アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルの町山智浩さんの解説レビュー
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映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』(https://www.tbsradio.jp/tama954/)
で、クレイグ・ガレスピー監督のトーニャ・ハーディングの伝記映画『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』のネタバレなし解説レビューを紹介されていましたので書き起こしします。
映画視聴前の前情報として、また、映画を見た後の解説や考察レビューとして是非ご参考ください。
町山さん『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』解説レビューの概要
①ナンシー・ケリガン襲撃事件で有名になったトーニャ・ハーディングについてのお話
②主演のマーゴット・ロビーのプロデューサーは○○○○!?
③食い違う意見を見せていく「羅生門スタイル」が採用されている
④トーニャ・ハーディングは悪役なのか?
※○○の中に入る文章は、この記事の1番最後で公開しています。
TBSラジオたまむすびでラジオ音源を聞いて頂くか、書き起こし全文をご覧頂くか、この記事の1番最後を見て頂く事で判明します。
『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』町山さんの評価とは
(町山智浩)
トーニャ・ハーディングについての映画で、『I, Tonya(私はトーニャ)』という映画です。
(山里亮太)
(海保知里)
はい。
(町山智浩)
いま流れているのは、シカゴというバンドの『長い夜』という有名な曲なんですけど。
これがこの映画の中で非常に感動的にかかるんですけどね。
(海保知里)
へぇー!
(町山智浩)
あのー。トーニャ・ハーディングって覚えていますか?
(山里亮太)
覚えてますよー!
(海保知里)
覚えています!すごい衝撃的なニュースでした。
(山里亮太)
あのナンシー・ケリガン襲撃事件の。
(町山智浩)
そうそうそう!
リレハンメルオリンピックの時ですね。
(山里亮太)
そうですねぇ。
(町山智浩)
はい。アメリカのフィギュアスケートの選手で、アメリカ代表の座を争っていたライバルのナンシー・ケリガンを何者かを雇って、膝を折ろうとして殴らせたと言われていた人ですよね。
(山里亮太)
はい。
トーニャ・ハーディング、アメリカのフィギュアスケート選手の実話
(町山智浩)
はい。覚えています本番?
結局あのーそういうスキャンダルが起こって、彼女が主犯じゃないかって言われている中でオリンピックに出たんですよね。
(海保知里)
そう。
(山里亮太)
はい。出て、あのね有名なシーンですよね。
足を上げて「切れたよ、紐が」って。
(町山智浩)
はいはい。「靴紐がおかしいわ」みたいな。
(海保知里)
そうそうそう。
(山里亮太)
はい。
(町山智浩)
「もう1回やらせて」って言って。はい。
で、彼女はナンシー・ケリガン襲撃事件の犯人として裁かれてしまって、永遠にスケートができないっていう、フィギュアスケート協会から永久の除名をされたんですよね。
すごい刑罰を受けてしまって、ものすごい世界的な悪役にされてしまったんですけど。
(山里亮太)
(海保知里)
はい。
ナンシー・ケリガン襲撃事件の犯人とされたトーニャ、実際は・・?
(町山智浩)
本当はいったいどうだったのか?っていう映画なんですよ、今回のその『I, Tonya(私はトーニャ)』は。
(山里亮太)
えっ!
(海保知里)
はぁー!はい。
(町山智浩)
はい。で、あのー全てですね、関係者のインタビューをもとに構成しているんですね。
(山里亮太)
ほう。
(海保知里)
ほーー!
(町山智浩)
はい。でー、このトーニャ・ハーディングを演じる人はマーゴット・ロビーっていう人なんですけども。
写真がありますよね?
(山里亮太)
ありますあります。
(町山智浩)
はい。あのーこの人はあれですよ・・
主演、マーゴット・ロビー
(海保知里)
ハーレイ・クインですね?ハーレイ・クイン。
(町山智浩)
なんだっけ(笑)
『スーサイド・スクワッド』の。突然出なかったですけど(笑)
はい。あの映画の中で唯一素晴らしかったのが彼女なんですけども。
(山里亮太)
(海保知里)
あははは(笑)
(山里亮太)
いやー確かに!
(町山智浩)
で、まぁこの人は最初こんな感じで出てきて、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のディカプリオの奥さんとして出てきて。
(海保知里)
うんうん。
(山里亮太)
あー、そうかぁ。
(町山智浩)
そうなんですよ。だから、いかにもモデル上がりみたいな。
(海保知里)
そう。そういう雰囲気ある。うん。
(町山智浩)
金髪の、これ英語でね「Bimbo(ビンボー)」っていう言葉があるんですよ。
聞いたことありますか?
(海保知里)
あー!あんまりいい言葉じゃないですよね。
(町山智浩)
いい言葉じゃないです、すごく差別的な言葉で。
あのー美人でセクシーだけど頭は空っぽの女の人のことを「Bimbo」って言うんですよ英語で。
(山里亮太)
へぇー!
(海保知里)
うん。
「Bimbo」バービー人形みたいなタイプの人に対しての差別用語
(町山智浩)
言っちゃいけない言葉なんです。言っちゃいけないですよ。
バービー人形みたいなタイプの人に対しての差別的な言い方なんですよ。
(山里亮太)
へぇー!
(町山智浩)
で、このマーゴット・ロビーさんはいわゆるビンボーの役を演じることで出てきたんですね、ただ。
(海保知里)
うんうん。
(町山智浩)
ただね、この『I, Tonya(私はトーニャ)』ではすさまじい演技力を見せるんですよ。
(海保知里)
へー!そうなんですかぁ!
(町山智浩)
だから彼女はこれでアカデミー主演女優賞候補になる可能性があると、いま言われていますね。
(山里亮太)
(海保知里)
へぇー!
(町山智浩)
で、彼女自身が自分の演技力を見せるために、要するに「私はビンボーだって言われてるけどもそうじゃないのよ!」っていうところを見せるために自分でお金を出しているんですよ。
(海保知里)
えっ、お金出してる・・出資?ってことですか?
(町山智浩)
製作しているんです。
これ、プロデューサーは彼女自身です。
(海保知里)
えぇー!そうなんですか!
(山里亮太)
あっ、へぇー!
アイ・トーニャのプロデューサーはマーゴット・ロビー自身
(町山智浩)
お金集めをやっているんですよ。
で、自分の演技力を見せるためにやっているんですけど、まぁとにかくすごい映画なんですよ、この映画は。
(山里亮太)
はい。
(町山智浩)
あのー、これトーニャ・ハーディングがインタビューをするっていう、まぁマーゴット・ロビーが演じているんですけど、それで「なにがあったのか、私がこれから話すから」って言いながら、カメラに向かって話し始めて。で、子供の頃からの凄まじい育てられ方が見せられていくんですよね。
(山里亮太)
へぇー!
(海保知里)
ふーん!
(町山智浩)
で、いちばん最初にこのトーニャ・ハーディングが言うのは「私はね、レッドネック(貧乏白人)やホワイトトラッシュって言われているけど、好きでそうなったわけじゃないから!」とかタバコを吸いながら言って、そこから始まるんですけど。
(海保知里)
はぁ。
(町山智浩)
あのまぁ、すごいですね、貧乏なんですよ。
オレゴン州で生まれてですね、で、森の中で。お母さんはウェイトレスで、お父さんは何をしているのかちょっとはっきりと出てこないんですけど。
あのー子供の頃から、楽しみといえば森に行って、ウサギを撃って、ウサギ狩りをして・・(笑)
(海保知里)
ウサギ狩りですか?
戯れるんじゃないんだ。
(町山智浩)
戯れるんじゃないですよ(笑)食べ物ですから。
リスとかウサギは、アメリカの、そのーいわゆる貧乏な人たちにとっては・・この場合の貧乏は、あの日本語の方の「貧乏」ですけどね、はい。
本当に食べ物として獲っていて。で、しかもその革を毛皮で縫い合わせてコートを作るんですよ、冬の。
(海保知里)
へぇー。
トーニャの生い立ち
(町山智浩)
そういう家に育って、でーまぁ親は「この子はフィギュアスケートができる」っていうことでもって、それで金儲けをしようとして。
(山里亮太)
(海保知里)
はぁー!
(町山智浩)
死ぬほどフィギュアスケートをさせて、まともに学校にも行かせてもらえないんですね。このトーニャ・ハーディングは。
(海保知里)
えぇー!そうだったんだぁ・・。
(町山智浩)
でー、「学校行きたい。友達がいないから」って言うと、バーン!って蹴っ飛ばすんですよこのお母さんが。
(海保知里)
えぇー!
(町山智浩)
「口答えするんじゃねえよ!」とか言って。
(海保知里)
え、かわいそう。
(町山智浩)
ものすごい虐待をされていくんですよ。
でーその、蹴られながらね、そのトーニャ・ハーディングはカメラに向かってこう言うんですよ。演技をしてて蹴られているんですけどね?
(山里亮太)
はい。
(町山智浩)
蹴られながら、「ナンシー・ケリガンは1回殴られたぐらいで世間の同情を買っているけど、あたしは100万回殴られているから!」とか言うんですよ(笑)
(海保知里)
ほぉーー!
(町山智浩)
それを、要するに殴られるお芝居をしながら、カメラに向かって言うんですよ。
(山里亮太)
あっほうほう。
(海保知里)
ほうほう、そういう、ねぇ。
(山里亮太)
あのパターンですかやっぱ。
第四の壁を破る
(町山智浩)
そうそう。いわゆる「第四の壁を破る」というやつですね。
あの、演技をしていたかと思うと、突然カメラに向かって、観客に向かって喋りかけるっていう感じの映画なんですよ。
(海保知里)
はー面白そう、うん。
(町山智浩)
で、どうしてか?っていうと、これはトーニャ・ハーディングがいったい何をしたのか?っていうのは、その証言者によって全部違ってきているんですよ。
(山里亮太)
うん、なるほど。
(海保知里)
食い違っているんだ。ふーん。
(町山智浩)
食い違っているんです。だから、旦那がまず最初に捕まって、そのー、旦那が「ナンシー・ケリガンを殴らせたんだ」という風に追求されたんですね、警察に。
その時に、司法取引があって。あのー、「トーニャ・ハーディングが『殴れ』と言ったんでしょ?」と警察は。「そういう風に証言してくれれば、あなたの刑を取り下げるから」っていう。
(山里亮太)
ほう!
(海保知里)
えぇー!!
(町山智浩)
取引を旦那にもとめて、旦那、それを飲んじゃってるいるんですよ。
(山里亮太)
飲んだんかぁ・・。
(海保知里)
なんで!旦那さんなのに!
(町山智浩)
旦那なのにね、はい。そう。
だから、証言が旦那とトーニャ・ハーディングの間で食い違っているんですよ。
(山里亮太)
ふんふん。
(町山智浩)
それをね、両方見せちゃうんですよ。
(山里亮太)
ほーう!
(海保知里)
へぇ。
食い違いを見せる
(町山智浩)
食い違っているものを。この映画は。
これはだから「He said, She said」とか英語で言いますけども。英語でも、こういうのを「Rashomon-Style(羅生門スタイル)」って言いますね。
(山里亮太)
ほう。
(海保知里)
「言った」「言わない」みたいな?
(町山智浩)
うん、だから『羅生門』ですよ『羅生門』。
(海保知里)
あ、『羅生門』。
(町山智浩)
「Rashomon-Style」っていうんです、英語で。
『羅生門』っていうのは、黒澤明監督の映画で芥川龍之介原作の、婦女暴行事件がありまして。大昔にね。戦国時代じゃなくもっと昔の平安時代かなんかですね。
でーその時に、本当に婦女暴行事件だったのかどうかってことは証言で全部食い違ってくのを、それぞれの証言の再現ドラマを連続で3つ見せるというのが黒澤明の『羅生門』という映画だったんですね。
(海保知里)
ふーん!
(町山智浩)
だから、そのドラマが全部違うんですよ、証言者によって。
(山里亮太)
はぁ!
(町山智浩)
それが「Rashomon-Style」で、その英語でも「Rashomon」って言うんですよ、「羅生門的状況」とか。
(山里亮太)
へぇー!
(海保知里)
あっ、英語でも言うんですか?
(町山智浩)
英語でも言います。「Rashomon」で全部通じます。っていうか、世界中たぶん通じます。
(山里亮太)
(海保知里)
へぇー!!
(海保知里)
知らなかったぁ。
羅生門スタイルは世界共通用語?
(町山智浩)
証言者の意見が食い違う状況を「Rashomon」っていうんですよ。「ラショモン!(発音)」ですけども。
(山里亮太)
へぇ。
(海保知里)
ははは(笑)
(町山智浩)
はい。で、この映画はそのスタイルでやっているんですよ。
だから、例えば彼女が旦那さんに殴られていたっていうのは本当なんですけども。要するに、お母さんに殴られて育ったから、殴る人と結婚しちゃっているんですよね。
(海保知里)
あーそうなんだ・・。そっかぁ。
(町山智浩)
そういうものらしいんですよ。虐待を受けた人は、虐待をする人を好きになったりするんですけども。
(山里亮太)
あっはいはい。
(町山智浩)
ところが、旦那はそこで「いや、彼女も殴り返してきたよ!」とか言うんですよ。
(山里亮太)
ほう。
(町山智浩)
そうすると、再現ドラマになっているから、トーニャ・ハーディングが旦那をバーン!って殴りながら「今のは私、やってないからね!」ってカメラに向かって言うんですよ。
カメラに向かって。
(山里亮太)
ははは(笑)
(海保知里)
あはは(笑)そんなことを。
(町山智浩)
すごいでしょ?
で、今度、彼女が旦那にバーン!って殴られたら、ショットガンを出してガシャン!って弾を装填しながら、「これからショットガンを撃つけど、私は撃ってないからね!」って言って、「これ、旦那の証言だからね」って言いながら、バンバン!って撃つんですよ。
(山里亮太)
へぇー!あはは(笑)
(海保知里)
あはは(笑)
コメディーとしてすごくおかしいシーン
(町山智浩)
これ、めちゃくちゃなんですよ、コメディーとしてすっごくおかしいんですけど。はい。
だから見ている方は、両方の意見を聞いて「どれが本当なんだろう?」って考えながら見る形なんですけどね。
(山里亮太)
うんうん。
(町山智浩)
ただこれ、お母さんの方も旦那の方も、ただ殴るだけじゃなくて、ナイフとか拳銃を使うんですよ。
(山里亮太)
えっ!
(海保知里)
ちょっと、なんで、その、武器を使っているんですか!
(町山智浩)
もう下手すれば死んじゃうんですよ、生きるか死ぬかなんですよこの人たちの親子喧嘩とか夫婦喧嘩って。
(山里亮太)
ほうほう。
(町山智浩)
で、しかも夫婦喧嘩でボコボコになって殴り合いをしながら、セックスになだれ込んだりしているんですよ。
(山里亮太)
はぁー。
(海保知里)
なぜ(笑)なーぜー!
(町山智浩)
うーん、だからね、これ見ていて思ったのは、小林勇貴監督の『全員死刑』にすごく似ているんですよ。
(山里亮太)
へぇー!あの怖すぎて笑っちゃうという?
怖すぎて笑ってしまう、「全員死刑」に似ている
(海保知里)
間宮さん(間宮祥太朗)さんが出ていたのでしたっけ、ねぇ?
(町山智浩)
そうそう。あれ、見た方ならわかると思うんですけど、田舎でとにかく人間関係が全部暴力でつながっているんですね。
(山里亮太)
はいはい、見ました。
(海保知里)
あーそうなんだぁ。
(町山智浩)
それで家族同士とか恋人同士もとにかくやたらと殴り合うんですよ、やたらと。
でも、それでセックスしたりするんですよね(笑)
(海保知里)
へぇー!そうなんだぁ。
(山里亮太)
そういうシーン、ありますもんね。間宮くんの。
(町山智浩)
はい。で、とにかく貧乏で・・みたいな話でね。すぐ手が出ちゃうとか、すごくよく似ているんですよ。
(山里亮太)
あっそうなんだ。
(海保知里)
ふぅーん。
(町山智浩)
そうなんですよ。それでしかも、笑えますからね、もう両方ともね。
(山里亮太)
あー笑える。はい。
カメラが動き続ける
(町山智浩)
そう。実話を元にしているところも似ているし、すごくよく似ているんですけど。
もうひとつ似ているのはね、カメラがずーっと動き続けるんですよ、この映画。
(山里亮太)
ほーう!
(海保知里)
ん?
(町山智浩)
一瞬たりとも休むことがなくて、ずーっとカメラがトーニャ・ハーディングに付いて動き回りながら撮っていて、ものすごいダイナミックで。
(海保知里)
へぇー!
(町山智浩)
しかも、フィギュアスケートのシーンは、普通だったら絶対に見たことのない、フィギュアスケートをしている・・ものすごい、要するに、この人はトリプルアクセルをアメリカではじめて着地に成功した人かなんかなんですよね。確か。。
(海保知里)
はい。
(山里亮太)
ふーん。
(町山智浩)
2人目かなんかなんですよ。
だから、ものすごい能力はあったんですけど、それをカメラが、どうやって撮ったのかはわからないんですけど、1メートルぐらいの距離でずーっとトーニャ・ハーディングに密着したまま、トーニャ・ハーディングのすごいフィギュアスケートをずっと見せていくんですよ。
(山里亮太)
(海保知里)
へぇー!
(町山智浩)
ものすごいですよ。アクション映画みたいでしたよ。
(山里亮太)
(海保知里)
へぇー!!
まるでマトリックスのよう
(町山智浩)
『マトリックス』みたいな感じなんですけども。
そう。だからね、フィギュアスケートのシーンはすごいし、ずーっと喧嘩とコメディーと・・すごくそういうところも『全員死刑』に似ているんです。
『全員死刑』ってカメラがすごく動くんですよ。
(山里亮太)
はい。
(海保知里)
はぁー!そうなんだ。
(町山智浩)
だからこれはすごい、ある種のなんていうか新しい流れなのかなと思って、ものすごく面白かったですね。
(海保知里)
へぇ!
(町山智浩)
ただね、やっぱりね、みんな悪役にしちゃったじゃないですか、トーニャ・ハーディングを。
(山里亮太)
はいはい。そういうイメージです。
(海保知里)
うん、そう。そういう風に思い込んでますもん、だって。うん。
(町山智浩)
世界中がそう思ったじゃないですか「悪い人なんだこの人は」と。
でも、これを見るとあまりにも悲惨でね、これはかわいそうですよ本当に。
(山里亮太)
あ、そうなんだ。実はそういうのがあったんだ。
(海保知里)
実は違うって。あぁーー。
(町山智浩)
だからもう本当に、だってこの人、フィギュアスケートをやりながらウェイトレスとして働いていたんですよね。
(山里亮太)
へぇー!そんな代表になるかどうかっていうぐらいのレベルなのに?
フィギュアスケート兼ウェイトレス
(町山智浩)
そう、だからお金が全然ないから。
それで、なぜか?っていうと、スポンサー全く付かなかったんですよ、彼女。
(海保知里)
あぁー、そうなんだ。
(町山智浩)
こういう人だから(笑)
(海保知里)こういう人だからね。
(山里亮太)
なるほどなぁ。
(町山智浩)
しょっちゅう警察沙汰になったりしているから。
だからもう本当にお金がない状態でがんばって。しかも、才能はすごくあったんですよね。
(海保知里)
うーん。
(町山智浩)
だからもうやっぱりね、世の中は常に悪役を求めているんですよね。
(山里亮太)
確かに、そっかぁ、そうだなぁ。
(町山智浩)
だから、もう、みんながワイワイ美談の人として盛り上げたかと思うと、急に悪役扱いしてっていうのがもう、日本もすぐそうじゃないですか。
(山里亮太)
いやーまさにそうですね。
(海保知里)
すぐ、ね。
(町山智浩)
ね、乙武さんとかそうですよね。
(山里亮太)
あーそうだよなぁ。
(海保知里)
あぁ。
いちばん怖いのは大衆
(町山智浩)
あんなに過剰にヨイショして、すぐに落とすっていうね。
なんかもう、悪役とね勝手に英雄をみんなで作り上げて、さっきの『スター・ウォーズ』じゃないですけども。
本当にね、やっぱりいちばん怖いのは大衆で。この中にも出てくるんですけど、トーニャ・ハーディングが「私は彼女に1回アタックしたって言われているけども、私はもう何億人からアタックされているのよ!」って言うんですけど。
(山里亮太)
はぁー!そっか。叩かれてね。
(町山智浩)
そういうーそう、そういうことかな。「私は彼女を1回叩いただけなのに、何億人からも叩かれていると思っているの?」っていうね。
(山里亮太)
そうだよなぁ。
(町山智浩)
でもね、面白かったですね、本当にこれ。
で、いま彼女は格闘家になっているんですよね?トーニャ・ハーディングってね(笑)
(山里亮太)
そうそう!あ、そうですよね!
(海保知里)
えーそうなの!?
(山里亮太)
いろいろやって、格闘家にたどり着いたっていうのは、
(海保知里)
このマーゴット・ロビーさん?
(山里亮太)
いやいや、トーニャ・ハーディングが。
(海保知里)
あ、じゃなくて。トーニャの方がね。
(町山智浩)
そうそう。
トーニャ・ハーディングは格闘家になっているんですけど、それもだから、「私はね、ちっちゃい頃から殴られるのには慣れているから」とか言っているんですけど。
それはかわいそうだよね(笑)
(山里亮太)
いや、ちょっとね。
(海保知里)
うーん。
(山里亮太)
自虐で言っているけど。
徹底的にコメディーに
(町山智浩)
まぁでもね。これをまたジメッとした話にしないで、徹底的にコメディーにしているところもすごいですよね。
これはだからね、面白かったですよ。もう、マーゴット・ロビーはアカデミー主演女優賞に引っかかるんじゃないかな?って僕は思いましたね。
(山里亮太)
おぉー!
(海保知里)
他のキャストは?
(町山智浩)
ボコボコに殴られながらやっています(笑)
他のキャストはね、ボコボコに殴る旦那の方が『キャプテン・アメリカ』のバッキーですね(笑)
(山里亮太)
おぉー!(笑)
(町山智浩)
ウィンター・ソルジャーのバッキーくんがバキッ!っとかいって殴ってますね(笑)
(山里亮太)
あはは(笑)
(海保知里)
あぁーっ!
(町山智浩)
もう最低の旦那をやっていてね、めちゃくちゃらしかったですね。
(海保知里)
そうなんだぁ。
(町山智浩)
このお母さんの人もひどかったですよ本当に。
ひどかっていうか、すごい演技でひどいんですよ。
(山里亮太)
はーなるほど。毒母。
(町山智浩)
毒母。最近毒母映画ばっかりですね、なんかね。
(山里亮太)
いやーそうそう。
(海保知里)
そうーばっかりね。増えてきました。
すごい演技でひどい、毒母
(町山智浩)
どうしてこんなに毒親映画ばっかりなのか?と思いますが。
えぇと、とにかく面白かったんですが、日本公開はまだわからないです、ごめんなさい。
『I, Tonya(私はトーニャ)』。トーニャ・ハーディングの伝記映画です。
(海保知里)
はい。
なんかね、2018年の夏頃という話も出ているのかな?でもまだわからないということなんですね。
はい。今日は『I, Tonya』を紹介していただきました。町山さん、どうもありがとうございました。
(山里亮太)
ありがとうございましたー!
(町山智浩)
はい。どうもでした。
<書き起こし終わり>
○○に入る言葉のこたえ
②主演のマーゴット・ロビーのプロデューサーは自分自身!?
特殊なスタイルの映画を軽快に解説していく町山さんのトークが面白いので、是非聞いてみて下さい!