オットーという男
心あたたまるストーリー。時折ジョークも混ざっていてとてもいい映画なのですが。 自分の環境だと複雑に感じてしまった映画でした。 たまたま自分の親が一時的に不安症で弱っていた時に、この映画がCMでやっていて親が見ようかなと気にしていました。が、弱った親には見せなくてよかったと思った映画でした。 以下ネタバレを含みます。見る人によってはつらいシーンがあると思うので要注意です。 ・自死しようとするシーンが何度も出てくる ・バスの事故のシーンがある ・隣人老夫婦の息子は日本にいて、親の事に無関心、何年も帰ってこない上に老夫婦の家を勝手に売り老夫婦を施設に入れようとしている ・主人公は心肥大を患っている。きっと持病があるストーリーにしたい事と、心が狭そうな性格なのに心臓が大きい病気だという事で笑いをとりたいのでしょうが、心肥大と診断を受けた事のある人は焦ってしまう描き方だと思いました。心肥大だから余命が少なかったり、治療が必須だという訳ではありません。オットーは肥大型心筋症という病気で、心肥大と同じく心臓の筋肉が厚くなる病気ではありますが心肥大とは別の病態です。心臓が大きいからイコールオットーと同じ結末を迎えるという訳ではない点に注意が必要だと思いました。
ソウルの春
ある程度、粛軍クーデターについてや、韓国の時代の流れみたいなものを軽く予習してから観たほうが、この映画を理解しやすいと感じた。 とくに前半なんかは登場人物(ほぼ軍人)の多さや、その軍人たちの役職や所属している部署の多さに、たぶんほとんどの人が混乱すると思う。 首都警備司令部側と保安司令部のハナ会側の人物の顔もまだ覚えていない状態で、次々と話が進み、そこにさらに第2、第8とかの空挺旅団やら、特殊部隊、憲兵まで出てきて、その人物たちの電話のやりとりを速いカット割りの連続で見せられて、え?誰??のカオス状態に…。 後半、やっとなんとかそれぞれの人物を把握できてきて、そこからはちゃんと面白かった。 自分はとくに予習せず、韓国の歴史も知らずに観たので、単純に結末にビックリ! え〜⁉そうなるの⁉という、ちょっとどんよりした気持ちで映画が終了…。 骨太な映画で初見でも十分楽しめたけど、たぶん鑑賞2回目のほうがいろいろ理解できて面白い気がする。 あと、ファン・ジョンミンはこういう口八丁な悪人を演じさせたら、もう右に出る者はいないね!ほんと最高‼ チョン・ウソンも「アシュラ」みたいなインパクトある役ではなかったけど、ド真面目な軍人役がハマってたと思う。 それにしても韓国は、こういう政治的事件や黒歴史をちゃんと映画にできて、エンタメとして昇華して、さらにこういった作品がヒットするって羨ましいなぁ…。
ファン・ジョンミンとチョン・ウソンの再対決。 アシュラに比べると史実に基づいているので、ド派手で残酷なシーンは少なく物足りなさも少し感じましたが、韓国ではパラサイトを上回る観客動員数で国民4人に1人が劇場に足を運んだそう。 ファン・ジョンミン演じるチョン・ドゥグァンが起こした事件を描いた『タクシー運転手』ももう1度見たくなった。 韓国は映画というエンタメを通して歴史を学べてうらやましい、日本でも過去の政治家等の悪事を映画として描いてほしいと思いました。
犯罪都市 NO WAY OUT
マ・ドンソクが圧倒的なパワーで悪人どもをバッタバッタぶっ倒すという、みんなが見たいものは見せてくれる。 娯楽作品として、それだけで合格点は出せているが、それ以上の期待値は超えてこなかった。 個人的にこの手の作品は、ストーリーより悪役が重要だと思う。 悪役がより極悪で残虐で、観客にこいつはヤバイ奴だと思わせたら勝ちで、クライマックスの対マ・ドンソク戦がメインカードとして相応しいかどうかにかかっている。 同系色の作品で、「孤狼の血 Level 2」がシリーズ2作目でも成功しているのは、鈴木亮平演じるヴィランの魅力が圧倒的であるのが大きい。 今回の「犯罪都市」3作目は、日本のヤクザが登場するということで楽しみだったが、日本側のヴィランであるリキ(最近売れてる青木崇高)は、ヴィジュアルもセリフもなんだかチンピラ感が強く、個人的に悪役として魅力が弱いと感じた。 これ系の韓国人の悪役俳優にある泥臭さや顔面力、ヤバイ奴感が薄い…。 とくに彼が発するセリフが、韓国の人が書いた台本なのか、チンピラやザコキャラが言うような、ありきたりなダサいセリフしかない。 ここは日本のスタッフがなんとかすべきだと思う。 また、外国人の役者が演じる日本人役のセリフがカタコトなのも、やはりノイズに感じてしまう。(日本人俳優で揃えられそうなものだが…) あと、國村隼のフェードアウト感もなんだかなぁ…だった。 一方、韓国側のヴィランである汚職刑事は、これまでと違いスマートなイケメンで、憎たらしい感じは良かったが、過去作に比べるとインパクトに欠ける。 とくに最後の方は状況的に既にけっこう追いつめられていたし、もう少し強大な敵でいてほしかった。 そんな感じで今作の「ヴィラン」には苦言はあるけど、マ・ドンソクを見てるだけで、なんだかんだ楽しめてしまう作品でもある。 ただ、4作目もあるようだけど、劇場で観るかは迷うなぁ…。
密輸 1970
コメディ、アクション、サスペンス、犯罪、シスターフッド、さらには「海女」「ジョーズ」「韓国70年代カルチャー」など、多種多様なジャンルが詰め込まれた、これぞ娯楽映画‼というような作品だった。 序盤、ややオーバーアクションでコメディタッチな作風に戸惑い、その後の海女チーム、地元ヤクザ、密輸王、税関の四つ巴展開に少し頭が混乱してしまう場面もあったが、後半からの怒涛の見せ場の連続はさすがの面白さで、やはり韓国映画のパワー恐るべし‼ とにかくエンターテイメント性が高く、前知識や解説もとくに必要ないし、万人が楽しめる映画だと思った。 ただ、自分は前評判が良すぎたので、かなりハードルを上げて観てしまった部分もあったかなと…。 やっぱり個人的に韓国映画は、韓国ノワールや泥臭くて容赦ないバイオレンス作品の方が好みだなぁ…。
ブラドック/地獄のヒーロー3
チャック・ノリス主演の、ランボーやコマンドーみたいなアクション映画‼️しかもただの銃じゃなく、自動小銃G3に6連グレネードランチャーで北ベトナム正規軍を皆殺し🔫からの建物・車両破壊💥それに敵の飛行機を奪う時の肉弾戦が個人的に痺れました。そして手榴弾を投げられ、重傷でも敵4人とヘリをAK-47で血祭りにあげ、撃ち落とす勇姿に惚れました。 これは最高のB級戦争アクション映画です👍
凶悪
Netflix「地面師たち」が面白く、ずっと気になっていた「凶悪」も鑑賞しました。 ピエール瀧、リリーフランキー、松岡依都美が両作品に出演しています。 リリー・フランキーの怪演が本作も素晴らしかった。地面師たちが好きな人は凶悪もぜひ。 鑑賞後、実際の事件について調べると、思った以上に実際の事件に忠実に描かれていて恐ろしさが増します。
劇中で流れる昔のであろう音楽は知らない曲だけどどこか懐かしい音楽。昔のイケイケファッションも、日本の昭和の服装とリンクするところがあって面白かったです。 海の中の映像や音は圧巻で映画館で見てよかった映像でした。どうぶつの森の素潜りを思い出すような映像と音に涼しい気分になれます。 全体的に面白かったのですが、名前と顔を覚える前にストーリーが展開していきついていけなかったり、いまいちよくわからない話の掛け合いがありノリきれなかったのが残念でした。
コンクリート・ユートピア
イ・ビョンホン、かっこいいイメージでしかなかったけど、こんな小汚いおじさんも演じられるんだなと感心。 イ・ビョンホン×パク・ソジュン×未曾有の大災害時に唯一崩落しなかったマンション×韓国映画 これだけですごく面白そう!と期待をして見たのですが、期待を超える展開はありませんでした。 あまり評価が高くなかったのも納得。 どの役に感情移入するか人によってわかれそうなストーリー。キム・ボヨン演じるミョンファが個人的には1番苦手な行動をとっていました。マンション一同で生き残るために役割分担をして協力しあいますが、ミョンファは消極的協力。なのに自分の正義を貫いて結局数々の被害者を出してしまった、その点の反省は感じられない、悪い意味でのいい子ちゃんキャラ。でも、一般的にはミョンファが1番共感を得るのかしら。。
犬神家の一族
このレビューにはネタバレが含まれています
チャイナタウン
アメリカ合衆国の国内のチャイナタウンの土地は、どのような土地なのか。 これを見事に描く、ポーランド映画。 製作は、アメリカ合衆国。 ポランスキーの演出は、どのシーンも、深みあるショットで構成されていて、俊英的、連発です。 乃ち、これは、トリュフォー映画と対極を成す、傑作なのです。 ジョン・ヒューストンの演技、が、印象に残る、ラストシーンは、大変、哲学的で、映画史に残ります。 次に、アメリカ人は、中国人には負ける、と表現した、社会派映画として観ることも出来る、すぐれた作品でもあります。
理由
疑惑の影
退屈な日々を過ごす娘チャーリー(テレサ・ライト)の所へ、突然、彼女の叔父(ジョゼフ・コットン)が現われ、しばらく一家とともに暮らすことになる。 自分と同じ名前を持つこの叔父を、娘は幼い頃から敬愛しており、彼女は大歓迎だったが、その叔父にはどうも不審な点が多かった。 やがて、二人の探偵がやって来て、叔父に殺人容疑がかかっていることを知らされる。 娘は不安になり、調べ出した新聞には未亡人殺しの記事が載っていた。 しかも、叔父が土産にくれた指輪に彫ってあったイニシャルは、被害者のそれと同じだったのだ。 果たして、叔父は本当に殺人犯なのか? 娘の不安は恐怖へと変わっていく-------。 不気味な演奏の「メリー・ウィドー」の序曲のワルツとともに始まるこの映画は、殺人事件そのものや犯人探しがテーマではなく、大好きな叔父さんが、その犯人ではないかと疑う、姪と叔父の物語だ。 この映画は、登場人物の恐怖心理を、スリラーの神様ヒッチコック監督が巧みに映像化していて、二人のチャーリー、二人の探偵、列車の走るシーンが二つなど、二組のペアが次々と登場する。 姪も叔父も同じチャーリーであるのは、ヒッチコック映画の秘密を解く鍵の一つである、左右対称のモチーフ、同じ人間の表と裏、天使と悪魔、他人の犯した罪のために苦しむ人間と犯罪者の葛藤のイメージなんですね。 もちろん死体が出てくるわけではなく、のどかな田舎町の平和な家庭を舞台にした、ヒッチコック監督ならではのサスペンス映画になっていると思う。 そして、ジョゼフ・ヴァレンタインの撮影による緻密な映像が、不安感を見事に盛り上げている。 この映画は、「わが町」で知られるアメリカの劇作家ソーントン・ワイルダーが、ヒッチコックに乞われてシナリオを書いたもので、異色のサスペンス映画というよりも、ずばり、映画の本質とはサスペンスそのものであることを教えてくれる映画だ。 そして、ヒッチコック映画のお楽しみでもある、彼の登場シーンは、冒頭の列車の中の客席の中の一人としてチラッと出てきますので、お見逃しのないように。
フランティック
"映像の魔術師ロマン・ポランスキー監督による、縦の構図を駆使してサスペンスの醍醐味を堪能させてくれる「フランティック」" この映画「フランティック」は、ロマン・ポランスキー監督がアメリカで事件を起こし、ヨーロッパへと移った後に撮った、ワクワクする面白さ、楽しさに満ちた会心のサスペンス映画です。 主人公のウォーカー医師(ハリソン・フォード)は、学会出席のため、妻と20年ぶりにパリへやって来ます。だが、彼がシャワーを浴びている間に、突然、妻の姿がホテルから消えてしまいます。サスペンスの名手でもあるポランスキー監督による快調な滑り出しで、我々観る者をいきなり、このポランスキーの映像魔術の世界へと誘ってくれます。 どうやら、空港で間違えたスーツケースに何か関係があるようだ?----。警察に妻の失踪依頼をするものの、言葉の通じない異国の地、頼みとすべき警察は思うように捜査をしてくれず、当てになりません。 そこで、自ら妻探しに乗り出したウォーカーは、妻を探してパリ中を走り回ります。このハリソン・フォードの妻を探して一途に突っ走るその姿に、思わず応援したくなる程の緊迫した緊張感のある演技を披露してくれます。この映画の3年前に出演した「刑事ジョン・ブック/目撃者」で演技開眼したハリソン・フォードは,実に感情表現のうまい役者になったものだと驚かされます。 見えざる恐怖が、異国の地の旅行者に不気味に降りかかるという設定が、見事に心を突き刺す仕掛けとなっていて唸らされます。そして、新星エマニュエル・セイナーの妖しい美しさもこの映画の大きな魅力のひとつとなっています。 そして、何と言ってもポランスキー監督の演出はさすがだと思わせてくれます。まず画面に深みがあるのです。例えば、手前にシャワーを浴びている夫。ガラスの向こう側で何か言っている妻。しかし、それは夫には全く聞こえません。すると、その妻がスッと左に消えます。 この夫、ガラス、妻、見事に焦点が合っていて、"縦の芝居"が鮮烈なサスペンス効果を生んでいるのです。 それから、屋根の先端へ落ちた物を何とか取ろうと、手を差し伸べる謎の女、そして、その女を助けようとするハリソン・フォード----。ここでも、"縦の構図"がぴたりと決まるのでスリルが倍増して、ワクワク、ハラハラの興奮と緊張感が味わえるのです。ポランスキー監督の計算され尽くした演出の腕が冴え渡ります。 そして、このような部分部分の効果だけではなく、この映画では"縦の構図"の奥にパリの街が常に"存在"して、ドラマを語っているのです。 とにかく、このように、なまじっかな論理を捨て去って、"映像の魅惑"で我々観る者をたっぷりと楽しませてくれる、ロマン・ポランスキー監督による極上のサスペンス・ミステリーの傑作だと思います。
M★A★S★H マッシュ
アリスのレストラン
この映画「アリスのレストラン」は、アメリカのフォーク・シンガーの元祖であるウディ・ガスリーの息子で、現代の吟遊詩人と言われたアーロ・ガスリーが、実名で登場し、自身の同名のヒット曲とともに、自らの青春とその彷徨を演じていくという、ホロ苦いヒューマン・ドラマであり、ニューシネマの傑作だと思う。 ヴェトナム反戦で揺れる1960年代後半のラブ&ピースなヒッピー・カルチャーを、「俺たちに明日はない」のアーサー・ペン監督が描いた作品。 ヒッピーのアーロは、大学をドロップアウトすると、レストランを経営する友人アリスを訪ね、仲間とともに廃屋の教会に住み、おんぼろギターを抱えた日々を過ごしていた。 だがある日、彼のもとに徴兵検査の通知が届き、彼はなんとか逃れようとするのだった。 しかし、そんな楽しい日々も長くは続かず、麻薬中毒の仲間が、バイクを暴走させて死ぬという不幸な事件が起こり、アーロとその仲間たちは、最後のパーティを思い出に面々散っていくのだった---------。
キル・ビル Vol.1
クエンティン・タランティーノ監督が敬愛、偏愛する香港のカンフー映画や日本のチャンバラ映画、任侠映画に限りなきオマージュを捧げた映画が「キル・ビル Vo.1」だ。 この映画「キル・ビル Vo.1」は、公開当時、6年間の長い沈黙を破りタランティーノが帰って来たと話題になった作品で、乱れ飛ぶ多くの前情報から、とんでもなくハチャメチャな映画を予想していたところ、その想像の遥か上を行く、タランティーノ・ワールドが全開で炸裂し、狂喜乱舞した思い出があります。 もう、とにかく腕が飛ぶわ、脚が飛ぶわ、首が飛ぶわの凄まじいゲテモノ・バイオレンスのオンパレード。 映画の冒頭、第一の復讐シーンで見せる乾いたユーモアとクールなバイオレンス演出で、いつもと変わらぬタランティーノのセンスの良さを感じてしまいます。 包丁を背後に隠し持ったまま、娘に「学校はどうだった?」と尋ねるシーンなど、いかにもタランティーノらしく嬉しくなってきます。 その後の展開も、例によって、倒錯した時系列の処理が巧妙であったり、さすがと思わせてくれる演出で溢れていて、我々タランティーノ・ファンを楽しませてくれます。 しかし、何といっても目が画面にくぎ付けになるのは、タランティーノが敬愛、偏愛する香港のカンフー映画や日本のチャンバラ映画、任侠映画、それもB級映画に限りなきオマージュを捧げたという、破天荒なタランティーノ的世界感です。 「自分にはアジアの文化がよくわかるんだ」と公言して憚らないタランティーノですが、よく言うよと内心思いながら、この言葉、半分位は正しいのかなと思ってしまいます。 というのは、日本の大衆文化でよく見受けられた、劇的すぎるヒーロー像やドラマ展開、荒唐無稽な殺陣などを我々日本人の目には、"カッコいい!"と感じさせる一方で、どこか滑稽に映っていたように思います。 この"滑稽"という感覚を、タランティーノはよく理解しているなと思います。 我らが千葉真一演じる沖縄で寿司屋を営む刀作りの名人、服部半蔵という日本人像や、日本刀用のホルダーがある飛行機の座席、更には、ユマ・サーマンやルーシー・リューが、大立ち回りの最中にぎこちない日本語で啖呵を切ったりするのも、"滑稽"という感覚を突き詰めて行くプロセスの延長戦上にあるものだと思います。 ただ、さすがに、日本映画に漂う独特の風情、情緒、粋な感覚に対しては、一応、枠にこそはめ込んでいたものの、少々紋切り型であったような印象を受けます。 しかし、そこはタランティーノ、このような感情に関わる部分を、何とマカロニ・ウエスタン的な感覚とノリで処理してみせたのです。 この演出テクニックには、正直、唸らされ、タランティーノが映画の天才と呼ばれる所以なのだと心の底から思います。 これだけ、ある意味、ごった煮モードの世界観を剛腕でねじ伏せ、展開してみせたタランティーノ、誠に恐るべしです。 この映画は、かなり唯我独尊的なオタク映画で、"滑稽"さの追求といい、綱渡り的な面白さの映画になっているため、この手の映画がダメな人には究極の駄作に見えてしまうというのも、わからないでもありません。 しかし、タランティーノは何もリアルな日本を描こうとした訳ではなく、彼が愛した日本映画の記憶を、オーバーに愛情をこめて甦らせただけなのです。 そして、この映画はタランティーノ以外の誰にも作れない、というより許されない映画だろうと強く感じます。 そう感じさせてくれたのが大変嬉しく、タランティーノ映画はこうでなくちゃいけません。
インサイダー
この映画「インサイダー」は、自分を信じ自分を貫こうとする男の美学をクールに熱く語る、マイケル・マン監督の社会派ドラマの傑作だと思います。 「ヒート」、「コラテラル」のマイケル・マン監督が放つ、男同士の死闘をクールに描いた骨太の社会派ドラマですね。 静けさの中にもほとばしる熱気、マイケル・マン監督の抑制された演出が、男達の生きざまを輝かせます。 自分を信じ、自分を貫こうとする男の美学が、我々観る者の心を激しく揺さぶります。 アメリカのCBSの人気報道番組「60ミニッツ」の舞台裏で実際に起きた事件を描いた、実録社会派ドラマで、「60ミニッツ」の敏腕プロデューサー、ローウェル・バーグマン(アル・パチーノ)とタバコ会社の不正を内部告発した、ジェフリー・ワイガンド(ラッセル・クロウ)という二人の実在する男達の熱い戦いを実録タッチで描いています。 2時間38分と長い上映時間ですが、マイケル・マン監督の工夫を凝らした演出が、ピリピリするような緊張感を持続させてくれます。 まず、実話に基づいている事もあって、手持ち撮影によるドキュメンタリー・タッチが実に効果を上げていると思います。 更に、クローズ・アップやスローモーションで画面にメリハリをつけ、バーグマンのジャーナリストとしての信念と、ワイガンドの迷える複雑な心情を鮮やかに映し出していると思います。 このワイガンドが内部告発をする段になって、様々な圧力がかかり、身の危険や家族崩壊の危機にさらされる事になります。 凄まじいまでの葛藤と戦い、ワイガンドは強固な正義心を貫こうとします。 現実問題として、このような過酷な試練にさらされた時、人間は理想というものを貫き通せるものであろうか? 人間は本来は、もっともっと弱いはずだし、このワイガンドの勇気を我々は現実のものとして、受け止められるであろうか?----と、自問自答せざるを得ません。 様々な脅迫に耐えられず、夫から離れていったワイガンドの妻は、現実的な人間らしさを象徴するキャラクターでもあります。 ただ、残念ながら、この女性は丁寧に描かれていたとは言い難く、このドラマの枠外へと追いやられてしまっています。 こう考えてくると、結局のところ、ワイガンドの正義心を前へと突き動かしているのは、"男と男の信頼関係"だったのだと思います。 バーグマンの信念、それは、自分の情報源になってくれる人間を守ってやる事。 これがジャーナリストの鉄則だと信じているのです。 CBSがタバコ会社の圧力に負けて放送が中止になれば、新聞社へ情報を流し、あらゆる手段を使ってでも、この内部告発を世間に伝えようとするのです。 ワイガンドの勇気に報いるために、バーグマンもまた、組織の中での自分の立場を顧みる事などしないのです。 この二人の男の稀有な勇気と信頼が、長く険しい道のりの果て、真実の公開へとたどり着かせるのです。 我々が日頃、享受している「言論の自由」や「報道の自由」は、これら多くの犠牲や努力の上に成り立っているのだと、あらためて痛感させられます。 バーグマンとワイガンドが命を懸けて示してくれた大きな理想。 これは、紛れもなく、れっきとした事実なのです。
アメリカン・グラフィティ
時代は1962年、アメリカが最も輝いて美しかった頃のカリフォルニアの小さな町の一夜の若者たちの姿を、41のヒット曲にのせて描いた映画が、ジョージ・ルーカス監督の 「アメリカン・グラフィティ」ですね。 ジョージ・ルーカス監督が29歳の時に撮ったこの映画は、カリフォルニア州モデストで育ち、車と映画が大好きだったというルーカス自身の失われた10代の青春時代へのノスタルジーであり賛歌なのだと思います。 カリフォルニア山間部の小さな町を舞台に、夕陽の沈む頃から朝日の昇るまでの、ある一夜の出来事をこの映画は描いています。 この日は夏の終わりであると同時に、明日、東部の大学に出発しようとしているカート(リチャード・ドレイファス)とスチーブ(ロン・ハワード)にとっては、"故郷で過ごす最後の日"という特別な意味を持っていたのです。 時代は1962年。若き大統領ジョン・F・ケネディのもとで、アメリカが最も輝いて美しかった頃です。 ヴェトナム戦争はまだ泥沼化しておらず、少年たちは長髪ではなくポマードをたっぷり使った"グリース"で、女の子たちは"ポニー・テイル"の時代。 まだ、フリーセックスもドラッグもない時代。 彼らの若さは車と、そしてアメリカン・ポップスの音楽で表現していた時代。 この時代、彼らの世界はあくまでシンプルで、音楽はあくまでもスイートなのです。 映画のリズムは、当時の伝説的なディスクジョッキー、ウルフマン・ジャックのラジオ番組とそこで使われるヒット曲で描かれていきます。 「イージー・ライダー」と並んで既成の音楽の使い方としては、やはり斬新なものがあり、「ロック・アラウンド・ザ・クロック」からビーチボーイズの「オール・サマー・ロング」まで、当時のヒット曲が実に41曲も使われているのです。 旅立つ朝、故郷の町を飛行機で去って行くカートの姿にかぶさってスパニエルズの「グッド・ナイス・スイートハート」が流れるところでは、胸にこみ上げてくるものがあり、思わず目頭が熱くなってきます。 カートが追い続け、遂に手に入らない、"白いサンダーバード"は失われつつある青春の象徴なのかも知れません。 ドラマが終わって、最後に4人の主人公のその後を言葉とスチールで示すエンディングの演出もまた素晴らしい。 あのひょうきん者のテリー(チャーリー・マーティン・スミス)が、「ヴェトナム戦争に従軍し、行方不明」と語られる時、我々観る者はこのドラマの背後に、"語られない、もうひとつの大きなドラマ"を予感するのです。 製作がフランシス・フォード・コッポラ。無名時代のハリソン・フォードが出演していたのも嬉しいし、おませな13歳を演じたマッケンジー・フィリップスが非常に印象に残りました。
光る眼
映画:ゼイリブ、よりも、哲学的思想が、感じられるSF映画。 旧作品(オリジナルモノクローム映画)、と、違って、新宇宙系の子供たちは、女の子たちの人数が多くて、考えさせますが、高度究まる、特撮で、あっという間に終わってしまう、教育的SF映画の秀作。 そして、旧約聖書的を外していない演出のカソリック映画です。
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