ダンケルクの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)
で、『ダンケルク』のネタバレなし解説を紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『ダンケルク』解説レビューの概要
①ダンケルク撤退作戦という、戦争の始まりの時にあった有名な戦いを描いた映画。
②陸上にいる兵隊が空撃を避け船に乗れるのか?という話。
③1時間しか飛べない飛行機に乗ったパイロットがフランスに辿り着けるか?という話。
④戦闘機や潜水艦が攻撃している中を突っ込んでいくポンポン船の船長の話。
⑤上記3つの話が同時に進むのがこの『ダンケルク』という話。
⑥クリストファー・ノーラン監督はCGが大嫌いで、ものすごい人数が並んでいる映像は○○○○で作られていた。
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
(町山智浩)
今日はですね、一昨日アメリカで公開されてですね、驚きの大ヒットをしているですね映画、『ダンケルク』についてお話します。これはですね、1940年5月20日から6月4日にかけてあったダンケルク撤退作戦というですね、まぁ戦争の始まりの時にあった有名な戦いを描いた映画なんですけども。
(山里亮太)
はい!
(町山智浩)
今アメリカって夏休み映画のシーズンなんですよ。だからみんなスーパーヒーローとか怪獣物とか色んな有名な作品の続編とかですね、夏休みっぽい映画ばっかりなんですよね?アニメとか。だから、こんな昔の第2次大戦の映画で。一応スターはトム・ハーディっていう『マッド・マックス』の人は出てるんですけども。トム・ハーディって別にヒットメーカーじゃないんですよ。
(山里亮太)
あ、そうなんですか?
(海保知里)
でもっ、結構出ていますよね?
(町山智浩)
出ているんだけど、お客さんを呼べるスターじゃないんですね。
(山里亮太)
なるほど。
(海保知里)
そっかぁ〜・・
(町山智浩)
だから、これでアメコミ物でもないし、スーパーヒーロー物でもないし、まさかヒットすると思わなかったから、もうびっくりするぐらいヒットしているんですよ。で、どういう映画かは今日はお話していきます。
(山里亮太)
はい!
(町山智浩)
これは今のアメリカ映画とか世界的な映画の流れにこう逆らうような映画なんでそこが面白いんですね。これね、ダンケルク作戦っていうのはね、ダンケルクっていう海岸というか海水浴場があるんですよ。フランスとイギリスって向かい合っているじゃないですか。で、その英仏海峡のフランス側のとこにあるダンケルク海岸という所でですね、そこにイギリス軍とフランス軍がナチス・ドイツ軍に追い詰められて、そのまま殺されちゃうと。いう事態になりまして、40万人追い詰められましてて。それをですね、船でイギリスまで撤退させたという事件なんですね。まぁ作戦なんですね!
(海保知里)
えぇえぇ。
(町山智浩)
で、ダンケルク作戦っていうのは、ダンケルクの奇跡の撤退というのは、世界の歴史に残る作戦だったんですが、これは最初から話し始めますとですね、まずドイツ軍が国境を超えて隣にあるフランスにいきなり入ってくるんですね?で、すごく防衛線をきっちり張っていたんですけども、そこじゃなくて避けて入ってきたんですよドイツ軍が。(笑)オランダの方から。で、でも入ってきても防げると思ったらドイツ軍はものすごいですね、機動力を使って、自動車と戦車と飛行機で一気にグッと内側まで入ってきちゃったんですよ、フランスの。で、その時イギリスもフランスに支援の部隊を送ってたんですけども、一気に押されちゃって、40万人ずっと海の端っこの方まで追い詰められちゃうんですね?で、これをどうやって脱出させるか?という話になるんですけども。
まあ結果から言うとですね、33万8千人、救出しているんですよ。これはすごい奇跡的な事だったんですけれども、それを今回クリストファー・ノーランという監督が映画化しました。はい。で、クリストファー・ノーランという監督は、この人は『バットマン』シリーズであるとか『インターステラー』とか『インセプション』とかで非常に人気の監督なんですけども、『インセプション』を除いてはですね、この人はこだわりがある人なんですよ。
(海保知里)
なんですか?
(町山智浩)
コンピュータグラフィックスが大嫌いなんです。
(海保知里)
あー・・そっかぁ。
(山里亮太)
CG!
(町山智浩)
はい。「CGを使わない」っていうのがこの人の主義で、『インセプション』は一応使ってはいるんですけど、例えば『インセプション』の中で列車が普通の道路に飛び出してきて、アクションになるという所は本当に列車にタイヤを付けて普通の道路を走らせたりしていますし、あの『バットマン』で『ダークナイト』で有名な巨大トレーラーがシカゴの街でひっくり返るシーンがあるんですけど、あれも本当に巨大トレーラーをひっくり返しているんですよ。
(山里亮太)
へー!!
(町山智浩)
それをやるのと、あともう1つ、この人、クリストファー・ノーラン監督にはこだわりがあって、デジタルカメラが大嫌いなんですよ。
(海保知里)
あぁそうなんだー!
(町山智浩)
今、アメリカの映画って日本の映画もそうですけど殆どデジタルカメラで撮影されてるんですよ。ところがこの人は昔ながらのフィルムで撮影する事にこだわり続けているんですね?で、コンピュータグラフィックスも使わないし、デジタルカメラも使わないで戦争映画を撮るっていうのはこれ大変な事なんですよ。
(山里亮太)
そうですよね!戦闘機とかもあるし。
(海保知里)
ねー!ですよ。どうするんだろう?
(町山智浩)
75年も前の大昔の戦闘をフィルムとCGなしでやるってのはどうするかっていうと、本物の戦闘機を使って本物の軍艦を使って撮影するしかないんですよ。
(山里亮太)
うーお!作るっていう事ですか?
(町山智浩)
そうなんですよ。で、この人は『インターステラー』でも宇宙船のシーンを普通だったら特撮というかCGでやる所を実物大の宇宙船を使って撮っているんですね?
(山里亮太)
はいはいはい。
(町山智浩)
で、今回は実際の戦闘機で、その時の戦闘に参加したのはイギリス軍はスピットファイアっていう戦闘機。で、ドイツ軍はメッサーシュミットっていう戦闘機だったんですけども、これはまだ今も動くのがあるんですね。
(山里亮太)
へー!
(海保知里)
そうなんだ・・。
(町山智浩)
大事に整備されていてまだ動くやつがあるんで、それをスピットファイアは2機借りてきて、メッサーシュミットは同型の物をスペインでフランコ政権がライセンスで作っていたやつを改造して当時のメッサーシュミットに似せたものを1機借りてきて、それで撮っているんですけども。このクリストファー・ノーランがすごいなと思ったのは、これ実際はその時のダンケルクってのは、イギリス軍が140機ぐらい。で、ドイツ軍は150機ぐらい撃墜されるような、それこそ全部で何百機もの戦闘機が空を飛びかう大空中戦だったわけですね、実際は。それをCGなしで撮るのは無理じゃないですか!?
(山里亮太)
そうですね!
(町山智浩)
だから、その、2つだけ戦闘機が借りられたから、2人のパイロットの話に絞り込んじゃったんですよ。
(山里亮太)
はー!そっちを基本に考えたんだ。
(海保知里)
賢い!
(町山智浩)
そう、そのパイロット、トム・ハーディが演じるパイロットだけに集中しているんですよ。で、また戦争映画って事でここのダンケルクに至るまでの色んな事っていうのを描いたりすると、民間人とかも出てこなきゃならないし政治家とかも出てきたりして、まぁ大変なスケールになるじゃないですか。それも、やらないって言ってやってないいんですよ今回は。
(山里亮太)
ほう!
(町山智浩)
いきなりこの映画は1番頭でダンケルクに兵隊達が追い詰められている状態から始まるんです。で一体どうしてそうなったのかとか一切説明がありません。
(海保知里)
あぁそうなんだ!
(町山智浩)
どういう状況なのかって全体を示すような説明も一切ないんですよ。
(山里亮太)
なるほど、歴史で知ってるから。
(町山智浩)
とにかく1人1人の兵隊にカメラがものすごく近づいた状態で取り続けてます。で、これまぁ陸上で追い詰められている兵隊さんがいて、まず1人の兵隊さん、トミーっていう名前の兵隊さんが主人公で、その彼にカメラがずっと密着して彼がどうやってその海岸から脱出して船に乗り込んで逃げる事ができるのかっていうのだけを撮り続ける陸のパートっていうのがあるんですね?歩兵さんのパートがあって。
もう1つ、は空軍のパートで、そのトム・ハーディ扮するパイロットがイギリスから飛び立ってダンケルクまでついて助ける事ができるかどうかっていうパートなんですね?っていうのは、兵隊達を空からドイツ軍がバンバン爆弾を落としたり機銃を撃ったりして、みんな殺そうとしているんですよ、ドイツ軍が。だからそこにイギリス軍が飛行機で飛んでいって、そのドイツ軍の戦闘機を倒してあげないとならないわけですね。
(山里亮太)
そうですね。
(町山智浩)
で、しかもイギリス軍とフランス軍の兵隊達はどんどん船に乗ってくんですけど、船に乗ると今度はそれを戦闘機とか潜水艦とかが沈めにかかってくるんですよ。だからそれを守るために戦闘機が飛んで行くんですけども、1時間しか飛べないんですよ戦闘機が。
(海保知里)
わー・・そうなんだ。。
(町山智浩)
っていうのは、イギリスからフランスに飛んで行くと、大体1時間弱ぐらいらしいんですよ。
(山里亮太)
うわっ、ギリッギリだ!
(町山智浩)
30分とかそんぐらい、ちょっとかかるらしくて。だからもう、着いちゃうと燃料が殆どないというような状態なんですよ。だから時間というか、航続距離、航続時間との戦いになっていくんですね。で、今度は駆逐艦とかが、軍艦が兵隊達を乗せに来るんですけど、そこ海水浴場なんで遠浅なんですよ。ダンケルクって。だから大きい船が近づけないんですよ。だから、長い桟橋を作って。海の沖の方までいく桟橋を作って、そこに兵隊さん達が歩いて、沖の方にいる船に乗らなきゃなんないんですね。長い桟橋を通って。
ところが、桟橋に兵隊さんが並んでいると、そこを桟橋に沿ってドイツ軍の戦闘機が飛んできて、機銃をバーッて撃ってくんですよ。逃げ場は全くないんですよ、桟橋の上だから兵隊達は。ただ撃たれるだけなんですよ。で、それをどうするか?要するに近づけないわけですね大きい船が。で、イギリス中のですね、小っちゃい漁船とかヨットとか、なんか色んな船があるじゃないですか。観光船とか、遊覧船とか。あれが全部、声をかけられた人達が、フランスに向かって助けに行ったんですよ。700隻が行ったんですね。ポンポン船とかですよ。
(海保知里)
すごい数の・・。うん。はいはい。
(町山智浩)
で、大体ね、今フェリーで行くと2時間ぐらいで着く距離なんですね?大型フェリーだと。でもポンポン船だと8時間以上かかるらしいんですよ。
(海保知里)
うわぁ・・はい。
(町山智浩)
それで、なんとか行って、兵隊達を小さい船に乗せて、沖にいる大きい船に運ぶっていうボランティアで、民間人達がそこに参加しまして。で、それに参加した、ある1人のおじいさん、マーク・ライランスが演じているんですけども、彼がそのポンポン船で息子と一緒にフランス目指して船出して、果たして辿り着けるのか?っていう話が1つありまして。さっき言った、1人の兵隊さんが陸上にいる状態と、1時間しか飛べないパイロットがフランスに着けるかっていう話と、ポンポン船でバンバン戦闘機とか潜水艦が攻撃している中を突っ込んでいく、ポンポン船の船長の話。その3つが同時に進むというのが『ダンケルク』という話なんですね。
で、これ、どうしてお客さんがこの映画に殺到したんだろうって思いますよね?
(山里亮太)
はい!
(町山智浩)
これね、戦争とかそういうのに興味ない人でも、ものすごく面白くなるように作っているんですよ映画を。セリフ、殆どないんですこの映画。
(海保知里)
あぁ、そうなんですか!
(町山智浩)
これ、兵隊さんが、もうとにかく船に乗ろうとするんですよ。すると、まぁ機関銃を撃たれて、ひぃひぃ言いながら船に乗ると、今度は船が爆撃されて、沈没して、で船の中で閉じ込められて、そのまま沈んじゃったりするとそのまま死んじゃうんですけど、そこからなんとか脱出して、また海岸に戻って、もう1回別の船に乗ってっていうのを延々と繰り返すんですよ。
(山里亮太)
はい。
(町山智浩)
1人で、3回ぐらい船に乗ろうとしては沈められるっていう状況になるんですね?
(海保知里)
いやぁ〜はい。
(町山智浩)
当時本当にあった事から記録を元に作っている話なんですけど。これ本当にその場にいる感じになるんですよ。自分自身、観客が追い詰められて水に沈められて、海の上で火がボーボー燃えていて、周りがバンバン爆発して、みたいな感覚を観客に感じさせるように撮ってるんですよ。だからその、映画という・・映画ってストーリーがある訳じゃないですか。ストーリーがあって、お話があってっていう風にはなっていないんですよこの映画。
(山里亮太)
へぇ〜!
(町山智浩)
”あなたは1人の兵隊としてこの戦闘に参加しなさい”っていう映画になってるんですよ。だから遊園地のライド物とかバーチャルリアリティーに近い物として作られているんです。
(山里亮太)
はー!
(海保知里)
そうなんだ!
(町山智浩)
だからもう、誰でも見れるんですよ。これは恐ろしい恐怖を体験する映画なんだという事で、若い人も来てるんですよね?で、今後ろでかかっている音楽が、ハンス・ジマーっていう人が作曲したこの『ダンケルク』の音楽なんですけど、時計のチクチクっていう秒針のリズムになってるのがわかりますか?
(山里亮太)
はい!聞こえます。
(町山智浩)
これがずーっと鳴っている状態なんですよ、この映画。
(海保知里)
えーっ!ドキドキしますよね、うん。
(町山智浩)
だって空軍のその飛行機が1時間しか飛べないんですから。それしかないんですよタイムリミットが。というね、2時間の徹底したサスペンス映画としてお客さんは行ってる状態なんですよ。「戦争とかよくわかんないけどぉ〜」みたいな、人達が、結構。で、見て結構びっくりすると。「こんな事があったのか」という感じなんですね。
で、その、スピットファイアとかメッサーシュミットはもう骨董品でものすごい価値がある飛行機なんで、実際に落としたりはできないんですけども、撃墜したりするシーンは、実物大の飛行機に似た物を作ってですね、本当に水に落としたりして撮ってるんですよ。
で、その際はカメラも一緒に沈めたりしてるんですけども、これIMAXというですね、ものすごく大きいフィルムを使うカメラを使って撮影しているんですね?70ミリも幅のあるフィルムなんですけども、1つ1つのコマが。で、これをスピットファイアとかに載せて、実際に空を飛ばして撮影していまして。全然CGを使っていなくて、本当に飛行機が飛んでいるシーンは本当に飛んでいるんですよ。
(山里亮太)
すごいな・・!
(町山智浩)
航空マニアで、片渕監督とか(『この世界の片隅に』)宮崎駿監督とかは、悶絶するような映画になってるんですよ。(笑)飛行機マニアの人とかは。はい。でもね、すごく若い兵隊達が、地獄のような目に遭うっていうのを見ると結構衝撃で。みんなね、18、19の男の子なんですね?
(海保知里)
あ〜・・そうなんだぁ。。
(町山智浩)
で、やっぱり自分が歳を取ってわかるんですけど、18、19の男の子達ってみんな体もできていなくて、やせっぽっちで子供みたいなんですよね、見た目が。それで、何が起こっているか全然わからないんですよ自分達が。どういう目に遭っているのかとか。で、いつ船が助けに来るのかとか。セリフなんかはないのは話す事もない訳ですよ彼らは。悲鳴ぐらいしかセリフがないんですけど。で、船に乗ると今度はどんどん沈んでいっちゃう訳ですからそれが。穴が開いて。
(海保知里)
いやー・・。
(町山智浩)
というね、これはすごくて。まぁ、暑い夏に見るとすごい映画なんですけど。日本だとね、9月9日公開でね、もうちょっと早くすればいいのにって思いますけど。
(海保知里)
ねぇ。
(町山智浩)
でね、これ見てね、すごく興味を持った人達が色々と調べてて。アメリカとかイギリスでこのダンケルクの戦いというのが非常に注目されてきてるんですけども。これで結局、イギリスが負けて撤退する訳ですよね、ヨーロッパから。フランスと一緒に。で、ドイツはその後、ヒットラーがフランスを完全に占領しちゃう訳ですよ。で一種の負け戦なんですけども、これで兵隊達を助けた事で、イギリスと連合軍はドイツに勝つ事ができたんで、勝利の為の撤退作戦として非常に今評価されているんですが。1番大きかったのは、民間人が船で助けたという事なんですよ。
(山里亮太)
はぁはぁはぁ、漁船とかでね。
(町山智浩)
救出作戦に普通の漁師さんとか、遊覧船の船長とかも参加したという事なんですね?それがイギリス人にとって軍と民が一体となる国民の一体感をもたらして、「ダンケルクを忘れるな」「ダンケルク魂」っていう言葉が言われて、そのダンケルク魂で戦争に勝っていったという事が1つ大きいんですね。
(山里亮太)
ふーん!
(町山智浩)
で、もう1つはね、やっぱり兵器とかよりも大事なのは、若者の命だっていう事なんですよ。フランスがなんでドイツにあっさり占領されてしまったかっていうと、1番の理由はフランス人の人口がその時少なかったんですよ。フランスってナポレオン戦争の時にすごく大陸軍っていうのを使って、若者達を全部戦争に送り込んだんですね?で、その影響って第2次大戦までずっと続くんですよ、フランスって。国民の数が少ないっていう問題が。
(海保知里)
へぇ〜・・。
(町山智浩)
若者が少ないという問題が。だからフランスってずっと少子化政策っていうのを必死にやっているんですよ、ドイツに占領されちゃっているから。
(山里亮太)
はぁ。それなんだ、今のやつってね。
(町山智浩)
ね?それで、この『ダンケルク』は「とにかく若者を救うんだ。若者は本当に武器なんかよりも1番大事な武器であって、1番の宝なんだ!」っていう事だったんですね?これは本当にそうですよ。あの、1番大事なのは若者なんですよ。で、日本もこういう事をしてるんですよ。
(海保知里)
あ、そうなんですか?
(町山智浩)
あの、キスカ作戦ってご存知ですか?
(山里亮太)
キ、キスカ作戦?
(町山智浩)
日本ってアメリカを占領したのってご存知ですか?
(海保知里)
え、日本が、アメリカを?
(町山智浩)
アメリカを占領した事があるんですよ日本は。あの、第2次大戦が始まって、1943年に起こった作戦なんですけども、アリューシャン列島ってあるじゃないですか、アラスカからずっとロシアまで続いている。アリューシャン列島っていうのはアメリカ領なんですよね?そこの1番端っこにあるキスカっていう島とアッツっていう島を日本って占領してるんですよ。
(山里亮太)
へぇ〜!
(町山智浩)
アメリカの国土を占領した外国軍って日本ぐらいじゃないかなと思うんですけどもね。でもそこにものすごい軍隊をアメリカが派遣してですね、潰しにかかるんですね、日本軍を。で、アッツ島の方は全滅するんですよ。玉砕するんですよ。ところがもう1つのキスカ島の方にいた5000人の兵士は、奇跡的な救出作戦で殆ど全員、救出されるんですよ。これね、日本ってみんな「玉砕!玉砕!」って言ってたと思ってる人がすごく多いんですけど、そうじゃない時もあったんですよ。
(海保知里)
ふーん!
(町山智浩)
でね、この『ダンケルク』が戦争映画として非常に特殊なのは”敵を倒す”という事を描いていないからなんですよ。
(海保知里)
戦いなのに、そっか。
(町山智浩)
そう。「人を殺す」って事じゃなくて「人を救う」戦いなんですよ、これ。だからね、見てても全然嫌じゃないですよこれ。あと、監督が非常に気を遣っていて実際はイギリス兵とかも3500人ぐらい死んでるんですけど、死体を無理に映したりしないで、カメラが避けたりしてます。そういう事を見せるための映画じゃないんだっていう事なんで。
(山里亮太)
『ハクソー・リッジ』を見た時にはね、バンバン出てきましたけども。(笑)
(町山智浩)
はい。本当は悲惨なんですよ、だからみんな溺死したりして、一隻軍艦が沈むとそこに600人乗っていてみんな死んじゃうんですから。でもそれは、あんまりしつこく、そういう事じゃなくて、むしろ、人は人を助けるという事を描きたかったと。戦争っていうのはもう人殺しだと思われるけど、そうじゃなくて人を助ける戦争もあるんだっていう事ですよね?それで勝つ事ができるんですよ、実は。玉砕してたら勝てないんですよ。
そう。っていうね、色々と考えさせられる映画でしたけども、日本だと9月9日だと思います。あ、キスカの方も映画になっていますね、日本は。『太平洋奇跡の作戦 キスカ』という映画で、1965年に映画化されているんで。円谷英二監督の特撮が素晴らしいので、是非ご覧になって下さい、はい。
(山里亮太)
全部CGを使ってないという事は、出てくるものがね、そう思って見たらね、さらに。。こんなでっかい船が・・
(町山智浩)
すごいですよ。人間がものすごい数で並んでいる所があって、「これはCGだろう?」って俺思って監督にそう聞いたら、「あぁあれはね、ボール紙だから。」って言われました。(笑)
(山里亮太)
えっー!!!
(海保知里)
そうなんだ!
(町山智浩)
ものすごいたくさんの兵隊が海岸にバーッと並んでる所があるんですよ。
(海保知里)
なんかそれ、予告編でも最初の方で流していたあの映像ですかね?すごい・・
(町山智浩)
そうなんですよ。「あれ、ボール紙だから」って言われて。(笑)だからね、この『ダンケルク』っていう映画は製作費は実は超大作の中ではものすごく安いんですよ。
(山里亮太)
えっ?でもなんか戦闘機とか使ってたりしてるから、むちゃくちゃCG使うよりも金かかるんじゃないですか?
(町山智浩)
いや、それが、”借りてる”からみんな。
(山里亮太)
はーー!!
(海保知里)
レンタル代で。えーっ!
(町山智浩)
これ、製作費1億ドル以下っていうね、夏休み大作の中で最も安いんですよ制作費。
(山里亮太)
すごいな、海外のお金。
(町山智浩)
それで、まぁ素晴らしい感動と衝撃とショッキングな体験を呼んでいるという素晴らしい映画が『ダンケルク』でした!はい。日本では9月9日公開です!
(海保知里)
はい。今日はクリストファー・ノーラン監督の最新作!『ダンケルク』について伺いました!町山さん、どうもありがとうございました!
(山里亮太)
ありしたー!
(町山智浩)
どもでした。
※書き起こし終わり
○○に入る言葉のこたえ
⑥クリストファー・ノーラン監督はCGが大嫌いで、ものすごい人数が並んでいる映像はボール紙で作られていた。