3つの物語それぞれに、美しい映像がこれでもかと詰め込まれていて癒されます。
例えば、1つ目の「桜花抄」では桜の花びらの散っていく景色。雪の中を進む列車と駅の情緒的な光景。2つ目の「コスモナウト」では種子島の海の風景。夕焼けの中に発射されたロケットの軌跡。3つ目の「秒速5センチメートル」では東京のビル街に降る雪。そして再び桜の花びら。
自然の美しさを情緒的に描くだけでなく、街の風景のなにげない一コマに登場人物の心象を投影して切なく描くことに関しては、新海誠に勝てるものはないと感じます。
特に、最後の場面で山崎まさよしの「One more time, One more chance」が流れ、楽曲と映像をぴったりとリンクさせて見せるところでは何度見ても泣かずにはおれません。
この3つの物語では心をうまく結ぶことができない男女の切なさが描かれており、それでも日常を生き、前を向いていかなければならないという思いが切々と伝わってきます。