孤高のメス
このレビューにはネタバレが含まれています
私が、生きる肌
豪邸に住んで社会的な地位も仕事もありながら、どこか憂鬱そうなロベル・レガルの横顔から映画は不吉に動き始めていきます。地元のセレブリティたちを招待して庭先で開かれている豪華絢爛なパーティーにも、不吉な予感しか伝わってきません。 美容のスペシャリスト・レガルが一線を越えていく様子を、アントニオ・バンデラスが鬼気迫る表情で演じていました。患者の全身をタイツでぐるぐる巻きにして監禁したり、モニター越しに監視したりと謎は深まっていくばかりですね。 表向きは愛する妻でも本音では憎いあいつ、単なるお手伝いさんが実は産みの親、女性だと思っていたら実は男。多くの登場人物がふたつの顔を使い分けていて、時には自分の正体さえも忘れているために観ているこちらはあっさりと騙されてしまうでしょう。 いかに現代人が表面上の若さや美しさに囚われて、物事の本質から目を背けているかを痛感してしまうストーリーです。作りものの皮膚の下に覆われている人間本来の醜さと、ロベルがひた隠しにしている恐るべき真実を突き止めてください。
犬鳴村
ウトヤ島、7月22日
本作の事件発生から収束までの72分間は、一発撮り(ワンカット)で撮影されているそうな。一時間ちょっとの間に69人もの人命を奪った犯人の凶行を、現場に居合わせたキャンプ参加者の学生の目線で描いた本作。 良かった点としてはその圧倒的な臨場感。まるでこちらも無差別テロの現場に紛れ込んでしまったかのような迫力は、ワンカット撮影の手持ちカメラのブレ方も全部プラスに転んだ結果かと。 反面、イマイチだったのはリアリティ溢れる映像のおかげで、映画的な面白味は薄れてしまっている点。 まあ、今から10年前で、制作当時は7年しか経っていなかったワケで、事件の傷はまだ全然癒えておらず、被害者遺族の感情を考えれば本作のような手法以外はなかったのかもしれない。 しかし、どこかから聞こえる銃声のみで犯人の姿すらほとんど画面に映らないのは正直不満でした。でも、衝撃的なラストを含め、心を突き刺すような重く苦しい、忘れ難い映画でした。
ビリー・アイリッシュ 世界は少しぼやけている
白ゆき姫殺人事件
片方はお茶くみやコピー取りを仏頂面でこなす華のない社員・城野美姫、もう片方はそこにいるだけで注目を集める職場の女王様・三木典子。同じ化粧品メーカーで働きながら対照的な扱いを受けるふたりの女性に、井上真央と菜々緒がキャスティングされているのが豪華ですね。彼女たちの直接的なやり取りや言葉はことごとく排除して、職場の同僚の噂話や地元の同級生たちの証言からその人物像に迫ろうという展開がいかにも現代的です。 ワイドショーのディレクターや制作会社のテレビマンなど、人の不幸に面白おかしく食いついてくるマスコミ関係者には憤りを感じてしまいました。SNS上に飛び交う根拠のないデマや誹謗中傷など、タイムリーな話題にも考えさせられるでしょう。 殺人犯の汚名を着せられて逃走を続けていく美姫のことを、ただひとり信じてくれる幼馴染・谷村夕子の言葉には救いがあります。劇中のテーマ曲を担当していて謎解きにも微妙に絡んでくる、インストゥルメンタル・ユニット「TSUKEMEN」が奏でるピアノとバイオリンの音色にも耳を傾けてください。
とびだせ!ならせ! PUI PUI モルカー
永遠の0
何といっても一番目を引いたのが、空母「赤城」の動いているシーンの迫力でした。以前からその特異な形に興味があり、どんな雰囲気で動いていたんだろうと考えていたので、まさかこんなにリアル感を持って観られるとは思わず少し得した気持ちでした。 戦争をテーマに、宮部久蔵とそれに関わる周りの人たちそれぞれの激戦地へと向かっていく心情が丁寧に描かれていて、これもまたリアル感を持って観られたのも良かったです。 年老いた景浦が当時の宮部の事を話すシーンは印象深く、戦局が酷くなり鹿屋基地で再開した宮部が人が変わったように無口でうつろな目をしていたのが、戦争の、特攻の恐ろしさを物語っていていつまでも忘れられない表情です。敵対視していた景浦こそが、宮部の臆病者ではない本当の事を理解していたのが皮肉な感じがしました。 また二人の祖父の若き戦時中での出来事を調べていく賢太郎は、当時の二人の関係を知っていく所は、自分のルーツが詳しく理解できて、きっと今後の自分の人生ももっと前向きに生きて行けそうに思いました。
おくりびと
最後の旅へ向けた「納棺」をテーマにした作品です。 この作品は、さそうあきら氏によって映画化に先立ってコミカライズされています。 しかし、本当の原作はさそう氏ではなく、青木新門氏の「納棺夫日記」です。 さそう氏の作品の方はかなり映画に沿っていますが、青木氏の作品の方はかなり哲学的な面をもっており、エッセイのためストーリーも特にありません。 青木氏のほうを原作として本作を観ると、かなりの違いに驚くかと思います。 しかし、原作などを意識せずに鑑賞すると非常にいい作品です。 チェロ奏者だった大吾が、ちょっとした勘違いで納棺の仕事につくことになります。 納棺専門会社の社長・佐々木を演じる山崎努さんの所作が大変美しいです。 ご遺体、そしてそれを見送る人々に配慮した動きに注目を。 遺族にとって、故人を見送る一連の儀式は、心を一区切りつけるための大切なものです。 それを経てこそ、故人を穏やかに送ることができるんですよね。 しかし、「死」を扱う仕事というのは一般には受け入れられないもので……。 チェロ奏者から一転、納棺師になった大吾。 彼の初めの戸惑いと、仕事の尊さへの気付き、そして妻に忌避されてしまうという一連の心の動きを本木雅弘さんが巧みに描いておられます。 音楽もよく、静かでいい作品でした。
タキシード
アパレル・デザイナー
僕のワンダフル・ライフ
ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち
2分の1の魔法
アクアマン
マレフィセント
ファンタジー・アイランド
ブラムハウス製作だからって何の保証もなく面白いとは限らないと痛感した作品。 はじめは『笑うせえるすまん』みたいなノリかな?とワクワクもしましたが、どんどんとっ散らかっていって収集がつかなくなり、ワクワクは悪い意味でのハラハラに(笑) コレ、どうまとめるつもり・・・?と思っていたら、どうにもこうにも納得の行かない理不尽さMAXのオチに閉口。。。 こーゆーのって、多少ツッコミどころ多くても勢いさえあれば案外楽しめたりするものなんですが、本作にはソレもない。 テンポも悪いし展開も弱く、これじゃあ粗ばかり悪目立ちするのも無理はないですわ。 原作は昔のTVドラマらしいけど、全然有名作じゃないらしい。 いっそ再ドラマ化して『世にも奇妙な物語』みたいなオムニバスにした方が良かったかも。109分にエピソードを詰め込みすぎてるのは、誰の目にも明らかですので。 その場合、タモリ的な役どころがマイケル・ペーニャになるわけだけど。 オイオイ、それはちょっと観てみたいなと思ったり(笑)
江ノ島プリズム
愚行録
情婦
アガサ・クリスティーの類まれなる才能が充分に発揮された、サスペンス&法廷映画の傑作。原作や映画『検察側の証人』も観ましたが、この作品が一番バランスが取れていて面白いと思いました。 基本はシリアス路線ですが、登場人物の弁護士と看護師との掛け合いなど思わず笑ってしまうコミカルなシーンも所々に散りばめられ、全く飽きさせることがありません。そして、2度も3度も裏切られるラスト部分!こんな話を半世紀以上前に考えつくなんてアガサ・クリスティーは本当に天才だと思います。 主演はマレーネ・ディートリッヒ、監督はビリー・ワイルダーと豪華版。特にディートリッヒの冷たく整った顔立ちがこの映画に貢献している部分がかなり大きいのでは?と思います。 白黒映画であり、『情婦』というタイトルとパッケージ画像から、子供には不向きな映画のようにも見えますが、小学校高学年~中学生以上の子供なら充分に楽しめる内容だと思います。私の小学6年の息子は、歴代見た100本以上の映画の中でも10位以内に入る勢いの面白さだと言っていました。
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