ダークナイトの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/) で、
クリストファー・ノーラン監督の作品「ダークナイト」のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『ダークナイト解』説レビューの概要
①興行収入は歴史に残る『ダークナイト』
②とても子供が観られる内容ではない映画
③命懸けで演じた役、○○○○○!
④漫画の映画以外ほとんどお金が出ない!?
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。 TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『ダークナイト』町山さんの評価とは
(町山智浩)
はい、なんかね、日本ではもう先週公開になっちゃった映画なんですけども。『ダークナイト』っていう映画ですね。
(小西克哉)
まだ観てないんですよ、僕は。
(町山智浩)
まだ観てないんですか?
(小西克哉)
まだ観てないんですよ。
(町山智浩)
松本さんもですか?
(松本ともこ)
まだですね〜。
(町山智浩)
えっと、今日ちょっとこの話をしようと思ったのはですね、えっと・・昨日になるんですけども。アメリカ時間だと。
4週連続でナンバーワンになったんですよ、この映画。『ダークナイト』は。
(小西克哉)
ほ〜。
ダークナイト、アメリカでは4週連続ナンバーワンに。
(町山智浩)
これで興行成績がですね、興行収入が4億4000万ドル、440億円ですか。
(松本ともこ)
すごいですね〜。
(町山智浩)
実は史上第二位なんですよ。
(小西克哉)
へー!
(町山智浩)
これ第二位が『スターウォーズ』で4億6000万ドルだったんですけど、今週中に確実に抜くんですね。
だから、すごい映画なんで。物凄いことになって、歴史に残ることになっちゃったんで。
(小西克哉)
すごいね!ちなみに歴代一位は『タイタニック』なんですね?
歴代1位タイタニックに続き、2位の興行収入に!
(町山智浩)
『タイタニック』です。『タイタニック』はでもね、6億ドル以上なんで、ちょっと及ばないんですよ。
これはもう桁違いなんですよ、はい。
(小西克哉)
なるほど〜。
(町山智浩)
一応歴史的には、『スターウォーズ』を抜いたってことは、大変なもんなんで。
(小西克哉)
大変なもんですね。
(町山智浩)
一応映画評論家としては論じないとまずいよっていう。
(小西克哉)
そりゃそうですよね。
(町山智浩)
そんな個人的な問題がありましてね。論じたいというかですね・・
(小西克哉)
これ夏休み映画みたいな感じで、家族そろってとか、子供も一緒にって感じで皆観てるんですか?
(町山智浩)
そんな感じだと思いますよね。『バットマン』って。
(小西克哉)
思います。
(町山智浩)
『バットマン』って小西さんとか僕の世代はテレビですよね。
『バットマン』
(小西克哉)
そうそうそう、テレビシリーズで。僕、何チャンネルか忘れちゃいましたけど。
ずっと観てましたよ。
(町山智浩)
あれロイ・ジェームズさんがナレーションやってましたよ。
(小西克哉)
あーロイ・ジェームズさん、懐かしいな〜。
(町山智浩)
懐かしいでしょ?必ずね、「来週もこのバットタイム!バットチャンネルで!」って言うのがね。
(小西克哉)
はいはい、ありました。
(町山智浩)
すごいかっこ良くてですね。
(小西克哉)
白黒のね。うん。
(町山智浩)
ちょっと英語っぽいなまりっていうか。あの人アメリカ人じゃなかったらしいですよね。
(小西克哉)
そうらしいですよね。
(町山智浩)
ロシア人かなんかですけども。
こうなんかモダンなね、かっこ良かったんでね、覚えてるんですけども。
(小西克哉)
そう。
マンガのような演出があったバットマン
(町山智浩)
ただ覚えてますか?あの番組ってバットマンが悪い奴を殴ると漫画の字でバンッとか出るの。
(小西克哉)
出る出る出る出る!こう、吹き出しみたいな。
(町山智浩)
でもってバカバカしいんですよ。
(小西克哉)
あ、ちょっと滑稽な感じがあるんだよね。
(町山智浩)
漫画みたいだったでしょ?本当に。それが楽しいもんだと思ってたんですよ僕。『バッドマン』っていうのは、子供の頃。
(小西克哉)
僕もそう思って観てましたね。
実は『バットマン』は危険な内容を取り扱っている
(町山智浩)
でもね、実は物凄い『バットマン』ってのは非常に、その、論争を巻き起こすような、非常に暗くてですね。危険な内容を扱った作品なんですね、『バッドマン』っていうのは。シリーズそのものが。
(小西克哉)
んーなるほど。
(町山智浩)
その話を今日は説明しようと思いまして。
で、今回の『ダークナイト』っていう新作映画はですね、映画館に行ったんですけども、子供なんか誰もいませんよ、もう。全然いないですね、大人だけですよ。
(小西克哉)
えー。
(町山智浩)
でね、まぁ観てわかったんですけども、子供が見られるような内容じゃないんですよ、全然。
(小西克哉)
ほう。
ダークナイトは子供が見られる内容ではない
(町山智浩)
これね、悪役が出てくるんですけども。ジョーカーっていう男なんですね。
(小西克哉)
ジョーカーねぇ。
(町山智浩)
トランプのジョーカーあるじゃないですか。あれと同じ顔してて。顔が笑ってる訳ですけど。
よく見ると笑ってるんじゃなくて、口の端をナイフで切り裂いてるんですよ、自分で。
(小西克哉)
えー。
(町山智浩)
だからこう・・ちょっと頭が壊れちゃった人なんですね。
このジョーカーは悪いことをするんですけれど、お金とかが目的じゃなくて。
ただ沢山人を殺したいだけの人なんですよ。
(小西克哉)
はぁ。
(町山智浩)
だからもう、これ観てると、もう子供が観れる物じゃないですよね。聞いてるだけで。
(松本ともこ)
そうですね。
(小西克哉)
そうですよね、物騒すぎる。
ジョーカーは子供向けではない
(町山智浩)
ナイフでね、人の口を切り裂くのが好きなんですよ。
(小西克哉)
えー!
(町山智浩)
「お前をこうしてやる。ケケケケ!」とか言いながら。
これ子供観れないっていうか、眠れないよこれ。
(小西克哉)
切り裂きジャックならぬ切り裂きジョーカーですね。
(町山智浩)
そうなんですよ。全く理由がなくて沢山人を殺すんですけど。ただ面白いからやってるっていうとんでもない人なんですけど。
(小西克哉)
快楽無差別殺人って話ですか?
(町山智浩)
そうなんですよ。だからこれは子供が観るとかいう枠超えちゃってるんで。
(小西克哉)
これなんか、レーティングとかクラス分けはどうなってるんですか?
ダークナイトのレーティングはPG-13
(町山智浩)
これはPG-13っていう中学生以上は観れるっていう設定になってるんですけども。
まぁ中学生だったら観れるかもしれないですけどね。
これだと小学生も、無理して入る子供もいるんでね、非常によくないだろうとは言われているんですけども。
(小西克哉)
これ中学生なら両親なしで入れるんですか?
(町山智浩)
中学生以上だったら・・14歳以上だったら両親なしでも入れるんですよ。
(小西克哉)
あー14歳以上だったらね。
(町山智浩)
はいはいはい。でもまぁ親がこういうの連れてかないだろうと思うんですけど。
でこれね、ジョーカーを演じている男はですね、俳優はですね、ヒース・レジャーくんという俳優なんですが。
今年の1月に28歳で死んだ人なんですね。
(小西克哉)
そうですよね。あまり日本ではニュースには大きくならなかったですけどね。
(町山智浩)
あぁそうですか。アメリカでは結構大ニュースになったんですよ。
(小西克哉)
うんうんうん。
ジョーカーを演じたヒース・レジャーは亡くなっている
(町山智浩)
で、すごくこの人は俳優として若手でははっきり言って一番だったんですね。
この人『ブロークバック・マウンテン』でホモじゃないのに、男同士のセックスにハマってしまうカーボーイの役を演じた人です。
覚えてますか?
(松本ともこ)
忘れられないですよ。名演だもん名演。
(町山智浩)
物凄く男らしくてね。
(小西克哉)
綺麗なお尻してますよね〜。
(松本ともこ)
覚えてます。
(町山智浩)
濃厚なキスシーンとかね。
(小西克哉)
お尻も本当にツルツルしちゃっててね。
(町山智浩)
そうそうそうそう、セックスシーンとか良かったんですけども。
あれを演じてた人がですね、要するにまぁ、あれぐらいやった人なんで、すごい演技派だったのにも関わらず、死んじゃったんで。
大きな損失だって言われてるんですけども。
(小西克哉)
うん。
死因はジョーカー?
(町山智浩)
ただ死んだ理由ってのがどうもこのジョーカーを演じたからだと言われてるんですよ。
(小西克哉)
本当ですか?
(町山智浩)
っていうのはね、ジョーカーを演じるためにも完全に精神が壊れた人を演じるために、本当にその役に入りすぎちゃって。でもって、もう眠れなくなっちゃったんですよ。もう躁状態。躁病なんですね、ジョーカーっていう男は。
(小西克哉)
ジョーカーって躁病みたいな感じなんですか?
(町山智浩)
そう、いつもケラケラ笑ってるんで。人殺してるんで。
そうやってるうちに眠れなくなって。睡眠薬とか精神安定剤とか飲んで、普通の人間に戻ろうとしたけど戻れなくて、そのまま薬物中毒で死んだと言われてるんですよ。
(小西克哉)
あらー。
命がけでジョーカーを演じた
(町山智浩)
もう薬物に入っちゃって。頭おかしくなっちゃったんですね。
だから、それくらい命懸けでやったってことでまずお客さんが注目してたってことがあるんですよ。
(小西克哉)
そうですねぇ。
(町山智浩)
で、多分これでアカデミー賞獲るだろうと言われているんですよ、彼は。
(松本ともこ)
あー亡くなってから。
(小西克哉)
助演男優賞くらいなのかな?
(町山智浩)
助演男優賞ですね。で、すでに亡くなった人がアカデミー賞受賞したってのは過去に『ネットワーク』でピーター・フィンチっていう人が獲ったんですね。
それ以来だろうって言われてて。でですね、これを観て驚いたのが、なんでアメリカでこんなに大ヒットするんだろうって。国民的大ヒットになってるんですよ。
(小西克哉)
まぁ確かにこんな暗い映画で、アメリカ人が好みそうじゃないって普通思いますよね。
(町山智浩)
今まで大ヒットしてきた映画の中でこんなに暗い映画ってのは数少ないですからね。
(小西克哉)
『タイタニック』も『スターウォーズ』も、別に暗くはないもんね。
ジョーカーが無差別殺人をする理由
(町山智浩)
そうですよね。『スターウォーズ』は全然暗くないですけど。えっと、このジョーカーっていうのは無差別殺人をする理由てのがですね、人間ていうのを試そうとするんですよ。
(小西克哉)
ん?
(町山智浩)
例えば、小西さんと松本さんに爆弾を仕掛けるんですよ。
(小西克哉)
はい。
(町山智浩)
で、起爆装置を小西さんと松本さんに持たせるんですよ。
(小西克哉)
はぁ。
(町山智浩)
で、これは互いの爆弾を爆発させると。で相手を先に爆発させた方を助けてやるっていうんですよ。
(松本ともこ)
試すんだ。
(小西克哉)
すごい拷問ですね。
ジョーカーの仕掛ける罠
(町山智浩)
すごいですよ。押したら自分は助かるけど、自分は人としてやったらいけないことをしちゃうんですよ。
こういうことを普通の人に仕掛けていくんですよ。
だからこのジョーカーっていうのはね、『ファウスト』っていう有名な話ですね、ゲーテのね。
あれにおける悪魔のメフィストーフェレスってね、悪魔ですけど。あれは人間の良心をとことん試していくんですよね。
(小西克哉)
そうねぇ。
(町山智浩)
だからそういうキャラクターなんですよ。人間の愛とか友情とかを全部破壊していこうとする男なんですね。
(小西克哉)
これあれですか?原作はDCコミックですよね?
(町山智浩)
そうです。
(小西克哉)
原作にもそういうキャラクターとして登場してるんですか?
ダークナイトの原作
(町山智浩)
これがね、実は原作っていうのはですね、本質的には恐ろしい話だったんですけど、その話をちょっとしますと、
1983年にボブ・ケインっていう漫画家が『バットマン』っていう漫画を作ったんですね。
キャラクターを、漫画の中で。
ところがそれが最初はですね、バットマンって正義の味方って言って、人をバーンって殴ってやっつけて終わりじゃなくて。
警察がどうしても逮捕しても有罪にできない犯人とかを、勝手に殺す処刑人だったんですよ。
(小西克哉)
あー。アメリカではよくありますよね、そういう・・
(町山智浩)
ビジランテっていうの。
(小西克哉)
自警団みたいな形のね。
(町山智浩)
まぁ昔から人をリンチしていた国ですから。
(小西克哉)
そうそうそう。
バットマンは処刑人だった
(町山智浩)
実際に刑務所から人を出して処刑してた国なんでね、アメリカっていうのは。
それがバットマンだったんですけど。
これはやっぱり漫画としては酷すぎるってことで、だんだん弱まって正義のヒーローに普通になってったんですけど。
1986年になってですね、フランク・ミラーっていう漫画家が『バッドマン』の原点に戻ろうよって言ってですね。
『ダークナイト・リターンズ』っていう劇画を描いたんですよ。
(小西克哉)
ほう。
(町山智浩)
それがすごい内容でですね。やっぱりジョーカーが出てくるんですけども。
そのジョーカーっていうのは要するに、逮捕してもアメリカの法律だと死刑にできないんですね。
(小西克哉)
ん?どうしてですか?
ジョーカーはアメリカの法律だと死刑に出来ない
(町山智浩)
これは精神異常だからですよ。
(小西克哉)
あーそうかそうかそうか。なるほどなるほど。
(町山智浩)
要するに日本だと刑法39条ってやつで。心身薄弱者の行為はこれを罰せずっていうのがあるんで。
(小西克哉)
心身薄弱ですよね。
(町山智浩)
で、ジョーカーっていうのは何回バッドマンが捕まえても精神病院に入って出てきて悪いことしてるんですよ。
(小西克哉)
なるほど〜。
(町山智浩)
この話の中で、『ダークナイト・リターンズ』の中で、とうとうバッドマンがもうダメだと。
もう我慢できないって言ってジョーカーを絞め殺しちゃうんですよ。グーって。
で、完全にもうこうなると正義のヒーローとしての枠は超えちゃってて。でもって大論争になったんですけど、この本が出た時に。
(松本ともこ)
そうですよね。
バットマンVSスーパーマン
(町山智浩)
この本の中でですね、当時レーガン政権だったんですけどね、レーガン大統領も出てくるんですよ。
バットマンのやっていることは法に対する挑戦だと。国家権力に対する挑戦だと。これは許すわけにはいかないと。
でもバットマンと戦ってもアメリカが勝てるか分からないから、スーパーマンを雇うんですよ。
(小西克哉)
出ましたね〜。
(町山智浩)
で、レーガン大統領はスーパーマンに、頼むからバットマンを殺してくれって言うんですよ。
(小西克哉)
スーパーマン対バットマン。
(町山智浩)
そうなんですよ。それが『ダークナイト・リターンズ』って言う漫画で論争を呼ぶっていうか・・非常に危険な話なんですね。内容的には。
(小西克哉)
それがいわゆるDCコミックの・・と言えるのかな?
DCコミックのリバイバル
(町山智浩)
そう、リバイバルしたんです。
要するに非常に危険な大人向けの『バッドマン』をやったことで、『バットマン』がリニューアルして、そこから『バットマン』の映画化ブームってのが続いてるんですね。
ただ今回の『バットマン』っていうのは今までの『バットマン』と違って、全く・・普通秘密兵器出したりするじゃないですか?
(小西克哉)
そうですね。
ほとんどリアルな犯罪ドラマ
(町山智浩)
それが一箇所しか出てこなくて。ほとんどリアルな犯罪ドラマみたいになってるんですよ。
もう漫画っぽいところがなくてですね。ギャグもない、ただ陰惨な殺人者と法律を取り締まる側バットマンの追いかけっこが永遠に続くというですね。
2時間半全くギャグなしっていうね。重い映画なんですよ。
(小西克哉)
日本ではそんな感じで宣伝されてるんですか?僕あんまり観てないんだけど。
(町山智浩)
多分行った人は結構びっくりして。
(小西克哉)
そうだよね。
(町山智浩)
あまりにも陰惨な内容でね、度肝を抜かれるんじゃないかと思うんですけど。
(小西克哉)
先週の興行はどうだったんですかね。
アメリカでのヒットの理由が論争に
(町山智浩)
日本の方はまだ分からないですけど、アメリカの方は空前の大ヒットで。
なんでこんなヒットしてるんだとアメリカ人同士もよく分からなくて論争してますね。
バッドマンがジョーカーを捕まえるために全ての市民の電話を盗聴するっていうシーンがあるんですよ。
(小西克哉)
おー!出ちゃいましたね。
(町山智浩)
それを観てね、ウォール・ストリート・ジャーナルはなんと社説でですね、
オピニオンのページで、「バットマンがやっていることはブッシュ大統領がやっていることと同じである。」と。
「皆ブッシュは嫌いだけどバットマンは好きだろう。だったら皆ブッシュを好きになれ。」って社説を書いたんです。
(小西克哉)
辛いよね、ウォール・ストリート・ジャーナルはね。
(町山智浩)
バットマンのコウモリのシンボルマークは、ブッシュのWのマークによく似てるじゃないかとか、ちょっと訳わかんないこと書いて。
(小西克哉)
断末魔だね、ウォール・ストリート・ジャーナルも。
(町山智浩)
何書いてるんだ、ウォール・ストリート・ジャーナルはと思いましたけど。
それくらいね、なんでこんなに当たってるか分からないっていうね。
(小西克哉)
最近でもあれですよね、ワシントンポストのNYタイムズの記者が、自宅のプライベートな電話を盗聴されていたってことが分かって。
FBIかなんか謝りましたよね、確か。
(町山智浩)
あんなね、ブッシュ政権べったりな人たちがね。あ、ワシントンポストは違いますけど。
ウォール・ストリートジャーナルはブッシュ政権べったりですからね。特にフォックスが買い取りましたからね。
(小西克哉)
NYタイムズね。
(町山智浩)
NYタイムズ、ワシントンポストは大左翼メディアですから。やられるかもしれないですけど。
(小西克哉)
そういうことですよ。
バットマンはアカデミー賞作品賞候補に?
(町山智浩)
でね、『バットマン』の今回言われてるのはね、アカデミー賞作品賞候補になるんじゃないかと言われているんですね。
(小西克哉)
この『バッドマン』が。リターンズじゃないや、『ダークナイト』がね。
(町山智浩)
どうしてかっていうと、この間も話したんですが、今ハリウッドってのはコミックが原作以外の映画ってのが作れなくなっているんですね。
お金が出ないと。資本が出ないと。そうするといい映画が作れないと。
でも『ダークナイト 』は多分ね、お金が漫画映画じゃないと出ないんだったら、お金だけ貰っといて物凄い大人向けの厳しい映画を作ろうとしたみたいですね。
(小西克哉)
あーそうかぁ。もともとはデジコミックだからお金は必ず付くと。金だけ貰っといて内容はもう我々の好きな映画を作りたいと。
(町山智浩)
そうなんですよ。
(小西克哉)
ははぁ。
(町山智浩)
でも甘いところは全然なくて。ラブストーリーなんかも全然ないんですけども。
しかもヒロインは断殺されちゃうしね、すごい映画なんですけど。
ただこれは多分ね、バットマンさえ出しとけば、あとは俺たちのやりたいことやれば良いって世界になってきてるんですね。
(小西克哉)
なるほど。
(町山智浩)
だから抜け道として今回これが成功したんで、ぞろぞろ出てくると思いますね。
(小西克哉)
漫画原作で蓋を開けてみると物凄いシリアスなんだ。
バットマンの主張
(町山智浩)
物凄い内容とかね。たぶんね、こういう暗い映画が大ヒットしたのって1970年代の初めだけなんですね、アメリカって。
1970年代って非常に暗い映画が当たってますよね。『ゴッドファーザー』とかもそうですけども。
あれはそういう時代だったんですよね。ベトナム戦争に負けたりして。
(小西克哉)
やっぱり外で起きたことをアメリカ人が内省的にちょっと見つめていこうという感じですもんね。
(町山智浩)
そうなんです。だから多分今回の『バットマン』の主張もそういったことに関係してると思うんですけど。
ただ日本もね実は映画作りの状況って同じになってて。漫画の映画以外ほとんどお金が出ないんですよね。
テレビの映画と漫画の映画化以外ね。アメリカと全く状況同じなんですが。
ただ日本の方が酷いんですよ、漫画の映画化の内容が。
(小西克哉)
内容がね。
(町山智浩)
今ね、手塚治虫の「ムー」っていう映画をね、玉木宏主演で映画化しようとしてるんですけどね、これが『ダークナイト』に非常によく似た感じでですね。
ジョーカーにそっくりな人が主人公なんですよ。やっぱり愉快犯で大量殺人鬼なんですね、玉木宏が演じるのがね。
(小西克哉)
うん。
(町山智浩)
で、やっぱり人間の良心を試すことが楽しくて仕方ない男なんですね。悪魔だから。
ただね彼の武器っていうのはセックスなんですよ。男なんですけど美少年なんで。ありとあらゆる男たちを次々と誘惑してはセックスの地獄に陥れてくっていう男なんですよ、原作ではね。
男が男をセックスで虜にしてくっていう役を玉木宏が演じるって聞いたらすごいでしょ!観たいでしょ?
(松本ともこ)
美少年だし。
『ムー』の映画化
(町山智浩)
ところがその『ムー』の映画化に関しては同性愛の部分をなくすっていうんですよ、映画化に際して。日本の映画作る連中が。
(小西克哉)
じゃあどうやって原作のポイントを伝えるんですか?
(町山智浩)
分からない!最高の売りの部分を捨てるっていうんですよ。
(小西克哉)
はぁ〜。
(町山智浩)
多分、玉木くんがダメだっていったんじゃないかと思うんですよ。分からないですけど。
玉木だけどタマキンはダメって言ったのかもしれないですけど。
(松本ともこ)
コリャ!
玉木だけどタマキンはダメ!(笑)
(町山智浩)
ただね、要するにヒース・レジャーは『ダークナイト』でね、自分の命と引き換えに漫画の役を演じたんですよ。
漫画の役を演じるために死んだ男がいるのにね、ハリウッドでは。
(小西克哉)
命懸けたってことだもんね。
(町山智浩)
そうですよ、そんなチンコ舐めるくらい、どってことないだろ、玉木!って思いますね。
皆喜ぶんだし。女の子も皆喜ぶんだし。今からでも遅くないですよ、でも。
(松本ともこ)
でも彼が演じようとしても周りが止める可能性があります、日本はね。
(町山智浩)
でも女のファンたちが皆、「玉木くんやって〜」って言えば良いんですよね。
みんな喜んで観るはずなんで。
(小西克哉)
松本さん、ちょっと言ってよ〜
(松本ともこ)
私もじゃあ叫んでみますよ。
(町山智浩)
ヒース・レジャーが死んでるんだからね。
命懸けでやってる男のために絶対ね、玉くらい平気で頑張ろうってね。
玉で盛り上がる町山さん
(小西克哉)
玉くらい我慢しろよ、お前はみたいなね。
この日米の差は本当ちょっとね・・絶望的な差がありますね。
(町山智浩)
状況は同じなんですよ。漫画映画しか作れないからね。
ただ漫画映画作るって言っても日本は『デビルマン』になっちゃうんですよ。
アメリカは『バットマン』なんですよ。その差ですよ。
(小西克哉)
なるほどなぁ〜。
ちなみにピクサーの『ウォーリー』も作品賞候補って前回おっしゃってたんですけど。
(町山智浩)
そう、漫画映画ばっかりなんですよ。
(小西克哉)
『ウォーリー』『ダークナイト』両方対決って感じですね。
(町山智浩)
物凄い子供祭りみたいになってるから。
(小西克哉)
でも内容はちょっと違うぞと。
(松本ともこ)
うーん。『ダークナイト』はちょっと心して行ってみます。
(小西克哉)
どうもありがとうございました。
(町山智浩)
どうもでした!
<書き起こしおわり>
〇〇に入る言葉のこたえ
③命懸けで演じた役は『ジョーカー』でした!