ジョゼと虎と魚たち
アンハッピーなことで有名な実写映画版に対してのアンサー的な作品。 原作小説は40年近く前に発表されており、その間にアップデートされた世界でようやく可能になった「トゥルーエンド」を目指し、見事に成功させた制作陣の意欲に敬服させられる。 実写では不可能であったジョゼの内面世界のイマジネーションを見事に豊かに映像化し、チープさをできうる限り排除し、所謂アニメ的な誇張も少なく、誰が見ても恥ずかしくない画面クオリティの高さが素晴らしい。 言い方が少し悪いが、小説、実写、アニメと通して見ると、まるで「恒夫(ジョゼの彼氏)ガチャ」のようでもあり、今回のアニメの恒夫は「大当たり」で良かったね、ジョゼという感想を抱いてしまう。 実写版の恒夫が靴が濡れるからと嫌がった海辺のシーンだが、アニメの恒夫はためらいもなく靴のままジャブジャブと海水に浸かり、それを見た瞬間に「勝ったな」と心の中でガッツポーズを決めました。 一度見ただけでは味わいつくせないほどキャラクターや小道具や背景に細かな芝居が付けられているので、是非繰り返しの鑑賞をしてみてください。
ザ・プレデター
これまでのシリーズの続きなので、プレデターを捕らえようという米政府の秘密組織が準備をしていて、そちらは小ぎれいなエリート感のある人たちで、主人公と共に戦う軍人たちは様々な障害を負っているという対比が良かったです。 本作ではプレデターや主人公よりも、途中から出てくるいろいろと障害を負った軍人の人たちの方がなにかと光っていました。 このシリーズの中ではかなり雑な方だと思います。 何かと特攻的な戦い方をするあたりは、「リーサル・ウェポン」の脚本を書いたシェーン・ブラックさんが作った映画らしいところです。 プレデターが喋ったものがプレデター語の字幕になり、それが英語の字幕になるというのは、次の作品でも使われそうでした。 残念なところは、プレデターが単なる凶悪エイリアン的になったところでしょう。人間をはるかに凌駕する科学を築いたのですから、他に描き方があったと思います。 本作は色々と詰め込みすぎでしょう。とりあえず、次作に期待したいと思います。
アイアン・スカイ
何かとバカ映画と評されていますが、いろいろと風刺の効いたいい映画でした。 第二次大戦で負けたナチスの残党が月の裏側に秘密基地を築いていて、選挙キャンペーンで月に行った黒人モデルが捕らわれるという始まり方ですが、月で使われている様々な物のデザインが昔のドイツ軍風に作ってあり、そこにいるナチの残党の子孫たちも、昔のナチスを信奉しているところなど上手く作ってありました。 地球の米国大統領は当時話題になったサラ・ペイリン風で、各国ともに秘密に宇宙兵器を配備していたりと、今から見ても内容的に十分に楽しめます。 昔の「ムー」の読者が好んでいたようなネタをいろいろと盛り込んでいて、それをわざわざ映画で展開するというバカらしさを楽しめる人には向いています。 ネットで様々な陰謀論やフェイクニュースを見ている人は多いようですが、様々なバカらしいものを詰め込んでわざわざ映画にするセンスが楽しめました。 製作費はハリウッドのSF映画の何十分の一なのでしょうが、引けを取らない面白さの映画になっていました。
クリフハンガー
イタリアの山岳地帯でのロケでオープニングから自然の雄大さがあって良い感じです。しかしそう思っているのも束の間、相棒の彼女が道具の不備から墜落死してしまいます。最後手袋だけの攻防でもう悲鳴を上げたくなるシーンですが、最後スタローンの手に手袋だけが収まるのが切なくなります。 と最大の見せ場はここだけで、あとは割と平坦に進んでいきます。敵の御一行もあまり賢い感じではなく、体育会系のノリで突っ込んでいきます。「俺は元サッカー選手だったんだ。ほれ、俺のシュートをくらえ!」って敵が喚いて蹴りを食らうシーンがあるのですが、このセリフが象徴です。 さてスタローンはと言うと、オープニングでのことがいつまでも自責の念にかられて山の仕事から手を引くことを決めますが、そこへ例の悪役御一行様が登場してドタバタ劇の開始です。スタローンも仕方なく駆り出されます。厳しい気候とハードなクライミングでこの辺りも見どころの一つです。 スタローンが岩山に張り付いているのを俯瞰でとらえているシーンがあって、一体どうやって撮影したのか気になって調べたら、命綱を括って、後からCGで綱だけ消しているそうです。それでも過酷な撮影には間違いないのですがね。 スタローンが紆余曲折の末に最後に決意するくだりが良かったです。 とにかくオープニングのシーンは必見です!
劇場版「鬼滅の刃」無限列車編
このレビューにはネタバレが含まれています
オーシャンズ8
言わずもがな「オーシャンズ11」と言えば、現代はジョージ・クルーニーを中心にしたアノ11人。昔は、フランク・シナトラだったみたいですが。 そのジョージ・クルーニーが演じたダニーの妹、デビーの大掛かりな窃盗は、セレブがとんでもない金額の装いをして集う「メット・ガラ」 兄のダニー同様、1人の右腕ルーに声を掛けて1人、また1人とスカウトしていくのは、あのオーシャンと同じ。 もっとニヤニヤしたいなら、この映画を見る前に「11」のオープニングだけでも観て欲しい。 スカウトされた女性窃盗団。 こちらもキャラが濃い。 ダニーの右腕役ラスティのように、こちらデビーもルーがいるけど、このケイト・ブランシェットがとにかくカッコいい。他の映画で観たことがない彼女が、たまらなくカッコいい。 その上、デビーとつるんでいる時は、笑わされる。 リアーナのハッカー役エイトもカッコ良かった。本名絶対に明かさないのに、変なとこでバレる可愛さ。 サラ・ポールソンの…と1人挙げていくと止まらない。 強引すぎるような展開があっても、だからオーシャン・シリーズだもの、と妙に納得させられる。 しかも、観ていて「!」となるのが嬉しい。 あのオーシャン・シリーズで、女性の美しさ、したたかさ、しなやかさ、可愛さが存分に楽しめる豪華な映画。スピンオフとは呼びたくない。
ストレンジャーズ 地獄からの訪問者
トレーラーキャンプ場にやってきた一家。 キャンプにくるくらいだから仲の良い家族かと思われそうですが、問題を抱えています。 それは娘・キンジ―の問題。 彼女は少々非行に走り気味で、全寮制の学校にいくことになっていました。 その前に一家でキャンプを、とやってきたまではいいのですが……。 訪ねたキャンプ場は叔父のもので、しかしそこに叔父はおらず、どのトレーラーを使うかだけのメモが残されていました。 この辺りから不穏な雰囲気で面白いです。 私なら、一旦叔父に電話か何かで連絡とってみるけれど……。 トレーラーに突然訪ねてきた謎の女性。 彼女は「タマラはいる?」と意味の分からないことを言います。 どこか異常性を感じる不気味なシーンです。 ここから一家を悪夢が襲います。 面をかぶった人物に襲われていくのです。 どうやらそれはひとりではなく複数のようで。 ただただ惨殺シーンが続いていき、キンジーもまた襲われながら懸命に逃げていきます。 ストーリーはほぼ「襲われて殺されそうだから逃げる」のひとこと。 かなり不条理な物語で、少し意味の分からないシーンもありました。 この作品は2作目で、10年ほど前に公開されたものの続編のようです。 前作を観ていると、理解できるシーンも多いようです。 こういった前作を踏襲して作る作品というのは「前のを観ている」というのが前提であるのでしょうが、さすがに10年前のものであるなら、ある程度独立性があったほうがいいように思いました。 着眼点はいいだけに、独立性が乏しいのが惜しいです。
ルビー・スパークス
死の谷間
核戦争後。誰もいなくなった街でひとりで暮らしていたアンと、その後に現れた人物たちの物語です。 アンは父親の影響を受け、大変信仰深い人物。 その信仰が彼女を「ひとりぼっちであること」から救い出していたのでしょう。 舞台は奇跡的に放射線汚染から逃れた谷間の街。 しかし、アン以外の人物は生き残った人を探しに行ったきり帰ってこなかったようです。 舞台設定として「ひとりきりの楽園」を描くには必要だったのかもしれませんが、アンだけが残っていたという設定は少し無理があるように感じました。 ここをもう少し深く描いていれば、よりよい作品になったかと思います。 しかし、全体的にストーリーはいいです。 「谷間」という奇跡的な楽園に暮らしていたアン。 そこにジョンという人物が現れます。 彼は放射能汚染された池で水浴びをし、体調を崩すのですが、アンの看病によって助かりました。 この時のアンが祈る姿が痛々しいです。 ようやく現れた「会話のできる相手」。 それを失うことはとても悲しいものですよね。 ジョンは科学者で、その才能で、これまでアンが困っていた面を助けていきます。 一方、アンは恐らく人に対する飢えからか、彼を誘惑しようともします。 ジョンはある程度の一線を越えるのを拒否するのですが、そこにも彼なりの考えがあり、両者の気持ちがそれぞれ理にかなっていて、いいシーンでした。 作中でジョンがアンの持っていた「アダム」という本を手にするシーンがあります。 恐らくこれはかなり重要なシーン。 谷間という「楽園」に住んでいたアン。彼女はさしずめイヴでしょうか。 ジョンはアダムのようなものかもしれません。 そして現れた三人目。物語はここから大きく動きます。 その人物はリンゴかヘビかどちらかなのでしょうね。 物語の終わりは多くの人が予想できるものになっています。 「楽園」からでることのできないアダムとイブが、その後どうなったかと切なくなるお話でした。
ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-
ラストベルトと呼ばれるオハイオ州の貧しい階層出身の弁護士であるJ.D.ヴァンスの自伝小説の映画化で、ヒルビリー、レッドネックなどと呼ばれる貧しい白人の家族を扱った映画です。主人公のJ.Dは薬物依存で子供の世話や教育をしない母親のもとで育ちますが、しっかり者の祖母に引き取られて、規則正しい生活を送るようにされ、高校を卒業した後は海兵隊に入隊し、イラクへ派遣されたのちに、退役後に大学へ行き弁護士になります。 知的にも身体的にも能力が高かったのでしょうが、祖母によりちゃんとした暮らしをするようにされていなければ、その能力も発揮されることは無かったのでしょう。 米国は初等から中等教育の予算は自治体が出すので、豊かな自治体かそうでないかで教育に大きな格差がある上に、高等教育の学費はとても高いので、この著者のように貧しい自治体で育つと、ちゃんとした生活を送れるようになっても、基礎学力を身に付けたり、高等教育を受けたりできる人は少ないのでしょう。社会制度というものについて考えさせる映画ですが、周囲の人の描き方が温かいものとなっていました。
デイ・アフター・トゥモロー
地球温暖化の話は決して他人事ではなく、もしかしたら未来に人類が直面する大きなテーマなのかもしれません。そういう意味ではすごく考えさせられる映画でした。しかし個人的にはエメリッヒ監督にはいつも期待させられてはがっかりさせられるの繰り返しなので、多少の疑心暗鬼はありましたが。(ミッドウェイも劇場で見たかったのだが、そういう理由で行きませんでした) 映像は凄くてNYの街が凍ってしまうなんて信じがたい世界です。(ある種仕方ないのかもしれませんが、アメリカの象徴が自由の女神という発想は猿の惑星から何も変わっていません)ストーリーも平板で、どこかインパクトに欠ける印象です。しかしデニス・クエイドってオーロラの彼方といい、どうしてこうも父親役が似合うのでしょうね。 ブレードランナーやジオストームもそうですが、この映画でも日本が出てきます。でも何か違和感というか日本ではなく私には香港あたりにしかみえないのは気のせいでしょうか?ジャンパーのようにちゃんと渋谷でロケしたものは納得できますよね。 こういう気候変動パニックものって割と好きな題材なのですが、着眼点のよさがあるのに目新しさがないのはいささか残念に思えます。何か大人の事情があるのでしょうが。
ミクロキッズ
ジュマンジを手掛けたジョー・ジョンストン監督らしい楽しい映画です(ちなみにOctober skyという素晴らしい作品を作った監督でもあります)まだCGが広まっていない時代にこれだけのものを作り上げたということにまず驚きとリスペクトします。 当時はまだ特撮という言葉でしかなかったエフェクト加工を作品の妙や小粋なジョークを織り交ぜながら娯楽としては当時として最高のものが出来たのではないでしょうか(一体いくらかかったのか?)今のハリウッドの一部のようにCG頼りで中身がペラペラのものもあると思うとスタッフ達の熱意が伝わってきます。 いままで遊んでいた庭がジャングルになったり、ホースからでる水滴がデカすぎたり、一番怖いのはあの”G”の虫が出てくることです。人の気配に気が付いてビクッとするのとか小技効かせてますね。 家の籐編みの椅子に登るシーンがあって、登っても登っても中々頂上につかないのがすごく好きです。 この映画が現代の「アントマン」へと継承されているのは嬉しい限りです。
それでも夜は明ける
最初に父が殺された
Mank/マンク
Netflixのオリジナル映画。 「市民ケーン」の「共同脚本家」とされている、 「マンク」ことハーマン・J・マンキーウィッツを描いた物語、 ということだったので、同作創作の葛藤や、苦労を描いているのかと 思いきや、そういうことよりもマンクの人物像にフォーカスを当てて、 彼をとりまく映画会社や妻とのやりとり、政治的な内幕等、 過去と現在を織り交ぜて複合的にエピソードを構築している。 各シーンをかなりテンポよく描いており、 主演のゲイリー・オールドマンの熱演もあって それなりに面白く観れるのだが、個人的には時間軸は一本化した方が 物語としての達成感は高くなったのではないかと感じた。 それ以上に気になったのが、画面の暗さだ。 というよりも役者の「顔」への光量の少なさと言うべきなのか。 自分の視聴環境が良くなかったのか分からないが、 とにかく人物の顔、表情が分かりにくくてストレスを感じた。 昔の白黒映画を観ていると、役者の顔への照明には とても気を使っていることが分かる。 もし自然な陰影を生かした画面にしたかったということであれば、 普通にカラー映画にすればよかったのではないかと感じた。 とはいえ、第78回ゴールデン・グローブ賞最多6部門で ノミネートされており、評価を受けているということを考えると、 あまり文句をいう訳にもいかないか。
崖っぷちの男
タイタンの戦いのサム・ワシントンが主役です。タイタンでは幾分主役不足感は何故だか否めなかったのですが、ここでも何となくその臭いを感じ取ってしまうのは一体どうしてなんだろうか? ダイヤモンド強奪犯がとある事情で特別に出所したところ脱走を図ってルーズベルトホテルの21階の窓の外に立ち自殺を図ろうとする。それにはとある計画があり…という話で内容はすごく面白そう。予告も面白そう。DVD表紙もいい感じ。エド・ハリスも出ているし。ということでこれは期待できそうな映画かなと確信に近いものを感じ、迷わずレンタルして見たのですが… 確かに序盤、中盤あたりまでは手に汗握る展開、というよりもうすでにホテルの窓の外に降り立った時点で高所恐怖の私は「いや~これCG?本物?どっちにしろ怖い!」ってなって違う意味で手に汗してました。 ところがラストのあの展開で「…あれ?」って一気に白けてしまいました。いやもっとすごいどんでん返しが待っているのとハードルを上げ過ぎた感はあったにせよ、あれはないでしょう!一応良い結末だったから何とも言えないんですが、エド・ハリスを起用しておいてそれは無いってのが感想ですね。 ミストやショーシャンクに出ているウィリアム・サドラーは今回もいい味だしてくれているんですが。
ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから
これは見た後に物凄く爽やかな気持ちになったし、何よりも 甘酸っぱい という言葉がこんなにもマッチする映画は久しぶりです!!久しぶりにこんなにも爽やかで純粋で、良かった〜と思えた。すごく好き、良かった! この映画では様々な問題が取り扱われています。それでいてこんなにも ぎゅっと まとまって、清々しい気持ちになれるのは みんなが真っ直ぐで、一生懸命だからかな。 エリーからポール、アスターへの思いと、ポールからアスター、エリーへの思い、そしてだれにでもちゃんと向き合うアスター。みんなが一歩ずつ近づいていく様も良かったなぁ。冒頭のポールがエリーへラブレターの代筆を懇願する姿は必死すぎて可愛いし笑えました。笑 あとそれぞれのキャラがとても良い。 悪い人もほぼほぼ居ないし。 青春モノっていつもと同じメンバーで過ごすものと、新しい出会いから何かが始まるものとあるじゃないですか、この映画は確実に後者。 もっともっと新しい事、人、時間、服、食べ物でも何でも良いや。 何か新しいものにトライしてみるって大事なのかもしれないし、この映画で大事だなと気付かされたのは 人とちゃんと向き合ってその人の個性を尊重し合いながら付き合う という事。 もうティーンの青春時代は終わったけど、人との付き合いは大切だなぁと考えさせられました。
映画 えんとつ町のプペル
KCIA 南山の部長たち
42年前の軍事政権下の韓国の出来事なのだが、ものすごく今の日本の政権の状態を連想させ、日本にもイ・ビョンホン演じるキム部長のような人物がいないのだろうか?と、ついつい思ってしまうほどの緊迫感に溢れる政治ドラマ。 イ・ビョンホンの静かな男の色気が徹頭徹尾みなぎりまくる。特に乱れ髪を直す仕草がキマリすぎてどうしましょう、なレベルです(何度もそういうシーンが出てきます)。 中央情報部の部長が主役なので、もちろんスパイ映画の要素も盛り沢山で、1970年代という時代の雰囲気は諜報活動がとてもよく映えますし、アメリカやフランスなど韓国外のロケーションでのそれは、当時のスパイ映画のオマージュ的な画面構成になっているのもなかなかマニアックで良いです。 イ・ソンミンが演じるパク大統領が、長きにわたる独裁でかつての同士達をも捨て駒にせざるを得なくなっていく様が非常に印象的。 日本映画でもこうした題材の作品をたくさん作って欲しいと願わずにはいられなくなりますね。
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