シャイニング
冬の間は豪雪で閉鎖されるホテルの管理人職を得た小説家志望のジャック・トランスは、妻のウェンディーと心霊能力のある息子ダニーとともにホテルへやってくる。そのホテルでは、かつて精神に異常をきたした管理人が家族を惨殺するという事件が起きており、当初は何も気にしていなかったジャックも、次第に邪悪な意思に飲みこまれていく。
このレビューにはネタバレが含まれています
原作を持っている映画はとても多い。 その場合、観る側にとっては、やっぱり原作の方が面白いなあ、 と感じる事が多いのは事実だ。 例え映画は小説とは違うのだ、と言ったところで、 そう感じてしまったらどうしようもない。 そんな中、原作よりも映画の方が面白い、 とまず間違いなくほとんどの人が言うであろう映画もある。 その代表格がおそらく「サイコ」と「ジョーズ」だろう。 そしてこの映画、「シャイニング」も、おそらくほとんどの人が 映画の方に軍配を挙げるのではないだろうか。 原作は言わずと知れたスティーヴン・キングの名作だ。 簡単に言えば幽霊屋敷(ホテル)の話であり、シャイニングとは、超能力のことだ。 ダニー少年はその能力でホテルの幽霊の存在をキャッチする。 しかし幽霊たちは家族に襲い掛かり、更に幽霊に憑りつかれた父が 家族を襲う恐怖を描く。キングの、いつも通りの細かな筆致で描かれたこの小説は 上下巻あるが、上はほぼ前振りと言っても過言ではなく、 物語の中心となるオーバールック・ホテルへとなかなか舞台を移さない。 人物描写の積み重ねはさすがだが少しもったりした感じを受ける。 映画版は少し趣が異なる。幽霊が出てきたり、父が家族を襲うのは同じだが、 その狂気は幽霊の問題なのか、それとも雪山という閉塞的な環境がそうさせたのか、 判然としないのだ。いずれにしても父が狂っていた事が分かる タイプ・ライターのシーンは、映画史上最もぞっとするシーンだ。 圧倒的な分量で打ち込まれたあの文字を見ると、 一体いつからこいつは狂ってたんだ、という驚きと同時に戦慄を覚える。 ぞっとすると言えばもう一つ、有名な双子のシーンがある。 ダニー少年が車の乗り物に乗ってホテル内を走り回っていると、 突然目の前に双子の少女が現れる。構図、照明とその背景が絶妙であり、 かつ瞬間的にインサートされるむごたらしい死体。 たったこれだけの事で観客はとてつもない恐怖感を感じるのだ。 ちなみにこの描写はダイアン・アーバスの同じく双子の写真から インスパイアされているのだが、引用という意味では逃げ惑う妻を追いかける男が、 ドアを斧でぶち壊すシーンはD・W・グリフィス監督の「散り行く花」からのものだ。 オリジナルではないはずなのに、もはやこの2つのシーンは「シャイニング」の 名シーンとして我々の脳裏に焼き付いてしまっている。 こう見ていくと、当たり前の事だけれど映画版は画面で観た時に いかに面白くなるか、いかに怖くなるか、それを考えに考えて撮っている事が 分かる。映画が原作に勝つにはやはり映像で勝負するしかないのだ。 この映画ではもう一つ、気付かされる事がある。感情の釣りだ。 人は泣いてる人を見ればなんだか悲しくなってくるし、 笑ってる人を見ると愉快になってくる。 そうやって相手の感情に釣られる傾向がある。 当然数々の作品の中にも意図的に感情の釣りを挿入してくるケースが多い。 この映画でしばしば話題にあがるのが、家族を襲う、 あの有名なジャック・ニコルソンの顔よりも、 その彼を怖がる妻のシェリー・デュバルの顔の方が怖い、という事だ。 これは、正確にはシェリー・デュバルの顔の造形が怖いという訳では無い。 彼女の、怖がってる様子に、こちらの感情が釣られてしまっている、という事だ。 彼女の怖がり方は超がつくほどの一級品だ。彼女がブルブル震えると、 こちらまで震えがくるほどの恐怖を感じてしまう。 怖いと言う感情に釣られてしまうのだ。 ちなみに、この感情の釣りだけで一本撮りあげてしまったホラー映画がある。 そう、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」だ。 そう考えれば、ホラー映画というのは、劇中で恐怖に襲われる 役者の重要性というものがよく分かるというものだ。 このように、シェリー・デュバルの顔も含めると、 映画版で有名な恐怖シーンというのは原作とは全く関係のない部分だ。 おそらく監督のスタンリー・キューブリックは、原作を怖い、とは 思っていなかったのではないだろうか、だからこんなにも周到に、 原作度外視で「恐怖」を盛り立てる要素を映画にぶち込んだのではないだろうか、 そう考えると、この映画は単に原作と少し趣が異なる、というレベルではなく、 否定=再構築されてしまったという事だ。 そして映画は大ヒットとくれば、これは公開処刑ものだ。 原作者のキングがこの映画を大嫌いというのもよく分かる。
トレーラーが怖そうで、長らく見ていなかった映画です。 ざっくり言えば、過去惨殺事件のあったホテルで冬季管理人を引き受けた主人公が、恐怖に心を蝕まれて狂ってしまう物語です。 主人公の職業が小説家(志望)であるとのこと、なんだかスティーブン・キング(原作者)の感情がにじみ出ているように感じました。 見終わっての感想で、言うほど怖くはなかったなと。今から半世紀近く前の映画なので、しょうがないのかもしれません。恐怖のシチュエーションは年々バージョンアップされていくものですし。(高校生くらいまでの年齢なら怖いと感じるかも) 意外だったのが映像の美しさです。映画が始まってすぐ、一台の車が山脈の一本道を辿ってホテルに向かっていくんですが、連なる山々が延々と続いて、同じ方向に向かう車は無い。対向車もトラックが数台。 辿り着いたホテルは天井が高く、歴史を感じさせる内装のフロア、庭園も整備されていて、いかにもお金持ちの避暑地といった雰囲気です。いいな、わたしもこのホテルに泊まりたい。泊まって原稿とか宿題とかテレワークとかしたい…。 豪雪で閉ざされて、数か月はホテルの外に出ていけない環境でありながら、ホテルの中は快適そうだし食料だって一年分はある。通信手段もある(映画の公開年が1980年だから、ネット環境は無いのが残念)。 エレベーターからざんぶと流れる血の洪水や、謎の双子の姉妹(どちらもトレーラーに有りましたね)のことを気にしなければ、ホテル内は広いしお風呂もあるし、最高の環境です。 住みたい住みたいと思いながら視聴していたせいか、心霊的な怖さはあまり感じなかったんですが、主人公が感じる家族へのいら立ちや、思い通りに小説が書けないことへの怒りと生活を支えることの不安などは、一部の層に刺さる怖い描写だと思いました。 あと主人公の息子が可愛かったです。
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