるものがよくわかるというね。で、これに主演した、『ゴースト/ニューヨークの幻』に主演したデミ・ムーアさんという女優さんがいまして。この人は僕と歳が同じです。62年生まれで今年63歳になるのか。で、この人はですね、この『ニューヨークの幻』でもう大スターになりまして。本当にトップスターになった人ですね。世界のね。で、ただ2000年代入ってから、ブルース・ウィリスっていう俳優がいるんですけど、『ダイ・ハード』に出てた。

(町山智浩)彼との間に娘を3人もうけて、その子育てに熱中してたんで、映画あんまり出てないんですけど2000年以降は。ただ、この彼女のもう素晴らしいですねカムバック作が今回紹介する映画『サブスタンス』です。
(町山智浩)もういきなりホラー映画な事がわかりますね音楽で。
(でか美ちゃん)また怖い・・。
(石山蓮華)ドキドキしますね。
(町山智浩)怖いです。怖いです。これね、『サブスタンス』というのは、そのデミ・ムーア扮するですね、かつてスターだった女優さんが、禁断の若返り術に手を出してしまうというホラー映画ですね。この映画のね、すごいところはまぁホラー映画なんですけど、しかもすさまじい特殊メイクによるですねグッチャングッチャンな映画なんですけど。これね、アカデミー賞ね、なんと作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、メイクアップ賞の5部門にノミネートされたんですよ。で、メイクアップ賞は取ってるんですけど。これね、作品賞にホラー映画のノミネートされるという事は本当に少ないんですよ。今まで。だから作品として非常に優れてると。いうところがあるんですが、ホラーとしても徹底的にやってます。
(石山蓮華)楽しみで!す〜!
かつてスターだった女優さんが、禁断の若返り術に手を出してしまうというホラー映画
(でか美ちゃん)ちょっとまってよ。。でもわかんないですけど、これ系のホラー映画は見れる事が多いです。
(町山智浩)そう?
(でか美ちゃん)え、びっくりさせる感じじゃないですもんね、きっと。
(町山智浩)そこまでやるの!?っていう感じの悲鳴でした映画館では。
(でか美ちゃん)ん、なるほど。
(町山智浩)笑ってる人もいた。同時に。『サブスタンス』はね、すごく悲鳴のあり方がね、面白くて、アメリカの映画館だと、キャッ!とかそういうんじゃなくて、やめろー!Stop It!とかね、そういう声が上がるような映画でしたね。
(でか美ちゃん)もうやめて!って言っちゃいたくなるような。
(町山智浩)アメリカの映画館はね、みんなねすごくスクリーンに向かって色んな事言うから面白いですよ。
(でか美ちゃん)そうか、応援上映状態なんですね、日本で言うところの。
アメリカの映画館は日本でいう応援上映状態
(町山智浩)常にそうです。日本のお客さん静かですけど。だからね、みんなワーッ!って叫んだ後笑うみたいな感じでしたけど。前ご紹介した『ベイビーガール』でも、もうアレなんですけど、アントニオ・バンデラスに対してニコール・キッドマンが、もう20年ぐらい一緒に結婚してる旦那に向かって、あんたとのセックスで1回もイッた事ないわよ!って言った時、客が悲鳴と笑い声を同時にあげてましたけど。(笑)悲鳴をあげてたのはたぶん男性だと思います。(笑)
(でか美ちゃん)そうですよね、笑ってるのは女性なんだろうな。(笑)
(町山智浩)それ言うか!っていうね、すごいシーンでしたけど。で、『サブスタンス』なんですけども、これね、主演のデミ・ムーアさんが演じるのはですね、かつてはハリウッドの大女優だったんですけど、女優としての仕事はない今はテレビでエクササイズの番組をやってるんですね。いわゆる昔エアロビと言われたものをやってるんですけど。写真見るとね、これデミ・ムーアさん、62歳ですけどこのスタイル。
(石山蓮華)引き締まってますね。
(町山智浩)ものすごいスタイルの良さなんですよ。でしかもそのエクササイズだから、本当にもう股割りとかですね、徹底的にやって体の柔らかさもすごいんですけど。それで本当にこの人頑張ってるなというのはわかるんですが、ところがプロデューサーからですね。若い子に変えたいって言われちゃうんですよ。
(でか美ちゃん)なんでよ。
(町山智浩)で、僕は思ったのは、62歳でこれだけ美しさを保ってるんだからそれ自体が売りになると思うんだけどね。
(石山蓮華)その方がね、説得力あるんじゃない?ってね。
若い子に仕事をとられてしまう
(町山智浩)そう、すごいでしょう?っていう事はあるんだけど、まぁこのプロデューサーがね、なんていうかスケベな親父なんですよ。で、これを演じるのはデニス・クエイドという俳優さんで、この人もかつてのハリウッドスターです。で、彼が演じるプロデューサーの役名がハーヴェイっていうんですけど。これはハーヴェイ・ワインスタインというね、実在したハリウッドのプロデューサーで、大量の女性達にセクハラとかレイプをしいて今刑務所入って裁判続けてますけど。で、その名前を引っ張ってるんでまぁ最悪なんですよこの男は。
で、どのくらい最悪かというとですね、トイレで用を足した後に手を洗わないんですね。
(でか美ちゃん)それだけで本当に嫌だな。
(町山智浩)本当に嫌でしょう?これね、『シェイプ・オブ・ウォーター』っていう映画があって。過去に。

(町山智浩)これもアカデミー賞取ってますけど作品賞を。これで出てくる悪役が同じ事をしてるんですよ。で、なんで手洗わないの?って言われて、トイレの後手洗うっていうのは女々しいからな。本当の男は手を洗わないって言うんですけど、そんな決まりはねえよと思いましたけど。(笑)
(でか美ちゃん)え、どこから影響受けたらその考え方になるの。(笑)
(石山蓮華)なんかこう制服とか軍服とか着てるような役でしたよね。
(町山智浩)そうです。軍人でした。『シェイプ・オブ・ウォーター』でね。で、それのパロディなんですよ。このデニス・クエイドが手を洗わないっていうのは。で、その後ね、すさまじいシーンがあって。デニス・クエイドが手を洗わない手で何をするかというのは映画館でご覧になってください。
(でか美ちゃん)もう嫌だもんね、洗わないだけでね。
(町山智浩)そこ本当に観客から悲鳴が上がりましたね。ひーっ!っていう悲鳴がね。で、まぁこの男が若い子に変えたいって言うもんで、若返り術『サブスタンス』という非常に危険な闇の若返り術にこのデミ・ムーアさんが手を出してしまうんですよ。そうすると、まぁそれもね、どういう風に変わるかというのもね、びっくりするような若返り方をしますんで。もう、ええっ!?みたいな若返り方をしますんでこれも映画館でご覧になっていただいた方がいいんですが。で、その若返ったデミ・ムーアさんがめちゃくちゃ売れちゃうんですね。
(でか美ちゃん)なんて皮肉な。
(町山智浩)でも、若いままになるんじゃなくて、戻らなきゃならないんですよ。一定時間ごとに戻らないとならないんです。
(でか美ちゃん)あぁ、なんかちょっとコナン君みたいなシステムなんですね。
(町山智浩)コナン君みたいなシステムですね。(笑)ただ、そのコナンと違ってですね、若返った間、払わなきゃならない代償があるんですよ。
(石山蓮華)あぁこれは怖いぞ。
若返った間、払わなきゃならない代償がある
(町山智浩)タダでは若返れないんですよ。で、大変な事態になっていくというね、コメディです!
えぇ!ちょっとこれわかんないからな、『異端者の家』に騙されたからな!
(町山智浩)ほんとコメディで。(笑)でも『異端者の家』だってみんな笑ってたでしょ。(笑)
(でか美ちゃん)ちょっとクスってくるとこもありましたけど。
(町山智浩)あったでしょ。ホラーとコメディは一体なんですよ。怖い時に人は笑うでしょ?ひきつって。
私やっぱり緩急のうまさっていうのもすごい感じたから『異端者の家』で。『サブスタンス』も、ね。

(町山智浩)そうなんですよ。えっ、ここでこんなものを出してくる?っていうとことかあったじゃないですか『異端者の家』って。それと同じような感じで、うわっ!怖いものが出るかと思うととんでもないものが出てくるっていうのが次々と繰り返されるのが『サブスタンス』なんですけど。
(石山蓮華)うわ楽しみですね。
(町山智浩)これね、やっぱり若返るっていうテーマをハリウッドに持ってきたっていうのは強烈な事で、デミ・ムーアさん自身がね。ものすごく若いから、どれだけ整形にお金かけてんだって散々言われてる人なんですよ。それで前に紹介した『ベイビーガール』のニコール・キッドマンもそうでしたけど、だったらそれをネタにしちゃうわよっていう映画なんですよ。
(でか美ちゃん)いや強いよな。
(石山蓮華)自分自身の仕事とかいる業界に対しての批判って事ですよね。
(でか美ちゃん)誰がこれを求めたんだよって話ですよね。
(町山智浩)その通りです。あんた達が若くないと仕事をやらないって言うから私達一生懸命やってるのよ!っていう事ですね。で、しかもデミ・ムーア自身がこの映画をプロデュースしています。
(でか美ちゃん)すごいな、かっこいいな。
(町山智浩)でね、監督・脚本は女性です。だから『ベイビーガール』が全くそうだったんですよ。で、ニコール・キッドマンもデミ・ムーアも、もう60歳前後の人達、女優さんっていうのはハリウッドでは放っておくと仕事が来ないんですよ。60歳前後でもね、ブラッド・ピットとかトム・クルーズとか普通に仕事してるのに、女性はそのぐらいになると仕事がなくなっちゃう。だったら私が自分でお金出すわ!っていう世界ですね。
で、これ監督さんがですね、コラリー・ファルジャという女性なんですが、この人も元女優だったんですよ。で、監督に転身したのは、もう女優としては歳取ったから仕事がないよって言われたからなんです。で、頭にきたんでその時の怒りをぶつけた映画になってるんですよ。でね、その怒りを、要するに映画の業界人の、自分達が平気でジジイやってるくせに、女性ばっかり若さを求めていくというそのジジイ達に対する怒りっていうのをぶつけるという風に言ったんですけど、本当に物質的にぶつけます。この映画は。(笑)すごい事態になってますよ後半。もう怒り爆発っていう映画になってますから。
怒り爆発っていう映画
(石山蓮華)なんかそのこう、私は女性としてこう芸能の仕事まぁ細々こうやらせてもらってますけど、やっぱり年齢のこの差、ジェンダーによる差っていうのが全く違うので、なんか、近い立場にある人、芸能の仕事してなくても、いやなんか、この職場、どんどん年上の女性が首切られてるなみたいなところの経験のある方はスッキリするかもしれませんね。
(町山智浩)スッキリしますよ。これ、言えないですけど、後半怪獣映画になりますからね。言ってるだろうお前。(笑)
(でか美ちゃん)なんか私も、次34になるんですけど、無理して若い状態でいたいっていう願望はあんまりない方だけど、まぁやっぱり、なんかここにこんなシミあったっけとかシワあったっけって思うと同時に同級生とかに地元帰って会った時に、同級生と比べて自分のほうが若く見えるっていう意味じゃなくて、髪ピンクの34歳って地元にはいないんですよ。(笑)なんか、フラフラ生きてるんだな自分っていうなんか焦りとか、あとまぁ納得してね、この仕事してますから、髪ピンクにできる職でよかったって思う部分もあるし、なんかやっぱ変な世界で仕事してるんだなっていうのは結構思うんで。世界観の規模が違うけど、ハリウッドってなると。なんとなく共感しちゃう部分はありそう。
(町山智浩)そういうシーンがありますこの映画で。このデミ・ムーアがね、まぁ本当にもう若くてその年齢に見えない人でそれで生きてるんですけど。ある日ふとですね昔の同級生と出会うんですよ。そしたら昔の同級生がですね、普通の歳の取り方をしてるんで、おじいさんになってるんですよ。
で、それは一種の鏡であって、本当はこうなってるんだよっていうものを見せられるんですね。普通に生きてたら。そこがね、すごく彼女が、そのまま老いを受け入れるか受け入れないかのね分岐点なんですよ。ここが怖いんですよ。これ結構ね、芸能人の話ではあるんですけど、今もうみんな一生懸命若くなろうとするじゃないですか。
(でか美ちゃん)そうですね。男女・・男性も結構そういう人増えたなって気が私は個人的にしています。
(町山智浩)そうですよ。もう男の人実は結構整形してる人多いですよ。シワとかね、色んな形でね。それが悪いとかそういうんじゃなくて、この映画の中では、それでもいいけれども。いつか現実が追いつくよっていう話なんですよ。
(でか美ちゃん)まぁね、なんか自分の意思の若返る術とか整形って私も別にいいと思うんですけど、誰からの影響でそうなったのかって考えると、そろそろやめておけばって思っちゃう時とかもやっぱあるから、人を見てて。
(町山智浩)そうですよね。この『サブスタンス』という若返り術の注意書きがあるんですよ。それは、誰も自分自身から逃げる事はできないって書いてあるんです。
(でか美ちゃん)やめてよ、なんでそんな事急に言うの。(笑)
(町山智浩)うわぁ〜みたいな話で。(笑)でもある種のね、解放感があって。最後ある種のハッピーエンドじゃないかなと思うんですけど。もう何もかもぶちまけてめちゃくちゃにしちゃいますからもう。すごいですよ。大破壊になってきて。あのね、これねCG使ってないとこもいいです。いわゆる特殊メイクでやってます。
(でか美ちゃん)だからメイキャップ賞取ってるんだ、ヘアスタイリング賞。
(町山智浩)そうなんです。デミ・ムーアさんがスターだった頃に世界でですね、スプラッター映画というものが流行って特殊メイクでものすごい人体破壊とか怪物を出す、作りあげるという映画が流行ってたんですが、その頃の技術を使ってます。大変な事になりますから。これ再来週公開かな?日本では。
(石山蓮華)そうです、来週5月16日金曜日公開の映画『サブスタンス』、ご紹介いただきました。
※書き起こし終わり
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④かつてスターだった女優さんが、禁断の若返り術に手を出してしまうというホラー映画