宮廷で人気と富を自由に得るモーツァルト。しかしそのせいで、それまで宮廷音楽師として活躍していたサリエリは、宮廷を追われ惨めな思いをします。それを知らないモーツァルトは、サリエリのことを莫迦にした音楽等を披露し、サリエリをさらに追い詰めていくのです。そしてついに、サリエリはモーツァルトに毒を盛り、彼の命を亡きものにしようとするのでした。
もともとは演劇で有名なタイトルでしたが、本作で見事銀幕デビューとなりました。焦点となるのは、ずばり「サリエリの嫉妬」です。天才音楽家であるモーツァルトには、いくら嫉妬してもサリエリは及びません。ゆえに最終的には彼の死を願います。ところが、サリエリは普通の人間であるがゆえに、その罪の意識から逃れることが出来ないのです。その罪の告白から、物語はスタートします。
演劇やオペラなどでモチーフにされてきたストーリーですが、天才に及ばない人間の嫉妬を罪深く、なおかつ細かく描いているところが素晴らしい点と言えます。衆人が集う場所であえて「サリエリの真似を」とモーツァルトに強要するところなどは、見ていて痛ましいほどです。
モーツァルトはあえて純真に描かれており、最後までサリエリの企みに気づかず、むしろ「親友」はサリエリだと信じてこの世を去ります。
実はその相手こそ、自分が最も憎く、死ね!と念じた相手だとしたら?
果たして正気でいられるのか、どうか。それに立ち向かった作品が本作です。
「嫉妬」という業の深い感情を抱く者であれば、絶対に共感できる作品となっています。