凄まじい映像表現
このレビューにはネタバレが含まれています
2020年7月23日 20時30分
役立ち度:0人
総合評価:
5.0
巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督による超大作。
巨額の制作費を投入して作られた本物の映像はまさに戦場です。爆破シーンはガチの爆薬で吹き飛ばし、ナパームで本当にジャングルを焼き払ったというから、その圧巻の映像作りにはもはや狂気すら感じます。
そして映像だけでなく、音響の作り込みも凄まじいです。私はドルビーシネマで鑑賞しましたが、音自体の迫力はもちろん、音の移動感に心底感動しました。ヘリコプターの飛ぶ音が映像に合わせて前から後ろへと動く場面や、爆発音や銃声が四方八方から聞こえてくる戦闘シーンは、実際に戦場の中に放り込まれたような錯覚を覚えるほどでした。また静かなシーンでも、ジャングルの葉が揺れる音や、水が落ちる音、虫の声など微細な音も徹底して再現されており、約40年前の作品とは思えない表現力に驚かされます。映像だけでなく、こうした徹底的にこだわり抜かれた音響デザインからも、コッポラ監督の本気度がひしひしと伝わってきました。
また出演している俳優たちが、異常な状態であったことも有名です。ウィラード大尉役のマーティン・シーンは、撮影当時アル中気味だったらしく、撮影時もベロベロに酔っ払った状態だったらしい...
デニス・ホッパーも麻薬中毒だったことで知られている通り、劇中でキマったまま出演しているそうです。さらには、ランス役のサム・ボトムズも現場で実際にLSDを使用していたといいます。この映画に宿る狂気はこうした撮影背景からきているのかもしれません。
そして重要なストーリーも戦争映画という枠組みを超え、次第に哲学的になっていくのも特徴的です。物語の最初はリアルな戦争映画としてのスタイルを持っていますが、後半は映像も幻想的でシュルレアリスムな様相を帯びていきます。主人公たちが川を下ってジャングルの奥地へと進んでいく様は、心の奥底の精神世界を進んでいくようで、物語の文脈以上の不気味さがあります。
たしかに難解で、咀嚼しにくい作品なのは間違いないですが、だからこそこの作品が長い間多くの人々に繰り返し鑑賞されてる要因なのではないでしょうか。戦争映画という型にはまらず、至高の映像と音響で観るものを惹きつける本作は、やはり映画史に残る傑作です。劇場公開している今だからこそ、ぜひ多くの方にこの作品を”体感”してほしいです。
イメージワード
- ・不気味
- ・恐怖
- ・不思議
- ・絶望的
- ・知的
- ・かっこいい
- ・スペクタクル