同名小説が大ヒットし、映画もヒットを記録した「ポセイドン・アドベンチャー」。実は結構悲しい映画です。たくさんの乗客を乗せ、航海に向かった豪華客船「ポセイドン」。しかし予期せぬ大津波が船を襲ったため、水害に巻き込まれてしまいます。生き残った人々は、牧師たちが率いるチームと、別の人物が率いるチームに別れ、何とか生き延びようと模索するのですが。
実は「牧師」が主人公という部分が鍵です。この災害を神の試練と考える彼は、あらゆる犠牲を払って全員の命を救おうとします。その牧師の姿に感動した者たちは、他人の命のために水中を泳ぎ死に至ることもあるのです。それでも、牧師たちは歩み続けます。この自己犠牲の精神と、あきらめない心。そして愛する者を失っても倒れない気持ちが「ポセイドン・アドベンチャー」の名作たるゆえんと言えるでしょう。どれほどアクションシーンや転覆のシーンがリアルになっても、この心理描写の場面は役者と脚本でしか成立しないと考えられます。
ジーン・ハックマンという渋い俳優を牧師にあてたあたりも良い映画です。牧師はかっこよくもなく、もしかするとその辺にいそうなありふれた男性であってほしいところです。そんな普通の彼のもとに、奇跡が起こるという部分が最後に大感動を呼び起こすのですから。